2018年10月5日金曜日

未体験ゾーンの映画たち2017

「未体験」の概念はそれだけじゃないぞ。

未体験ゾーンの映画たち2017
2017.01.04.~2017.04.01. ヒューマントラストシネマ渋谷

まさか1年越しで投稿することになろうとはなー……自分がサボっただけのこととはいえ。



「もしも来年以降、配給会社さんが思い切ってファンタジー/ファミリー作品を送り込んだとしたら、未体験ゾーンの客層にも変化があるのだろうか? うーん、どう転ぶか分からないけど、そんな試みがあったらまた面白いだろうなぁ。」
……なんて2015年の未体験ゾーン記事で書いていたら、まさかの試みがやってきてたのですよ!!



未体験ゾーンの映画たち2017極私的ベスト10



1位 ダークレイン

正直に言って詐欺案件だ! ポスタービジュアルが詐欺ってのはよくあることだが、惹句も詐欺だし「ラスト何分の衝撃」ってのも詐欺! だがこんなに引っかかって嬉しい詐欺はなかなかないぞ!!
いや、さすが去年の未体験ゾーンの『パラドクス』の監督作。ウィルス感染でもなくゾンビ化でもなく○○○○○と化していく恐怖って……というか恐怖のはずなんだけどコレは笑うわ。ぶっちゃけ劇場で笑い起きたし。世にも奇妙な物語というか、未体験ゾーン改めトワイライトゾーンな映画でした。


2位 グースバンプス モンスターと秘密の書

逃げ出したモンスターを捕まえるというネタが『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』と被ってしまったのがイタいが、主人公サイドが魔法使いでも何でもないし特技もない、むしろダメ人間寄りなのがイイ。
何より本作に愛しさを覚えるのは、モンスターがもとはといえばボンクラの恨み言であり、その恨み言に対するしっぺ返しが脱走騒動であり、恨み言ばかりで引きこもっている場合じゃないぞ! という発破でもある点だ。


3位 チアーズ!

今回の「まさか」がコレ。「ソフトスルー予定だった映画を劇場で観られるチャンス」ではなく、「いつも未体験ゾーンに来ている君たちが未体験であろう映画のリバイバル」という新しい試み。旧作上映といえば2015年の『ネクロマンティック』もあるけど、そういう激ヤバカルト作なら知ってる/興味ある/観たことある人多そうだし。
チアリーダーといえば、未体験ゾーン常連的には「ホラー映画じゃ早めに死ぬヤな女筆頭」だが、ホントにマジメにチアリーディングをやっている女子たちは高い身体能力でもって怪我と隣り合わせで真摯に向き合っているし、ライバルチーム同士認め合っているのだ。ましてやそこに前向きさや明るさを備えていたら最強だ。うーーむちょっと心臓が痛くもなってくるが、我々とは(おそらく)最も程遠い青春観をぐっと引き寄せて見せてくれた『アントマン』のペイトン・リード監督、ありがとう


4位 エンド・オブ・トンネル

「もしも『暗くなるまで待って』のヘップバーンが座頭市だったら」が『ドント・ブリーズ』なら、「もしも『裏窓』のジェームズ・スチュアートがジョニー・ノックスヴィルだったら」ぐらいの無茶と冒険をやってくれるのが本作。というか主人公のホアキンさん
「立てば腕力(脚は不自由だから)、座ればエンジニア、喋る姿はクリストフ・ヴァルツ」な活躍は、少々話の先が読めても応援したくなってしまうし、計画に破綻が生じた際のどエラい辻褄あわせすら痛快ですよ。


5位 フリークス・シティ

この映画が作られたの2015年!? とびっくりするぐらい、2016年11月~2017年2月現在のアメリカの状況、ひいては世界の状況にぴったりな作品。いや、むしろここで描かれているような状況は前々から存在していて、ここ3ヶ月で急速に浮き彫りになったのかも。でもそれにしたって、アイツにキャラクターがそっくりなアイツがいるってのが恐ろしいわ。
ヴァンパイアと人間とゾンビのカースト社会というバカ映画の皮を被っているけど、世界中に見てほしい映画だよ。複線回収だって「えっ、それ複線だったの!? そんでわざわざ今回収すんの!? バカなの!? 天才なの!?」ってぐらい痛快だよ。


6位 FOUND.ファウンド

兄弟の奇妙な絆がかつてないほど残虐なスラッシャーホラーを生んだ。ラストカットの絶望感からは立ち直れない人も出たほど。
しかし何が一番キツいって、クローゼットに生首を隠し持つお兄ちゃんが、部屋に『ニンジャリアン』や『吐きだめの悪魔』やアイアン・メイデンやヴェノムのポスター貼ってて、『ヘル・レイザー』のビデオ持ってて……つまり、本作のようなスラッシャーホラーを好んでみる客層のメンタリティと地続きなこと。
「ホラー好きは猟奇犯罪を誘発する」は短絡的な発想だ。だが、もし一人のホラー好きが人種差別思想に影響を受けていたら? 理解ある友として誰かを溺愛していたら? 誰が/どのように/何がきっかけで怪物になるのかは不明瞭だ。それも余計に後味を悪くしている。


7位 真夜中のパリでヒャッハー!

昨年公開の『世界の果てまでヒャッハー!』の前日譚……というか本当はこっちが先に作られたファウンド・フッテージ・バカ
パリの一区画とブラジルリゾート地という舞台規模の差こそあれど、主人公フランクがあの規格外バカすぎる友達2人と一緒にいる限り十分にドタバタ下ネタコメディ達成。周囲への破壊行為と迷惑行為を省みず、このまま舞台を変えつつヒャッハーシリーズを続けていただきたい。
なお、極私的ベストネタは、リアルマリオカートをやりたいがためだけに張られた伏線です。


8位 GAME WARRIORS エバーモアの戦い

LARP、TRPG好きのみならず、メタル愛好家にも嬉しい映画。あとピーター・ディンクレイジの兄貴ファンにも嬉しい。
「いつまでも中世ファンタジーだのゲームだのに逃げてんじゃない! 大人になれ! 本気で戦え!」と言ってくるのかと思いきや、最終的にはそれでもオレはボンクラで頑張る! ボンクラパワーで戦う! ボンクラパワー最強!! ……という夢溢れる着地点でしたよ。


9位 ホーンテッド・サイト

事故物件の中から事故部屋をもぎとっては繋げもぎとっては繋げ、究極のハイパーお化け屋敷作るぜヒャッハーー!! なノリのつもりで観たら、思いのほかマジメな作りだった。肝心のお化けがモヤって出現してるだけなのはちと地味に映るが、屋敷に囚われている限りひたすら同じ悲劇の瞬間を繰り返さなければならないというのは物悲しいし、その場にいたら気がおかしくなりそう。(ほら、特にアメリカンお化けって、殴ったり突き飛ばしたりするバイオレント物理攻撃型多いじゃないですか)
ちなみに、主演のジェシカ・ロウンズはここでも可愛いけど、同じバウズマン監督作で残念ながら日本未公開&国内盤ソフト未発売の『The Devil's Carnival』のほうがもっと可愛いと思うんですよ……!


10位 PET 檻の中の乙女

一緒に食事やお喋りをするごく普通のお付き合いに憧れる内気な男が、誘拐・監禁という普通じゃない方法で女と距離を縮めたがる……という筋書きは『コレクター』を彷彿させるが、その上誰も彼もが普通じゃなかったら? 
さらに「自分のすべてを与えるのが愛」「愛とは犠牲」といった陳腐なはずの言葉が極限状況で突き詰められた結果、物語は恋愛版『マーターズ』と化す……! 
はい、この映画を引き合いに出すからにはそれなりに激痛な描写も多く、本編開始直前までガサガサガヤガヤしていた後方の大学生ぐらいの青年たちが、次第に「ひー……」と悲鳴を漏らすようになりました。



ついでに。

2017年未体験ゾーンの映画たち裏ベスト(ワーストに非ず)


1位 シーボーグ


凶悪な半機械エイリアン・シーボーグ(あまり動かない。あるいは動けない)が地球に飛来! 彼女に機械化された人間(鉄板をちょっとくっつけました)が人々を襲う! その前に立ち塞がったのは、カンフーができる(どう観てもプロレスっぽいけど)というガチムチ系女子高生たちだった……
驚くべきことに、2017年1月27という日に『ドクター・ストレンジ』でも『マグニフィセント・セブン』でもなく、色々とアレなコレを観てしまったことを、思ったほど後悔していません。


2位 PLANET OF THE SHARKS 鮫の惑星


『猿の惑星』と『ウォーターワールド』と幾多のZ級サメ映画を足しっぱなしにして、格安居酒屋のサワーと同じくらい薄めに薄めたこの映画を楽しめる人が未体験ゾーンには多い。それが証拠に、作品掲示板に貼り出されたお客さんの感想は「安定のアサイラム」「いつものアサイラム」「安心のアサイラムクオリティ」で埋まっていた……


3位 キックボクサー リジェネレーション


ヴァン・ダムさんが乗った自転車なら必死のランニングで追いかけられるかもしれないし、ヴァン・ダムさんがドカンと座り込んだ台車なら引っ張れるかもしれない! ような気がする。気がするだけ。でもヴァン・ダムさんにおどけてお見送りはされたい。
しかし何に一番驚いたかって、エンドクレジットで流れたあのダンスだよ。オリジナルの『キックボクサー』でヴァン・ダムさんがやったケツアピールダンスと、それを完コピした本作の弟子(アラン・ムウシー)のダンスが一緒に映されるんだよ。
そして今年の未体験ゾーン最大の迷言「ココナツ!」

なお次点は、人間狩りと感染症と物体Xと悪魔崇拝もろもろを盛れるだけ盛って、具体的な材料・調味料を明らかにしないまま「まぁ食え!」と豪快にお盆にのせてきたようなチリ産映画『ダウンヘル』です。


未体験ゾーンの映画たち2017ベストガイ


1位 大家さん(アブノーマル・ウォッチャー)
2位 ホアキンさん(エンド・オブ・トンネル)
3位 ダグレイ・スコット(ゾンビ・サファリパーク)
4位 デヴィッド・プラウズ(I AM YOUR FATHER アイ・アム・ユア・ファーザー)
5位 R.L.スタイン(ジャック・ブラック)(グースバンプス モンスターと秘密の書)
6位 デロリアンでタイムマシンを作った夫婦(バック・イン・タイム)
7位 ヴァン・ダムさん(キックボクサー リジェネレーション)
8位 ピーター・ディンクレイジ兄貴(GAME WARRIORS エバーモアの戦い)
9位 プール更衣室で豪快なステイサムジャンプをキメた女の子の幽霊(屍憶 SHIOKU)
10位 ジェベダイア・クローンさん(ホーンテッド・サイト)

役名と役者名が混在しております。


最後に自慢させてください。
未体験ゾーンに通いつめて4年目、ようやく達成しちまいました。
観賞30本で海外版チラシ30枚。

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