2011年10月8日土曜日

ラムシュタイン/最愛なる全ての物へ

飴と鞭の間柄。

RAMMSTEIN
Liebe Ist Fur Alle Da('09年)



2005年秋のアルバム『Rosenrot』からおあずけをくらうこと4年。いざ出された前菜(=リード・シングル)に飛びついてみたら、露骨すぎるアホとエロの連続で大脱力した。それでもしぶとくメインディッシュ(=アルバム)を待ち、再び飛びついたら、「おまえが孤独でひとりぼっちなら 俺たちがいるではないか スイッチを入れろ」(M1『Rammlied』)と諸手を挙げて歓迎してくれる姿があり、うっかり彼らが戻って来てくれたことに感動してしまった。ファンであれば、この後ヤバい世界がやってくると重々承知のはずなのに。

このアルバムは、特に新しい試みや挑戦というわけではなかったものの、ラムシュタインファンの期待には沿っていたといえる。実録犯罪ネタ、SM、死に彩られた危険な世界が、重厚で硬質なメタルサウンドと、硬質さに輪をかけるドイツ語ボーカル、そのくせキャッチーなメロディーで、やけに耳になじんでしまう。その一方で、哀切感漂うM6「パリの春(Fruhling In Paris)」やM11「赤い砂(Roter Sand)」の美しい側面にうっかり聴き惚れてしまう。こうした性質の悪さも彼ららしい。
特に問題なのはリード・シングルでもあるM8「Pussy」。タイトルそのままのど直球ヤりたい精神丸出しリリックのくせして、エレポップばりのノリの良さと明るさ。PVに至っては限りなく無修正AVに近く、完全版を見るにはアダルトサイトまで行かなければならない。思えばここのアホエロ路線が、一番想定以上だった。
セカンド・シングルのM2「Ich Tu Dir Weh」(=俺はお前を痛めつける)も同様、文字通りど直球のSMリリック。こちらのPVでは、ティル・リンデマン(Vo.)が頬にピアスホールを空けて口の中に電線を通し、まず自らが痛そうな目に遭ってくれている。
彼らも彼らだが、ファンもファンでこの悪趣味をもっともっとと求めている。音楽を介したラムシュタインとファンの仲も、歓喜と苦難が入り乱れたSMめいてきているように思えてならない。

確かに、ティルが「慎重に機を窺うものは 時が来れば報われる」(『Rammlied』より)と歌ったとおり、このアルバムの発表でファンの4年間の忍耐は報われたわけだ。しかし、ライヴについては、2005年の川崎クラブチッタ公演以来放置プレイが続く日本。
ファンの本音は「人生は短すぎるので俺は待てない」(『Pussy』より)。ラムの皆様、いったいいつになったら待ち構える時が過ぎてくれるのでしょうか。

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