2015年12月31日木曜日

2015年極私的アルバムベスト5

2015年=M。

奇しくも今年、私が好きなアーティストの中で「M」のつく方々が続々新譜をリリースしたおかげで、ランキングをMのイニシャルが埋めることとなりました。ついでに言えば今年の映画ベストだって、1位は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でMADのMだもんな。あ、あと3位が『ムカデ人間3』だからムカデのMってことに……はならないか。

1位 MARILYN MANSON/The Pale Emperor




どうしても師匠びいきなもので、師匠の新譜が出た年にはだいたい1位にしてしまいます。ヘヴィ度合はだいぶおとなしめになったけど、洗練と渋みを増した曲群からは「マンソンも大人になったなぁ」と思わされる。もっとも、サマソニのステージでただちに大人げなさを発揮していたのだけれど。師匠、思ったほど盛り上げられなくてすみませんでした。今度単独で来日して下さったらもっとヒャッハーします。

本作の中で一番の極私的お気に入り、「The Mephistopheles Of Los Angels」
ライブで聴いてみたい……

2位 MOONSPELL/Extinct




最近後退気味だったゴシックロマンス度と、フェルナンドのベルベット・ボイスの割合を大幅に増やしてくれ、なおかつシスターズ・オブ・マーシーっぽさも醸し出してくれるという、私にとっては大変にありがたいアルバム。それにしても知名度のせいかまっっっっったく来日しないというのが本当に残念だよ。M1「Breathe」とかシャウトしたいしM4「Domina」で穏やかになったりしてみたいよ。

デスボイス配分が大目だが、ライブで聴いたら絶対カッコいいしノレるから聴いてみたいですよ
お願いしますからライブ観させてくださいよ……という「Extinct」。

3位 MUSE/Drones




何ともタイムリーなタイトルで、比較的社会的要素が強い。アルバムごとに世界感が膨張していき、前作『The 2nd Law』では遂に新しい次元へ行ってしまったミューズが、本作でもともとの世界の内側へと戻ってきたようにも。

リズム感が『The 2nd Law』に近いリードシングル。

4位 CRADLE OF FILTH/Hammer Of The Witches




ダニ・フィルスが喉の手術の影響で高音ボイスが出なくなって以降、濁声を活かした暴虐シンフォニック路線のクレイドル。正直、前作(Terrorizer誌のワーストに選ばれてしまった……)は曲の個性が埋没していたが、今回は難なくクリア。禍々しい中にも艶っぽさがある、私の大好きなクレイドルですよ。

「Blackest Magick In Practice」のほうがリフが好みなのだが、
MVがカッコいいのでこちらを選んだ「Right Wing Of The Garden Triptych」

5位 STRATOVARIUS/Eternal




よりシンフォニック路線を強め、トルキ脱退以降のストラトヴァリウスのカラーがだんだん決定づいてきた新作。2014年のラウドパークの映像収録のDVDがついているので、俄然限定盤おすすめです。

MVにそこはかとなく漂うダサさもストラトヴァリウスの魅力だと思ってます。
リードトラック「My Eternal Dream」。

次点 LINDEMANN/Skills In Pills




ラムシュタインのティル・リンデマンとヒポクリシー/ペインのピーター・テクレンが組んだ、実質ティルのソロアルバム。いつもはドイツ語で歌っているティルが英語で歌っている。ラムシュタインで英語歌詞やったときには違和感があってあまり好きではなかったが、こちらは独立した作品だからかピーターのプロデュースが上手いのか、違和感なくむしろ好みに。

ただし、言語が変わっても歌詞とMVは相変わらず変態だから心配するな。
悪趣味全開の「Praise Abort」。





ちなみにベストには入れなかったけど、今年は良いライブ盤にも出会えたのが嬉しい。

ROB ZOMBIE/Spookshow International Live




会場のノリがビシビシ伝わりすぎて、聴きながら外歩いてて「うぉーーー」ってレスポンスしたくなってしまうほど。ヨコノリのロックだから踊ったりジャンプしたりもしたくなるから困る。かつてマンソンのバンドで活動していたジョン5(g)とジンジャー・フィッシュ(ds)が、のびのびとソロを披露しているのも微笑ましい。

本作の音源じゃないけど、2014年のテキサスライブより「Superbeast」。
このシアトリカルなショーが『マーダー・ライド・ショー』に通ずるんじゃないだろうか。


SATYRICON/Live At The Opera




オペラハウスで、オペラのコーラスをバックにしたライブ。DVD付属盤なら映像も拝める。サテリコンには斬新な「荘厳さ」が追加されたことで、曲の新しい側面が見えてくる。特に、ロックンロール要素の強かった「The Pentagram Burns」や「K.I.N.G.」には、思いがけない美しさが浮かび上がってくるよ。

オフィシャルに公開されている「Die By My Hand」のステージ。
わずかに男声バックコーラスが聞こえるだけだった原曲以上に荘厳かつ不穏になった。



何だか今回の記事はコレばっかり言っている気がするが……どのアーティストもライブが観たくて仕方ないんですよ!!! 来日してくださいよ!! (注:ストラトヴァリウスは来日するけど、金曜スケジュールでは正直キツイものがあって……追加公演が壮絶に欲しい!!)

2015年映画極私的ベスト10

2015年=マッド。

……まぁ、ランキングの1位を観れば分かる通りそういうことですよ。マッドな映画が上位って意味にもしたいんだけどね。
今年もまた1位は早々に決まり、2位以下をマーベル映画やスパイ映画やスターウォーズが席巻するかなと思ったら……下半期になってミニシアター系ホラーが大健闘してくるという不測の事態となりました。

ちなみに参考にならない参考までに。
2014年の極私的ベストはこちら
2013年の極私的ベストはこちら
2012年の極私的ベストはこちら


1位 マッドマックス 怒りのデス・ロード

数年の1度のとんでもない映画に出会ってしまった。カーチェイスとアクションと爆発のシンプルな話にいくつもの物語を織り交ぜ、昔からスタンスがブレないどころかパワーアップしている。恐るべし、ジョージ・ミラー。V8! V8! (2015年映画ファン流行語大賞)


2位 グリーン・インフェルノ

奇しくも公開直前に起きた「食人族BD発売中止未遂事件」のイライラを軽減してくれる喰いっぷり(喰われっぷり)。SJW(ソーシャル・ジャスティス・ウォリアー)がなんだ! 意識の高さがなんだ! 不謹慎万歳! 食人族万歳!! イーライ、続編作るんだったら楽しみにしてるよ!


3位 ムカデ人間3

あからさまに笑いを取りに行ってるところは賛否が割れそうだが(自分が見た限りでは否が多かった気がする)、ディーター&ローレンスが可愛いので私はOK。500人ムカデ人間という、ムカデ史上最高の出オチすらOK。最後、アメリカ(と世界)の不条理の縮図が見えた瞬間には感動すら覚えてしまったよ。ムカデ万歳!!


4位 セッション

今までもっとも恐ろしい「キャラバン」は、狂気と狂気の衝突で生まれた奇跡。最後、一瞬の静寂のときに、客席中から息をのむ音が聞こえてきて、ああこの瞬間にこの場にいて良かったと思えた。


5位 毛皮のヴィーナス

終演後、身体本体は一応普通に立ち上がって歩いて帰ってましたが、メンタルは腰が砕けてガクガクになりながら歩いている心地でした。無知かと思えば知性を溢れさせ、相手を称賛したかと思えば貶め、振り子のように両極端を渡り歩く女性がここまで魅力的で、ここまで恐ろしいとは。


6位 ババドック 暗闇の魔物

特筆すべきはババドックがどのように母子を追い詰め、どのような結末を迎えるか。恐ろしくリアルであり、これでしか決着のつけようがないように/進歩のしようがないように思えてくる。


7位 キングスマン

今007にできないことは我々がやる! とばかりに、オモチャのようなガジェットや設定を武器に暴れまわる紳士たち。不謹慎と悪趣味をポップできれいに包む、マシュー・ヴォーンの笑いのセンスも最高に活きている。その真骨頂が「威風堂々」ですよ。


8位 ミッション・インポッシブル/ローグ・ネイション

4作目で確率した「超人スパイイーサン・ハント率いるIMF精鋭のチームワーク」設定で引き続き走り出すシリーズ最新作。今回のトム・クルーズスタント劇場は「飛行機にしがみついて離陸」だったので、そのうち宇宙に行くんじゃないかと思う。今回の悪役で初めてショーン・ハリスを認識できたのも収穫。
それからおめでとうサイモン・ペッグ。君は「スーパースパイチームに引き抜かれたオタクの星」から「髭の生えたロイス・レイン」に昇格した。


9位 ナイトクローラー

すべては「イイ仕事」をして、それに見合った対価をもらいたいがため。身の丈にあった野望のために、良心や倫理観をいとも簡単に切り捨てていくジェイク・ギレンホールの不気味なこと、そのくせ面白くてしかたないこと。


10位 プリデスティネーション

原作小説のタイトルになっている「輪廻の蛇」が完成したラストシーンに鳥肌。多少結果が読めても、そこにつなげていく演出が見事。ストーリーを実質2人でまわしたイーサン・ホーク&サラ・スヌークに乾杯。



次点に『群盗』『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ!』シリーズ、『ジュラシック・ワールド』『スター・ウォーズ フォースの覚醒』などがきます。マーベル映画だって相変わらずの高品質なんだけど、今年は事前期待値を大いにフライングしてくる映画たちが多くって。
あと、「未体験ゾーンの映画たち」から、ホラー・シネマ・パラダイスは掘り出し物枠としてオススメしたい。

あとは、新作劇場公開作ベスト以外で……


2015年リバイバル映画ベスト10


1位 悪魔のいけにえ(in 渋谷HUMAXシネマ&新文芸坐)
2位 マッドマックス2(in ワーナーブラザーズ試写室)
3位 ヘルレイザー(in キネカ大森/ホラー秘宝まつり)
4位 ヘルレイザー3(in キネカ大森/ホラー秘宝まつり)
5位 トゥルー・ロマンス(in シネマート新宿)
6位 スペースバンパイア(in シネマート新宿/メナハム・ゴーラン映画祭)
7位 フィッツカラルド(in アップリンク/ヘルツォーク傑作選2015)
8位 江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間(in シネマカリテ/カリコレ2015)
9位 ダイナマイトどんどん(in 新文芸坐/菅原文太追悼特集)
10位 アギーレ/神の怒り(in アップリンク/ヘルツォーク傑作選2015)



2015年未公開映画ベスト5


1位 ファイナル・ガールズ 戦慄のシナリオ
2位 シャークネード エクストリーム・ミッション
3位 Infidus(BAD MAX 怒りのリベンジ・ロード)
4位 地下に潜む怪人
5位 シャークネード カテゴリー2


2位と5位に言いたい。「いや、さすがアサイラム最高傑作だなぁ!!!!」



なお、今年はイベント上映が豊富でもありましたね。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の池袋絶叫上映大森V8上映、『キングスマン』のレディース&ジェントルメン上映など、叫んでよしクラッカー鳴らしてよしの賑やかな映画館で、『ロッキー・ホラー・ショー』ファンとして嬉しい限りの年でした。

5月のハリコンでランス・ヘンリクセンに、6月のマッドマックス・コンベンションでウェズ&ジョニー・ザ・ボーイにサインと写真をもらったのも嬉しい思い出だなぁ。

2015年映画極私的もろもろベスト

映画を観よう。ズレた目線ででも。


……こういうことやってると、ベストから漏れた映画でもその面白さを紹介するポイントが見えてきた……ような気がしたり、イマイチかもしれない映画も楽しくなってきたりするからやめられなくなりました。

ちなみに、2014年の極私的もろもろベストはこちら

2013年のはこちらです。


2015年映画ベストガール

  1. フュリオサ(シャーリーズ・セロン)マッドマックス 怒りのデス・ロード
  2. アビー・ラッセル(パス・デ・ラ・ウェルタ)マッド・ナース
  3. ワンダ(エマニュエル・セニエ)毛皮のヴィーナス
  4. イルサ(レベッカ・ファーガソン)(ミッション・インポッシブル/ローグ・ネイション)
  5. アップル(ロランス・ルブーフ)(ターボキッド)
  6. エヴァ・ロード(エヴァ・グリーン)(シン・シティ 復讐の女神)
  7. ガゼル(ソフィア・ブテラ)キングスマン
  8. ギャビー(アリシア・ヴィキャンデル)(コードネームU.N.C.L.E.)
  9. ヨーランディ(ヨーランディ)(チャッピー)
  10. サラ・スヌーク(プリデスティネーション/ジェサベル)
今年は好みにハマった女性キャラが多かったので、つい10位まで伸ばしてしまった。フュリオサも「ガール」に入れつつ、実はメイ・デイやマザー・ロシアと同じく性別超越型。どうでもいいけど「煩わされたい度No.1」は5位のアップルちゃん。一人だけ役名でなく俳優名の10位サラ・スヌークは、絶叫ヒロインよし男装よしで、今年のジャンル映画の華でした。



2015年映画ベストガイ

  1. イモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)マッドマックス 怒りのデス・ロード
  2. 工藤仁(大迫茂生)(戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ! FILE-01&02)
  3. ニンジャ(ニンジャ)(チャッピー)
  4. ビル・ボス(ディーター・ラーザー)ムカデ人間3
  5. クリストフ・ヴァルツ(ビッグ・アイズ/ゼロの未来/007 スペクター)



何で主役のマックスじゃないのかといえば、ジョー様はロックスターだから。で、ロックスターに続くのが、バチアタリ暴力ディレクターに、最高の人工知能を持つロボットにド底辺の教育を叩き込むギャングに、お笑い暴走特急所長(でも可愛い)……そんな中、詐欺師に数学者に犯罪組織のボスと、今年3回も輝いていたクリストフ・ヴァルツが俳優名でランクイン。


2015年映画ベストフレンド

  1. スティーブ(ジェームズ・コーデン)(はじまりのうた) 
  2. スチュー(スチュアート・ラザフォード)(シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア) 
  3. ファット・エイミー(レベル・ウィルソン)(ピッチ・パーフェクト1&2) 
観ていて「いいなぁこんな親友!」と思った方々。というかもう役柄を通り越して役者さんが大好きになる。ジェームズ・コーデンはそのまま人のいいキャラで『レイト×2ショー』が楽しみになっちゃったし、レベル・ウィルソンはアドリブ多くて楽しそうだし。それにしても、映画の感想をツイートしてたら、スチュアート・ラザフォードご本人に「いいね!」してもらえたのには驚いたなぁ。

なお、ドラマ部門からは『デアデビル』のフォギーを推します。あんなに良い親友がいることもマットの強みですよ。



2015年映画ベストソング

  1. Wonderwall(Mommy) 
  2. 威風堂々キングスマン) 
  3. O Mio Babbino Caro(エレファント・ソング) 
  4. ゾンビーバーの歌(ゾンビーバー) 
  5. 血まみれブラッディマンデー(インド・オブ・ザ・デッド) 


自分が好きな曲が映画の最高の瞬間で使われるって本当に幸せ。「威風堂々」は好きな曲ってわけではないけど、アレはまず間違いなく最高の瞬間。"O Mio Babbino Caro" はああいう意味の曲だって初めて知ったし、映画とのシンクロも素晴らしい。
その上位3枠とは違う意味で素晴らしかったのが、シナトラ風の曲でただ本編のダイジェストを歌うだけのゾンビーバーと、「きっと、うまくいかねぇぇぇぇ!!」の雄叫びで劇場を「???」状態にした日本オリジナル曲ですよ。





2015年映画ベストサントラ

  1. マッドマックス 怒りのデス・ロード 
  2. キングスマン 
  3. はじまりのうた 
  4. ピッチ・パーフェクト 
  5. セッション 

今年は『ラン・オールナイト』といいJUNKIE XLが良い仕事をした年。ちなみに次点で、イランロック/ポップが世界観といい形でとけこんでいた『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』が。






2015年映画ベスト名言

  1. 「私はカトリックの売春男で、中絶医のユダヤ系黒人と婚外セックスを楽しんでいます。ヘイルサタン、ごきげんよう」キングスマン) 
  2. 「あなたが普通じゃないから、世界はこんなにも素晴らしい」(イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密) 
  3. 「英語で最も危険な言葉はこの2語だ。"Good Job"」(セッション) 
  4. 「おい、コックリ、出てきやがれ!!」(戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ! FILE-01 恐怖爆誕! コックリさん) 
  5. 「恐怖が懐かしい」(ドローン・オブ・ウォー) 

今年の1位は断トツで、保守派プロテスタント大激怒の要素を全部乗せしたこの一言。他の順位の言葉が深い意味を持つ中、4位だけただの暴言ですが、コックリさんに敬称をつけずしかも呼び出し方がヤクザという点が斬新だったもので……。






2015年映画ベスト迷言

  1. 「他に病気の家族は? ローンは? 金銭問題は?」(ジュピター) 
  2. 「グローバル化だ」(インド・オブ・ザ・デッド) 
  3. 「オキシジェン・デストロイヤー発射!」(メガ・シャークvsグレート・タイタン) 
  4. 「ココハ、秋葉原デスカ? ココハ、秋葉原デス…クワァァァァァァッ!!!!」(極道大戦争) 
  5. 「ニューヨーカーの誇りを見せてやれ!」(シャークネード カテゴリー2) 

地球人よ、これが宇宙の会話だ(1位)。
ちなみに、3位は日本のアニメと特撮大好きな脚本家(兼役者)さんによる「日本人なら分かってくれる!」と思って入れた渾身のギャグであると、本人のTwitterで明らかになりました。




2015年映画ベストごはん

  1. グリーン・インフェルノ) 
  2. (進撃の巨人 前篇) 
  3. ジャージャー麺(その怪物) 

1位は焼肉やローストビーフ、2位は鶏手羽感覚。3位はただでさえ麺類好きなのに、空腹状態で1人前の食事を2人でがっつくというシチュエーションがなおさら食欲を刺激する。食ってる場所が便所だけど。






2015年映画夢のガジェットベスト

  1. 出てくる車全部マッドマックス 怒りのデス・ロード) 
  2. 秘密道具全部キングスマン) 
  3. BB-8(スター・ウォーズ フォースの覚醒) 
  4. キツネの尻尾(戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ! FILE-01 恐怖爆誕! コックリさん) 
  5. ホバーシューズ(ジュピター) 

「全部」とざっくり表記が目立つ今年。「ライトセーバー」ってのも考えたけど、それはもう2015年に限らずスター・ウォーズ観始めたころからの憧れなので……。






2015年映画に学ぶ間違った教訓ベスト

  1. グローバル化するとゾンビハザードが起きる(インド・オブ・ザ・デッド) 
  2. クレジットカードを使え(物理的に)(ワイルドカード) 
  3. 一家に一人ポール・ベタニー(チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密/アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン) 
  4. スペースシャトルに乗るのは自転車に乗るようなもの(シャークネード3) 
  5. コックリさんに金属バットで応戦しても多少は効く(戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ! FILE-01 恐怖爆誕! コックリさん) 

一番実践してみたいのは2番目ですが、ギャングのとこに殴り込みに行く予定はなし。





2015年映画ベスト宣伝さん

  1. インド・オブ・ザ・デッド 
  2. ゾンビーバー 
  3. グリーン・インフェルノ 

「ポスターが本国版に比べてダサい」「キャッチコピーがサムい」「宣伝イベントに芸人を呼ぶな」等メジャー映画の宣伝が悪戦苦闘してる中、今年はミニシアター系が大変頑張りを見せた。
映画配給未経験の会社ながら、個性的なツイートや映画館との連携により、この手の映画にしてはロングラン上映にこぎつけた1位
武蔵野館の上映最終日に配給さん自らやってきて前口上を担当した2位
食人族メイク&ヤリ持って都内イベント会場をうろうろしまくった3位。
大手配給にお見せしたいですよ。

2015年12月28日月曜日

グリーン・インフェルノ

捌かれるは「善人」のみ。

グリーン・インフェルノ('13)
監督:イーライ・ロス
出演:ロレンツァ・イッツォ、アリエル・レヴィ



今年上半期の『ハンニバル』シーズン1、『悪魔のいけにえ』リバイバル、そして本作を機に、自宅の料理に肉料理の頻度とレパートリーが増えました。

オーブンも石窯もなくてもローストビーフは気合いで出来る。

また、コレを観たら肉が食いたくなるにちがいないという予想の通り、観賞後に劇場近くの焼肉屋でハラミとホルモンの定食をいただきました。今まで食ってきた焼肉の中でトップクラスに美味かったです。今まで2~3回ぐらいしか食ったことないけど。

No Good Deed, No Yakiniku. 善行なくして焼肉なし。

極私的結論:食人映画は食卓を豊かにする。


正義感の強い大学生ジャスティンは、過激な学生活動団体ACTに加わり、ペルーの森林伐採を阻止して奥地に住む原住民を守る抗議活動に参加する。大胆かつ強引なACTのやり方は成功に終わり、ネット上での反響も拡大……
と思った矢先、彼らを乗せたヘリが突如火を噴いて操縦不能になり、ジャングルの中に墜落。かろうじて生き残ったメンバーを待ち受けていたのは、森林伐採から守ったはずの原住民・ヤハ族。だがヤハ族は学生たちを麻酔矢で昏倒させ、村まで運んで檻に閉じ込めてしまった。彼らは他の人間を食糧とする食人族だったのだ……!

「未開の地で原始的生活を送っている人だからって、食人族として描くなんて!」という政治的正しさから今日めっきり作られなくなった食人族映画を、ホラー映画界で絶大な信頼を寄せられる監督イーライ・ロスが蘇らせた。
エンドクレジットに羅列されている通り、本作のバックグラウンドには、『食人族』『人喰族』をはじめ80年代に量産されていたイタリア製食人映画へのリスペクトがぎっちり詰まっている。

性格も良ければ頭も良いイーライ監督のこと、当然本作も過去の食人映画の焼き直しではなく、きちんと現代的にアップデートされている。
というわけで今回食人族の皆さんに美味しくいただかれるのは、ヤラセドキュメンタリーのために村を襲うクズ人間(食人族)でも、身勝手な理由で原住民を虐殺するクズ人間(人喰族)でもない。
それなりの正義感を持ってはいるが、善意が一方的かつ押しつけがましいことに気付いていない、とはいえ完全にイヤな奴ではない、むしろ一般的な「いい人」たちである。
つまり、食人族映画を野蛮だ差別だ偏見だと糾弾した人々に限りなく近いのである。
自分たちが正義のもとに擁護したつもりの相手に、食人を含む彼らの慣習という価値観を逆に押しつけられるはめになるのだ。

そう思えばホラーファンとしてざまぁみさらせ感が浮上するが、義憤にかられて何らかの記事をリツイートしたり、署名運動に参加したりすることは誰にでもあるだろう。「喰われる側」のボーダーラインも、実は我々のほうにぐっと近づいてきたのではという気もしている。ヤハ族の皆さんにしてみれば、食肉に善も悪もないからね。強いて言うなら脱走は悪だけど。
そうそう、犠牲者メンバーの多くは「多少の欠点はあれど基本的にイイ奴」ではあるが、その中にコイツはちょっと人間的にどうよというレベルのゲスはいる。
というか、よりによってそんな奴が(あるいはそんな奴だからこそ)、カリスマ性と統率力のもとイイ人たちを先導している。……という設定が大変に現実的ってところこそ、食人よりもえげつないんじゃないですかね?

本作を観るにあたって事前学習のため『食人族』と『人喰族』を観賞したとき、個人的にちと納得のいかなかった描写が「生食」であった。肉類を生で食えるのは新鮮なうちだけだから、それはそれでアリじゃないか? とも思うのだが、食糧である以上保存のために焼いたり燻したりしてるはずなのになー……と、比較的どうでもいいところで引っかかっていたのだった。
だから、本作における火を通した肉調理には、勝手ながら大変感心した。きちんと部位を分け、下味を付けたうえで石窯で蒸し焼きと、旨味を凝縮できる調理法。
しかも、つけあわせの野菜もセッティングしているのだから、栄養のバランスもとれている。大変に納得のいく食生活だ。
食人映画の調理法と栄養バランスをどれだけの人が気にかけるのかは置いといて。

何より、最大のゴアシーンである食人描写を、ブラックなギャグとして描いているのが監督のエラいところ。新鮮な食材を手際よく解体するそばから、特権により希少部位を食す長老ばあちゃんの至福の表情、喜ぶ村人たち、世間話をしながら下ごしらえをするおばさんたちや、お手伝いをする子どもたちが映し出される。
異邦人にとっての地獄絵図は、原住民にとってほのぼの日常生活なのかと、大規模カルチャーギャップを感じる瞬間である。
ただ、子どもにウ○コネタがウケる点だけは万国共通か?

ちなみに、本作にも肉の生食描写はあるのだが、一応そうなった理由があるし、何よりトップクラスの笑いどころに通じているので個人的には大いに納得している。マリファナギャグにそんな二重トラップがあるなんて……!

ここまで満喫しておきながらなんだが、本作を観たあと、ホラーファンの記憶に新しい『食人族』Blu-ray発売中止未遂事件を思い起こさずにはいられなかった。
『食人族』観賞時、食人よりも串刺し人体よりも観ていてキツかったのは、亀を解体して食うシーンだった。殺したあとにきちんと食べたことは、撮影のために動物を殺してもいい理由にはならないが、動物が虐待された(とみなされる)映画をソフト販売から抹消していい理由にもならない。

販売中止に働きかけた人間がどんな人間かは分からない。ジャスティンみたいに正義感が強いのはもちろん、ジョナみたいに純朴かもしれないし、ラーズみたいなお調子者かもしれないし、サマンサやダニエルみたいに身を挺して誰かを守ろうとするしっかり者かもしれない。
だが、ホラーやブラックジョークや不謹慎エンターテインメントを愛する人間の目には、『食人族』を抹消しかけた人のイメージは、ユーモアを解さず他者の犠牲を問わず、実態は俗にどっぷり浸かっているアレハンドロになってしまうだろう。

2015年12月3日木曜日

マッドマックス怒りのデス・ロード V8上映@キネカ大森

通常上映が終わってしまったら、残るのはMADな上映だけだ。

マッドマックス 怒りのデス・ロード V8上映
'15.11.22. キネカ大森 英雄の館


池袋の絶叫上映と同じようなノリだったらレポ省くかもなー……」とか思っていてすみませんでした。実は今回のV8上映のほうが、元祖絶叫上映ともいえる『ロッキー・ホラー・ショー』のノリに近いものがありました。

池袋にも展示されていたマッドマックス神話絵巻。

いかんせんファンの集い状態なので、上映前からお祭りモードに突入するのが絶叫上映の常。しかも今回はコスプレ人口増&バリエーション増で、池袋をしのぐ勢いに。
その最たるものが、西村喜廣監督主催の特殊メイクブース。イモータン・ジョーエンブレムの焼印メイクに、スリットの口裂けメイクに、ニュークスのラリー&バリーメイクまで。あの世界だったらウォーボーイズでもない限り絶対やりたくないであろう焼印や口裂けを、お金払って喜んで入れてもらいにくる人々。やはり『マッドマックス 怒りのデスロード』のファンたちは、世界が荒廃する前からMADにどっぷり染まっているのである。

私も焼印つけてもらってシタデル構成員(のつもり)です。

で、こちらが本格的にMADな皆様です。

門は開かれた。

英雄の館ではもう主催のテアトル新宿さんのアジテーションが始まり、V8!コールも出ている。そして座席の前方にはコスプレの方々もそろっている。自分に関していえば、池袋のときより間近でこの狂騒を観られることに。

と、ここで右前方に座っていたジョー様が、クラッカーを持ってないことが判明。主催さんが「ジョー様にクラッカーを!」と声をかけると、周りのウォーボーイズ&ガールズが喜んでクラッカーを捧げに来る。
ちなみにこのジョー様は(マザーズ)ミルクキャンディーをお配りしてくださいました。頂いた拍子に袋落としてすみませんでした。

本日お見かけしたジョー様その1。コーマ君と妖怪ウォッチコラボされてました。

本日お見かけしたジョー様その2。キュート度No.1でワイブズに大人気。
こちらのジョー様からもマザーズミルクキャンディーいただきました。

本日お見かけしたジョー様その3。御召し物が暴走族風でトーカッターっぽい!

そろそろ参加者が座席についたころになると、絶叫上映の注意事項説明である。「迷惑行為はしない」とか「終わったら後片付け」とか。「クラッカーはスクリーンに向かって撃たない」事項の「映画の世界ではエンジンが宗教ですが、ここではスクリーンが宗教です!」 という説明は大変に適切だったと思います。
そして、さらに観客を盛り上げる絶叫ウォームアップとして、「あの方に来ていただきました!」との一言が。後ろのほうで「ナイトライダー!?」「ヒューマンガス様!」と小ボケが挟まれつつ、登場したのはやはりあのお方。
イモーーターーーン!!! イモータン・ジョーーーーー!!! 登場とともに条件反射レベルでV8コールや「ジョー! ジョー! イモータン・ジョー!!」のコールを始めてしまう、心は完全にウォーボーイズの観客たち。
ところでステージ上のジョー様、もしや貴方はマッドマックス絶叫上映発祥の地・塚口サンサン劇場に降臨されていたジョー様ですか……!? 

ステージに降臨された本日最強のジョー様。堂々のマイクパフォーマンス。

スクリーンでのアクアコーラ放水パフォーマンスにもみんながひとしきり群がったところで、「何か赤い人たちが来てますよ」との声。
実は、マッドマックスコスの皆様に紛れて、『グリーン・インフェルノ』宣伝の食人族の皆様が、ペルーのジャングル奥地から飛行機を操縦して駆けつけていたのである(注:細かいことにはツッコむな)。
MADな映画のMADな上映会で、また別のMADな映画を紹介に来たわけか。まぁ、マッドマックス本編に登場するヤマアラシ族は食人族ってパンフに書いてあったし、ジョー様も「人喰い男爵、お前の好きな映画だぞ!」っておっしゃってたからイイよね。

バイヤーな皆様。
何がスゴいってこの写真撮った場所がレストランの前ってことだよ。

このあと、観客一同イモータン・ジョーとジャンケン勝負して、マッドマックスとグリーン・インフェルノの非売品争奪戦を展開。まさか勝つとは思わず、賞品いただいた直後にはトラウマ発動中のイリヤ・クリヤキン並に手のプルプルが治まらないのだった……(『コードネームU.N.C.L.E.』参照)

こんなにいたのですよ本日のコスプレの皆様。

そしてとうとう場内やや暗転。スクリーン上にV1、V2……とカウントダウンならぬカウントアップが続き、遂に「V8上映」になったところで、今日も狂騒の幕が本格的に上がったのだった。

絶叫上映の基本的楽しみ方:

  • クラッカーを鳴らすポイントはだいたい銃声や爆発音や信号弾。映画開始時やタイトルが出たとき、終わりなどの要所要所でも。あるいは好きなキャラの登場でも。中には「えっそこで!?」ってタイミングでクラッカーを鳴らすハイレベルな人もいるから、そんなに厳密なルールはないぞ!
  • 好きなキャラクターが出てきたら、歓声を上げたり名前を叫ぶのも大いにアリ。あだ名というケースもありますよ。「乳首!!」とか「乳首!!」とか。
  • 鳴り物(だいたい太鼓バケツやお皿の人もいたかな)を持っている人は、シタデルの人力エレベーター稼働やドゥーフワゴンの出撃時が主な使いどころ。ジョーの軍勢が走っているときにパフパフを鳴らすと、より暴走族っぽくなるぞ。
  • この度、赤のサイリウムも使えるアイテムとして定着。ドゥーフ・ウォリアーが映るたびにグルグル回したり、武器将軍の目の前に掲げたりして使います。
  • マッドマックスのためにお手製装飾ハンドルを作ってくる猛者は後を絶ちません。そんなスゴイもの作れないからなー……という方は、ゲーム用のハンドルでも代用できます。というかもうエアハンドルでだってイイんですよ! 

基本的絶叫&リアクション:

  • 誰かが何か食ったり飲んだりしたら「おいしい?」と聞いてみよう。食ったものがトカゲや虫だとしても!
  • 「Witnessed!!」(スクリーンを指さしたり、V8ポーズで祈りを捧げたり)
  • 出発前のアジテーション。「ウィーアーウォーボーイズ!」「ウォーボーイズ!」
  • ウォーボーイズアジテーションが終わったら、エースのあとに続いて叫ぶ。「ガスタウン!」「アクアコーラ!」「プロデュース!」「マザーズミルク!」の順番です。
  • ココが一番の鉄板です。「ジョー! ジョー! ジョー! イモータン・ジョー!」「V8! V8!」
  • 水が降ってきたら手を掲げて水を求めよう。バケツなどの入れ物を掲げたり、水のボトルを掲げてもイイ。
  • 「イモーーターーン! イモータン・ジョーーーーー!!!」
  • 「No, I am awaited......I am awaited in Valhallaaaaaaa!!!」「イモーターーーーーン!!!」(ハンドル掲げる)
  • 「Aw what a day.......What a lovely day!!!」「I live, I die, I live again!!!」
  • 誰かが気絶や眠りから覚めたら「おはようございます!」
  • フュリオサと一緒にマックスに合図を送りましょう。「フーーーール!!!」
  • 鉄馬の女たちの哀悼のしぐさも一緒にやりましょう。
  • 「リクターーーース!!!」
  • 「呼びかけろ」と言われたら、「フュリオサ!!」と呼びかけましょう。
  • 最後は「フュリオーサ! フュリオーサ!」「Let them up! Let them up!」
もっとも、これは鉄則ではなく目安なので、ちょっと違ったこと言ってみてもOKです。


以下、その他当日の絶叫&リアクション系統を。
  • 「ト・カ・ゲ!」「ト・カ・ゲ!」
  • 「今日こそは逃げれるかも!」何回も観てると「今日こそはもしや……」と違う展開が観られるんじゃないかという謎の期待が出てくるのです。ホントに。
  • 本日はジョー様の登場と同時にスクリーン前にもジョー様が出現。このときは総員立ち上がってOK。このあともときどき前列のコスプレの方々が来たし、前回に比べると格段にロッキー・ホラー・ショー感が増した上映だった。
  • バックミラーを確認するフュリオサの目線に、「フュリオサが私を見た!」と叫んだ方。それに対しスリットよろしく「いや、地平線を見たんだ!」と返した方。どちらもお見事です……!
  • 次第に人気を獲得してきた、きっと苦労性なんだろうなと思わされるフュリオサの部下。「エーーース!!」
  • そのエースと一緒に叫ぶ「Thunder Up! Thunder Up!」。腕の動きもマネします。
  • 母乳製造工場のシーンで何人かが掲げたボトル入り牛乳。ミルクキャンディーもありました。
  • 野菜栽培所を駆け抜けるジョーに「ジョー様レタスください!」と叫んだ勇敢な方がいました。
  • 「Fang It!!」というセリフはそれぞれ違うシーンでフュリオサとスリットが叫んでいるが、どっちもファンの絶叫ポイントであることがこの日判明。
  • モーゾフを「Witnessed!!」したあとは、すかさず「Mediocre!」と叫ぶスリット派と、V8黙祷するエース派がいます。
  • 前回、砂漠で気絶から目覚めるマックスに「きなこもち!」という声が上がりましたが、今回も言われてましたね。さらに応用として「きなこもち? ……きなこもちか? ……きなこもちかな? ……いや、マックスだーーーー!!」
  • 鎖を外せないマックスの悪戦苦闘に「お? いけるか?」「あー……(ダメだった)」「ニュークス助かったね!」
  • ウォー・タンクに詰まった砂を叩き出すフュリオサ。それに合わせて鳴ってたのはバケツか?
  • ワイブズの水浴びに「ヒュー♪」の歓声。
  • スプレンディドにホースを持ってこさせ、次いでボルトカッターを持っているダグに鎖を切らせようとするマックス。そこに「チェンジで!」「金髪好きだな!」……キャバクラか。
  • 「一生その顔でいいの?」とフュリオサに言われ、「それはイヤだな」との回答が客席から。
  • 意思表示にあまりにも言葉を使わないマックス、前回は「喋れよ!」とツッコまれていたが、とうとう「あ゛ーあぁ」とマックスの意思表示を真似する人が増えてきた。
  • 腹パンを喰らい走ってタンクに追いつきまた放り出され……それでも砂漠を疾走するニュークスを「頑張れ!」と応援してあげよう。
  • まさか、フュリオサがニュークスにツバを吐きかける瞬間にクラッカーが鳴るとは……
  • キル・スイッチの順序を説明するフュリオサ。「分かった?」と言われ、「もう1回お願いします!」との要望が。(1、1、2、1、赤、黒、ゴー)
  • イワオニ族との戦いに盛り上がり、そして訪れる悲劇に今日も悲鳴が……
  • 武器将軍がピースメーカーを発進させるときの掛け声「Hut!」っていうのもよく真似されていた。
  • オーガニック・メカニックは今日も「ヨダレ!」と注意され、「扱い雑だな!」と怒られていた。
  • ニュークスの頬キスは今日も冷やかされ。
  • 武器将軍の暴走ガンフィーバーに、一緒にモデルガンを掲げたりサイリウムを掲げたり、みんな思い思いにイカれました。
  • ガソリンやナタを持ってどこかへ行くマックスを、「行ってらっしゃーい!!」と送り出す我々。
  • 爆発の後、霧の中から現れる人影。「誰だ? 誰かな? ……マックスだーーーー!!」「お帰りーーー!!」
  • マックスが持ってきた戦利品に「大切に使ってね!」と言った方……もしや後方にいらっしゃった武器将軍?(ページ下部の写真参照)
  • 悪夢から目覚めたマックスに、圧倒的に多かったのは「おはようございます!」の声だったが、中には「寝てないですし! 起きてましたし!」と居眠りの弁解も……
  • 本日の極私的ヒット:「緑の地ってグリーン・インフェルノですか?」
  • 池袋に続き、ニュークスがクモを食べた瞬間にもクラッカーが……
  • 鉄馬の女たちが獲物をおびき寄せる塔。光反射用にガラス・金属類がぶら下がっているので「カラス避けですか?」と聞かれていた。
  • 雄叫びを真似するまでは前回と同じとして、塔から降りてきてから「萬田久子?」と言われていたヴァルキリー。確かに、限りなくスッピンのメーガン・ゲイルは似てなくもない……
  • 鉄馬の女たちに「ばばあ!」「おばあ!」と叫ぶのには少なからず敬意がこもってます。
  • 弾丸に触ろうとしたトーストの手をおばあちゃんが冗談ではたいたときにもクラッカーが。
  • 今回はフュリオサの慟哭で一緒に吼える人いましたね。
  • 流れゆく人工衛星を見て「願い事をして!」って言ってた人いたけど叶うんかい。一緒に過ごすニュークスとケイパブルにも「ヒュー♪」って言ってたし、マックスが自分の血とコンパスの針で地図を書くところでも「痛そーー」って言ってたし、前回厳かになってた砂漠のシーンは今回わりと賑やかだった。まぁ、どちらのほうが良いという話ではなく、どう転んでも面白いんですよ。
  • 少女の亡霊に導かれ、マックス一大決心。「行くぞーーー!!」とこちらも気合いが入ります。
  • マックスとフュリオサが精神的にも物理的にも手を結んだ瞬間、クラッカーが鳴りました。
  • 「イモータン子守唄(仮称)」、今回は一緒に歌う声が多かった。ウォー・タンクを発見した棒飛び隊、やはり「よく見つけた!」「お手柄!」と褒められていた。
  • そして最後の戦いへ。クラッカーも残弾数との戦いです。
  • 種を守っていたおばあちゃんが致命傷を負うと「鞄!!」「鞄取ってあげて!!」
  • 「ヴァルハラァァァァ!!!!」
  • ラストシーンのマックスは「カッコいい!!」と褒められてましたよ。
  • 今回の「Out Of Control」は総員スタンディングだったし、「ヘイ! ヘイ!」って飛び上がる勢いだったし、前回よりサイリウム率が増えていたし、さらにスクリーン前ではドゥーフ・ウォリアーがエアギター(ギターは一応存在するけど)弾いてたしで、はるかにライブ感が増していた。日本版主題歌の不自然さをライブイベントに昇華できたのは、本当にファンの底力だと思うよ。
  • 最後はまた「V8! V8!」コールでシメ。キネカ大森さん、本当にありがとうございました!!!

「清掃までがV8上映です!」とのお言葉通り、今回も観客一同クラッカーや紙吹雪を片づけ。絶叫上映の存続は観客のマナーにもかかっていますから。「銃器はきちんとしまって帰ってください。職務質問されます」とも言われましたが……。

そういえば、キングスマン絶叫上映に引き続き、今日も服が火薬臭くなっていた。ただし、それに気づいたころには、自宅最寄駅行の電車に乗った時だった……同乗者の皆さんごめんよ。

大隊長とウォーボーイ。
義手が作れなければ撮影時のグリーンスクリーン仕様という発想が素晴らしい!

背も高いしかなりガチなリクタス。

本人より乳首ピアスが注目を集めてたかもしれない人喰い男爵。

弾丸差し歯まで再現されていた武器将軍。
「大切に使ってね」発言はこのお方ではないかと思っているのですが。

イワオニさんと棒飛びさん。
ちなみにイワオニさんは本作のスタントマン一覧まで作成されていたぞ。

終了後の飲み会現場にて、フォロワーさんお手製のスリット君。
DIY能力高すぎるぜ皆さん……

2015年11月14日土曜日

キングスマン レディース&ジェントルメン上映

紳士の皮を被って「パーーティーーーーーーー!!!!!」

キングスマン レディース&ジェントルメン上映
'15.11.8. 角川シネマ新宿

※レポ内には本編の核心に触れる部分があります。
 これから作品を観るにあたって、あまり多くの情報を入れたくない方はご注意下さい。

1月にはコロナシアターで『パシフィック・リム』絶叫上映があり、10月には『マッドマックス 怒りのデス・ロード』絶叫上映があり、『ロッキー・ホラー・ショー』は40周年を迎え、そして『キングスマン』へ……本当、今年は絶叫上映の当たり年になったなぁ。

兵庫県の塚口サンサン劇場に端を発したレディース&ジェントルメン上映。ルールはマッドマックスとほぼ同じ、映画を観ながら叫びクラッカーを鳴らしつつ節度ある上映会にするのだが、最大の違いは1つ。スーツと傘とメガネのドレスコードだ(注:厳守ではない)。「紳士淑女の上映会」と銘打ってはいたが、参加者は女性率が高いものの多くがメンズ(風)スーツ着用だった。少なくとも1名ずつはヴァレンタインとガゼルを確認できたけど。

観賞前にフォロワー仲間さんたちとギネスを一杯。

燃料充填後すぐ劇場へ。エレベーターが開くと、ロビーは思っていた以上にキングスマン仕様になっていた。

エレベーターが開いてすぐコレである。
ラジオからはサントラより"Slave to Love"が流れていたよ。

数バージョンのポスターはもちろんのこと……

劇場へのドアまでキングスマン仕様だ!

この日は会場内でも特別にギネスを販売していたそうだが、売店に並び待ちができるわ売り切れるわの大盛況だったとか。もちろん売店を含めこの日の館員さんたちは、スーツ着用のキングスマン仕様でしたよ。

角川シネマさんが用意してくださったのは、ロビー展示と入場前に配布されたクラッカー&紙吹雪だけではなかった。
シアター内に入ると、スクリーン真正面にDJブースが設置。さらにスクリーン横にはサーチライト。キングスマンたちのわくわく感を高めてくれたのである。特にレイナード・スキナードの「フリーバード」にはまぁいろんな意味でざわつきましたね。

DJ紳士のサントラミックス。

さて、いよいよ上映時間となり、やはりスーツにメガネに傘を揃えた司会さんが注意事項を説明する。当然「席から立ち上がらない」「物を壊さない」「周りに不快な思いをさせない」といった基礎的なことだが、「皆さんが一斉にクラッカーを使用しますと、場内に煙が立ち込めます。その場合、劇場左右の扉を開けることがあります」なんて危険物取扱みたいなアナウンスまで入るとは思わんかったよ。そんなこと言ってるそばからクラッカー鳴ってたよ。
そして、シメにして盛り上げの一言はやっぱりコレですよ。「Eat! Drink! パーーティーーーーー!!」

ちなみに、「ハリーーー!」「エグジーーーー!」「マーリーーーン!」などお気に入りキャラクターに絶叫が上がるのはおなじみの光景だが、今回は特に女性率が高かったせいか絶叫オクターブが一際高かったように思える。また、私見ではもっとも歓声を浴びていたキャラクターはマーリンである。

以下、いつもの絶叫上映レポパターン、記憶している限りのレスポンス&リアクションです。

  • 一番最初の中東潜入任務からクラッカーの炸裂が止まらず、あたりに火薬の臭いが立ち込める。
  • 「メダルください!」「電話します!」
  • 颯爽とアクションをキメるランスロットにクラッカーと歓声が上がるも、すぐさま「ランス、後ろ、後ろーーー!!」と悲鳴に変わる。
  • ガゼルに「可愛いーーーー!!!」
  • 冒頭「煙が立ち込めたら劇場左右の扉を開けます」とアナウンスして10分足らず。このあたりで既に扉は開いていた……。
  • アーサーと円卓の騎士たちが追悼の乾杯をする席にて、「パーシーーー!!」と歓声を浴びていたパーシヴァル。マシュー・ヴォーンが呼んできた役者でもない友人で、出番も少ないのに、ここまでの人気を集めてるとはなぁ。
  • 車を暴走させるエグジーのシーンでフォロワーさんがパフパフを鳴らしたおかげで、余計に増す族車感。スクリーン内のエグジーに手を振りかえすお客さんも。
  • 「Manners! Maketh! Man!」それに続くハリーのアクションは燃えどころです。萌えどころとも言います。
  • エグジーがパルクールで逃げるシーン、BGMに合わせてハンドクラップが起きる。
  • 試着室エレベーターに唖然とするエグジーに「口開いてるよ!!」
  • キングスマン候補生たちの中で一番鼻持ちならない奴のはずだけど、なぜか歓声も多かったですね。「チャーリー!!!」って。当然「ロキシー!!」って声も多かったけど。
  • 『パシフィック・リム』のマックスしかり、犬は正義です。子犬ともなればなおさらです。「JB!!!」
  • ガゼルちゃんのアクションはもちろん大歓声。
  • 無料SIMカードのニュースを知らないハリーとマーリンに「おじさーーーん!!」(しょうがないなぁというノリで)
  • 「文句があるなら、耳元で囁け」というマーリンに本日トップクラスの「キャーーー!!!」が上がりました。
  • ハリーがヴァレンタインに接触をはかるも、素性が知れていることを匂わせるやり取りに「バレてるよ!!」「隠して!!」
  • JBがジャック・バウアーの略と気づかないアーサーも「おじさーーん!!」と言われてました。
  • ところで誰だい、フライングしてJBやアーサーを撃っちゃった(クラッカーを鳴らした)方は。
  • 極私的今年最大の名言「私はカトリックの売春男で、中絶医のユダヤ系黒人と婚外セックスを楽しんでいます。ヘイルサタン、ごきげんよう」にももちろん歓声でしたね。
  • 中盤の見どころたるアメリカ南部の教会のシーンは、クラッカーと紙ふぶきの炸裂どころでもあるが、さらにサーチライトまで光り出す。大虐殺がパーティーモードになるとは……さすがキングスマン。
  • そして「一仕事」を終えたハリーに「お疲れ!!」「おはよう!!」「ハリーは悪くない!」ついでに「前髪ありがとう!」
  • そしてさらに起きる「期待を裏切る展開」に「ハリーーー!!」「ノーーーー!!!(エグジーの真似で)」「大丈夫だよ!!!(次回作への期待を込めて)」「マーリーーーン!!」「アーサーお前……!!」「嘘つけ!!」
  • 高所恐怖症には過酷すぎる重要な任務を帯びるロキシーに「頑張れ――!!」
  • 客席のキングスマンたちが最もヴァレンタインのアジテーションに乗った瞬間「Eat! Drink! パーーティーーーーーーーー!!!!」
  • エグジー最大のアクションの見せ場には当然歓声が上がる。
  • マーリン「これは私のだ」にクラッカー。セリフだけでクラッカーが上がるのは「Manners! Maketh! Man!」に並ぶんじゃないのか。
  • で、「Manners! Maketh! Man!」に次いでみんなが同時に絶叫したセリフは、マーリンの「Yes,Please」じゃなかろうか。
  • クライマックス最大の見どころであり最も溜飲が下がる「威風堂々」のシーン。当然のようにクラッカーと紙吹雪が消費されていく……とまでは予想していたが、まさかクライマックスに劇場さんが特大クラッカーをバーーーンと鳴らして銀テープをまき散らしてくれるとは……。ただでさえ爽快なシーンでますます清々しい気持ちになりましたよ。実質血みどろだとしても。
  • 「Give It Up」をBGMに世界中にカオス発動。人類の殺し合いが始まり、エグジーとガゼルちゃんとの戦いが始まる中、観客はBGMに合わせてハンドクラップ。ポップと悪趣味が混在するほど盛り上がる絶叫上映は、マシュー・ヴォーンの不謹慎コメディ精神に合っている気がする。
  • ダニエル・クレイグになって以降今のところボンドがやっていない「最後に美女を手に入れる」のシーン。スウェーデン王室の激怒(しているのかな?)をよそに、我々はひたすら「フゥ~~♪」「ヒューーー♪」(パフパフ)と盛り上がるのだった。
  • 「塚口では最後の『Manners! Maketh! Man!』に合わせてクラッカーを3回鳴らしたらしいですよ」との話だったが、それに倣って最後のクラッカー三連発!
  • ……になるはずだったのだが、劇場さんがエンドクレジット中に風船を大量投入。「Get Ready For It」「Heavy Crown」をBGMに全力をあげての風船トス合戦が始まり、余ったらしいクラッカーがまだ鳴っていた。これが紳士淑女のやることかって? ええ、劇場さんがここまで用意してくださったサプライズを全力で楽しむのが今日のキングスマンの務めですとも!!!

注:こちら↓は上映終了後の映画館のフロアです。
くり返し申し上げます。ここは映画館です。
撒いたクラッカーや紙吹雪はできる限り拾いましたが、
それでも終わりが見えませんでした……!

オレたち庶民は手癖が悪くてね。
紙吹雪の中のこういう↓貴重な写真は撒かずに持って帰っちゃったんだよ。
それで映画半券用のスクラップブックに貼ってるんだよ。

最後にまた司会さんが締めの挨拶に登壇。「劇場としてはこうした上映形態がまたできるかは分かりませんが、DVDとBlu-rayは12月23日に発売されます。そのときソニー・ピクチャーズさんにかけあったらできるかもしれません」と次への希望を残す。
今回だって思っていた以上に劇場さんが頑張ってくださって嬉しいことこの上ないけど、絶叫上映ファンとしては次があったらもっと嬉しいよね。
でも「クリスマスはキングスマンを観て教会に行きましょう!」って……生きて出てこれるのかな?

なお、上映終了後にも注意事項はあった。「皆さんお気づきでないと思いますが、服が大変火薬臭くなっております。お帰りの際はご注意ください」とのこと。漠然と「あーそうなのかなー」と何となく劇場を出て駅に向かう地下通路に入ったあたりで……やっと気づきました。
帰りの電車で私の隣に座ってしまった方、火薬臭いサラリーマンみたいなのがいてすみません。


ネットの映画ニュースにもピックアップされ、少なくとも映画ファンの間では浸透しつつある「絶叫上映」。参加者が増えてきたぶん、終了後のツイートを観る限り、次の課題も見えてきた。「マニアな発言(とりわけいわゆる腐女子的なもの)はどこまで可か」「ネタバレにつながる発言はNGでは?」など。
個人的には「よほど不快な発言でない限り、絶叫に制約はかけすぎないほうがいい」「絶叫やツッコミに『お約束ごと』の意味合いが含まれる以上、気を付けているつもりでも完全にネタバレを防ぐのは難しい」という意見だが、こういう議論が出るようになったことは、絶叫上映が次のフェーズに進みつつあるからかもと思えて嬉しくもあるんだよね。

ロビーにて、肩当て付セーターまで再現のマーリン!

今、マーリンvsマーリンの戦いが始まる……ような気がする。

2015年11月6日金曜日

キングスマン

マイ・フェア・ジェントルマンになんかなるものか。

キングスマン('15)
監督:マシュー・ヴォーン
出演:コリン・ファース、タロン・エガートン




えっ、秘密基地作って世界征服をたくらむ悪のボスとガジェット持ったスーパースパイが戦う映画はもはや現実味がない? 
その割に、スーパースパイがちょっとだけ死んですぐ甦ってきたり、超高層ビルを登ったり、飛行機にしがみついたまま離陸しちゃう現実味のなさは、比較的許容されてますよ。
トム・クルーズパワーともいうけど。

サヴィル・ロウの高級テイラー「キングスマン」。その裏の顔は国から独立した秘密諜報組織だった。
諜報員ハリーは、ロンドンで暮らす労働者階級の青年エグジーを、殉職したメンバーの欠員を埋める新たな候補生としてスカウトする。エグジーの父はかつてキングスマン候補生であり、活動中にハリーたちを助け命を落としていたのだった。
その頃、世界各国で科学者や著名人が行方不明になる事件が発生していた。調査に当たっていたキングスマンは、黒幕がアメリカのIT大富豪リッチモンド・ヴァレンタインであることを突き止める。環境保護活動に端を発し「人間こそ地球を蝕むウイルスだ」と結論づけたヴァレンタインは、慈善活動と称し、人類の大半を抹殺する計画を練っていた……。

武器が内蔵されたライターや靴、通信・記録機能付き眼鏡、店の奥に秘密のエレベーター、アーサー王と円卓の騎士を模したコードネーム、エコを盾に人類抹殺を目論む悪のボス、身体欠損があり義手義足が武器になっている悪の殺し屋、氷の地の巨大洞窟に悪の本拠地……
と、ロジャー・ムーア期以前(ピアース・ブロスナン期もちょっと入ってるけど)の007映画でみかけた要素が満載。つまり、現在のダニエル・クレイグ版ボンドのテイストではまずできないことが満載。
「昔の007は好きだ。最近のはシリアスすぎる」とセリフにまで出しているし。

しかし、007ものを始め往年のスパイ映画を彷彿させる設定をちりばめておきながら、「これはそういう映画じゃない」と言ってあっさりとこちらの期待を裏切る展開もしばしば。
単に観客を驚かせよう、懐古趣味とは一線を画そうというだけでなく、「007の監督やりたかった」「『ナポレオン・ソロ』のロバート・ヴォーンが本当のお父さんだったら良かった」という、マシュー・ヴォーンのスパイ映画にまつわるちょっとした闇が顔を出したようにも思える。

キングスマンは紳士である。そして英国紳士といえば、一般的に貴族階級(中産階級の上のほうが入ったり入らなかったり)である。そこに労働者階級のエグジーを入れるとなると、まず言葉のアクセントから教えなければならないんじゃないか? 礼儀作法や教養は? と思ってしまうのだが、そういう展開ではない。
というか、これはそういう映画じゃない。

ハリーがエグジー(およびその父親)をリクルートしていたのは、基本的に上流階級のみで構成されていたキングスマンの形態に危機感を覚えていたからだ。
多くのキングスマン候補生たちのエグジーに対する態度を見れば分かる通り、上流階級には下の階級を見下すところが多分にある。政府や国とのしがらみはなくとも、自らの優位性にしがみつきたいがために他の者を蹴落とすようでは、世界を救うことはできない。実際、その優越感がキングスマンにとんでもない事態を招くところでもあった。

ちなみに英国上流階級については、「親の資産と名前を傘に贅沢かつ甘やかされて育っているので、中身は大バカ野郎である」と、モンティ・パイソンに何度もバカにされている側面もある。(特に『第127回上流階級アホレース』コントに顕著である)

だから、ハリーはエグジーに紳士らしいスーツを与え、基本的なマナーはするが、言葉を矯正しようとはしない。候補生たちの教官であるマーリンも、筆記試験を課したり身体能力の強化訓練をさせたりはするが、エグジーその人を変えようとまではしない。
ハリーが語る通り、「Manners Maketh Man.(マナーが紳士を作る。マナーが人を作るとも訳したい)」。強い者には強気で弱い者には優しく、仲間を励まし仲間のためには決して口を割らず、機転に優れたエグジーの振る舞いは、彼自身を良い人間に、また良い紳士に作り上げていたのである。

嫌な上流階級に代表される「自分たちだけ良ければ庶民なんてどうでもいいスノッブな奴ら」への恨みつらみは、あるとき最高の形で昇華されることになる。しかもその瞬間のBGMがクラシックの「威風堂々」
さらに、「自分たちだけが正しくてあとの連中(特に社会的マイノリティ)なんて天罰が下ればいい」と思っている南部のプロテスタント白人まで、ついでのように爽快なほどメッタ殺しにされる。しかも土臭いサザンアメリカンロックたるレイナード・スキナード「フリーバード」がBGM。
趣味が良いとも意地悪ともいえる選曲である。

そうそう、エグジーvsブレード義足の殺し屋ガゼル(ダンサー出身のソフィア・ブテラ。ブルース・リー似で可愛い)の戦いと、並行して起きる世界中のカオスに、80年代ダンスチューンな「Give It Up」を流すセンスも忘れちゃいけない。
さすがマシュー・ヴォーン。『キック・アス』でヒットガールの薙刀殺戮BGMに「Banana Split」(ナッナッナーナーナナッナー♪)を選ぶ男。

2015年10月28日水曜日

マーダードールズ/ウィメン・アンド・チルドレン・ラスト

殺人人形、リアルな血を流す。

MURDORDOLLS
Women And Children Last('10)



そういえば、ホラー映画って監督や脚本家個人の思いが割とダイレクトに表現された作品だったりもしますよね。
その多くは「お前らばっか恋愛だのセックスだのスポーツだの優等生だの青春を謳歌しやがってこの野郎ぉぉぉぉぉ!!!!」って恨み言だけど……。

ジョーイ・ジョーディソンとウェンズデイ13のホラー映画愛好組によるプロジェクト……と言いながらも、前作『ビヨンド・ザ・ヴァリー・オブ・マーダードールズ』はウェンズデイが以前より書き溜めていた曲から作られていたらしく、今回はジョーイとウェンズデイのほぼ2人で作曲・レコーディングしたとのこと(ライナーノーツ参照)。

ウェンズデイのB級ホラーボーカルとノリのいいロックはまぎれもないマーダードールズなのだが、前作とは大きく異なるところがある。歌詞のホラー映画ネタが皆無なのだ。
2人ともあれほどホラー映画大好きなのに! と思うところもあるが、マーダードールズとしての活動再開までの間に溜め込んだパーソナルな心情やフラストレーションを反映させた結果らしい。特にウェンズデイはこの間スーツケースだけで移動生活をしていたという環境が、M5「Nowhere」やM8「My Dark Place Alone」に反映されている。
中でも一番ダイレクトに表現したのは「失うものは何もない/証明するものもない/腐る前に騒音を鳴らせ/俺にはロックンロールだけなんだから」(M11『Rock N Roll Is All I Got』)の詞だろう。もはや叫ぶのは映画愛だけではなく、ドス黒い感情が渦巻いている。

それでも、M2「Chapel Of Blood」やM9「Blood Stained Valentine」、M10「Pieces Of You」には、既存の映画ネタこそはないがホラー風味がうかがえる歌詞。実際、M2など一部のMVは、グラインドハウスホラー映画の予告編を意識して作られているのである。彼らのホラー愛は決して霧散しているわけではないと安心できる。

なお、ダークになったのは歌詞だけではない。曲調も前作のパーティー・ロック感は薄れ、より不吉さが増している。前作が70年代オカルトや80年代スラッシャーの鮮やかすぎる赤い血だとしたら、今作は酸化して赤黒くなるリアルな血だ。

2015年8月の時点で、ウェンズデイはマーダードールズについて「今後の再開はないかもしれない。でも2ndアルバムだって作るとは思ってなかったからね」と語っていた。そりゃウェンズデイもジョーイもプロジェクトを持ってるし、簡単に再結成できるもんじゃないけど……どっかで続いててほしくもあるよ。
だって貴重じゃないかよ、ホラー映画友だちって!(そういう次元の話じゃないことは重々承知の上で)

ホラー風味は少ないが、ウェンズデイの放浪(?)生活が反映されているようにも思える
M5「Nowhere」。

その一方で、本当にグラインドハウスホラーの予告編チックに作られた
M2「Chapel Of Blood」MV。これ以外にもニセ映画予告風Vが結構あります。

2015年10月27日火曜日

ムーンスペル/EXTINCT

絶滅させるなベルベット・ボイス。

MOONSPELL
EXTINCT('15)



実は私、ムーンスペルの曲を安眠導入に使っております。フェルナンド・リベイロ(Vo.)のクリーンボイスは大変に聴き心地が良くて落ち着くのです。
……って言うと割と分かって頂けるのに、「クレイドル・オブ・フィルスも安眠に効きます」って言うと一斉にヘンな顔をされるのは何故ですか。

ちなみにムーンスペルはクレイドルのサポートアクトを務めてたことがあり、その際ステージのクライマックスにクレイドルのメンバーから小麦粉をぶっかけられるというイタズラに遭っていた模様がクレイドルのライヴDVDのドキュメンタリーに収録されていましたよ。

ポルトガル産ゴシック・メタルの11thアルバム。思えば活動履歴が1992年からで23年目に入っているのだから、彼らもベテランの域に達したものだ。
6th『MEMORIAL』以降はヘヴィネス路線が目立っていて、フェルナンドのデスボイスも初期と比べて格段に深みと凄味を増していたのでそれはそれでキマっていた。ただ、本来持っていた「ゴシック」的な耽美性と艶やかさが薄まっていたのは残念だった。

特にそれを担っていたのがフェルナンドのクリーンボイス。別名ベルベット・ボイスと言われるほど、低音で艶やかで色気がある。デスボイスも良いが、フェルナンドの武器はベルベット・ボイスと思う人間にしてみれば、そちらをもっと活かせばいいのにというのが近年の作品を聴いての感想だった。
(だから10th『Alpha Noir』とセットというか対になっていた『Omega White』は、個人的に大変理想的だった)

そこへ本作である。時折デスボイスも入れつつ、ベースはクリーンボイス。クリーンボイスの曲はおとなしめ、あるいはバラード色が濃くなる傾向にあったが、今回はややヘヴィネスが主張している傾向。3rd『Sin/Pecado』以来の中近東風メロディやストリングスの導入も見られる。
ここ最近物足りないポイントであった耽美性と艶がぐっと増したが、デスボイス全開のヘヴィ路線が好みというファンには、あまりありがたくないかもしれない。良く言えばバランスが良く、悪く言えば折衷案か。
彼らの音楽が本来持っているダークな美しさや、詩人でもあるフェルナンドの詞の魅力を引き出すには、なかなかに良い手法だったように思えるのだが。

面白いのは、彼らが「ゴシック」を意識した作品づくりをした結果、ゴシックの重鎮といわれるシスターズ・オブ・マーシーに近い曲が多々見受けられるようになったことだ。
ボーカルにドスを増したエルドリッチおじさんがこのアルバムを聴いたらどう思うのだろうか。

リードシングルとなったM2「Extinct」。
アルバムの中ではフェルナンドのデスボイス中心版です。

こちらがベルベット・ボイスを堪能できるM4「Domina」。
シスターズっぽさを感じさせる曲でもある。