2012年10月23日火曜日

インブレッド

これが、変態鬼畜の、モンティ・パイソン形!

インブレッド('11)
監督:アレックス・シャンドン
出演:ジョー・ハートリー、シェイマス・オニール



下に貼ったのは、本作のメインテーマ「The Inbred Song (Ee by gum)」。Ee by gumは北部の方言でOh my godだそうです。日本語訳は「こんチクショウめ」になっています。
言われなくても分かることですが、下に書いてあるのは歌詞の訳ではありません。


♪ 聞かせてやろうー 悲劇の実話をー Ee by, ee by gum!
  監督に釣られてー つい観てしまったー Ee by, ee by gum!!
(間奏)
♪ コレ語るときー ボルテージ上がるー Ee by, ee by gum!
  たぶん普段よりー ドン引きされるー Ee by, ee by gum!!
(間奏)
♪ しかもテーマ曲ー 頭っから離れないー Ee by, ee by gum!
  ついにiTunesでー 購入に至るー EE BY, EE BY GUM……!!!

……観ていて気分悪くはならなかったものの、どうやら自分は違う意味で大丈夫じゃないようです。

更生プログラムの一環として、社会奉仕活動を義務付けられた少年犯罪者たちと、引率の保護観察官。彼らがたどり着いたのは、カーナビに載っていないモートレイクという村で、住人たちはどこか怪しげ。
不審に思いながらも翌日活動を始めた中、彼らは村の若者たちとモメて、挙句監察官の1人がケガをしてしまう。助けを求める少年たちと監察官だったが、パブの店主をはじめとする村人たちに捕えられ、殺人ショーの見世物にされていく。

Inbredとは「近親交配の」という意味。劇中では明言されていないが、どうやらモートレイク(Mort Lake=『死の湖』ってまたどストレートな……)の住民たちは、かつて隔離施設に収容されていた精神異常者の近親婚で生まれた子孫たちで、現在もタガが外れまくった方向に磨きをかけて繁栄中……という「はい、倫理的にアウトーー!!!」な設定らしい。全員薄汚くて(一部はあからさまに汚くて)歯並びガバガバという見た目設定もいろいろアウトだろう。

しかし、基盤は思いっきりインモラルながら、中核となる残虐描写は、スプラッターファンからしてみるとちょっと拍子抜けするかもしれない。もちろん、普通の観点からすれば十分ムゴいのだが、「あ、あれ? 来るぞ来るぞって結構引っ張ったわりにすぐ死んじゃったけど!?」というあっさり気味に。
被害者たちが射殺や轢き逃げで村人に逆襲というところで、ずいぶんと派手に人体を破壊するサービス精神(仮)もあるのだが。

意外にあっさりな死や、ド田舎で大量殺戮系ストーリーは、ハーシェル・ゴードン・ルイス(スプラッターの始祖といわれる監督。要はスクリーンで初めて人間の内臓を出しちゃった人)の『2000人の狂人』を明らかに意識しているといえる。
そのへんを知っていると、あるいはシャンドン監督の過去の血みどろ作品がビバご都合主義で結構ワンパクだと知っていると妙に納得するところもあるのだが、事前情報なしのまっさらな状態で観ると辛口になってしまいそうだ。
このあたりは、「変態鬼畜の最新進化系」だの「殺人オリンピック」だの「殺しのハイスコア」だの「ガマン大会」だの、ちょっと本来の筋と違ってしまった宣伝の煽り文句にも責任があるんじゃないかという気もする。

そんなわけで、私個人がこの映画で「おおっ!」と感動すら覚えたのは、スプラッター描写ではなく、ブラックすぎるお笑い部分だった。この手の映画で、まさかモンティ・パイソンを意識した笑いが見られるとは思わなかった。
和気藹々としながら殺しに興じる村人たちの様相は、和気藹々とした雰囲気でタブーなやりとりをするパイソンズのごとし。また、動物虐待と、逆に過剰な(そして間違った方向性の)動物愛をおちょくるところも、パイソンズおなじみのネタ。『人生狂騒曲』を観た人なら、アレで人体がパーンとなるシーンで、テリーJが演じたデブ男クレオソートを連想するだろう。何より、見世物小屋の「裸のオルガン奏者」を見たら、第3シーズンのテリーJを思い出さずにはいられない! 

そういえば、ボツになったパイソンズのスケッチの中に、レストランでワインを飲んだと思ったらそれは×××××だったという通称「ウィー・ウィー・スケッチ」があったらしいのだが、それに近いネタもあるといえばある。シャンドン監督、実は結構なパイソニアンじゃなかろうか。

また、パイソンズを観る限り、イギリス人は自虐ネタを嬉々としてやるようだけど、舞台となったヨークシャーの皆さんはこの映画をどう思ってるんだろう?

ちなみに、シャンドン監督が過去に制作した低予算ホラー『Cradle Of Fear』の予告がこちら↓。私ひいきのバンド、クレイドル・オブ・フィルスのボーカリスト、ダニ・フィルスが主役に。念のため、流血がダメな方はご覧にならないほうが。本編を観たい方は、今のところYouTubeで検索したら出てきます。字幕はありません。
あと、BGMのクレイドルの曲も、ダニのボーカルがキャーキャーしてて、ダメな方には耳に障るかもしれません。私は初めて聴いたときから大好きですが。

0 件のコメント:

コメントを投稿