2013年3月11日月曜日

キャビン

すべてのホラーには理由(と愛)がある。

キャビン('12)
監督:ドリュー・ゴダード
出演:クリステン・コノリー、クリス・ヘムズワース



実は一足お先に、去年観賞していたこの映画。何か書こうものならうっかりネタバレしかねないが、ネタバレ部分こそが面白さの真髄、さてどう語ればいいものかと悩んでいるうちに……
日本版ポスターとチラシとオフィシャルサイトと予告編がそのへんを思いっきりバラしていて愕然としましたよ。

5人の若者が週末を過ごしに山小屋へ行く。スポーツ得意なイケメン、その金髪の彼女、マジメな秀才くん、マジメでピュアな女の子、マリファナ吸ってばかりのボケキャラ兄ちゃんと、その筋では定番のメンバー……ということにだいたいなっている。

道中、さびれたガソリンスタンドに寄ると、店主は怪しげな頑固じいさん。「あの山小屋には行っちゃならん」的なことを言われるが、もちろん行っちゃう。

昼は湖でキャッキャ、夜は飲み会でキャッキャする若者たち。と、そこでなぜか突然地下室に通じる床ドアが開く。入ってみると、中には古いオルゴールやらフィルムやら箱やら、あからさまに怪しいアイテムがたくさん。その中から日記帳を手に取り、謎の言葉を読み上げると、外でゾンビが復活。彼らは1人ずつ血祭りに……。

なぜ今ごろメジャー映画シーンでこんなベタベタなスラッシャー・ホラーなのか。
なぜこの手のホラーにはお約束の展開が必要なのか。
そして、ちょいちょい出てきて若者たちの様子をチェックしているスーツのおっちゃんたちは一体何なのか……。

日本では「マルチ・レイヤー・スリラー」と、分かるような分からないような宣伝をされていたが、本作が熱烈なホラー愛に基づいてつくられていることは明確である。
もちろん、残酷描写にそこそこ耐性があるならホラー好きでない人にも観てほしいという思いはあるのだが、ホラー好きだからこそ楽しめる側面のほうがデカいと言わざるをえない。
上記あらすじのホラー映画鉄板のストーリーを書くのだって、鉄板のシチュエーションや小道具を持ち込むのだって、それなりにホラー映画を観まくっているからこそできることなのだ。(『死霊のはらわた』を観たことがある人なら、舞台となる山小屋の造りにニヤリとしたくなるだろう)

ちなみに、Jホラーへのオマージュもあったりする。微妙に間違っているところもあるけど、愛は受け止めてあげていただきたい……。

とにかくネタバレ厳禁なので、面白いところに触れられないのが歯がゆくてしかたない。とりあえず、ラストは「祭り」というか「アッセンブル」というか「エクスペンダブルズ」的な……とだけは伝えたい。このラストにこそ一番ホラー愛がぎっしり詰まって、詰まって詰まって詰まりすぎてダムが決壊している。
「そこから先は――賭けてもいい。絶対に読めない」なんて日本の宣伝文句に賭けるよりは、ダムの決壊ぶりを大船に乗って血の海で揺られまくった気分でハイになって楽しんでいただいたほうがいいように思える。

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