2013年1月15日火曜日

ミューズ@さいたまスーパーアリーナ

膨張に飽きたら別の次元を作ればいいじゃない。

MUSE
2013.01.11. さいたまスーパーアリーナ

セットリスト
1.The 2nd Law: Unsustainable
2.Supremacy
3.Map Of The Problematique
4.Panic Station
5.Resistance
6.Supermassive Black Hole
7.Animals
8.Knights Of Cydonia
9.Explorers
10.Exogenesis: Part 3 (Redemption)
11.Time Is Running Out
12.Liquid State
13.Madness
14.Follow Me
15.Undisclosed Desire
16.Plug In Baby
17.Stockholm Syndrome
‐ Encore1 ‐
18.The 2nd Law: Isorated System
19.Uprising
‐ Encore2 ‐
20.Starlight
21.Survival


クラシックもジャズもポップもメタルもブラックホールのように吸収し、世界から宇宙にまで広がり続ける。それがミューズの音楽だった。
そんなに巨大になってどこに行くんだろうと思っていたら、昨年発表の6th『The 2nd Law』では、4thと5thまではかろうじて保っていた「ギター・ロック」という基盤から逸脱し、サンプリングやダブステップを多用した音楽性。今まででもっとも「ミューズらしくない」音でありながら、常に進化し続けて遂に新しい次元へ飛び立ってしまった「きわめてミューズらしい」作品となっていた。
そんな最新作と、クイーンのごとき過剰の美学が詰まった今までの曲とが融合した、しかもフルスケールのライヴときたら、絶対スゴいに違いない! ……と思っていたら案の定、というか想像を軽く飛び越えて、とんでもないことになっていた。

どえらい行列のグッズ販売とクローク待ちのおかげでサポート・アクトには間に合わなかったものの、本番には何とか滑り込み。「Exogenesis: Part3(Redemption)」のパラパラアニメーションで突如ミューズと縁深くなった鉄拳さんの出現が、開幕直前のちょっとしたジャブ的サプライズだった。
幕開けは前評判通り、「Unsustainable」のセッションから「Supremacy」のドラマティックなベース&ドラムライン。ミューズらしからぬ最新作の音から入ったのに、もうミューズ以外の何物でもない劇的展開が始まっている。
真っ赤だったりラメ入りだったりと、ここ最近はきらびやかなマシュー(Vo./G)の衣装だが、今回はシンプルな黒のライダースジャケット。銀の全身タイツだったりガチャピンの着ぐるみだったりと、ここ最近はお笑いコスチュームだったドム(Ds.)も、シンプルな白のタンクトップ。クリス(B)がシンプルな服なのは……まぁいつものことなので。
そういえば、マシューの日本語MCは相変わらず早口で、ヒアリングが大変だったよ。

衣装の奇抜さに取って代わったのは、ステージエフェクトの奇抜さだった。「Panic Station」で、ステージ上空から逆さピラミッドが出現。1つ1つのブロックがディスプレイになっていて、ブロック1つ1つにエイリアンが出現。メンバーのクローズアップも映し出される。「Animals」では、財界から世の中を牛耳るCEOを皮肉ったストーリー調の映像が流れる。しかも、ときどきピラミッド型から組み変わる。さすが、前回ツアーで会場にUFOを飛ばしたミューズ。エフェクトは可能な限り使いぬく。レーザーもたくさん飛んだしね。
今までライヴの幕開けかラストを飾っていた「Knights Of Cydonia」が、本編8曲目という中途半端なポジションに投げられていたのが、個人的には嬉しい。アンセムとされてきた曲をあっさり特別扱いしなくなる冒険精神は大好きなもので。また、演奏されなかった公演もあったので、果たして今回来るかどうか分からなかった「Explorers」にも感激。ここから、日本で特別に演奏された「Exogenesis」(ピラミッドに鉄拳のパラパラアニメーション付き)の流れで、2013年ライヴ初泣きとなった。
最新作で初めてメインボーカルが2曲収録されたクリスだが、彼のボーカル曲は公演によって「Save Me」だったり「Liquid State」だったりと変わるらしい。今回は後者。当初は前者のほうがいいかなぁと思っていたのだが、よりロック色の濃い「Liquid State」でも大正解のようで。しかし、せっかくメインを張ったのに、MCらしいMCもなくすぐに引っ込んでしまうんだねクリスは。インタビューではそうでもないのに、ステージ上では一番のシャイに見えてしまう。(本当のところはマシューも相当シャイなようだが)

レンズがディスプレイになった特殊サングラス着用のマシューもちょっとマッドな「Madness」を経て、「Follow Me」~「Undisclosed Desire」のパートが、ミューズのもっとも斬新な側面だったかもしれない。なにしろ、今までお気に入りのおもちゃのようにギターを手放さなかったマシューが、初めてギターなしでマイク片手に歌ったのだから。しかも、「Undisclosed…」では、アリーナ通路に降りていって、オーディエンスと握手して回っていた。そんなマシューを目にしたクリスが思わず笑顔になっていた。実際のところ、クリスにはアルコール中毒の克服をマシュー&ドムに支えてもらっていたというエピソードがあったのだが、それを踏まえてもアリーナをひた走るマシューを見るクリスの笑顔は、やんちゃ小僧を暖かく見守るパパに見える。
今回のツアーでは、ファンからの人気曲「Stockholm Syndrome」「New Born」のうちどちらを演奏するか、ルーレットで決めるという演出がある。上の逆ピラミッドからボールが落ち、ステージ底辺を囲むスクリーンのルーレット台に止まるのである。個人的には、どっちの曲も好きなので、どっちが当たっても嬉しいし残念でもある。この日は「Stockholm…」だった。
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの「Freedom」をジャムセッションする中(ミューズはよくセッションにレイジの曲を使う)、3人を覆い隠すようにして逆ピラミッドが正ピラミッドに組み変わりながらステージ上に降り立ち、本編が終了した。

「Isorated System」を経て、「Uprising」のベースラインで再び会場は沸く。マシューとクリスは左右の花道にすぐ現れたが、ドムのドラムセットは完全にピラミッドの後ろに隠れてしまっている。その代わりなのか、ピラミッドにはドムが空手でスーツの男たちをなぎ倒す『キル・ビル』チックな映像が流れていた。ようやくピラミッドが持ち上がったとき、ドムの格好が映像に映っていたユマ・サーマンもどきの赤ツナギになっていたことが判明。アンコールでのお着替えは、ガチャピン着ぐるみ着てきた前回ツアーのノリと変わっていないような。
2度目のアンコールは「Starlight」でハンド・クラップが続き、最後はロンドンオリンピックのメインテーマ「Survival」。マシューの雄叫びに、熱いはずのアリーナが一瞬寒くなるほどのスモークが巻き上がり、ラストの歌詞「Yes, I'm gonna win」を体現するような幕切れとなった。ミューズのライヴ、とりわけラストに「劇的」という表現はつきものだが、見る度に劇的の度合いが跳ね上がっているようだ。

過剰なほどのスケールとドラマでもって膨張を続けた音楽世界から、新しい音でもって別の次元を作り出す。そんなあまりにもバカでかい「新たな一歩」を、壮大なステージで成し遂げる。下手するとただ大仰なだけのステージだが、終わってみればすべて必然。
荒削りもカッコよさのうちになるロック界において、ミューズは今もっとも荒削りから遠く、「洗練」「完璧」という言葉にふさわしい。それでいて、というより、それだからこそカッコいいロック・アーティストなのだ。

 
クリスが来た! とカメラを向けるも、体感距離とレンズ距離にはかくも違いが……
 
ステージ上空に出現する噂のピラミッド。
 
 
そして怒涛のレーザー祭り。 

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