2013年4月5日金曜日

2000人の狂人(マニアック2000)

ヒーーーハーーー!! (ブラマヨ小杉に非ず)

2000人の狂人(マニアック2000)('64)
監督:ハーシェル・ゴードン・ルイス
出演:コニー・メイソン、トーマス・ウッド



一度DVD発売された際、タイトルが「マニアック2000」になっているのは、きっとオトナの事情です。そのわりに再発盤ではもとのタイトルに戻ってたりするので、オトナの事情は大して意味がなかったようです。


本作のオープニングから流れる、ルイス監督作のカントリーソング「The South Is Gonna Rise Again」(音声のみ)。牧歌的なメロディながら、歌ってることはちょい怖い。『インブレッド』の「Ee by gumソング」はこれが元ネタに違いない。
「ヒーーーハーーー!!」といえば一般的にブラックマヨネーズの小杉ですが、この映画を観て以来、私にとってはルイス監督でありプレザントヴァレーの皆様です。

地図に載っていないアメリカ南部の村、プレザントヴァレーに迷い込んだ3組の北部出身カップル。彼らは村人から歓待を受け、これから行われる百年祭の特別ゲストとして滞在を勧められる。
しかし実は、プレザントヴァレーは南北戦争で村人全員が北軍に虐殺されたいわくつきの村。村人たちは百年前の北部人への恨みを果たさんとしていたのだ。かくして、祝賀ムードと陽気なカントリーソングの中、カップルたちは次々と血祭りにあげられていく。

「南北戦争の虐殺の復讐」なんておどろおどろしい背景のわりには、舞台は抜けるような青空で、カントリーソングが流れるカラリとした雰囲気で、村人の皆さんみんな笑顔で陽気でハイテンション。そんな状況下で旅行者たちを惨殺するところが不気味という見方もあるが。
といっても、スプラッターシーンは死に様のムゴさに反して描写はあっさり。斧で腕部分をばっさりいかれただけであっけなく死んでいたり、馬による四肢裂きと思った次の瞬間には犠牲者がマネキンに……もといバラバラ死体になっていたりする。「えっ? それもう死んでるの? それでいいの??」という微妙な空気を残すところは、『インブレッド』に受け継がれているようだ。純粋にゴアゴアな描写を求めるとスカかもしれない。
なお、ルイス監督は「初めてスクリーンで内臓を出しちゃった人」だが、本作には内臓の出るシーンはない。

『2000人の狂人』と言いつつ、出てくる村人は30人足らずといったところもツッコミどころか。ただそこは客寄せのためにちょっと……いや相当多めに盛ってみた監督さんのガッツということで。
あと「残りの1970人(仮)はみんなの心の中にいるんだよ!」という泥沼ポジティブ意見も考えてみました。

以下、ネタバレを含みます。



実はプレザントヴァレーは実はとっくに消滅した村であり、村人の皆さんは南北戦争時に殺された人々の亡霊である。
晴天の下に出てきて、あんなに血色よくて陽性気質な亡霊も珍しい。消えるときも消えるときで「じゃまた100年後に一仕事すんべか」とアッサリ。
そういう意味じゃ、スプラッターの始祖という点より、こちらの亡霊描写のほうがレア度が高いかもしれない。

ちなみに、私個人はこの映画をシアターN渋谷のハーシェル・ゴードン・ルイス映画祭にて観賞。犠牲者が出るたびに場内が温かい苦笑に満ち溢れるという、貴重にして素敵な時間を過ごしました。
『血の祝祭日』観賞の際には、終了後に映画秘宝Devilpressの皆様のトークショーも拝聴し、手造り&素人感溢れるルイス監督の映画製作エピソードを楽しんだものです。
そういう意味でも、ルイス監督とその作品、シアターN、Devilpressの皆様と、全員に感謝したいところです。

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