2013年6月4日火曜日

ゾンビ・ストリッパーズ

腐ってもおっぱい……なのか?

ゾンビ・ストリッパーズ('08)
監督:ジェイ・リー
出演:ロバート・イングランド、ジェナ・ジェイムソン



確かに私はジェナ・ジェイムソンがもともとポルノスターだと知っていた。しかし、それはマリリン・マンソンの自伝に彼女のことが書いてあったのを読んだからで、せいぜい「昔マンソンと何かあった人」程度の関心。この作品において私の関心は別のところにあるのだ。
だから、本作をポチったからといって、トップページでジェナさんの本業のDVDをレコメンドしなくてもいいんだよAmazonさん!!

そう遠くない未来(仮)。第4期目に突入したブッシュ政権は戦争に明け暮れ、慢性的兵力不足に悩んでいた。そこで開発されたのが、死んだ兵士を甦らせ、恐れを知らない真のスーパー兵士に変貌させる薬。ただし、この手の発明のお約束として、薬の研究所ではゾンビハザードが……。
凄腕の少数精鋭兵士Z分隊が何とか事態を鎮圧するが、実は噛まれてウィルスに感染してしまった新米兵士が、殺されるのを恐れて研究所を脱走。辿りついた先は違法ストリップクラブ「ライノ」。政府にストリップクラブの営業を禁止されて今はアングラ経営。その間にも徐々にウィルスに侵食されていった兵士は見事ゾンビ化し、ステージ上のトップダンサー、キャットにガブリ。
当然、キャットもゾンビ化して甦るのだが……そのままステージに上り、今まで以上に過激でアグレッシブなダンスでお客を大熱狂させる。スーパー兵士を作る薬で感染したストリッパーは、恐れを知らない真のスーパーストリッパーに生まれ変わったのだ!! まぁ、言ってもゾンビだから、バックステージでお客を文字通り喰っちゃうのだが。
「ライノ」のオーナー・イアンは、これをチャンスと金儲けに走り、キャットへの憧れやライバル心から自ら噛まれてゾンビとなるストリッパーも。しかし、クラブの地下はストリッパーたちに喰われてゾンビ化した男どもでいっぱいいっぱい。Z分隊も感染者の行方を追って「ライノ」に辿りつこうとしていた。果たして、このカオスにどうやって収拾をつけるのか……?

ブッシュ政権が長引いて戦争も長期化してる背景、女のほうがウィルスの感染進行が遅いという都合のいい設定、ストリップだけに出し惜しみなしのエロ、ストリッパーじゃなくても兵士のおねえちゃんもタンクトップかブラだけになるというムダなちょいエロ、そんなエロに見合わせて意外に気合の入ったグロ、ときおり混じってはエログロをまろやかにするお笑い、そしてエロ・グロ・笑いに隠れてサブリミナル程度に残る社会風刺……

これほど潔いB級ホラーも、近年なかなか貴重ではないかと。ストリッパーとゾンビという掛け合わせも、斬新というかイイ感じに頭が悪くて潔い。
コメンタリーで裏話を聞いてみると、監督さんが現場で撮影も担当してたり、スタッフがエキストラも兼任してたりと、いかにも低予算撮影現場なお話がゴロゴロしていたのも微笑ましいところだ。

ところで、ストリッパーがゾンビ化して激しいダンスを見せるほどお客たちは熱狂するんだけど、いかんせん1回死んでるので、時間が経過するにつれ彼女らは腐敗が進んでくる。中盤もすぎると、天下のジェナといえども結構ボロボロ。このあたりまでくるとエロの度合いも下がってくる。
それでも客が集まってくるのは、オーナーの言うとおり「ゴスは流行」だからなのか。それとも、裸よりもアクロバティックなダンスに夢中になったのか。まさか……裸が拝めるんなら腐っていようと関係ないぜというメンタリティの方々が集ったのか?

なお、本作はフランスの劇作家ユージーン・イオネスコの演劇『犀(サイ)』がモデルになっているとか。一応、クラブの名前は「ライノ」だし、ロバートさん演じるオーナーの本名はイアン・エスコで作者のもじりだし、唯一マトモなストリッパー・ブランジェの名前は『犀』の主人公からきてるし、後半の彼女のセリフは『犀』終盤のダイアローグを参照している。
出演者もそこは褒めてたけど、いかんせんエログロのインパクトのほうが勝ってたもんで。自分文学クラスでこの台本読んで試験勉強もしたけど、完全にゾンビ・ストリッパーズとロバート・イングランドさんに気取られてて分からなかったよ。

そう、この映画の極私的見どころは、やっぱりロバート・イングランドさんなのである。イングランドさんが出るだけで、B級ホラーも格調高くなる(当社比)。
イアンは卑屈で、小心者で、金に汚くて、ダーティーワークは全部他人に押しつける。ストリップクラブのオーナーという役得みたいな地位なのに、「汚いから触るな」とばかりにストリッパーたちをバイ菌扱いして除菌スプレーをかけまくる。どこからどう見ても、フレディ・クルーガーとはちがったベクトルで最低野郎のはず。

しかしどういうわけか、一挙一動、表情1つ1つが不思議とチャーミングで、どうしても憎み切れない。このへんはどう見ても、それこそ『エルム街の悪夢』のフレディや『2001人の狂宴』のバックマン町長同様、ロバートさん自身の魅力によるところが大きい。フレディの火傷メイクの上からでもダダ漏れていたチャーム、素顔になると余計流出が激しいようで。それも、ファンのフィルターを通すとなおさら……。
ちなみに、怒って相手を威嚇するようなポーズをとったとき、右手がフレディっぽくなる瞬間があるので注目です。

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