2014年1月20日月曜日

メイヘム@代官山UNIT

(代官)山の魔王の宮殿(ライヴハウス)にて。

MAYHEM Special 30th Anniversary Japan Tour
2014.01.16. 代官山UNIT

セットリスト:
1.  Silvester Unfang
2.  Pagan Fears
3.  Buried By Time And Dust
4.  Deathcrush
5.  Ancient Skin
6.  My Death
7.  A Time To Die
8.  Illuminate Eliminate
9.  Symbols Of Bloodsword
10.  Freezing Moon
11.  Carnage
12.  De Mysteriis Dom Sathanas
13.  Pure Fucking Armageddon


ファンならだいたい知ってる、「ユーロニモス殺害事件」だの「デッド自殺事件」だのメイヘムの過去の事件や、90年代初期のノルウェー・ブラックメタルにまつわるサタニズムや事件のあれこれ。
2010年に彼らが来日する際、「こういうバンドなんですよー」と相手をビビらせたい半分でその話をしてまわってたところ、「もう次に誰が死んでるか分からないんだから、観にいってきなよ!」と逆にヘンな形でレコメンドされました。
そんなアホ歴史を振り返ると、とりあえずノルウェーの方角に頭下げといたほうがいいのかな、自分。

2010年のクラブクアトロに比べると狭めの会場になり、そこそこ前方を陣取ったので、幸運にも結構な近距離でメイヘムを見られることとなった。
まずはゲストのDefiled。メイヘムとは親交があるらしい。自然と首の縦揺れが増してくる心地いいデスメタル(……矛盾?)だったが、みんな本番にそなえて動きをセーブしているので、フロアではそこまで激しいアクションは見受けられず。そんな中、真ん中で5人ぐらいがモッシュピットつくったりダイブ&キャッチをくりかえしているのが微笑ましかった。Twitterを読んだ限りでは、「気になっていたバンドなので生で聴けてよかった」「カッコよかった」等、好意的でしたよ。

きちっと定刻通りに始まったDefiledのステージ終了から、オーディエンスを待たせること47分。そういえば前回来日時も、ゲストのステージが終わってから相当待った覚えが。ともあれ、ロウソクに火ともす演出なんかも入りながら、もったいつけにつけまくってメイヘム登場!!

ちなみにこちら↓のロウソクは和ロウソクらしいぞ!


1stの中ではもっともスラッシュなノリの「Pagan Fears」のイントロが轟くやいなや、一斉に前方へ猛攻するオーディエンス。
突進した先には、白塗り血糊塗りメイクでイッちゃってるアッティラ(Vo.)大魔王の顔面が待ってるのだが、それすらファンには嬉しい限り。頭蓋骨模型を片時も手放さず、両手を怪しく動かす仕草は相変わらずだ。2010年の来日時に比べると、若干ふっくらしてて、テンポアップした際のノリノリ度が上がっているように見えた。
逆にネクロブッチャー(B)は、2010年に見たときに比べて少しマッチョになっていたような。だから一人だけ上半身裸になってたのだろうか……?

前回遠すぎてまったく姿が見えなかったヘルハマー(Ds.)は、ぐっと近くにきたからよく見えるかと思ったが、座る位置が低いうえ要塞のようなドラムセットに隠れがちで、結局あまり姿が見えなかった。ステージの間、ずっとアッティラとネクロブッチャーに気を取られすぎていたせいもあるのだが。それでも、伝説の豪速ブラストビートを腹に響く距離&音響で体感できた嬉しさが勝るというもの。
最後に前に出てきたときには、涼しい顔してドラムスティックをプレゼントしていたし、超人健在である。

「Deathcrush」のリフが鳴り響くと、オーディエンスの跳びはねる率が上昇。まだスラッシュメタル影響下の色濃い『Deathcrush』EP収録曲は、自然とオーディエンスが暴れる度合いが高まってくる。
このとき、小規模ながらもモッシュピットができたりクラウドサーフィンがあったことに、後に「ブラックメタルにモッシュやダイブなんて……」と苦言を呈するツイートが多々見受けられた。いわく、ブラックメタルはライヴでモッシュやダイブをするものではないとのこと。
実際モッシュを禁止するブラックメタルバンドもあり、メイヘムもごく初期に「No Mosh」を掲げていたことがあるが、現在メイヘムからモッシュ禁止令が出ているという話は聞いていない。
個々のファンの間で価値観の齟齬が発生するのは、問題とはいえ致し方ないのだろうか。(ちなみに私は、モッシュやダイブをする人ではないけど、モッシュやダイブの発生自体は構わない派です)

ただ、クラウドサーフィンしてステージに辿りついたファンが、アッティラに押されてみんなの頭上へ送り出され、それをネクロブッチャーが笑いながら見ていたことを思うと、本気の笑いであれ呆れ笑いであれ、バンドにしてみればモッシュもダイブもまだ「笑って済まされる話」なのではないかと。

疾走曲もイイが、「My Death」や「Illuminate Eliminate」の静かな狂気もやはり浸り心地がいい。特に、「My Death」終盤ギターソロの妖しさは絶品。1stの名曲「Freezing Moon」に至っては、ボルテージアップとリフの妖しさの相乗効果に加え、ボーカルの邪悪さも加わって、凍りつくと同時に燃え上がってました。
ラストのブラストが始まるポイントで、アッティラが「イチ、ニ、サン、シ!!」って煽ってきたのはちょっと意外な気もしたが、この日のノリの良さを思うと何となく納得。4年前の大阪公演でも、「オオキニ!!」って言ってたらしいし。

それにしても、アッティラのドスの効いた(?)デスボイスの迫力は相変わらず。その気になれば人間の1人や2人呪い殺せそうなぐらい。クリーンボイスで歌うパートも、良い具合に気色悪い。私が勝手に「大魔王」という肩書をつける所以です。
欲をいえば、終盤の唸り声があまりにも人外魔境な「Anti」がまた聞きたかった。せっかくアッティラが正式ボーカルとして迎えられて制作したアルバムだというのに、『Ordo Ad Chao』からの選曲が「Illuminate…」しかなかったのはなぜだろう。

「Carnage」で再び熱い空気を呼び起こしたのち、「De Mystriis Dom Sathanas」で再び冷ややかな空気を吹き込み、最後は鉄板の「Pure Fucking Armageddon」。この曲がくるとライヴも終わりなのだということは、近年のセットリストを見ていれば分かる。
それでもなお「メイヘム! メイヘム!」とコールは続き、オーディエンスはなかなかフロアをあとにしなかった。そりゃもっと見ていたかったさ。

結成から30年、バンド史に積み重なった痛ましい事件を経て、今もなおブラックメタルの重鎮であることを、すでによくよく知ってはいるけどさらに上書きする形で実感させてくれたメイヘム。そろそろ、ライヴだけじゃなくて、スタジオアルバムのほうでもカリスマ健在をガシガシアピールしていただきたいところなのですが……どうなんでしょうか、アッティラ大魔王?

大魔王の威厳と呪詛オーラは、手ブレに阻まれましたが……


 またここに戻ってきてくれよ。出来ればアルバム引っ下げて。