未体験ゾーンの映画たち2018
ヒューマントラストシネマ渋谷 2018.1.6~2018.4.6
こっちも今頃アップに至ったという遅刻も遅刻で。もう来年のラインナップどうなるのかと考えなきゃならない時期だというのに。
『チアーズ!』という変化球がやってきた去年に対し、今年はいつものド直球に立ち返った気がします。
屍に会える映画館、ヒュートラ渋谷。
(ラドクリフ出演作つながりで出張中だったそうです)
未体験ゾーンの映画たち2018極私的ベスト10
1位 68キル
主人公の置かれた(そしてこれから置かれる)状況を端的かつ的確に表したオープニングショットから、この映画はスゲェ! と思わせてくれる。6万8千ドルという、大金と呼ぶには微妙な大金のために血が流れまくるド底辺社会バイオレンス! しかも出てくる女がみんなコワくてぶっ飛んでて可愛い!! アホな男とヤバい女しか出てこないという点では『スガラムルディの魔女』を思い出すけど、舞台がアメリカのトレーラーハウス貧乏になると圧倒的に泥臭いです。
2位 Z Inc. ゼット・インク
Zと銘打ってはいるがゾンビに非ず。むしろゾンビは嫌でもこのウィルスになら感染したい! って人は多いんじゃないでしょうか!?主人公が非感染者のサバイバーではなくバリバリの感染者で、「よーーし感染と隔離が続いている間にオレをクビにした上司どもを血祭りにあげてやるぜゴラァァァ!!」という倫理的には間違っているがボンクラ的には大変正しいやる気に溢れているのが新しい。オフィス用品や工具を駆使したファイトといい、ヒロインの音楽趣味といい、不謹慎な爽快感を味わえます。
3位 ザ・ヴォイド
外にはカルト教団、中からはグジョグジョウネウネしたモンスター、挙句の果てには『ヘル・レイザー』か『ヘルケバブ』かというような地獄がオープン。洗練とグシャドロのイイとこどりをした(観てるぶんには)楽しい悪夢です。なんならもっとゴアやモンスターを暗がりじゃないところで見せてほしいくらい。ところで、エンドクレジットに流れる「バイバイ、オレたち王様に会いに行くよ」で、彼らがあちらの世界で対面したアレは、『ヘルレイザー2』の地獄の果てに出てくるアレではないのだろうかと思ったのですが……
4位 トラジディ・ガールズ
自分たちで人死にに至る事件を起こしておきながら「この悲劇を忘れないために……」とSNSにその事件を投稿する女子高生コンビ。さすがアメコミ界ではネガソニックちゃん(ブリアナ・ヒルデブランド)とストームちゃん(アレクサンドラ・シップ)なだけにキャラの強さが。SNSの病巣にしっぺ返しを食らわせたいのだろうかと思いきや、実際は彼女らに寄り添いまくった作品。随所に散りばめられたホラー映画ネタ(たまにチープだけど)に爆笑。「高校時代なぞくそくらえ」「でも友情は最強」なラストも、不謹慎なクセに爽快。
5位 アリバイ・ドット・コム カンヌの不倫旅行がヒャッハー! な大騒動になった件
監督・脚本・製作・出演勢は一緒だけど実際はヒャッハー! シリーズではない。しかしバカの規模は負けず劣らず。何故このタイミングで、この人に、このネタをやらせた!? な超絶くだらない最低な(褒めてます)映画パロディも満載。ちなみにコレ、観たら分かるけどヴァン・ダム映画でもありますよ。特に、ヘリコプターキックを真似して物理的または社会的に失敗したことある人のためのヴァン・ダム映画。
逆に、愛犬家と愛猫家には激怒必至のところも……
6位 アンデッド刑事 野獣捜査線
初っ端からコリィ・テイラーが悪ふざけ感満載で現れ、監督を務めるショーン・クラハンもマスクで顔を隠しつつ悪ノリし、さらに実はクリスとシドも出ていて……というスリップノット的贅沢映画。カンフー使いの禅マスターとかマシンガンシスターとかオモシロ悪役キャラが多いのはいいが、ダウン巡査不死身の秘密のくだりでシリアスドラマが長引きテンポが悪くなるのが課題点。たぶん今回のショーンのベストワークは、「オ・フィ・サーダウーーン♪ ダ・ダ・ダ・ダウーーン♪ ダ・ダ・ダ・ダウーーーーン♪♪」っていうバカっぽくて妙に覚えちゃうエンディングテーマの作曲です。
7位 ミッシング・チャイルド 呪いの十字架
幽霊ものではあるのだが、恐怖よりも喪失感が常につきまとう。主人公の精神科医は息子が3年前に失踪したきりだし、同時並行で語られる民宿設備中の夫婦と友人のエピソードでは妻が死産と、親が子供を失う哀しみが共通している。アイスランドの地の荒涼として寒々しい空気と呼応したホラーだ。まぁもちろん幽霊は出てくるし、その流れで死ぬのって結構ヤだなとも思わせてくれます。
8位 ドント・イット
話題作に便乗しすぎた結果「よーーーしお前ら中学校の英文法からやり直せ!!」と暴言赤ペン先生が爆誕する邦題になってしまった(原題『A Dark Song』)。しかし中身は、呪術儀式の手間ヒマと面倒くささをていねいに積み重ね、さらにびっくらかしに一切頼らず怪現象を描くとってもマジメなホラーだった。主人公とともに儀式を進める呪術師が、とても呪術を使えるとは思えない坊主・小太り・モサモサ髭と三拍子そろった下町訛りのおっさんというのもスリリング。このおっさんとの共同生活に、徐々に人ならざる何かが侵入してくる様が地味ながら良い。ただ、遂に開かれた地獄の門戸の果てに現れるアイツは、笑っちゃいかんのだけど笑える一歩手前なのよ……。
9位 (r)adius ラディウス
半径15m以内に入った生命体が皆死んでしまう男と、男の15m以内に入っても死なないし彼と一緒にいる限り死の影響が他に及ばない女。何故こうなったのか知りたくとも、2人とも自分が何者なのかさえ覚えていない! もちろんこの状況には理由があるのだが、重要なのは「何故こうなった?」ではなく「2人は何者で、一体何をしていたのか?」……という不思議なSF。最後の彼の決断は、ちょっと『トータル・リコール』っぽくも感じる。10位 ザ・ボルト
謎の地下金庫を巡って銀行強盗立て篭もりスリラー……と思いきや。こういう裏切りは大歓迎です。でも考えてみればこの銀行、強盗にとっては災厄を招くし、そこで働いてる人も件の地下に行かなければセーフだし、ある意味万全のセキュリティを誇ると言っていいのでは?ちなみに、『エイリアン コヴェナント』での扱いがアレだったジェームズ・フランコの巻き返し映画でもあります。
未体験ゾーンの映画たち2018極私的裏ベスト(ワーストに非ず)
1位 ゾンビ・レックス ~殺人ゾンビ恐竜 誕生~
私事ですが、以前「ゾンビ化した恐竜の映画ってないのかね?」という与太話をしてたことがあります。それがホントに存在していたからビックリです。しかし恐竜がそんなにゾンビゾンビしてねぇ! というか、さぞかしCG丸出しなのだろうと思っていたら、たまーーに着ぐるみやパペットになっている! ゾンビレックスに追われる軍人&学生チームは素人目にも分かるほど素人演技! そして黒幕はぬるま湯で薄めに薄めたイモータン・ジョー風マッド・サイエンティスト!
いや、想像以上にグラインドハウスでした。
2位 アイアン・スクワッド/鋼鉄戦線
こちらもまた想像以上にガチなグラインドハウス映画。クオリティはいろいろアレだけど、フアレスの麻薬王たるトレホさんがロボットに乗って「フアレスもメキシコもオレが制覇したるわ!!」と(自分ちの敷地内で)大暴れしてくれるから憎めない。最後までテンション高く付き合ってくださってありがとうございます、親爺さん。3位 ダブル/フェイス
「ニコラス・ケイジ、二人の女の罠に嵌る」との惹句だったが、本当は「ニコラス・ケイジ、ほぼほぼ蚊帳の外」。だいたいジーナ・ガーション(『フェイス/オフ』以来のニコさんとのカップル設定)が1人で頑張ってます。しかし、メンタルに問題ありとはいえ、犯人の動機となる「あんなことするの良い母親じゃない!」の発想力は、全世界の働くお母さんを敵に回すと思うよ。
未体験ゾーンの映画たち2018極私的ベストガイ
1位 ライザ&ヴァイオレット&モニカ(68キル)2位 トラジディ・ガールズ(トラジディ・ガールズ)
3位 頬に傷のあるバーン・ゴーマン(ウォーキング・ウィズ・エネミー)
4位 デレク・チョー&メラニー・クロス(Z Inc.)
5位 トレホさん(アイアン・スクワッド 鋼鉄戦線)
6位 スリップノットの皆さん(アンデッド刑事 野獣捜査線)
7位 呪術師のおっさん(ドント・イット)
8位 ジョン・バーンサル(スウィート・ヘル)
9位 マ・ドンソクさん(アンダードッグ 二人の男)
10位 ジェームズ・フランコ(ザ・ボルト)
なお、今年の未体験ゾーンにはゆるキャラが誕生してました。
MTV的なMTKパーカを着ているのがミチルダちゃん、
縫い目があるのがミタイケンシュタインだそうです。
果たして彼女らは来年も存在しているのか(失礼)……