2017年1月8日日曜日

2016年映画極私的ベスト10

2016年=まだまだこの国はやれる、そう感じるよ。

今年は映画ファンにとって邦画の当たり年だったなぁと思って。ベスト10内にも4作入ったし。
……まぁ、それだけの良作が生まれるために、それなりの事故映画も生まれているんだけどな。何せワーストランキング作ってみたら1位と2位が邦画だったからな……!

参照記事一覧
2012年極私的ベスト
2013年極私的ベスト
2014年極私的ベスト
2015年極私的ベスト

1位 ヘイトフル・エイト

『デス・プルーフ』までの映画オタクと足フェチ期、歴史上で虐げられてきた人々の代理復讐を遂げた『イングロリアス・バスターズ』『ジャンゴ』ときて、「アメリカはこのままでいいのか? 憎しみを乗り越える希望があってもいいんじゃないのか?」と新たな道を示し始めたタラ。50を過ぎてから大人になったものだなぁ。そんな今年に、白人警官による安易な黒人射殺事件およびその報復事件が相次いだことは実に哀しい。この世界のどこかに、「リンカーンの手紙」は存在しないものか。

2位 イット・フォローズ

「それ」はどこまでもついてくる……けど、与えられるのは死の恐怖だけではない。まさか、ホラー映画におけるセックスと死の因果応報が、青春物語であり、ここまで壮大な人間愛の物語に押し広げられるとはなぁ……。

3位 シン・ゴジラ

正直、去年ギャレス・エドワーズの『GODZILLA』が公開され、「怪獣王ゴジラのプロレス興行」を呼び起こしてくれていた中、そのわずか翌年の日本のゴジラ復活は負ける確率の高い壮大な後出しジャンケンだった。しかしその分、ギャレス版ゴジラでは描ききれていなかった「災害としてのゴジラ」像があり、しかも3.11を想起させる描き方。何より、ギャレス版で強いて言うなら納得がいかなかった「核の扱い」にどう向き合ったのか。バジェットや技術に勝るハリウッドに、拙さがありつつも日本なりの回答を打ち出せたことが一番嬉しい収穫だった。

4位 Let Us Prey(デス・ノート/デッド・ノート)

『DEATH NOTE Light Up The New World』と同じ年に公開されてしまったことは、本当に不運でしかなかった。ときにデスノートのパチモン扱いされ、あまつさえマイナーだからといってC級映画と言われてしまうなど……。この際言うけどな、デスノート本家よりこっちのほうが小粒でもパワフルでゴアゴアでカッコよかったぞ! 死神は出てこなくても、死神よりもクールな「ある男」がいたぞ!

5位 EVIL IDOL SONG

『へんげ』に続き、小粒ながらもクライマックスはカタルシスに満ちている大畑作品。「いっそみんな死ねばいいのに」という万人が思うであろう呪詛と、「どうせ死ぬなら最高の曲を聴きながら死にたい」という音楽好きにとってある種の夢を具現化してくれました。

6位 この世界の片隅に

今であれ戦時中であれ、世界は日々の生活の積み重ねでできている。ご飯の材料が足りなければ今手に入るもので補い、寝てる場合じゃないときにも眠くなり、楽しいことを見つけようと思えば見つけられる。それができる人は、一見フワフワしているように思えて、実はとても芯が通った生き方のできる人だ。だが、そんな人ですら、積み重ねてきた世界が物理的または精神的に崩れていくときにはあまりにも無力である。それでも世界は続くということは、残酷でもあり、希望でもあるのかもしれない。

7位 ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー

ざっくり言ってしまえばスターウォーズサーガは、強いフォースの使い手にして「選ばれし者」たるスカイウォーカー一家を中心としている。そこへいくと、本作で活躍する人々は何の特殊能力も持たず(ドニーさんは存在するだけで強いけど)、中でも中心人物たちは反乱軍側に属しつつその中でも異分子であり、もっとも選ばれない者たちである。そんな人々が希望をつなげるためだけに死力を尽くす姿は、時に英雄譚よりも心動かされるものがある。

8位 ノック・ノック

浮気に関するニュースにコメンテーターがああだこうだ言ってるのを見かけると、「うん、とりあえずみんな『ノック・ノック』観ようか」と言いたくなった。パートナーもいないし浮気とか関係ないし家に人をあげることもないし……と安全圏にいるつもりの人も、「人生はいとも簡単にぶっ壊れる。しかもぶっ壊すのは他人とは限らないかもしれない」という危機感ぐらいは持ってみてほしい。そして最後の小さじ1杯ほどの悪意に笑おう。

9位 セトウツミ

「ほとんど2人が喋ってるだけの映画をスクリーンで観る意味はあるのか」と基本劇場主義の映画ファンですら思うようだが、個人的にはスクリーンで観る価値大いにありの作品である。理由その1は、同じ日に観たあるワースト入り映画が、演者の笑いセンスに頼ったTVバラエティの域を出なかったのを見ていたこと。理由その2は、いわゆる劇的かつ爽やかさと甘酸っぱさに満ちた青春像とは無縁だった多くの人間から見た、「高校時代にドラマなどない」「短くてくだらない、良いひとときの積み重ねでできていた」という普遍性がスクリーンから広がっていったことだ。それに、菅田将暉と池松壮亮の頭脳戦だったら、デスノートよりこっちのほうがアタマいいぞ。

10位 デビルズ・メタル

そりゃね、音楽と青春の映画として優れているのは『シング・ストリート』ですよ。ジョン・カーニーがとてもピュアに音楽の力を信じていることも伝わってきましたよ。でもね、鬱屈を創造性に結びつけるの下手クソで、自分で撒いちゃった種を自分で回収するのにいっぱいいっぱいで、それがまぁとにかく見苦しくてみっともない(しかも血みどろ)という本作のほうが、私にとっての音楽と青春のリアリティなのですよ。


次点としては、『帰ってきたヒトラー』『貞子vs伽椰子』『クリーピー 偽りの隣人』『ヒメアノ~ル』『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』『ドント・ブリーズ』『手紙は覚えている』『残穢 -住んではいけない部屋-』『ズートピア』『死霊館 エンフィールド事件』等々。あと、ランク付けするのは難しいけど今年の忘れられない映画として、特別枠に『無垢の祈り』も挙げておきたい。

そしてもうひとつのランキングが……

2016年リバイバル映画ベスト10


1位 黒い十人の女(in 角川シネマ新宿/西端100年記念映画祭 市川崑 光と影の仕草)
2位 七人の侍(in 楽天地シネマ錦糸町/午前十時の映画祭)
3位 不思議惑星キン・ザ・ザ(in キネカ大森)
4位 丑三つの村(in シネマヴェーラ渋谷/映画作家・田中登)
5位 犬神家の一族(in 角川シネマ新宿/西端100年記念映画祭 市川崑 光と影の仕草)
6位 2000人の狂人(in キネカ大森/ホラー秘宝まつり)
7位 カリガリ博士(in シネマート新宿/活弁シネマート)
8位 獄門島(in 神保町シアター/本格推理作家の世界)
9位 哀しき獣(in シネマート新宿)
10位 ヘル・レイザー(in キネカ大森/ホラー秘宝まつり)


今年の反省としては、未公開作品に触れる機会がガン下がりしていて、去年のようなランキングが作れなかったことか。それだけレンタル店に行く頻度が減ってしまったということかな、配信に頼ってるということかな……とも思ったのだが、Netflixですらそこまで観てなかったという事実が。劇場中心生活は当面続きそうではあるけど、せっかく毎月1000円近く払ってるんだから、もっと活用せねばなぁ。

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