2013年3月11日月曜日

96時間/96時間 リベンジ

ライバルはセガールです(たぶん)。

96時間('08)
監督:ピエール・モレル
出演:リーアム・ニーソン、マギー・グレイス

96時間 リベンジ('12)
監督:オリヴィエ・メガトン
出演:リーアム・ニーソン、マギー・グレイス



「最強のオヤジ」スティーヴン・セガールの専売特許を脅かす「無敵のオヤジ」が、まさか還暦に達してからのこのお方になろうとは……。

96時間

パリを拠点にする人身売買組織。今日も世間知らずでバカっぽいアメリカ人ツーリストの女の子に目をつけ、たやすく誘拐。あとは顧客に売りに出すだけのはずだった。しかしここで思わぬ大誤算が! 誘拐した娘の父親が、最強の元秘密工作員、リーアム・ニーソンだったのだ……!! 

(訳:元秘密工作員のブライアン・ミルズは、臨時雇いの仕事をしながら、ときどき別れた妻レノーアと17歳の娘キムに会うという引退生活を過ごしていた。あるとき、キムが友人とパリへ旅行に行くという。娘を溺愛するブライアンは反対するが、娘との仲に亀裂を入れたくないがために渋々承諾。しかし、パリ到着からまもなく、キムは人身売買の組織員に誘拐されてしまう。被害者の救出が可能なのは、誘拐から96時間以内。ブライアンは、時間内にキムを探し出すことができるのか……)

「娘のためならエッフェル塔も壊す」……と言っても幸いエッフェル塔は無事なのだが、関係者はほとんど無事じゃない。誘拐に関わった人間がバンバン撃たれて首ボキボキ折られるのはまぁ想定内としても、犯人グループの1人の両脚に電極ぶっ刺して拷問&感電死、パリ市警の汚職警官の奥さん(何も知らない)にまで銃で傷を負わせるともなれば、容赦がないにもほどがある。

もしこれがセガールだったら、「しょうがないよ、セガールだもの!!」という免罪符(という名のあきらめ)で乗り切るのだろうが、そこはリーアム・ニーソン。娘に会えてニコニコが止まらなかったり、海外旅行行きたい言われて当惑していた子煩悩パパから、我が子の危機を知った瞬間必殺仕事人の顔に変貌を遂げる。それでいて、変貌前だろうと後だろうと、すべては愛する家族のためと一貫している。それゆえ、たとえ情け無用の殺人マシーン化していようとも、優しさと意志の強さを持った頼れる父親というイメージからブレがないのである。

もちろん、ツッコミどころは上記のように山とあるのだが、リーアムのスゴみの前では「いえ、何でもありません!!」と敬礼付きで口を閉じたくなってしまうものが。

96時間 リベンジ

(娘との通話にて)「いいか、父さんと母さんはまもなく誘拐される! そして奴らはお前のところにも向かっている! だが母さんもお前も父さんが守る!!」
……以上すべて有言実行。それがリーアム・ニーソン・クオリティ。

(訳:イスタンブールで警護の仕事を終えたブライアンのもとに、前作の事件から急速に距離が縮まったレノーアとキムが遊びにきてくれた。ひさびさに家族水入らずで過ごせるかと思いきや、前作で人身売買組織員の息子を殺されたアルバニア人グループが復讐にやってきて、今度はブライアンとレノーアが誘拐される。ブライアンは再び、元秘密工作員のスキルを駆使して、妻と娘を守るべく戦いはじめる。)

少ない手がかりからパリで娘を探し出すという脅威のトラッキング能力を持つブライアン。それは自分が誘拐される側であっても変わらない。
乗せられた車が曲がる方向や時間、移動中の物音を逐一頭に入れたり、犯人グループに発見されずに助かった娘の力を借りたりで、自分の居場所を特定してしまう。それ以前にオープニングで、元妻宅でキムに彼氏がいるという衝撃の事実(当社比)を知らされたブライアンが、次に彼氏宅のシーンになるともう玄関前に立っているという、間違ったトラッキング能力の使い方を披露している。

もはや96時間というタイムリミットは関係ないし、そもそもタイムリミットがない普通の追跡劇。愛する家族のためとはいえ必要以上に相手を痛めつけるブライアンのやりすぎ感も控えめ。サスペンスとバイオレンスが前作より落ちる分、アクションに期待したいところだったのだが、それすらカメラがガチャガチャブレてキメ画に欠けるという難点が。

ただそれでも、自分の居場所特定のためにイスタンブールのど真ん中でキムに手りゅう弾を投げさせたり、まだ無免許のキムに逃走車両を運転させ「左に切れ!!」「突っ込め!!」「いいから加速しろ!!!」と地獄のカーチェイス教習所が始まるなど、ある程度はパパの暴走劇を堪能できる。いざとなったら我が娘でも使えというのが今回の教訓だろうか。たぶん違うだろうけど。
とはいえ、ある意味本当のパパの戦いは、娘に正式に彼氏を紹介されたところから始まるのだろう。


実は背後に「リュック・ベッソン製作」ってのが控えているこのシリーズ。
主人公が男なら「愛する者を命に代えても守り抜く」、女なら「愛する者を殺された復讐に燃える」って設定が大好きらしいベッソンなので(そう考えると『レオン』はベッソンにとって二重に美味しかったのかなと)、前者に相当する本作もそれなりにご満悦だったのではないかと。

また続編が作られるとしてもおかしくはないのだが、そうなると次に誘拐されるのは娘の彼氏だろうか。で、「誤解するな。お前のためじゃない。お前を愛している娘のためだ!」とか言ってリーアムパパが助けにいくとか。パート1ではただ世間知らずで不用心で観客をイラっとさせるばかりだった娘キムも、パート2ではできる限りパパの力になろうと努力するというめざましい成長を遂げていたので、今度は奥さんのレノーアに成長していただきたいところだ。何せ彼女はファムケ・ヤンセン=ゼニア・オナトップですし。

それと、タイトルは「リベンジ」のあとどうするんだろう。「アルティメット」か? 「フォーエバー」か? 「惨劇の館」か? 「リジェネレーション」か? 「怒りの○○」か? まさか「ダークサイド・ムーン」か?

(加筆:「レクイエム」に落ち着いた。でもそんなことよりファムケ・ヤンセンを活躍させないまま退場させたことのほうが問題だぞ)

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