2012年7月24日火曜日

ダーク・シャドウ

いつものように、アウトサイダー万歳。

ダーク・シャドウ('12)
監督:ティム・バートン
出演:ジョニー・デップ、エヴァ・グリーン



あの、実はここまで続いてるんですよ。プチフレディ祭り。強引ですけど、一応関係ありますよ。
ジョニー・デップは、オリジナル『エルム街の悪夢』のヒロインの彼氏(フレディに殺されるけど)。
使用人ウィリー役のジャッキー・アール・ヘイリーは、リメイク版『エルム街』の二代目フレディ。
本人役のアリス・クーパーは、『ファイナルナイトメア(エルム街6)』に登場したフレディの義理の親父にして、元祖Welcome to my nightmare。
このへん全部に詳しい人とは友達になれそうな気がする。気がするだけ。

18世紀半ば、嫉妬深い魔女に呪いをかけられて、愛する人を失い、ヴァンパイアに変貌し、生き埋めにされたバーナバス・コリンズ。
1972年、彼は偶然棺から甦ったが、200年の間に街は大きく変わり、名家だったコリンズ家は落ちぶれていた。バーナバスは一族の復興を掲げるものの、200年分のジェネレーション・ギャップを引きずりっぱなしのうえ、コリンズ家の内幕は不和だらけ。
そのうえ、現在この街を牛耳っているのは、バーナバスに呪いをかけた本人であり、今は企業の社長となっている魔女アンジェリークだった。

「家族思いのヴァンパイア」「家族のために戦う!」というファミリー路線が強調されていたような日本の宣伝。
しかし、蓋を開けてみれば、家族はただの舞台装置にすぎない。それどころか、「血がつながっていたって、自分を理解も受け入れもしてくれないなら、家族なんていえない」と突き放す冷たさすらある。
そんなベースなので、みんなお互い理解なり反省なりして幸せに暮らしましたとさ風のハッピーエンドは望めない。バーナバスの掲げる一族再興すら、自分とともに生きてくれる新たな家族を前に、どこかに霧散してしまったようだ。

また、家族全員が全員腹に一物あるような日本の宣伝だったが、こちらも蓋を開けてみれば、大した謎もない。ジョニー・デップも含め、役者の個人プレーを楽しむ程度に個性的なぐらいだ。
だとしても、クロエ・グレース・モレッツ扮する長女キャロリンの設定は、意外性よりも唐突さのほうが気になってしまったのだが。生意気なこと言ってもイラッとこないぐらい可愛いので、もったいない。

キャラクターの個性もそこそこなコリンズ家に比べ、家族もパートナーもいない魔女アンジェリークのほうが、監督の愛情が感じられる。
邪魔な相手を葬り、好きな人にも生き地獄を味わわせたかと思いきや、挑発的になったり突然熱烈に迫りだしたり……すべて「好き」に裏打ちされた行動とはいえ、感情の変化が大変激しい。ただ、大人の女性と幼稚さのバランスが、悪女というより駄々っ子のようで、タチが悪いと分かっていても愛着を沸かせる。そういう意味では、『アリス・イン・ワンダーランド』の赤の女王に近いものがある。

そんな彼女にも、最後には苦い仕打ちが用意されているのだが、悪い奴が痛い目みてスッキリするような清々しさはない。むしろ、『シザーハンズ』のエドワードに近い切なさが残る。
結局のところ、監督が描いたのは家族ではなく、どこにいようと誰と一緒だろうと「ひとりぼっち」感から逃れられないアウトサイダーだったようだ。
ついでに、この映画一番の脅威は魔女でも幽霊でもヴァンパイアでもなく、存在そのものに「魔」が溢れてるアリス・クーパーだったようだ。

ところで、本作を含め、ここ最近のバートン映画におけるヘレナ・ボナム・カーターのキャラの扱いはなかなかヒドい。実生活および映画のパートナーのわりにはヒドい。ジャッキー・アール・ヘイリーを通して、「クソババ」呼ばわりまでする始末。
バートン監督は、好きな子ほど愛情の裏返しでついイジメてしまう人なのか。それとも、「同棲してるし子どももいるけど、僕はそこらのいわゆる『家庭人』にはなりませんよーだ」というバートン流家族観の表れなのか。

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