2012年12月17日月曜日

シアターN渋谷閉館に寄せて

求む、映画小屋の後継者。

2012年12月2日。シアターN渋谷、閉館。



7年間の歴史のうち、私がシアターNにお世話になった期間は本当に短い。
それでも、閉館は残念で仕方ないし、心底「本当にありがとう」と言いたくて仕方ない。

シアターNについて言及される際、しばしば目にする表現が「小屋」である。
場内はロビーの窓が大きくて明るいし、スクリーンもトイレも清潔で、一見「小屋」という単語のイメージからは遠い。しいていうなら、トイレの個室がなぜか若干ななめということ、また客層の男性比率が若干多いせいか、しばしばスクリーン内に独特の空気(中にいると腕毛が濃くなりそうな気がする薄ら汗臭いやつ。ピエール瀧さんが言うところの『男ミスト』)が漂っていることが、「小屋臭」のするゆえんだろうか。

ただ、シアターNを一番小屋たらしめるものというと、やはりそれは上映ラインナップだ。ホラーはもちろん、ロック映画(多くがレイトショー上映で観に行けなかったのが無念)、リバイバル上映、表現のキツさから上映が危ぶまれていた社会派……デカい稼ぎ口ではないが、映画オタク層には見たくてたまらない人々が確実にいたであろう作品の数々。
上映中作品がこんなにみっちりコアな映画館、そうそう見当たるもんじゃない。残念ながら。

コレとか↓
最後までこんな感じ↓


そうなると気になるのが、都内でどこの劇場がこの「小屋スピリット」を継ぐのかということ。
ミニシアターは存在するが、興行収入やフィルム→デジタルへの媒体移行に伴って、徐々に数と規模を減らしつつある。『アメリ』『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』など、小粒作品のロングラン上映を生み出してきたシネマライズが、規模を縮小してしまったのも記憶に新しい。

とはいえ、シアターNは普通のミニシアターではない。名画座ともちょっと違う。普通の劇場なら上映禁止ものの問題作や、ホラーとロックというファン層がコアなジャンルをピックアップする、男気と「痒いところに手が届く」感がある。
ホラーに関しては、ときにボンクラすぎてフォローしきれないものにも出くわすが、もうそれすら「しょうがねぇなぁ」で済んでしまう気の抜けた空気がある。それと同じとまでは言わなくとも、近いスピリットの映画館……と思って考えると、やっぱりなかなか思い当たらない。

自分の狭い行動範囲でいうと、『最強のふたり』のような小粒良作を発掘しつつ、『アイアン・スカイ』『ゾンビ革命』のようなボンクラ魂炸裂映画にも手が届く新宿武蔵野館(たぶん、12月22日会館予定の武蔵野館系列ミニシアター、シネマカリテも)が、近いといえば近いのだろうか。ただし、ホラーとロック色は薄いし、そんなにこっぴどいボンクラもあまり見かけないので、まだ優等生の部類のように思える。
そういうジャンル専門の映画館をつくるのが難しいのなら、せめてそれ専門のスクリーンぐらい設けておいてくれないだろうか。特にシネコンさん、2週間の興行収入という短期間高収入ばかり見てないで、小規模スクリーンの1つでも譲っていただきたいものですよ。

ちなみに、私のシアターNのトップクラスの思い出は、どうしても最近の話になってしまうのだが、『モンスター・トーナメント』&『カジノ・ゾンビ』、『インブレッド』&『血の祝祭日』(ハーシェル・ゴードン・ルイス映画祭)で4分の1日ほどをシアターNにて血みどろネタで過ごしたことである……。
こんな面白割引も少ないもの。迷彩服割引ぐらいは実践すべきだったかも……。

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