2013年4月7日日曜日

スペル

お年寄りには親切に(だって後が怖いから)。

スペル('09)
監督:サム・ライミ
出演:アリソン・ローマン、ジャスティン・ロング



小学校のとき流行った怪談話に、「ムラサキババア」とか「三時ババア」とかバアさんの幽霊話がよくあった。バアさんの幽霊ならおとなしめに、しかしコワく攻めてくるのかと思いきや、これが意外と噛みついてきたり猛ダッシュしたり根性(?)で異次元に引きずり込もうとしてきたりと、アグレッシブなオバケだったりするのが厄介。
オバケものに関しては、年とって丸くなるどころか、執念深さが年齢に比例するんじゃないか疑惑が。

銀行の融資係のクリスティンは、出世がかかったプレッシャーから、一人の老婆のローン延長願いを断ってしまう。その途端、老婆は態度を一変させてクリスティンにつかみかかり、果ては終業後の駐車場で待ち伏せ襲撃し、謎の呪文を唱えて去っていった。
以来、彼女の周辺には謎の影が見えたり、見えない誰かに殴られたりと、不気味な現象が起き始める。3日後には地獄へ引きずり込まれるという呪いを解く術はあるのか……。

大学教授の彼氏に釣り合う彼女になりたい、そのために昇進したい、ライバルに負けたくない、という誰でも抱きそうなささやかな欲求から不親切な行動に出たばかりにしっぺ返しを喰う……という教訓話的な面もなくはない。
しかし、3日間のアルティメット嫌がらせの果てに地獄行きとまでヘヴィなしっぺ返し、神様だってやらないだろう。……いや、やるかも(ギリシア神話や北欧神話ネタの映画を鑑みながら)。

一応、老婆の呪いの背後にはラミアという悪魔がついているのだが、正直悪魔よりもバアさんのほうが怖い。生きてるときからしても、駐車場待ち伏せ攻撃の際、義眼にホチキスアタックや口にドライバーアタックなどの反撃を受けても、文字通り噛みついてくる。死体になっても、謎の緑色の液体を吐きかけてくる。
霊体みたいなのになったらさらに悪ノリして、横に寝てる彼氏と入れ替わるわ、蛆虫を吐き散らすわ、上腕までずっぽーーっと口に突っ込んでくるわ……生死を問わず心臓に悪くタチも悪く気色も悪い。都市伝説に出てくるバアさん幽霊の頂点に立たせたいレベルだ。

そんなバアさんが所持者のせいか、バアさんのハンカチもやたらアグレッシブ。クリスティンの車のフロントガラスにベタンと貼りついたり、これまた口の中にずっぽーーっと入りたがったりもする。ちなみにそのハンカチ、バアさんのド汚い入れ歯が上にポイと置かれてたシロモノ。
教訓がどうこう、悪魔がどうこうというより、とにもかくにも「バアさんの逆恨み超怖ぇぇ」印象が先をひた走る一本である。

先ほどから、口から何か吐き出す、口に何かがずっぽり入るなど、薄ら気持ち悪いネタが続く本作。
サム・ライミは昔やってたようなB級ホラーを作るにあたって、映画会社サイドからいろいろ言われたんじゃなかろうか。「レーティングの問題あるから、血しぶきドバーーとか内臓ドローーとか手足バッサーーとかダメね」とか。虫もどきやゲロもどきだったら、「だって血しぶきも内臓も出してないし手足も飛んでないっすよ」って言い訳ができそうだ。流血もあることはあるけど、支店長に向かってヒロインがダイナミック鼻血を噴射するシーンぐらいだし。

それにしても、アリソン・ローマンほどの可愛らしい人が、よく鼻血ブー/鼻からハエ侵入/口からハエリターン/ゲロまみれ/泥まみれと半端ないヨゴレをやってくれたものだなぁ。

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