2017年10月24日火曜日

ラウドパーク2017(10月14日編)

帝王と皇帝と魔王と。

LOUD PARK '17
2017.10.14. さいたまスーパーアリーナ



7年ぶりである。
当日会場で過去ポスターを目にしてやっと思い出したが、最後に来た2010年のラウドパークも、2日間参戦だったのだ。あのときは1日目ストーン・サワー ⇒ ハルフォード ⇒ KORN、2日目モーターヘッド ⇒ アヴェンジド・セブンフォールド ⇒ オジーとラストの3ステージを生き延びるの大変だったなぁ……。
と懐かしい気分になりつつ、そういえばさいたまスーパーアリーナという会場は、幕張メッセのオズフェストジャパンやノットフェストより過ごしやすいことにも気づいた。アリーナの涼しさと上のフードエリアの暖かさのバランスがいいし、必要とあらばホットドリンク(コーヒーのみだが)が買える売店もある。トイレも清潔だし、数が多いからあまり並ばずに済む(もちろんこれはオズフェストやノットフェス自体ではなく、会場たる幕張メッセにお願いしたい課題だ)。
そして何より、アリーナの後方にオフィシャルバーがあり、バッグに入れてさえいればライブエリアに水のボトルは持ち込めるという環境でありながら、床にプラカップやボトルがほとんど散乱していないこと。昔のラウドパークと比べてもかなり床がきれいだ。エリア出入り口警備はやりながら水規制はしなかったことが良かったのか、それとも開催歴史の差なのか……この辺は他のフェスと比較検討できればなぁ。

あと10年前の07年も1日だけ行きました。
目当てはもちろんマリリン・マンソンで。
  


10年前に観たとき以上にパワフルになっているように思えたANTHEMの途中からライブエリアに入り、ブルヘリアから参戦スタート。メキシコ産、メンバーは覆面着用で素性がよく分からず(有名メタルバンドのメンバーも所属していたりする)、インディペンデント時代には死体の写真をアルバムジャケットにしていたことがある。治安の悪さと良い感じの胡散臭さがプンプン漂うグラインドコアだ。
「Brujeria! Brujeria!」「Viva Mexico!!」と開演前からコールに包まれてスタート(少し予定時間フライング気味に出てきたように思えたのだが、気のせいだろうか?)。前方エリアとはいえかなり後ろのほうに立っていたのに、あまりの音圧に死ぬ心地。10年前のラウドパークで買った耳栓を持ってこなかったことを早くも後悔した。
歌詞と大半のMCはスペイン語であったため、果たして今言ったことに「イェーーー!!」と叫び返していいものかと逡巡したのか「お、おぉー……!?」とレスポンスが微妙になってしまう瞬間も。数少ない英語MCで聞き取れたのが「世界には災害が溢れているが、最大の災害はアメリカ、ホワイトハウスにいる! ファック、ドナルド・トランプ!!」で、これには割と喝采上がってしまったよ。もっとも、日本人オーディエンスのスペイン語理解力を考慮してか、コール&レスポンス用に「SI」&「ハイ」「NO」&「イイエ」というカンペを用意してくれる一幕も。
死体と麻薬と政治ステイトメントが満ち満ちているステージだが、時折ふとアタマの悪さ(褒めてます)を覗かせるのがマリファナ肯定系ソング。上記の「ハイ」「イイエ」のレスポンス用カンペも、マリファナに対してイエスというためである。中にはマッシュルームソングもあったが、「半分人間、半分マッシュルームのモンスターの曲だ!!」と英語MCで言っていたし、プレイ中しばしば謎のポーズ(ちょっと可愛い)を取っていたっけ。そのマリファナバカ一代の最たるものが、最後の最後にカラオケで流れた、タイトルそのまま "Marijuana" 。しかもコレ「マカレナ」の替え歌なので、それまでブルータルに疾走する音楽だったのが突然能天気なチャカポコ調で、観客も交えて「エーーーーマリワナ!!」と合唱する。この少しの愛嬌で、結構彼らを好きになってしまったよ。

全体的にぽっちゃり系なところもちょっと愛嬌。

昼飯休憩を挟んでオーペス。メキシコのブルータルから一転スウェーデンのプログレへ。もちろんブルータルなパートはあるが、哀愁と美しさに満ちた静のパートも交えて巧みに世界を構築していく。初っ端から昨年の新譜より "Sorceress" でオーディエンスは妖しい渦に巻き込まれ、"Ghost Of Perdition" の荒々しい導入で熱狂していく。派手にモッシュやジャンプが起きるわけではないものの、みんな心地よさそうにグラグラと揺れていた。
フェスにおけるプログレ系の難点は、曲の長さゆえに数が少なくステージの体感時間が短いこと。ミカエル・オーカーフェルド(Vo)は「時間が少ないからお喋りは控えめにするよ」と言っていたが、ゆったりと話し観客の歓声もまめに拾ってくれるミカエルのMCももう少し聞きたいものだ。やはりフルスケールの単独ライブが一番なのかな。
それでも、静のアルバム『Damnation』(雨の日に聴くと最強だ)から "In My Time Of Need"、それと対を成す動のアルバム『Deliverance』から "Deliverance" という黄金の流れを聴けたことには大感激である。

昔イギリスでメタルTを買ったとき、
オーペスのロゴTを買わなかったことを今頃後悔した。

ちなみに、アリス・クーパーまでの間にちゃちゃっとキューバンステーキサンドで夕飯を済ませている間に、フードエリアをスコットランド民族衣装のバグパイプ奏者おじさんが闊歩していった。ありゃ何者なんだろうとツイートしていたら、後にそのつぶやきをリツイートしていた加藤健二郎さんという方で、しかももはやラウドパーク名物というぐらい何年も演奏している方だそうな。こりゃそのうちKORNのステージでジョナサンと一緒にバグパイプやるっきゃないっすよ。

「一生のうち1度はステージを見てみたい……でもあまり来日しないみたいだし、そろそろ70だし……」と思っていた魔王が、とうとう君臨する。前方ブロックにぎゅうぎゅうになったオーディエンスが思いのほか若いのは、そういうショック・ロック界のレジェンドを生で目にしてみたいという後続のファンを多く集めたからなのかもしれない。

そんな我々に、アリスは開演前から睨みを効かせていた……

「引き返そうと思ってももう遅い……奴が来る……!!」
仰々しい口上を経ていよいよこの幕が落ちた瞬間、ただでさえアリス・クーパーのステージが始まるという高揚感が頂点に達しているというのに、私にとってはさらに高揚感が頂点をぶっちぎる瞬間が待っていた。幕開けの曲が "Brutal Planet" だったのだ!!
マリリン・マンソンを軸にロックの系譜を紐解き始めた25年前、一番最初に聴いたアリスのアルバムが『Brutal Planet』であり、冒頭のこのタイトル曲だった。聴いた途端「コレは本当にヤバいやつだ! この人本当にぶっ飛んでるとしか考えられない!」とさえ思っていた。しかし後になって、当時頻繁に出入りしていたメタルコミュニティで、このアルバムは「モダン・ヘヴィネスに寄ったものの相性は良くない」(もともとアリスの曲は凶悪な演出とミスマッチなほどポップでキャッチーなのだ)とオールドスクールのハードロックファンからの評価が芳しくないことを知り、ちとヘコんだのだった。ということは、今ライブで聴ける可能性はまず無いのかもな……とさえ考えていた。
その矢先にこの幕開けである!! ……まぁ、確かにちょっと最近のセットリストでも調べればすぐ分かることだったが、『Blutal Planet』収録曲に期待を持たせすぎたくないからと調べもしなかった自分にとっては、嬉しすぎる大誤算だったことは分かっていただきたい。音楽と、ステージ上でステッキを振るうアリスの姿に感激し通しの一時から、続けざまに "No More Mr. Nice Guy" を打ち込まれたときには、ブルヘリアの音圧とはまた違った意味で死にそうになった。逆にこの曲からの "Under My Wheels" ~ "Poison" とフロアからの大合唱は生きるエネルギーになった。

何が "No More Mr. Nice Guy" だよ!
私みたいなファンにとっちゃ、この流れを作ってくれた時点でナイスガイだよ!


このクラスのベテランアーティスト勢が衰え知らずである理由の1つには、バンドメンバーをちょくちょく若返らせていることがある。アリスのメンバーも私が所有するライブDVDとはだいぶ替わっていて、中でも一番目を引いたのがニタ・ストラウス(g)。ギタープレイもさることながら、佇まいだけで彼女はカッコいい。たまにアリスが背後から髪の毛を持ち上げてイタズラしに来るが、ニタのソロになると彼女を前にぐいぐい押し出したりもする。アリスとしても推したいミュージシャンなのかも。
もう1つ最高に嬉しかったことに、アリスのライブ定番のシアトリカルな演出が思いのほかたくさん観られた。短いステージだしそんなにギミックはないかもとハードル低めに考えていたが、中盤 "Feed My Frankenstein" で一変。アリスが血のついた白衣姿でB級SFチックなポッドを引きつれてきて、やがてそこから電気と煙とともに大きなフランケンシュタインの怪物(操り人形)が生まれる。"Cold Ethyl" になると本当に「冷たいエセル人形」が出てきて、アリスがそれを引きずったり引っ叩いたり。"Only Women Bleed" ではとうとう生きたダンサー人形(本物の女優さん演)が周囲を踊って回るが、アリスは彼女をも絞め殺し、謎のガスマスクコンビに連行される。そして用意されたのが……アリスのショーの定番にして一部では悪名高いギロチンである‼︎ ドラムロールに合わせて勿体つけながら、遂にガシャンと落ちる刃! 掲げられるアリスの生首(ハリボテ)!  ライアン・ロキシー(g)&トミー・ヘンリクセン(g)リードのもと観客が歌う "I Love The Dead" ! そして間もなく "I'm Eighteen" でアリス復活! 首を落とされたのに松葉杖で現れるのはご愛敬! ……いや、DVDでしかお目にかかれなかった演出の数々を生でこの目で拝めるなんて、一体この日だけで何回「死にそう」と思っているんだろう。
最後の "School's Out" では巨大バルーンが頭上に投げ込まれ、お約束のトス合戦が始まる。アリスがステッキで刺すと、割れたバルーンからは紙吹雪が舞い散る。ピンク・フロイド "Another Brick In The Wall" のコーラスも交え、見事オーディエンスを悪ガキに退化させたアリス、最後は紙テープ砲でショーを締めくくったのだった。
確かにアリスもそろそろ70ではあるが、ひょっとするとまた会えるんじゃないかと思うよ。というかまた会いたい!!

さて、魔王は去っていったが、気を抜くのはまだ早い。次にステージに君臨するは、ノルウェーより来たりしブラックメタルの闇の皇帝エンペラーである。
現在のライブは彼らの名盤『Anthems To The Welkin At Dusk』20周年のためらしい。というわけで、アルバムの冒頭を飾る "Alsvartr (The Oath)" ~ "Ye Entrancemperium" という鬼のような轟音疾走ナンバーで暗黒の宴は始まった。暗黒と言っても、もはやブラックメタル隆盛期当時のコープスペイントを施しているメンバーはいないし、長髪で黒ずくめではあっても比較的主張の少ない外見。イーサーン(Vo/g)に至ってはバンド活動と並行して音楽の先生(授業受けたいです)もやっているので、一見ただの眼鏡をかけた物腰穏やかな紳士である。
しかしこのステージからだだ漏れる「魔」は何だ。イーサーンとサモス(g/殺人罪や暴行罪で服役・逮捕歴あったり、それがもとでライブ入国ができなかったり……よくぞここまで復活した)のトレモロは時に暴力的になったり時に冷ややかになったり、常に空気を黒く塗りつぶし続ける。タリム(Ds)のブラストビートは、今立っているまさに足元からビキビキと地割れが起きんばかりの威力。そして、相変わらず禍々しいデスボイスとテノールが響く荘厳なクリーンボイスとで魅了してくるイーサーンのボーカル。これが皇帝の威厳か……!! と、平伏す代わりにメロイックサインで敬意を表する。
"Thus Spake The Nightspirit" "With Strength I Burn" など『Anthems』収録曲はすべて披露してくれたが、アルバム収録ではないがエンペラー代表曲といえる "Curse You All Men!" "Inno A Satana" も燃えに燃えた。"Inno A Satana" に至ってはまさに悪魔崇拝の賛美歌である。ライブが終わった……というより、黒ミサが終わった気分だった。分かりやすいバフォメットみたいな悪魔は降臨しなくとも、皇帝の編み出す「魔」はアリーナのあちこちに降りていたさ。

オール・ヘイル・エンペラー。

魔王が来た……皇帝が来た……それでもまだまだ気は抜けない!! 何故なら最後には帝王がやって来るからだ!! そう、スラッシュ四天王の一翼を担う帝王、スレイヤーが!! まったく今年は何回ステージに(気持ちだけ)平伏せばいいんだ!!
アリス・クーパーと同様開演直前までステージは幕で隠されていた。その表面に赤い十字架が4つ浮かび上がり、ゆっくりと回転して逆十字になっていく。さらに逆十字は逆ペンタグラムに変化し、幕の上を漂う。そしてバーーーンと浮かぶSLAYERのロゴ……からの幕が落ちて "Repentless" で始まる疾走! 完璧なオープニングである。続けて "The Antichrist" からの "Disciple" でオーディエンスの「God Hates Us All!!!」絶叫も、完璧な流れだった。
年々トム・アラヤ(Vo/b)とケリー・キング(g)の体躯が重量を増していることに少し心配にもなるが(余計なお世話か)、それより何よりそもそも音が重量級。ブルヘリアの音圧に押されるのとはまた異なり、反対側のステージエリアの端からという離れた位置にいても、ドラム/ベース/ギターそれぞれの音が全身ボコボコにぶん殴りにきているようだ。もはや、このライブ自体が巨大な暴力装置なのだ。……と、物騒なことを言いつつ、トムが話し出すと一気に空気が穏やかになり、オーディエンスに真摯に感謝を示すときにはむしろ仏の顔だったことは明記しておきたい。
前方ブロックに巨大サークルピットができる一方、離れた位置ではデイヴ・ロンバルド(Ds)のブラストビートに合わせるように小刻みにヘッドバンギングしている人を多く見受けられる。確か自分もやっていた気がする。その様相はヘドバンというよりもはや痙攣に近い。これに似たものをどこかで観たことがあるような気がしたら、『俺たちに明日はない』のマシンガンで撃たれていくときの「死の舞踊」だ。それも、ステージが終わるまでひたすら音の砲弾を浴び続けなければならない。つまり、メタルヘッズには幸せなことこの上ない死に様だ。生きてるけど。
ちなみに私、"Raining Blood" の最中、疲れが溜まったせいか小刻みヘドバンしながら数秒間意識がブラックアウトしておりました。これはスレイヤーにより「数秒だけ死んだ」ということにしといてもよろしいでしょうか……? ラストの "Angel Of Death" で強制的に復活したけどね。

「今年は何回ステージに(気持ちだけ)平伏せばいいんだ!!」と先述したが、それ以上に「今年は何回死にそうになればいいんだ!!」なラウドパーク初日だった。


帝王が帝王すぎてエライことになった。

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