2012年9月3日月曜日

アベンジャーズ

本当に、これが映画だ。

アベンジャーズ('12)
監督:ジョス・ウェドン
出演:ロバート・ダウニー・Jr.、クリス・エヴァンス



ヒーロー大集合、世界の危機、敵とも味方ともスケールでっかくバトル、ガジェット使います、スーパーパワー使います、常人離れした身体能力も駆使します、ユーモアとロマンスを効かせることも忘れません……。

文字に起こすとベタ度が増すが、でっかいスクリーンと最高の音響で観るという映画の醍醐味をひたすらに乗せると、こういうことになるように思える。
日本だけじゃなくて、世界に向けて「これぞ映画だ!」って言っちゃってもいいんじゃないか?

国際平和維持組織S.H.I.E.L.D.が保管する四次元キューブを奪い去り、異世界の扉を開けて地球侵略を目論むアスガルドの神ロキ。世界の危機を阻止すべく、S.H.I.E.L.D.長官ニック・フューリーは、アイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソー、ハルク、そしてS.H.I.E.L.D.エージェントのホークアイとブラック・ウィドウらヒーローを集結させた「アベンジャーズ計画」を発動する。
しかし、ホークアイは洗脳でロキの支配下にあり、ヒーローたちも強いエゴと不信感のため、チームは簡単にはまとまらず……。

ざっくりいえば「ヒーロー大集合祭り」がメインテーマの本作。当然、全員に活躍の場を与えなくては不満が残るというもの。
こういうとき、特殊能力組はわりと心配いらない。ソーはムジョルニアと雷を操るパワーを見せつけられるし、『マイティ・ソー』のころに比べれば、分別も身につき安定感のある存在に。
ハルクは大暴れするだけじゃなく、変身の瞬間の緊迫感や、バナー博士としての日頃の苦悩も描ける。ノーマルな状態の天才科学者ぶりも、わりと長めに見ていられる。
アイアンマンは特殊能力とはちょっと違うが、パワードスーツのカッコよさと頭脳とユーモアが特殊といえば特殊。そのくせ協調性がないあたり、一番「成長するヒーロー」として描きやすいキャラクターだ。

一方、影が薄くならないか心配だったのが常人組(といっても人並み以上の身体能力あり)だが、蓋を開けてみれば心配値を軽く上回る活躍。下手な人が描けば魅力が「紅一点」ばかりになりがちなブラック・ウィドウは、涼しい顔して無茶にもほどがあるアクロバティックな戦いぶり。
ホークアイの一見地味な弓技も、クライマックスに向かうにつれて思いがけぬ大活躍を見せ、初っ端に洗脳で敵陣に回ってしまったぶんを軽く取り返していた。

一番予想以上にいい描かれ方だったのが、キャプテン・アメリカ。「超人ソルジャー」がキャッチフレーズだが、スポットが当たっていたのは「超人」よりも「ソルジャー」としての側面
いざというときには進んでチームの指揮を執り、居合わせた警察官にも的確な指示を出し、巻き込まれた民間人を助けることを忘れない。キャップの強みは、真面目さと正義感と軍人としての経験であることを再確認させられる。

そして、彼らと違って戦いの表舞台にはなかなか出てこないが、司令官ニック・フューリーの冷徹な態度とヒーローへの信頼感も、埋没することなく存在を示している。
『アイアンマン』シリーズ、『マイティ・ソー』に登場し『アベンジャーズ』への布石を敷いてきたエージェントのコールソンは、今まであまり見せなかったヒーロー愛を今回ばかりは隠さず。影どころか堂々たる功労者としてヒーローたちを支えた。その功労者にアレはなかろうという気もするけれど。
ただただお祭り要素を乗せまくるだけじゃなく、それぞれの魅せるポイントをしっかり押さえて描く。エピソードを詰め込みすぎず、テンポの早い流れにしたのも、この場合ポイントが高い。監督ジョス・ウェドンの完璧な仕事ぶり、あるいはオタクぶりに感謝である。

そうそう、ヒーローを引き立てる悪役として、ロキの貢献を忘れちゃいけません。
これだけヒーローが集結したら、悪役は宇宙から襲来したエイリアンクラスのやつかと思ったら(それも間違いではなかったが)、トリックスターの神だった。
確かに『マイティ・ソー』からソーと義兄弟にして愛憎半ばする敵ではあったが、その動機は「親に認められたい」「兄の陰に隠れっぱなしだからちょっと仕返ししたい」「少しは兄と対等になりたい」と、極めてネガティヴでコンプレックスに溢れていてミニマル。紹介文ではしょっちゅう「邪神」といわれているが、邪悪どころか、ソーの豪快さとお人良しぶりとはまた違った親近感が湧いてくる神である。

今回は地球侵略という大規模な陰謀に打って出た……と思ったら、根本は相変わらず「兄への対抗と仕返し」というミニマルさ。このスケールの小ささが、世界を壊滅の危機に晒しておきながら、ロキを憎めないキャラクターにしている所以。また、発想が単純なようでいてときに予測不能な行動に出る駄々っ子は、実は結構な脅威であることを知らしめてもいる。

一応神なので「死んで終わり」という最期もなかなかつけられないし、『マイティ・ソー』の続編にも演じるトム・ヒドルストンの名がクレジットされているらしいロキ。あれだけ悲惨な(そして笑える)目に遭ったにもかかわらず、反省しているのかいないのか微妙なところだったので、彼のはた大迷惑な反抗期は、まだ続きそうな気がする。

もちろん、アベンジャーズもまだ続く見込み。観ていれば分かることだが、すでに次の悪役がセッティング済みである。スタートダッシュは上々も上々だったマーベルヒーローチーム、次の課題は「続編にありがちな中だるみをいかにして避けるか?」のようだ。

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