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2015年12月31日木曜日

2015年極私的アルバムベスト5

2015年=M。

奇しくも今年、私が好きなアーティストの中で「M」のつく方々が続々新譜をリリースしたおかげで、ランキングをMのイニシャルが埋めることとなりました。ついでに言えば今年の映画ベストだって、1位は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でMADのMだもんな。あ、あと3位が『ムカデ人間3』だからムカデのMってことに……はならないか。

1位 MARILYN MANSON/The Pale Emperor




どうしても師匠びいきなもので、師匠の新譜が出た年にはだいたい1位にしてしまいます。ヘヴィ度合はだいぶおとなしめになったけど、洗練と渋みを増した曲群からは「マンソンも大人になったなぁ」と思わされる。もっとも、サマソニのステージでただちに大人げなさを発揮していたのだけれど。師匠、思ったほど盛り上げられなくてすみませんでした。今度単独で来日して下さったらもっとヒャッハーします。

本作の中で一番の極私的お気に入り、「The Mephistopheles Of Los Angels」
ライブで聴いてみたい……

2位 MOONSPELL/Extinct




最近後退気味だったゴシックロマンス度と、フェルナンドのベルベット・ボイスの割合を大幅に増やしてくれ、なおかつシスターズ・オブ・マーシーっぽさも醸し出してくれるという、私にとっては大変にありがたいアルバム。それにしても知名度のせいかまっっっっったく来日しないというのが本当に残念だよ。M1「Breathe」とかシャウトしたいしM4「Domina」で穏やかになったりしてみたいよ。

デスボイス配分が大目だが、ライブで聴いたら絶対カッコいいしノレるから聴いてみたいですよ
お願いしますからライブ観させてくださいよ……という「Extinct」。

3位 MUSE/Drones




何ともタイムリーなタイトルで、比較的社会的要素が強い。アルバムごとに世界感が膨張していき、前作『The 2nd Law』では遂に新しい次元へ行ってしまったミューズが、本作でもともとの世界の内側へと戻ってきたようにも。

リズム感が『The 2nd Law』に近いリードシングル。

4位 CRADLE OF FILTH/Hammer Of The Witches




ダニ・フィルスが喉の手術の影響で高音ボイスが出なくなって以降、濁声を活かした暴虐シンフォニック路線のクレイドル。正直、前作(Terrorizer誌のワーストに選ばれてしまった……)は曲の個性が埋没していたが、今回は難なくクリア。禍々しい中にも艶っぽさがある、私の大好きなクレイドルですよ。

「Blackest Magick In Practice」のほうがリフが好みなのだが、
MVがカッコいいのでこちらを選んだ「Right Wing Of The Garden Triptych」

5位 STRATOVARIUS/Eternal




よりシンフォニック路線を強め、トルキ脱退以降のストラトヴァリウスのカラーがだんだん決定づいてきた新作。2014年のラウドパークの映像収録のDVDがついているので、俄然限定盤おすすめです。

MVにそこはかとなく漂うダサさもストラトヴァリウスの魅力だと思ってます。
リードトラック「My Eternal Dream」。

次点 LINDEMANN/Skills In Pills




ラムシュタインのティル・リンデマンとヒポクリシー/ペインのピーター・テクレンが組んだ、実質ティルのソロアルバム。いつもはドイツ語で歌っているティルが英語で歌っている。ラムシュタインで英語歌詞やったときには違和感があってあまり好きではなかったが、こちらは独立した作品だからかピーターのプロデュースが上手いのか、違和感なくむしろ好みに。

ただし、言語が変わっても歌詞とMVは相変わらず変態だから心配するな。
悪趣味全開の「Praise Abort」。





ちなみにベストには入れなかったけど、今年は良いライブ盤にも出会えたのが嬉しい。

ROB ZOMBIE/Spookshow International Live




会場のノリがビシビシ伝わりすぎて、聴きながら外歩いてて「うぉーーー」ってレスポンスしたくなってしまうほど。ヨコノリのロックだから踊ったりジャンプしたりもしたくなるから困る。かつてマンソンのバンドで活動していたジョン5(g)とジンジャー・フィッシュ(ds)が、のびのびとソロを披露しているのも微笑ましい。

本作の音源じゃないけど、2014年のテキサスライブより「Superbeast」。
このシアトリカルなショーが『マーダー・ライド・ショー』に通ずるんじゃないだろうか。


SATYRICON/Live At The Opera




オペラハウスで、オペラのコーラスをバックにしたライブ。DVD付属盤なら映像も拝める。サテリコンには斬新な「荘厳さ」が追加されたことで、曲の新しい側面が見えてくる。特に、ロックンロール要素の強かった「The Pentagram Burns」や「K.I.N.G.」には、思いがけない美しさが浮かび上がってくるよ。

オフィシャルに公開されている「Die By My Hand」のステージ。
わずかに男声バックコーラスが聞こえるだけだった原曲以上に荘厳かつ不穏になった。



何だか今回の記事はコレばっかり言っている気がするが……どのアーティストもライブが観たくて仕方ないんですよ!!! 来日してくださいよ!! (注:ストラトヴァリウスは来日するけど、金曜スケジュールでは正直キツイものがあって……追加公演が壮絶に欲しい!!)

2015年10月28日水曜日

マーダードールズ/ウィメン・アンド・チルドレン・ラスト

殺人人形、リアルな血を流す。

MURDORDOLLS
Women And Children Last('10)



そういえば、ホラー映画って監督や脚本家個人の思いが割とダイレクトに表現された作品だったりもしますよね。
その多くは「お前らばっか恋愛だのセックスだのスポーツだの優等生だの青春を謳歌しやがってこの野郎ぉぉぉぉぉ!!!!」って恨み言だけど……。

ジョーイ・ジョーディソンとウェンズデイ13のホラー映画愛好組によるプロジェクト……と言いながらも、前作『ビヨンド・ザ・ヴァリー・オブ・マーダードールズ』はウェンズデイが以前より書き溜めていた曲から作られていたらしく、今回はジョーイとウェンズデイのほぼ2人で作曲・レコーディングしたとのこと(ライナーノーツ参照)。

ウェンズデイのB級ホラーボーカルとノリのいいロックはまぎれもないマーダードールズなのだが、前作とは大きく異なるところがある。歌詞のホラー映画ネタが皆無なのだ。
2人ともあれほどホラー映画大好きなのに! と思うところもあるが、マーダードールズとしての活動再開までの間に溜め込んだパーソナルな心情やフラストレーションを反映させた結果らしい。特にウェンズデイはこの間スーツケースだけで移動生活をしていたという環境が、M5「Nowhere」やM8「My Dark Place Alone」に反映されている。
中でも一番ダイレクトに表現したのは「失うものは何もない/証明するものもない/腐る前に騒音を鳴らせ/俺にはロックンロールだけなんだから」(M11『Rock N Roll Is All I Got』)の詞だろう。もはや叫ぶのは映画愛だけではなく、ドス黒い感情が渦巻いている。

それでも、M2「Chapel Of Blood」やM9「Blood Stained Valentine」、M10「Pieces Of You」には、既存の映画ネタこそはないがホラー風味がうかがえる歌詞。実際、M2など一部のMVは、グラインドハウスホラー映画の予告編を意識して作られているのである。彼らのホラー愛は決して霧散しているわけではないと安心できる。

なお、ダークになったのは歌詞だけではない。曲調も前作のパーティー・ロック感は薄れ、より不吉さが増している。前作が70年代オカルトや80年代スラッシャーの鮮やかすぎる赤い血だとしたら、今作は酸化して赤黒くなるリアルな血だ。

2015年8月の時点で、ウェンズデイはマーダードールズについて「今後の再開はないかもしれない。でも2ndアルバムだって作るとは思ってなかったからね」と語っていた。そりゃウェンズデイもジョーイもプロジェクトを持ってるし、簡単に再結成できるもんじゃないけど……どっかで続いててほしくもあるよ。
だって貴重じゃないかよ、ホラー映画友だちって!(そういう次元の話じゃないことは重々承知の上で)

ホラー風味は少ないが、ウェンズデイの放浪(?)生活が反映されているようにも思える
M5「Nowhere」。

その一方で、本当にグラインドハウスホラーの予告編チックに作られた
M2「Chapel Of Blood」MV。これ以外にもニセ映画予告風Vが結構あります。

2015年10月27日火曜日

ムーンスペル/EXTINCT

絶滅させるなベルベット・ボイス。

MOONSPELL
EXTINCT('15)



実は私、ムーンスペルの曲を安眠導入に使っております。フェルナンド・リベイロ(Vo.)のクリーンボイスは大変に聴き心地が良くて落ち着くのです。
……って言うと割と分かって頂けるのに、「クレイドル・オブ・フィルスも安眠に効きます」って言うと一斉にヘンな顔をされるのは何故ですか。

ちなみにムーンスペルはクレイドルのサポートアクトを務めてたことがあり、その際ステージのクライマックスにクレイドルのメンバーから小麦粉をぶっかけられるというイタズラに遭っていた模様がクレイドルのライヴDVDのドキュメンタリーに収録されていましたよ。

ポルトガル産ゴシック・メタルの11thアルバム。思えば活動履歴が1992年からで23年目に入っているのだから、彼らもベテランの域に達したものだ。
6th『MEMORIAL』以降はヘヴィネス路線が目立っていて、フェルナンドのデスボイスも初期と比べて格段に深みと凄味を増していたのでそれはそれでキマっていた。ただ、本来持っていた「ゴシック」的な耽美性と艶やかさが薄まっていたのは残念だった。

特にそれを担っていたのがフェルナンドのクリーンボイス。別名ベルベット・ボイスと言われるほど、低音で艶やかで色気がある。デスボイスも良いが、フェルナンドの武器はベルベット・ボイスと思う人間にしてみれば、そちらをもっと活かせばいいのにというのが近年の作品を聴いての感想だった。
(だから10th『Alpha Noir』とセットというか対になっていた『Omega White』は、個人的に大変理想的だった)

そこへ本作である。時折デスボイスも入れつつ、ベースはクリーンボイス。クリーンボイスの曲はおとなしめ、あるいはバラード色が濃くなる傾向にあったが、今回はややヘヴィネスが主張している傾向。3rd『Sin/Pecado』以来の中近東風メロディやストリングスの導入も見られる。
ここ最近物足りないポイントであった耽美性と艶がぐっと増したが、デスボイス全開のヘヴィ路線が好みというファンには、あまりありがたくないかもしれない。良く言えばバランスが良く、悪く言えば折衷案か。
彼らの音楽が本来持っているダークな美しさや、詩人でもあるフェルナンドの詞の魅力を引き出すには、なかなかに良い手法だったように思えるのだが。

面白いのは、彼らが「ゴシック」を意識した作品づくりをした結果、ゴシックの重鎮といわれるシスターズ・オブ・マーシーに近い曲が多々見受けられるようになったことだ。
ボーカルにドスを増したエルドリッチおじさんがこのアルバムを聴いたらどう思うのだろうか。

リードシングルとなったM2「Extinct」。
アルバムの中ではフェルナンドのデスボイス中心版です。

こちらがベルベット・ボイスを堪能できるM4「Domina」。
シスターズっぽさを感じさせる曲でもある。

2015年10月25日日曜日

マーダードールズ/ビヨンド・ザ・ヴァリー・オブ・マーダードールズ

可愛い殺人人形の血しぶきパーティー。

MURDERDOLLS
Beyond The Valley Of Murderdolls('03)




ハロウィンが近いと、この人のヴォーカルが聴きたくなるんですよね!
……って言ってるの、いまだに周りに自分しかいないんだけど。

スリップノットのドラマー、ジョーイ・ジョーディソンがギターを担当し、ウェンズデイ13がB級ホラーの申し子とでも言うべき禍々しくも可愛いボーカルを聞かせてくれる。(ギタリストには当時スタティックXのトリップ・アイゼンもいたが、後々事件があってバンドどころか音楽シーンからもフェードアウトしてしまった……)

「ジョーイのサイド・プロジェクト」という位置づけもされているが、確かにスリップノットではできない音楽性を解放しているとはいえ、アーティストが両バンド同じくらい心血注いでいるのなら「サイド」扱いは失礼ではないか……とも思う。
「こんだけホラー大好きアピールしてる人の作品をサイドとは何ですかサイドとは!! こっちだって立派な本家っすよ!!」というホラーファンの勝手な同志意識が突っ走った結果でもあるのだが。

ちなみに、ライヴでのバンド形態はジャケ写の通り5人だが、アルバムではジョーイがドラムも担当していたとのこと。そしてファンならジョーイのドラム技術の凄まじさは知っての通り。
そのため、時間がなくて写真判定ぐらいでオーディションをパスしてしまったライヴドラマーが、「音ペナペナじゃないですか……」と反感を買うという災難もあったそうな。

マーダードールズの発祥は、ジョーイとウェンズデイがスリップノット以前に組んでいたリジェクツというバンド。だが本作の音楽性の大元になったのは、リジェクツ活動停止後にウェンズデイが活動していたバンド、フランケンシュタイン・ドラッグ・クイーンズ・フロム・プラネット13。
その名の通りゴテゴテしたホラー色溢れる歌詞と音楽性をマーダードールズも継承し、「彼女はティーンエイジのゾンビ」(M6『She Was A Teenage Zombie』)、
「俺は宇宙からやってきた墓泥棒U.S.A.!」(M8『Graverobbing U.S.A.』)、
「ミス・アメリカをぶっ殺せ!」(M13『Kill Miss America』)
と、ホラーファンに目配せしつつも、怖さはどこかに置いて楽しさと可愛らしさを押し出した曲を聴かせてくれる。ウェンズデイのソロアルバム『トランシルヴァニア90210』でも同じように言及したけど、鮮やかすぎる血しぶきのように毒々しくも明るい、キャッチーなロックンロールである。

『エクソシスト』のリーガンに夢中なM4「Love At First Fright」、タイトルからあからさまに『ゾンビ』な「Dawn Of The Dead」など、B級に留まらないホラー愛も覗かせる。
先述の「Graverobbing U.S.A.」といいM3「Dead In Hollywood」の歌詞といい、エド・ウッド映画へのオマージュも隠さない。そういえば、アルバムタイトルは巨乳大好きラス・メイヤーの『ワイルド・パーティー』の原題パロディか。
マイ映画生活がホラーやカルトに傾倒していくほどに、ウェンズデイとジョーイが友だちじゃないことを勝手に悔やんでいるよ。

ちなみに、国内盤のブックレット解説いわく、ジョーイは『悪魔のいけにえ』のほう、ウェンズデイは『悪魔のいけにえ2』のほうが好きらしい。ってことはウェンズデイのほうがより友だちになれそうなのかなぁ(一方的推測)。

歌詞に登場するホラーアイコンの名がいくつ分かるかがホラー入門者バロメータな
M3『Dead In Hollywood』。MVにはマンソン師匠も出てますよ!
もちろんウェンズデイのB級ホラー声も堪能してほしい。

2015年3月27日金曜日

PIG/ザ・スワイニング

世界一カッコいい豚野郎。

PIG
THE SWINING('93)

 


レイモンド・ワッツ。
本アルバム発表当時32歳。
イギリス人。長身脚長。
ジャケ写では伝わりにくいが、陰のあるハンサムに部類される顔。
音楽の才能もあり声もイイ(後述)。
ステージではシルバーのロングコートにテンガロンハットという独特すぎるファッションも着こなせる男。
そんな男がワンマンプロジェクト名「豚」って、何のイヤミかと思わずにはいられませんよ。真意は違えど。

80年代末から90年代にかけて台頭してきた、プログラミングやノイズギターを中心としたインダストリアル・ロックの1バンド……
と言っても、インダストリアルというジャンルはそんなに爆発的に広がらなかったし、おそらくもっともメジャーなのはナイン・インチ・ネイルズ(マンソンもここに入ったり入らなかったりだが、少なくとも純然たるインダストリアルではない)。
あとは『マトリックス』のサントラ収録のミニストリーやラムシュタインあたり(初期ロブ・ゾンビもここに入ったり入らなかったり)がまずまず知られているだろうか。

そんなインダストリアルの主流とはいえないが、インディーズで短期間に多作、それも秀作が多いバンドがスキニー・パピーやKMFDMそしてPIGである。レイモンド自身、もとはKMFDMのメンバーだったのだけれど(その後戻ったり出たりをくり返す)。

PIGの音楽性を特徴づけているのは、他のインダストリアルバンドと比べて、他ジャンルの要素を多く取り入れているところ。
特にジャズやラテンミュージックの影響は顕著だが、シンセサイザーでオーケストラ風の荘厳さを出すこともあり、5th『WRECKED』などはインダストリアル・メタル色を濃く押し出していた。
また、日本のバンド・BUCK-TICKとの親交もあり、メンバーとSCHAFTやSCHWEINといったプロジェクトを手掛けてアルバムをリリースしていたこともある。

本作は3rdアルバムで、まだ宅録らしいサウンドの安さとポップさがあるが、M2「The Seven Veils」はオーケストラ風味、M5「Black Mambo」は暗黒ラテンミュージック、M8「Symphony For The Devil」はプログレ風と、すでに引き出しの多さを確立している。M4「Find It Fuck It Forget It」では「山の魔王の宮殿にて」のメロディを引用する遊びも入っている。
音楽的な柔軟性・多様性があり人脈もそれなりに広く持っていながら、活動がどうにもコンパクトなのは、「大きすぎる会場はキライ」と豪語するメジャー志向のなさゆえなのか……。

PIGがまず間違いなくメジャーにはなれない理由であり、音楽性の引き出しの多さ以上にPIGのキャラクターを決定づける最大の理由は、レイモンドの書く歌詞とボーカルである。
これがとにもかくにも、陰湿で猥雑で粘着質で変態性が高く性格が悪い。
それを歌うレイモンドの声はドスが効いていて、暴力性よりも粘着性のほうが勝る。プログラミングサウンドの妖しさも相まって、ねっとり感がまるでラードじゃないかというほど。
レイモンドのこうした傾向はKMFDM時代から徹底されていて、曲を聴くより先に歌詞を見たらどれがレイモンドの作品が見当がつけられた。なるほど、この性格悪さとねちっこさは「豚」と名付けられてもおかしくはない。

なお、その他の歌詞の特徴として「頭韻を多用する」(M4『Find It Fuck It Forget It』なんかまさにそれですね)があり、ひとくちに豚といっても大変に知性のある豚であることはお分かりいただけると思います。

短期間に多作……とはいったものの、それは90年代までのことで、実は単独でのオリジナルアルバムは'05年の7th「PIGMATA」以来出されていない。
他のアーティストをプロデュースしたり、コラボレーションしたりすることは多く、さらに'09年以降はコレクションに曲を提供するなどアレクサンダー・マックイーン絡みの仕事をしていることも多いとか。
レイモンド自身が活動を続けていることは彼自身のTwitterで分かるのだが……あのドス声をフルで聴ける機会が減っていることは、やっぱり残念だなぁ。

PVが少ないうえに、アップされていても画像の悪いものしかないので、ライヴ映像を。
2006年のアメリカツアーより、本作のM6「Ojo Por Pjo」~M7「Blades」。
少々長めだが、レイモンドの「粘着性の高いドス声」がお分かりいただければと。

2015年3月21日土曜日

マリリン・マンソン/ザ・ペイル・エンペラー

20年越しの大人。

MARILYN MANSON
THE PALE EMPEROR('15)



「師匠……大人になったなぁ……」と率直に思った。
ロックスターが大人になるというと、「初期衝動を脱却する」とか「尖らなくなる」とかマイナスイメージが出てくるだろうが、この場合は改めて「師匠みたいな大人になりたい!」という憧れの意で。
「目指すところがおかしい!」とか「その前にもう少し真っ当な大人になれ!」というご叱責は確実にあるでしょうがね!!

ミドルテンポ曲主体は、6th『イート・ミー、ドリンク・ミー』以降踏襲されている路線。中身については、6thでは内省、7th『ハイ・エンド・オブ・ロウ』では初期のようなアメリカの悪童路線に返るところもありつつ、8th『ボーン・ヴィラン』では文学と退廃を全面に押し出してきた。
そのたびに音楽性がどんどん洗練されてきたのだが、ここへきて洗練度が一番高まった。『ボーン・ヴィラン』のときも「荒削りがぐっと少なくなった」と書いたが、その時以上に装飾が極力減らされている。
その最たるものが、デラックス・エディション収録のボーナス・トラックM11~M13 。原曲のアコースティックバージョンか……と、いつもならそれだけ止まりの曲のはずが、むしろアコースティックバージョンのほうがカッコいいんじゃないか!? と、こっちのほうをついヘヴィローテーションしてしまうほど。

この変化は、今までトゥイギーなりティム・スコルドなり自分なりとバンドメンバー内で行ってきたソングライティングを、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『デビルズ・リジェクト マーダー・ライド・ショー2』といった映画音楽を手掛けてきたタイラー・ベイツに任せたところが大きいようである。
サザン・ロック風味が強いという点では、『デビルズ・リジェクト』が本作の方向性に近いように思えるのだが。ちなみに、M1「Killing Strangers」は『ジョン・ウィック』、M9「Cupid Carries A Gun」はドラマ『Salem』のメインテーマへと、サントラへの曲提供が急に増えたのも、ベイツとのコラボが影響しているのだろうか?

と、ここまで新風も取り入れてぐっと大人のサウンドを聞かせておきながら、いざライヴに行ってみたら、オーディエンスに中指立てたりケツを向けてたりと思いっきり大人げなくなっている可能性もなきにしもあらずだけど、自分そういう師匠もキライじゃないです。いやむしろ、だいたい何やっても好意的なコメント出せる程度には盲目ですから。

ローリング・ストーン誌(日本版)によると、かつてほどアブサンをがぶ飲みしなくなったとか、ジムに通い始めたとか、さすがに46歳になって健康に気を使いはじめたらしい師匠。
その一方で、いまだ奇行があったり、部屋の設定温度をバカ低くしていたり、現在ちょっと低迷モードに入っているジョニー・デップとライヴゲスト出演を含めよくつるんでいたり、また新たな年下彼女との生活はいろんな意味で好調だったり、マンソンはマンソンだとしか言いようのないブレのなさも。

「俺はいつだって乗り切っていく/俺はロサンゼルスのメフィストフェレスだ」(M4『The Mephistopheles Of Los Angels』およびM12『Fated, Faithful, Fatal』)のリリックに違いなしであることを今後も願ってますよ、師匠。


2015年1月25日日曜日

2014年アルバム極私的ベスト5

2014年=喪失・離脱のその先。

その年の新作映画を観る頻度より新作アルバムを買う頻度が少ないので、ベストといっても5位までが限界だというのに、なぜここで大幅に出遅れたアルバムベストを出すのか。
それは、こんなネタでも挟まないと、まがりなりにも映画・ロック地獄と銘打っているのに「ロック」のラベルが一向に増えないからである。まぁ、言ってるそばからマンソンの新譜買ったので、次のロック記事のネタは決まってしまったのだけれども。

ちなみに、映画サントラに関しては2014年映画極私的もろもろベストにベスト5があるので、こちらには入れていません。

1位 SLIPKNOT/.5: The Grey Chapter




#2ポールが亡くなってから初めて作られたアルバム。2013年のOzzfest Japanではポールの喪失を内包しつつの気迫だったが、ここで彼らは前進するためポールの思い出に一つの区切りをつけたように思えた(だからこその "So walk with me" であるように聞こえた)。昨年11月のKNOTFESTのステージを観て一層そう思えたし、バンドの状態が良好そうなのを観て、彼らにまた何度でも戻ってきてほしいとも思った。

↓リフのおどろおどろしさがたまらない「The Devil In I」。
MVには少しながらグロテスクなところもあるのでまったくダメな方は注意。


2位 TRIPTYKON/Melana Chasmata




『Eparistera Daimones』同様、長年熟成させた呪いの蓋を満を持して開封したかのようなドゥーム/ブラック。もちろんトム・G・ウォリアー(Vo.)の「う゛っ!!」も聴ける。ただし幕開けとなる1曲目は、Celtic Frost時代を彷彿させるスラッシュメタル風味。前作には19分25秒にわたる呪詛「The Prolonging」があったが、今回も12分25秒の「Black Snow」という知らない人にとっては嫌がらせのようなナンバーが。
本作のアートワークを手掛けたH.R.ギーガーは、2014年5月に死去。同じスイス出身のトムとは友人でもあり、Celtic Frostのころからアートワークを手掛けていて、トムのギターもギーガーモデル。これが最後のコラボレーションとなってしまった。

↓冒頭から7分の暗黒を。「Tree Of Suffocating Souls」


3位 WHITE EMPRESS/Rise Of The Empress




ディスクユニオンなどでたまたまかかっていた曲が気に入ってしまうことを一目惚れならぬ「一聴惚れ」と勝手に呼んでいるのだが、これがまさにそれ。デス声と女性のクリーンボイスとのツインボーカルだと思っていたら、どちらも同じ女性のボーカリスト(メアリー・ズィマー)だった。元Cradle Of Filthのポール・アレンダー(G)が携わるシンフォニックメタルとのことだが、Cradleよりも装飾が控えめになり、その分君臨する女帝(=ボーカル)が音楽を輝かせている。

↓猛々しい雪の女帝がおります。「Darkness Encroaching」


4位 MAYHEM/Esoteric Warfare




2014年1月の来日公演で重鎮ぶりを容赦なく見せてくれたので、「そろそろスタジオアルバムのほうでもカリスマ健在をガシガシアピールしていただきたい」などと言っていたら、本当にガツンガツンと猛アピールしてくださった。サウンドプロダクションが微妙に怪しいのは相変わらずだし意図的なところも多いのだろうが、それでもドラムがモコモコだった前作『Ordo Ad Chao』よりは向上しているほう。戦争によるカオスという世界観は『Grand Declaration Of War』にも通ずるものがあるが、まさか「宇宙実験」だの「催眠電波」だのうっすらSF風味も漂わせてくるとは……。


5位 WITHIN TEMPTATION/Hydra




『The Silent Force』『The Heart Of Everything』でシンフォニック・メタルを極めて以降、『The Unforgiving』でアメコミのようなコンセプトに乗り出したり、本作のように多彩なゲストを迎えたりと変化し続ける。もちろん賛否はあるだろうが、こういう風に一度様式美を作っておきながら凝り固まらないところは個人的に好きだ。中でも一番意外だったのは、ヒップホップ人脈からXzibitを迎えた「And We Run」。

ベタながら元Nightwishのターヤとのデュエットは最高に美しい。
↓「Paradise (What About Us?)」


どういうわけか、2014年のベスト3位内のアルバムアーティストは、メンバーを失ったり友人を失ったり、それまでのバンドを離れたりと、喪失や離脱を経験したばかりの方々になった。ベストには入らなかったが、昨年はMy Chemical Romance解散後のジェラルド・ウェイのソロアルバムもあった。
もっとも、彼らはすでに前進を始めている。どんな道を歩んでいくのか、まだまだ観ていきたい。

2013年1月6日日曜日

マリリン・マンソン/ボーン・ヴィラン

退廃は無理なくゆるやかに。

MARILYN MANSON
Born Villain ('12)




「昔ほど尖ってない」「昔ほどヘヴィじゃない」「昔ほど細くない」
最後のはほとんど関係ないし失礼だろうとは思うが、今のマンソンに対してはだいたいそんな感じの批評が出ている。約10年来のファン精神を持ってしても、そのへんは否定しがたい。

ただ、それでも2012年3月の来日公演のときと同様、「何はともあれ最高なんだ!!!」とむやみやたらに暑苦しく主張するスピリットは捨てきれず。
理由は、「俺は生まれながらの悪人だ 被害者のフリなんてするな」(M12『Born Villain』)と、堂々と悪役であり続けるアーティストはやはり魅力的だから。
また、「薬物に溺れた悪魔も 四角い輪を頭につけた天使も 俺たちと一緒に歩いていない 俺は誰とも一緒じゃない」(M1『Hey, Cruel World.』)と、どこにも属さない唯一無二だから。
……と、何だかんだそれらしい理由づけを並べても、結局のところ「人生の師匠だから」とこれ以上ないくらい個人的な動機があるから。

本作は'09年の7th『ハイ・エンド・オブ・ロウ』の路線に近く、ミドルテンポが主体。疾走ナンバーといえるのはM11「Murderers Are Getting Prettier Every Day」ぐらいだが、サウンドがバイオレントというほどではない。このあたり、全体的にやや単調に聞こえるかもしれない。
その代わり、『ハイ・エンド…』に顕著だった荒削り感はぐっと少なくなっている。マンソンの音楽に「ダーク」「退廃的」といった形容詞は付き物だが、本作は前作よりもより洗練された方向に向かっている。シェイクスピアやボードレール『悪の華』の引用など、文学色が濃い。

またマンソン自身、本作に言及する際、バウハウスやデヴィッド・ボウイのデカダンス志向を引き合いに出していた。現在のマンソンは、破滅でも破壊でも、悪ガキやホラーハウス風味でも、セルフパロディでもなく、ゆるやかな退廃に向かっているようだ。

マンソンにはカッコよく散ってほしい、破滅的なまま幕を閉じてほしいと思っているのなら、この路線はやはりヌルいように映るだろう。
しかし、音楽性だけでなく思想にも惚れ込んだ立場としては、発するべきステイトメントがある限り、「反省することは何もない」(M2『No Reflection』)と宣言できる限り、たとえ満開の時季を過ぎたとしてもマンソンにはアメリカの悪の華であってほしいところだ。

2012年10月31日水曜日

マリリン・マンソン/This Is Halloween

異形の神、異形のテーマを歌う。

MARILYN MANSON
This Is Halloween('06)




マンソンが「異形の神」扱いだったり、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』のサントラ全体ではなくマンソン単体なのは、時間短縮のためだけではなく、個人的な思い入れが強いからです。というか、プロフィールにある通り、ロック界における我が人生の師匠だからです!

異形のものたちが主役に躍り出るハロウィン・ソングは、もともと異形の存在であるロックスターの中でもキワモノすれすれ(いやきっぱりとキワモノ?)な感じに異形なマンソンがカヴァーするのにぴったりだろう。音のほうも、ヘヴィなギターはそこそこに、シンセサイザーが幽霊屋敷のようなチープかつ怪しげな空気を漂わせている。「チープかつ怪しげ」は、ハロウィンを魅力的にするポイントだ。

この曲に漂うファンタジーっぽさや可愛らしさを抽出するという点では、2枚組サントラ収録のパニック!アット・ザ・ディスコのカヴァーのほうが上手いといえる。ただ、可愛らしさはにじみ出るけどベースはあくまでおどろおどろしいんだぜというハロウィンタウンの住人たちの雰囲気には、やはりマンソンの声が合う。何より、彼一人で何種類ものゴースト/クリーチャーの声が務まってしまうんだから。

本当は、マンソンがハロウィンイベントでコレを歌っているライヴ映像を貼りたかったのだが、残念ながら元動画は消えてしまった。
代わりに、『ナイトメア…』のオープニング部分にマンソンのカヴァー版をのせたバージョンの動画↓を添付しました。

2012年10月12日金曜日

ウェンズデイ13/トランシルヴァニア90210

B級ホラーの友。

WEDNESDAY 13
Transylvania 90210  Songs Of Death, Dying, And The Dead('05)



ハロウィンシーズン、毎年「無いんだろうけどなぁ」と思いつつ、つい探してしまうお菓子がある。棺桶ケース入りの人骨型キャンディである。
なんでも、頭蓋骨、肋骨、大腿骨など頭から足先まで骨格がそろっているらしい。「らしい」というからには、私自身はそんなキャンディにお目にかかったことがないわけであって。特に思い出もないわけであって。
そんなものを何で探しちゃうのかというと、「キャンディの骸骨を組み立てたら、そいつが生き返って、引き出しからナイフ持ってきて『何を待ってんだよ、オレのために殺しちゃえよ』と言った」なんて素敵にホラーでチープな空想を歌にしちゃった男がいるからですよ。

お名前はウェンズデイ13。スリップノットのジョーイと組んだプロジェクト、マーダードールズが有名。昔は、フランケンシュタイン・ドラッグ・クイーンズ・フロム・プラネット13という長ーーい名前のバンドをやっていた……と、ご本人のステージネームやバンド名からして、むせ返りそうなほどB級ホラー臭が漂うお方。
もちろん曲名や歌詞もB級ホラー色豊か。M5「House By The Cemetary」とかM13「The Ghost Of Vincent Price」とか、いちいちネタが分かる人がいたら友達になりたい感じの。
中でもM7「Haunt Me」が一番直球のハロウィンソング。「ハロウィンにはホラー映画(もしくは『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』)だ! それに付き合ってくれる友達はいないけど!」な同志に発信しているように思えるのは自分だけだろうか。

B級ホラーと同じくらいウェンズデイが影響を受けたのが、元祖ショック・ロッカーことアリス・クーパー。音楽自体はキャッチーながら、クセのあるボーカルとビジュアルがポップかつ毒々しいというアリスの特色は、ウェンズデイにも当てはまる。
キャッチーなロックンロールに乗っかったB級ホラーな歌詞は、チープな血糊みたいに毒々しくも鮮やか。それを歌い上げるウェンズデイのボーカルがまた、しわがれてはいるがデス声ってほどのドスや獰猛さもなく、何とも親しみやすいモンスターのよう。「親しみやすいモンスター」って一見矛盾してるようだけど、ある程度のホラー好きって、ゾンビや殺人鬼キャラのファンだったり「可愛い」なんて形容詞を使えたりするんですよ。ホントに。

そんなノリなので、「お前なんか大っ嫌いだ、死んじまえ!」「神様なんてウソだ!」「大統領に死を!」なんて少々物騒な歌詞も、可愛げのほうが勝るうえに一緒に歌いたくなるほど。実際、'05年の来日公演ではみんな一緒に歌っていた。
でも、本国アメリカで毎年のようにやってるハロウィンライヴは、もっとハイボルテージなんだろうなぁ。羨ましい限り。

ちなみに、「I Walked With A Zombie」に使われているのは、ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』('68)の映像。ついでに、曲タイトルも『私はゾンビと歩いた!』というRKOホラーから。ロメロ以前のゾンビなので、ブードゥーとの繋がりが深く、半死人だけど腐ってもいなければ人間を喰ったりもしない。むしろ美女。だからゾンビは大して怖くないんだけど、ブードゥーの案内人の異常なギョロ目&無表情の黒人には、暗がりで遭遇したくない人No.1に急浮上するほどギョッとしましたよ。


2012年3月20日火曜日

コーンバグズ/Rest Home For Robots

「音楽はオレの人生だ!」(いや、ホントに。)

CORNBUGS
Rest Home For Robots('05)




俳優があまりにもインパクトの強い役を演じると、たいていそのイメージから脱却するのに苦労する。インパクトの強い悪役となるとなおさらである。一時期のゲイリー・オールドマンなんか、『レオン』のスタンフィールド刑事のイメージが強くて、色んなところでブチギレ系の悪役やってたもんなぁ。
そんな中……インパクトの強い悪役から、こんなに脱却する気のない人に出会ったのは初めてです。ビル・モーズリィ。

奴の名はチョップトップ。『悪魔のいけにえ2』で、ギャーギャーわめいたりケタケタ笑ったりしながら、人を殺したり追い詰めたりしていたサイコ男。
頭からむき出しになったプレート(ベトナム戦争で負傷した痕跡らしい)の周りの皮膚/肉を、炙ったハンガーでカリカリしながらつまみ食いする癖も猟奇的。
そのくせ、音楽好きだったり、ふざけすぎて長男に怒られてたり、ほかの兄弟同様グランパ大好きだったり、「やんちゃ」で済まされてしまいそうな可愛げまで持ち合わせている。(賛否というか、否のほうが多そうですが)
一応、『2』のラストで倒されてはいるものの、死んだかどうかは定かではない。死んだとみなされていたり、その後逮捕されて精神病院に幽閉されたという設定もあったが、未公開に終わっている。
そういうわけでホントの詳細は不明だが、とりあえず奴は生きていた。しかも、新しく仲間を作っていた。
そして……1999年にコーンバクズとしてCDデビューしていたのである。

いくら一部で人気キャラとはいえ、『2』から13年越しでチョップトップを表舞台に出したところで、大きな意味はない。ファンはもちろん喜ぶけど、それ以外で誰かが得するわけでもない。
おそらく、チョップトップを演じたビル・モーズリィ自身、チョップトップが大好きなのだろう。実際、ビルのオフィシャルサイト、マイスペース、ツイッターユーザー名はチョップトップ名義である。
なおかつ、ビルとタッグを組んだギタリスト、バケットヘッドも、チョップトップが好きだからこそこのプロジェクトを動かしたのだろう。バケットヘッドは、ケンタッキーのパーティーバーレル頭にのっけて白マスク被った正体不明ギタリストだから、チョップトップと一緒にいても違和感ないし。

本作は1999~2001年までの曲を集めてリマスターした盤。CDは現在だいぶ高値なので、ダウンロードのほうが入手しやすいようだ。
見た目はイロモノ/腕は技巧派なバケットヘッドのリフと、ピンチフェイスのドラムが音楽の基盤。このギターリフがいかにもカッコいいロックで、しかもキャッチー。シンプルにして妖しげなリフの「In A Gadda Da Vida」(Iron Butterfly!!)好きなチョップトップのレーダーにも引っ掛かりそう。
そこに、ビルが安っぽいホラー的な歌詞をがなりたてて乗っける。いかにもチョップトップがその場で楽しく適当に歌っちゃったようなノリで、相手がサイコ野郎ということを忘れて微笑ましくなってしまう。(実際、曲はほとんど即興でつくられていたらしい)
短いM6「Ed Gein」で、「エド・ゲイン(『悪魔のいけにえ』のモデルとされる殺人鬼)はよく俺と間違われるんだよ」とブラックジョークを飛ばし、気色悪くエヘヘヘヘと笑うところも、いかにもチョップトップ。
M8「Pigs Are People Too」では「弟ババ」(=レザーフェイス)に言及するところもあり、いけにえファンをニヤリとさせる。
お遊び色の強さがリスナーを選ぶところだが、そもそもボーカルが知る人ぞ知るチョップトップという時点で、どういったリスナーをターゲットにしているのかよく分かるので問題ないだろう。

『2』で「Music is my life!」という名言を残しているチョップトップ。曲を聴いたりレコード集めたりするのみならず、ミュージシャン活動までしてしまって、さぞかしはしゃいでいるに違いない。
その活躍はファンにとっても喜ばしいことだろう。「好きが高じてバンドデビュー」って、ちょっとした夢のシナリオだしね。

残念ながら、コーンバグズは2007年に解散。現在、ビルはスパイダー・マウンテンというユニットで音楽活動をしているが、チョップトップを名乗ってはいない。
ただし、上記したビル関連のWebページは相変わらずチョップトップ。そこはやっぱり譲らないらしい。今年か来年に公開される『Texas Chainsaw Massacre 3D』ではドレイトン・ソーヤー(オリジナルでいうところのコックの長男だが、まったく同じキャラクターかは不明)役だが、ファンにとっても自身にとっても、ビル・モーズリィは永遠のチョップトップなのだろう。

2011年12月31日土曜日

レディー・ガガ/ボーン・ディス・ウェイ

2011年のヒト。
LADY GAGA
Born This Way ('11)



今さら言うまでもないが、2011年の代表格アーティストはこの方だろう。
チャリティ活動にしろ、来日にしろ、ファッションにしろ、音楽関連の受賞にしろ……とにかく有言実行のお方だ。しかも、期待値を遥かに上回る実行力だった。
とりわけ、この2ndアルバムに関しては、1st&ミニアルバムの成功をもろともしない完成度を達成してきた。

「人種や性がどうであれ自分を愛しなさい」(M2『Born This Way』より)なんて、今さら言われるまでもないメッセージのはず。
ただ、このメッセージをガガが発することが、重要なポイントだったように思える。
異形の姿でメインストリームど真ん中に堂々と立ち、批判もファンの多大な期待も堂々と受け止めるガガが、最高にキャッチーな音楽とMVでもってぶち上げたステイトメントだから、今さら感も説教臭さもなかったのではないだろうか。

「この運命のもとに生まれてきた」というタフなメッセージや、個人的な恋愛経験とキリスト教観を股にかけるアート(M4『Judas』)を提示するだけあって、全体的に1st『The Fame』よりもボーカルが逞しくなっている。正直、曲のバリエーションの幅は1stよりも狭いのだが、リズム感の良さとさらに洗練されたPVなどのアートワークのおかげだろうか、アルバム全体のインパクトは強かった。
ガガ様ご愛好の「キティちゃんのリボンヘア」的可愛らしさよりも、衝撃の「生肉ビキニ」の危険さと妙なカッコ良さに近いかもしれない。

唯一気がかりなのは、この成功によって、ガガの「次」へのプレッシャーがさらに重くなったこと。もちろん、聡いお方なので、次なる壁のこともとっくにお分かりになっているとは思う。
引き続き、「栄光の果て」で輝いていてほしいところだ。

ペイン/You Only Live Twice

偏屈(?)男、大いに遊ぶ。

PAIN
You Only Live Twice('11年)



ペインを実質ワンマンで動かしているのは、ピーター・テクレンというスウェーデンのアーティスト。
ピーターの写真を初めて見たのは、ペインの5thアルバム『Psalms Of Extinction』のジャケット写真だった。

問題のお写真はこちら↓

目つきの鋭い三白眼、きっちりとオールバックにした髪型、不機嫌そうに結ばれた口……
この写真から受けたピーターの印象は、「偏屈な賢人」だった。
しかし、ひとたびペインの曲を聴けば、偏屈どころか誰よりも柔軟な感覚の持ち主であることが分かる。

ピーター・テクレンは、もともとヒポクリシーでデスメタルをやっている。ペインではそれとは打って変わって、シンセサイザーを多用したキャッチーなロックンロールだ。ヒポクリシーの範囲ではできないことを思う存分やるプロジェクトとも考えられる。
近年は、シンセよりもギターが前に出たフィジカルなサウンドという印象だったが、このアルバムは久々に冷やかなシンセの音に覆われ、全体的にサイバー色が強くなっている。
それと同時に、スラッシュメタル、ロックンロール、ダンスビートなど、さまざまな音楽のテイストが取り込まれている。この引き出しの多さが、ピーターの柔軟性の表れといえる。
特に異色なのがM5「Dirty Woman」。リフはヘヴィな北欧ロックといった雰囲気だが、ボーカルがAC/DCのブライアン・ジョンソンを彷彿させる、渋い酒焼け風の声になっている。デスボイスもクリーンボイスもカッコ良く操るピーターだが、この手のボーカルには、ヒポクリシーでもペインでも今までお目にかかったことがない。
こうした音楽性の自由さがペインの魅力であり、ピーターがペインを続ける醍醐味なのかもしれない。