2015年7月27日月曜日

マッドマックス 怒りのデス・ロード

何てマッドなクセにラブリーな映画だ!!!

マッドマックス 怒りのデス・ロード('15)
監督:ジョージ・ミラー
出演:トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン



ヒャッハーーーーーー!!!!!!
ウィーアーウォーボーイズ!!! ウォーボーイズ!!!
V8!! V8!! V8!!!
ジョー! ジョー! ジョー!! イモータン・ジョーーーー!!!!
ヴァルハラァァァァァァァァ!!!!!!

感想を言おうとすると頭の中がいつもこうなってしまうため、まとめるのに苦心しました。

荒廃した核戦争後の世界。元警官のマックス・ロカタンスキーは、愛する者たちを失い、今は砂漠を放浪しただ生き延びていた。しかし、武装集団に襲撃され、愛車インターセプターを奪われ、自らも輸血用の血液袋として砦(シタデル)に捕えられてしまう。
砦を牛耳っているのはイモータン・ジョー。自らを救世主と呼び、私設軍隊ウォー・ボーイズに神として崇められている。水資源を抑え、栄養源として植物栽培と母乳製造のシステムを作り、さらに自身の子孫繁栄のために若い女を「子産み女」として囲っていた。
だが、大隊長フュリオサがジョーを裏切り、子産み女たちを連れて脱走を図った。持てる軍隊を総動員してジョーが追撃を始める中、ウォー・ボーイズの一員ニュークスの輸血袋となってしまったマックスも、戦いの渦中に放り込まれる。

『マッドマックス2』のタンクローリーにオマージュを捧げたような出で立ちのウォー・タンク
曲芸師のように高いポールでビョンビョンしながら追ってくる暴走族
アンプにドラム、ギタリスト(ギターはダブルネック火炎放射器)搭載のドゥーフワゴン
予告で観てきたこれらのビジュアルに、この映画はアタマおかしいと称賛を送ったものだ。

が、母乳製造工場、電ノコ付トゲトゲショベルカー、戦車の履帯に車を乗っけた車両=ピースメーカー、乳首いじってばかりの肉襦袢オヤジ(=人喰い男爵)、ヤマハバイクを走らせるヘルズ・バアさんズ空飛ぶモンティ・パイソン第1シリーズ第8話参照)が出てくる本編は、もっと素敵にアタマがおかしかった……!

しかし、ビジュアルはマッドだが、映画自体の作りは実に骨太かつ緻密。
「支配から逃げる」というシンプルなストーリーを基軸に、キャラクターの背景や人となりは仕草や行動や短いセリフのみで表されている。ドラマが透けて見えるゆえ、敵味方を問わず脇役に至るまでキャラクターが愛されているし、いちいち長い/わかりやすいセリフで表さずとも伝わるはずという監督と観客の信頼関係がきちんと成立しているのだ。
近年、たまにその信頼関係が成立してない映画にも出くわすもので……。

子を産み母乳を作るシステムに押し込まれている女性を解放するというポイントで、よくフェミニズムに関連づけられる本作だが、それよりももっと普遍的な復讐(=retaliation)と救済(=redemption)の物語と思われる。

イモータン・ジョーの強権的統治方法は、無法地帯の世界においてまったく間違っているわけではないのだが、当然多くの犠牲を伴う。体制の中でまともに生きてこられなかった者たちは、覚悟を決めて次の世界へと進んでいく。あるいは進むべき者たちを送り出していく。もはや老若男女を超えている。
その物語を彩る……どころかド派手に盛ってくれるカークラッシュやアクションの生々しさからいっても、これからも受け継がれていく映画であってほしいと思わせてくれた。

「マッドマックス」というタイトルを冠せられていながら、マッドなのはマックスよりもその周りであるという構造。これに似ているのが、ぶっ飛んだビジュアルを生み出していながらジョージ・ミラーが本作をとても理知的に作り上げているのに対し、そこに群がったファンのほうがマッドに染まっている現象だ。
暴君に対する復讐や新天地を目指す人々の救済の物語に惹かれたとしても、観終わった人間のメンタリティは限りなく悪役寄りになっていることが多い。
現に、観賞後にV8エンジンを崇めるポーズを真似したり、イモータン・ジョーに忠誠を誓ったり、果てはウォーボーイズを真似て口に吹き付けるため食用銀色スプレーを購入する人が続出した。

思えば、本作に限らずマッドマックスシリーズには、観客を悪役側に引き寄せる力がある。1を観れば夜空を見るたびにナイトライダーを思い出し、2を観てはヒューマンガス様に心酔しウェズのように吼える。(『サンダードーム』の除外をご了承ください。ティナ・ターナーはああ見えてルール厳守の比較的マジメな取締役で、警備兵たちはほぼ体当たり芸人です)

こうした傾向は、ミラー監督が悪役をロックスター風に描いているところに起因すると思われる。
ナイトライダーのセリフ "I'm a rocker, I'm a roller, I'm a out of controller!!!!" はAC/DCの歌詞だし、トーカッターはアイメイクがグラムロック風だし、ヒューマンガス様は言わずもがな「ロックンロールのアヤトラ」。先ほど除外しておいてなんだが、ティナ・ターナーは現職ロックシンガー

本作のイモータン・ジョーに至っては、砦の上からマイクで演説をかます姿がまずいきなりステージ上のロックスター。
V8サインを掲げ、目線が合っただけでも狂喜するウォーボーイズは熱狂的なファンのようなもの
。砦の住人たちが「イモータン・ジョー!!」と何度も叫ぶのも、ライブ前のオーディエンスのコールを思わせる。
何より、出陣時には生バンド=ドゥーフワゴンを率いてくれるのだから、もはやライブツアーですよ。

まさか、好きなアーティストのライブに行ったときのヒャッハー感に一番近い感覚を、この映画が引き出してくれちゃうとはなぁ。

0 件のコメント:

コメントを投稿