2012年1月29日日曜日

マチェーテ

徹頭徹尾トレホ、トレホ、トレホ!

マチェーテ('10)
監督:ロバート・ロドリゲス
出演:ダニー・トレホ、スティーヴン・セガール



その名はダニー・トレホ。
……と聞いてもピンとこないし、顔を見ても分からない方は一般の方。
顔を見て「あっ、あの映画で見たことが……」と気づいた方は、そこそこ映画ファン。
「知ってますよ、ロドリゲス映画の常連でしょ」などと知識を披露できる方は、上級映画ファン。
名を聞いただけで、または顔を見ただけで「うぉぉぉぉぉぉ!!!」ってなる方は、映画バカとか映画オタクとかいう肩書きに誇りすら持っている……んじゃないかと思います。ちなみに私はココです。

で、本作は最後の「うぉぉぉぉぉぉ!!!」の人のためだけにあるんじゃないかと思います。
そもそも、クエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲス(トレホのいとこ)が共謀したB級映画2本立て企画『グラインドハウス』で、嘘の映画予告編として作られたのが『マチェーテ』。それがうっかり(?)本物の映画になってしまったのである。

麻薬王の罠にかかり、妻子を殺され自らも傷を負ったメキシコ連邦捜査官、通称マチェーテ。現在は不法移民として、テキサスで日雇い労働をしている。あるとき、彼のもとに、移民弾圧派のマクラフリン上院議員の暗殺依頼が舞い込む。その背後では、別の企みが動いていた。

とりあえず、下の画像をご覧ください。これがダニー・トレホです。



ご覧の通り、「非・カタギ」「顔面凶器」を絵に描いて3D加工したような出で立ち。しかも、青年時代は本当に麻薬・窃盗で刑務所に出入りし、その間にボクシングのライセンスを取得していたという、ある意味「ホンモノ」。それゆえというか当然というか、数々の映画でおもに悪役として脇を固めてきた。というわけで、今回の主役起用は「まさか!」の領域である。
しかも、強面で暴れまくるのは想像の範囲内だが……「連絡ぐらいしてよ」というサルタナ捜査官(ジェシカ・アルバ)に、なぜか片言で「マチェーテ、メールしない」。と言いつつ敵に宣戦布告のメールを携帯で送るときには、「マチェーテ、やればできる」。このときの携帯文字入力も、PC入力も、小岩のようなゴツゴツの指でキーをドスドス叩きながらの作業。
あのトレホに「可愛い」なんて形容詞を使う日が来ようとは、もう「まさかまさか!!」の領域。ただし、「ハートを射抜く」なんてソフトな可愛さではなく、「心臓をグチャリズブリと抉る」ハードな魅力であるあたり、やっぱりトレホだ。

意外な主役とは逆に、敵の大ボスはスティーヴン・セガール、ヒロインはジェシカ・アルバ、悪辣だけどヘタレな上院議員はロバート・デ・ニーロ。日頃トレホに引き立ててもらっている主役級の皆さまが、今回はトレホを引き立てる脇役に回っている。
ずいぶん贅沢なキャスティングの一方、ロドリゲス映画の常連チーチ・マリンや、『スパイキッズ』の子役から成長を遂げたダリル・サバラ、『ゾンビ』の特殊メイク立役者トム・サヴィーニの姿があるなど、オタクをニヤリとさせることも忘れないのがロドリゲス流。

グラインドハウスの延長線上だけあって、あるいはマチェーテなんて名前だけあって、初っ端から鉈でバッサバッサと人が殺される。首は飛ぶ、手首も飛ぶ、血なんてもう飛び放題。
しかし、あまりにも「ありえねーー!!」な死に様に、逆に笑うしかない。スプラッターが徹底的にダメならおすすめはしかねるものの、「グロだけどアホ」が基本だ。
グロときたら、エロも入るのがお約束。オールヌードあり、トップレスあり、最終的にはコスプレ銃撃戦。もちろん、特に意味はない。とりあえず目の保養。

そうそう、マチェーテは女性に大変モテる。「何で!!??」というツッコミはあるだろうが、トレホのキャリアを考えれば、それぐらいの役得はあってもいいんじゃないだろうか。刑務所暮らししたり、年間何本もの映画・ドラマに主演したり、非行青少年のカウンセリングもしたりと波乱&多忙の人生。それが御歳66(公開当時)にして、主役を張り、トップレスのリンジー・ローハンを抱き、ジェシカ・アルバとキスできるとは……本当に人生って分からんもんです。

ところで、エンドクレジット直前、『殺しのマチェーテ』&『続・殺しのマチェーテ』という次回予告が入っている。
これもフェイク予告? どうせなら本当に続編作ってよ! というファンの声が届いたのか、それとも最初から作るつもりだったのか、これまた本当に続編と続々編が作られることになった。
が、昨年夏から「3作目は宇宙が舞台」とか、楽しみなような不安なようなお話が漏れている。嘘から始まった『マチェーテ』シリーズから、どれだけ真が出ることやら。

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