2013年5月26日日曜日

オズフェスト・ジャパン2013(5月12日編)

伝説、降臨。

OZZFEST JAPAN 2013
2013. 05. 12. 幕張メッセ

今回3万円近いチケット代を出したモチベーションの大半は、この日のヘッドライナーにあるといっても過言ではない。
5月5日のハリコンまで、まさか生きているうちに生でフレディことロバート・イングランドに会えるとは思ってなかったのだが……まさか生きているうちにヘヴィ・メタルの始祖、ブラック・サバスを拝めるとも、この日まで思っていなかった。

ところで、この日は昨日に比べて会場にゆとりがあるような気がしたのだが、まさか昨日の来場者の多くはももクロファンだった……ってこと?

昨日のマキシマム ザ ホルモンをフェスにいてくれると嬉しいバンドといったが、ホルモンとはまたちがうタイプでフェスにいてくれると嬉しいバンドがスティール・パンサー
一時期のモトリー・クルーを彷彿させる出で立ちで、「明日の夜にはパーティーに行くんだ!」(Tomorrow Night)「オレの心はお前のものだけど、オレの○○○は公共財産なんだぜ」(Community Property)みたいなきらびやかで良い感じに下品なメタルで沸かせてくれる。

音楽と同じくらい気合が入っているのがMC(別名スティール・パンサー劇場といいたい)。いちいち下ネタを交える、というか下ネタに曲紹介が混ざるといったほうが正しい。しかも「カノジョヲガクヤニヨコセ!」「デブ・リー・ロス、ガチデブ!」「オッパイミセロ!!」と、誰が教えたんだとスタッフさんを問い詰めたいような日本語MCまで。ここまで日本語下ネタMCに詳しいバンドは、あとゼブラヘッドぐらいかもしれない。
ちなみに、「オッパイミセロ!!」といわれて、本当にどなたかがおっぱいを出したらしい……。

↓スティール・パンサー絶好調(下ネタ込み)。

スティール・パンサーに続いて人間椅子がステージに立つと、下品なほどに明るいLAメタル風の世界から一転、ヘヴィで妖しい空間が。袴にたすき掛けや坊さんの袈裟みたいな格好の彼らが、江戸川乱歩や横溝正史、あるいは日本の怪談話風の世界観を鳴らす様相を見ると、「オズフェストよ、これが日本のメタルだ!!」と、お前何様かというほど誇りたくなる。オーディエンスからも「人間椅子!」コールが沸いていた。
和嶋さん(Vo./G)が「平成とともに歩んできた人間椅子、これからも気持ちの悪い曲を作っていきます!!」と高らかに宣言し、まさしくその気持ち悪い曲代表格の「人面瘡」になだれ込む瞬間がベストだった。

昨日のスリップノットからコリィ・テイラー(Vo.)とジェームズ・ルート(G)が続投のストーン・サワー。2日連続しかも異バンドで出るぐらいこの人たちなら余裕でこなすに決まってる……と知っていながらも、コリィの笑顔と、「コンニチワ、トーキョー!! コンバンワ、トーキョー!!」という相変わらずの挨拶に安心する。
「Gone Sovereign」で早速ヘッドバンギングが始まり、「Absolute Zero」の「♪イェエエエエエエ」コーラスをシンガロングするオーディエンスのノリ、コリィにも満足していただけた模様。昨日のスリップノットに続いて「歌を手伝ってくれ」と呼びかけられた「Say You'll Haunt Me」のコーラスと雄叫びにも、一同めいっぱいのボルテージで応える。

「Bother」~「Through Glass」の哀愁漂うアコースティックナンバーも想像以上にキマり、最後は「30/30-150」で再びの大暴れ。スリップノットにしろストーン・サワーにしろ、「また戻ってくる、約束するよ」というコリィの宣言が嬉しいところだ。

ここで休憩タイムを挟みつつディル・アン・グレイ。'10年のラウドパークで観たときも、音楽性がずっとヘヴィになったし京(Vo.)もグロウルが凄まじくなったなぁと思っていたら、今回はグロウルだけじゃなく、ヒステリックな甲高い叫びや気持ち悪さ寸前(褒めてます)のファルセットボイスまで網羅。奇妙なステージデザインといい複雑さを増した音楽性といい、うっすらプログレ寄りになってきたような。

それよりももっともっとプログレどっぷりなのが、次のTOOL。タイムテーブルから5分だけフライングして、18時に始まった。
メンバーは相変わらずさほど前に出ず、シルエットぐらいしか分からない。とはいえ、2m近くあるでっかいダニー・ケアリー(Ds.)と、小柄で何かと奇抜な格好の多いメイナード・ジェームズ・キーナン(Vo.)はすぐにわかる。まぁ、今回のメイナードさんは6年前と同じ付けモヒカンながら、ちゃんとTシャツなど服は着ているので、今までのパンツ一枚とかブラ着用とか顔面ペイントとかに比べれば普通といえるだろう。
しかし、'07年の単独来日のときにも目撃した、謎のカクカクした横揺れダンスは健在。狂気じみた民族舞踊というかペンギンダンスというか、あの動きだけで「コイツはヤバい」感を溢れさせるのだから不思議。
ちなみに、メイナードさんの第一声は、無愛想な「オハヨウゴザイマス」だった。

TOOLはその特異で複雑な音楽性からいって、メタル系のフェスでよく見るヘッドバンギングやモッシュやジャンプなどとは縁が薄い。しかし、その音ひとつで、あるいはメイナードの美声ひとつで、オーディエンスを聴き入らせる力があることは疑いようがない。
特にダニーのドラムは、横隔膜をビリビリさせるほどの迫力。オーディエンスが派手に暴れる光景こそなかったが、どれほど人を惹きつけていたかは曲間の歓声が物語っている。

音楽に次いでTOOLの世界観を構築しているのが、スクリーンに映し出される映像(MVの映像も込み)。むき出しの人体(またはそのパーツ)やスパイラルや幾何学模様は、やはり万人受けからは遠く、コアなファンは喜ぶ。実際、私の少し手前の女子勢が「うっ……」となっていた。フロア後方にもドン引きした方々が少しでもいればいいなぁと、妙な意地悪精神が持ち上がる。

しかし、レーザーとスモークを多用し、ラストを飾った「Stinkfist」のエンディングを引っ張り、紙吹雪爆弾で幕を下ろすのは、TOOLにしては珍しく分かりやすい派手な演出。いつもはずっとステージ後方にいるメイナードさんが、ステージ最前に出てきてピースサインしてお辞儀するのは、もっと珍しい。
オズフェスト仕様の対応だったのだろうか。何にしても、あまりに貴重な光景に、観ているこちらは感動すら覚えてしまったのだが。

↓妖しさまでは撮れない。

始祖が。神が。伝説が。遂に日本の地に降臨する。
オジー・オズボーン(Vo.)、トニー・アイオミ(G)、ギーザー・バトラー(B)という限りなくオリジナルに近い布陣のブラック・サバス。ビル・ワード不在は残念だが、このメンバーがそろって来日、しかもオズフェストのヘッドライナーをつとめるなど、メタル史上の事件。
私自身はオジー単独のステージは'10年のラウドパークで体験済みだったし、そのときの「ロック・レジェンドを目撃した!」という感動も半端じゃなかったのだが、そこにアイオミのギターとギーザーのベースが加わると、オジー単独以上に別格の感動がある。周辺からも、開演直前には「いよいよか」「ついに来たよ!」と期待のつぶやきがあちこちから聞こえていた。

「War Pigs」で幕を開けるやいなや、シンプルにしてズシンと重い、CDの世界で何度となく聴いてきたサバスの音がそこにあった。そしてオジーの独特なボーカルが入れば、もうまぎれもない伝説のブラック・サバス。それでいて、ディスプレイに映る近年の戦争/テロ事件の映像に、この曲の普遍性を再認識させられる。
このときのオーディエンスのシンガロングの響きは、当日最大レベルだったんじゃないかという気さえする。

ちなみに、オジーは3年前と変わらず動きがヨタヨタしていて、手拍子のリズムもなんか遅かったりしたが、もはやヨタってもズレてもカッコいいという特権があるので問題なし。オジーが天然なぶん、アイオミとギーザーがしっかりしてるしな。

サバスのステージ中は常に「今、伝説が目の前に!!」という興奮と感動が溢れ返っていたのだが、とりわけそれが強まった瞬間は、やはりすべての始まりたる「Black Sabbath」(黒い安息日)が演奏されたときだろう。一番単純でキャッチーにして暗黒・陰鬱・不吉なリフと、サタニズムほぼ直結のリリック。後のヘヴィ・メタルに脈々と受け継がれる要素の多くは、ここに詰まっているのだ。
「Black Sabbath」も素晴らしかったが、ギーザーのベースソロに始まり、"My name is Lucifer, please take my hand" が好きなフレーズでもある「N.I.B.」も個人的ベストモーメントだった。
↓伝説の瞬間最高峰「Black Sabbath」!!!

 「Iron Man」(トニー・スタークに先駆けた元祖アイアンマンはこちらですよ!!)に続いて、最新アルバムに収録される「God Is Dead?」がプレイされる。1stアルバムを想起させるドゥーム色が強い曲で、アルバム『13』への期待値を高めずにはいられない。
本編を「Children Of The Grave」で締めくくったあと、アンコールでアイオミが「Sabbath Bloody Sabbath」(血まみれの安息日)のリフをつま弾いたので、まさかそこにいくのかと思いきやそうではなく、やはり最後は「Paranoid」だった(今じゃ「血まみれの安息日」のキーにオジーの声が追いつかないもんな)。合間合間に一斉にジャンプが起きるものだから、フロアに一気に波が立っていた。
偏執狂の男の独白がこんなにも人を沸かせるのは、やはりサバスの力かもしれない。

↓アイオミが!!!
↓オジーが!!!!

メタル的猛暑が到来した2日間のあと、オフィシャルのオズフェストアカウントが「また日本で開催してもいいかな?」とツイートしていた。
またも何も、やるならいっそ毎年の春のメタル風物詩にしてくださいよ。そしてその暁には、1日目のレポートに挙げたようなポイント含め、運営側にいろいろと改善していただきたいです。

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