2019年1月13日日曜日

2018年映画極私的ベスト10

2018年=スクリーンが現実を侵食する。

3DやIMAXとはまた違った意味で、スクリーンの中の世界が客席へあふれてくる作品に恵まれた1年でしたよ。もっとも、あふれてくる世界が「恐怖」っていうのが多いんだけど。


1位 霊的ボリシェヴィキ
あの『リング』でさえまだ親切だったと思える。「向こう側」と「こちら側」がブラウン管TVという敷居で区切られていて、さらに向こう側からくる何かが「貞子」という具体的な形を取っていたのだから。「向こう側」「こちら側」の境界が曖昧向こうから何がやってくるのかも曖昧というよく分からない不安感は、瞬く間に客席をも呑み込んでいったのでした。ダーー・スメルチーーーー!!


2位 恐怖の報酬 完全版(ウィリアム・フリードキン)
果たして日本初公開だからって新作扱いでいいのだろうかと迷ったが、上半期の時点で同じく日本劇場初公開の『スパイナル・タップ』をベスト10に入れていたから今更だよな……と新作ベスト扱いに。
映画が終わって退席するころには「疲れた……」の声が客席のあちこちから聞こえてきたものだが、悪路でニトログリセリンを運搬するプレッシャーを観客がスクリーン内と共有するのだから無理もない。それだけでもいっぱいいっぱいなのに、爆弾テロの生々しさ、突然の自殺、幸せじゃない結婚式など「厭」が所かまわず敷き詰められている。フリードキンの鬼スピリットを浴び続ける2時間だよ。


3位 カメラを止めるな!
数多あるポンコツゾンビ映画をキライになれない理由はこういうことかもしれない……と思わされる。当事者には災厄と混乱のオンパレードだが、その中で生まれた映画作りの理想的ともいえる姿には爽やかさと感動すら残るのである。しかしまさかここまで世界を席巻する「ポンデミック」になろうとは……。


4位 怪談新耳袋Gメン冒険編 前編・後編
今回のミッションは本当に体力ゲージの上でもハードモードで、日ごろ運動不足マンには心底しんどい。走り屋の車がビュンビュン通る山道を歩き、岬で心霊リレートンネル1kmウォーキングガチ登山……そのストイックさが笑いと紙一重という新Gメンのスタイルが今回で確立されたように思える。
そんな中、崖下から這い上がってきた田野辺さん「ぶるんぶるん」に続く名調子を生み出した今宮さんの帰還など名シーンには事欠かないが、恐怖より缶チューハイを優先し霊安室で爆睡した西村監督がやはりMVP。


5位 ブリグズビー・ベア
『カメラを止めるな!』とは違った形の映画作りの理想形であり、『ヘイトフル・エイト』とは異なる魅せ方のフィクションの力を信じたくなる作品。何より作品づくりの楽しさの一番純粋なところを抽出しているから幸せだ。たとえ歪んだ形で作られた映画であっても、それが心に響き血肉に染み込んでいる人間のことまでも否定することはできない。そしてマーク・ハミルの貢献を称える映画


6位 ヘレディタリー 継承
完璧にして甘美な地獄。今までこうだと思っていた家族の姿や自分の世界にヒビが入っていく様子や、最悪な出来事が降りかかる瞬間は、考えうる限り一番厭な形で描かれる。着地点は実はさほど目新しいものではないのだけれど、そこまでに積み重ねた「厭」の勝利です。あと、崩壊していくトニ・コレットや、そこに佇むだけで不思議な空気を醸し出すミリー・シャピロなど、顔の力の勝利でもある。


7位 RAW 少女のめざめ
人肉食という異様で病んだ形で描かれてはいるが、実は真髄はピュアで普遍的な思春期もの。また、カニバリズムを介して姉妹愛や性愛が結びつく様子が、「愛する人に生きたまま食べられることは究極の愛の形態」というマンソン師匠の言葉を体現しているよう。そして、『変態村』『地獄愛』で暴投すぎる愛を受け止め続けてきたローラン・リュカが父親役であることにも大きな意味がありました。


8位 ゆれる人魚
こちらも体の変化を迎えた少女=人間になりたい人魚とした、思春期をファンタジーホラーとして描いたもの。王子ってアホな上にヒドいよな、人魚姫は優しすぎるよな、何かこう溜飲を下げる道が欲しいよな……と思った大人のための『人魚姫』でもある。それらを監督自身が経験したポーランドのナイトクラブ・カルチャーやミュージカルでくるんだ不思議テイスト。


9位 スパイナル・タップ
本当は88年の映画だけど、日本初劇場公開なので新作扱いにしてしまった。その昔DVDで観たときには、日本語字幕がポンコツすぎるあまり内容が全くアタマに入ってこなかった。その悲劇を乗り越え、どっかで観た覚えありすぎるロックバンドあるあるに数年ぶりに笑うことができた! ストーンヘンジ! マーシャルアンプ! ありがとうキングレコードさん!


10位 マンディ 地獄のロード・ウォリアー
パノス・コスマトス監督のスローで「静」の狂気を放つ極彩色トリップ空間に、一人血まみれでブチ切れる「動」の狂気ニコラス・ケイジという組み合わせが何故か異様に相性良し! マンディのためのレッドの復讐譚でありつつ、監督の前作『Beyond The Black Rainbow』のぶんの復讐も成し遂げられたように思える




次点(たくさん):
『68キル』(ヤバい女とアホまたはサイコな男しか出てこないド底辺バイオレンス!)

『Z Inc. ゼット・インク』(今なら最低な上司をぶっ殺しても正当防衛! こんなウィルスなら感染したいかもしれない爽快な不謹慎!)

『ボヘミアン・ラプソディ』(フレディ・マーキュリーの "伝記" ではなく "伝説" なのです)

『殺人者の記憶法』(アルツハイマーの元殺人鬼vs現役殺人鬼! 安定の韓国特濃暴力)

『ニンジャバットマン』(無茶苦茶をやるなら徹底的にやれという見本です)

『デス・バレット』(青い海と陽光が美しいのに荒涼としている、ネオ・ジャーロとウエスタンの合体)

『怪怪怪怪物!』(監禁されるのがいたいけな少女ではなく人食いの怪物でも人間は怪物と化してしまうという、スクールカースト交えの『隣の家の少女』)

『パディントン2』(可愛いクマさんの絵本物語を難民の物語に置き換えて描くなど、誰が想像できただろうか……)

『北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイ』(北朝鮮でライバッハという何が生まれるか分からない劇薬化学反応かと思いきや、社会主義を生き延びたライバッハの柔軟さを見せられました。あと北朝鮮の通訳さんが苦労性)

『ファミリー☆ウォーズ』(口やかましい家族至上主義を筆頭に登場人物全員クズ! クズ同士のぶつかり合いつぶし合いがアブない&痛快!)



2018年裏ベスト

1位 シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2018予告編

直接動画を貼れなかったのでリンクはこちら
千葉繁さんのハイテンションナレーションにすごく元気もらえるので、ヒューマントラスト渋谷のロビーで流れてたらメンタル充電のために観にいったぐらい。




2018年リバイバル映画ベスト10


1位 エルム街の悪夢(in TOHOシネマズ六本木ヒルズ/東京国際映画祭オールナイト 金曜洋画劇場)
2位 ロック・ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ(in 立川シネマシティ)
3位 爆裂都市 BURST CITY(in Zepp Divercity&キネカ大森)
4位 ロボコップ(in TOHOシネマズ六本木ヒルズ/東京国際映画祭オールナイト 金曜洋画劇場)
5位 ブルース・ブラザーズ2000(in 立川シネマシティ)
6位 リターン・オブ・ザ・キラートマト(in シネマカリテ/カリコレ2018)
7位 バタリアン(in 国立映画アーカイブ/現代アメリカ映画選集)
8位 ラスト・アクション・ヒーロー(in 新文芸座)
9位 キャプテン・スーパーマーケット 死霊のはらわたⅢ(in 国立映画アーカイブ/現代アメリカ映画選集)
10位 ミッドナイトクロス(in シネマート新宿/のむコレ)

私、その昔『エルム街の悪夢』を劇場で観賞するを見たことがあるのですが、そこで上映されてた素材はなぜかあちこちカットされまくっていて、フレディの見せ場まで減っているという最悪なシロモノでした。今回はまぎれもない現実に、完全な状態&オールナイトの一番眠くなるはずの時間帯という完璧なシチュエーションでホンモノを観る事ができて、まさに夢のような体験ですよ。


2018年未公開映画ベスト5
1位 ミッドナイト・スペシャル
2位 マザー!
3位 ヒットマンズ・ボディガード
4位 軽い男じゃないのよ
5位 XX

もしかすると一昨年配信の作品も含まれているかもしれませんが。『ミッドナイト・スペシャル』は『テイク・シェルター』と二本立てで上映してもいいんじゃないかと思うよ。



2018年ドラマベスト3
1位 ツイン・ピークス ザ・リターン
2位 ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス
3位 マインドハンター
4位 ストレンジャー・シングス
5位 SICK NOTE

せっかく加入しているし(値上げもしたし)Netflix料金をムダにしたくないので色々観るようにしました。と言いつつ1位は(今のところ)配信でないドラマなんだけど……コレはもう仕方ないよ! リンチが本気出したんだもの!!