2015年9月29日火曜日

ムカデ人間2

無邪気な悪魔におもちゃが12人。

ムカデ人間2('12)
監督:トム・シックス
出演:ローレンス・ハーヴェイ、アシュリン・イェニー



映画に影響を受けて何かやらかしたことは数知れず。
『リーサル・ウエポン』のメル・ギブソンのシャツの着こなしを(可能な限り)真似したり、『ザ・プロデューサー』カメオ出演のベニチオ・デル・トロの歩き方を真似したり、『ショコラ』のホットチョコレートにチリペッパーを入れる飲み方を自己流さじ加減で試した結果喉をやられたり。
それを「若気の至り」で片づけられればいいのだが、ここ数年は『ワールズ・エンド』を観てビールハシゴ飲みをしたり(そしてつまみのフリッターに食あたりしてリバース)、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を観てラジカセ引っ張り出して「マイ最強Mixテープ」を作ってしまったりと、成長してますますやらかしの度合が大きくなっちゃっているのが問題。

……まぁさすがにムカデは……いやもしやる気が出たらスクラップブックぐらいはつ・く・っ・て・み・た・い気もしますし、破かれたらスゲェ怒る気もしますよ。

ロンドンの地下駐車場で警備員の仕事をしている男・マーティン。かつて父親からは性的虐待を受け、一緒に暮らしている母親からは「居なければよかった」ように扱われ、精神科医からは下心を持って見られ、駐車場利用客からもバカにされ続けている。
そんなマーティンが愛してやまないのが『ムカデ人間』。DVDを繰り返し観るだけでなく、母に嫌がられながらもムカデを飼い、スクラップブックも作る入れ込みよう。その愛着は「自分もムカデ人間を作ってみたい」と思うほどに膨れ上がっていた。
マーティンは野望の実現にむけ、駐車場の客や近所の男ら12人を次々と貸倉庫に拉致監禁。さらに、『ムカデ人間』にジェニー役で出演していたアシュリン・イェニーまで、自らのムカデの先頭に配すべく監禁。医学知識も技術も道具もなく、大工道具のみを手に、マーティンは遂にムカデ人間製作に乗り出した……!!

「地獄絵図」「不快度MAX」とはこのことだ!(以下その手の話が続くので注意)

「口とケツをくっつける」「前の人のウ○コが次の人の口へ」という『ムカデ人間』では直接描かなかった生理的嫌悪描写。あるいは、膝の靭帯を切り歯を抜くという、比較的マイルドに見せるだけに終わらせていた手術プロセス。
今回監督は、そうしたエグいパートをこれでもかというほど直接的に見せ、生理的嫌悪も痛覚も手加減なしの方向へ舵を切った。

医者じゃないから当然麻酔なし、必要とあらばバールで殴って気絶させる。ハンマーやらナイフやらで人体損壊してムカデにしようとしたものの、どうにもならずショックや失血で死んでしまう被害者も出てくる。結局、やけになって接着はホチキスとダクトテープでバチバチベリベリ。
現代医療に当たり前に存在する、麻酔や縫合の技術がいかにありがたいかが嫌というほど分かる。前回、その医療技術をフル活用して暴走しちゃった医者がいたけどね! 

それからマーティンよ、麻酔は持ってないのに下剤は持っているのな。だからウ○コのプロセスもどうにもならなくなったらとりあえず下剤に頼るのな。だからそちらの意味でも地獄絵図が展開してしまうのな……!!

そもそも、ムカデ素材の誘拐も、とりあえず拳銃で脚のどこかを撃つ→逃げられなくなったところをバールでガーンと気絶!! という痛さ全開のプロセス。半死半生で調達するわけだが、下手したらその時点で素材が死ぬぞ。そんなん見たらハイター博士も気絶するぞ。違う意味で。

青と白を基調にした冷ややかな色調だった前作に対し、今作はモノクロ。しかもロンドンは常に雨模様なので、暗さと湿っぽさが格段に上がる。
前作の色調がハイター博士を表しているなら、今作の陰鬱なモノクロの世界は、誰からも愛されず己の殻にこもってムカデを愛する男、マーティンのことである。

ただし、この映画はすべてがモノクロというわけではない。たった1つだけ、着色されているものがある。それを観てしまったら……思わずにはいられない。「監督は鬼か!?」(ちなみに、トム・シックス監督は変態的な世界を描くが、彼なりの計算があってのことだしそこに狂気は見えないので、変態とは思っていない)

前作がハイター博士なら、本作はマーティンの独壇場。ローレンス・ハーヴェイの強烈すぎるビジュアル一発で、「こいつ何者だ!?」と観客の好奇心をわしづかみにしてしまう。
チビ・デブ・ハゲの三拍子、しかも腹の肉が下半身にまで垂れているので、パンツを穿いているのかいないのか判別つかないほど。汗っかきで常に目がギョロギョロ。何よりも、作中で一言も意味のある言葉を発さない。意思表示はすべて表情と行動と、「エハハハ」「ウェェェェ」「ブーーー」という言葉になっていない言葉。
それでもこちらには彼が何を言わんとしているのかおおむね伝わるのだが、逆にマーティンに周りの人間の言葉を伝えきることはできない。どれだけ必死に「ムカデ人間はフィクションだ! できるわけがない!」と訴えても、彼には通じない。ハイター博士とはまたちがったディスコミュニケーションの恐ろしさである。

マーティンにとって『ムカデ人間』は限りなくリアルで、愛すべきもので、ハイター博士はヒーローである。何かとウ○コを漏らす、思うようにいかなくて泣きじゃくると、まるで子どものようなメンタリティのマーティンが、博士の真似事をして大惨事を招くのは、子どもがヒーローごっこをしてうっかり物を壊したり大ケガをすることに通じているのではないだろうか。
だからなのかね。今までの地獄絵図と、これからの地獄絵図を顧みても、ひとまずムカデ人間を完成させて血みどろのまま小躍りしてはしゃぐマーティンを観ると、「うんうん、良かったね!」と思ってしまうのは……。


以下、ネタバレ記述あり




ところで、マーティンの乱雑な犯行はどうして誰にもバレないのか、なぜこうも都合よく進むのか、と思っていたら……

最後の最後にムカデ人間製作はマーティンの夢/妄想であったことが判明する。

夢オチかよ、と拍子抜けするところもあれば、あれが現実じゃなくて良かった! と安堵するところもあり。
そしてこれが、誰からも愛されず理解もされない大きな子どもの、世の中に対するささやかな反逆(頭の中のことだからね。現実ならささやかどころじゃない)だったと思うと、これほどまでの地獄ですら、どこか哀愁を帯びてくるのだった。

2015年9月26日土曜日

ムカデ人間

博士とムカデのセオリー。

ムカデ人間('11)
監督:トム・シックス
出演:ディーター・ラーザー、北村昭博




中学のころ、クラスの男子/女子が全員足を結んで前の人の肩を持って縦に並んで走る運動会競技「ムカデ競争」。私はそれのちょうど真ん中あたりで走ってたのだが、練習ランニング中うっかり転んだ。すると後続の人がつられて転ぶので膝下に圧がかかり、また先頭の人が異変に気付くまで1~2秒のタイムラグが生じる。そのため、ただの擦り傷がズル剥け傷に発展。
だが擦り傷よりもイタイのは、「チームワークを乱しやがって」という空気であった。

……そんなイタイ話を思い出したのは、ハイター博士の「真ん中はきついぞ」という一言があったからですよ!!

シャム双生児の分離手術で数々の成功を収めてきたヨーゼフ・ハイター博士には、密かな夢があった。人間を分離するのはもう飽きた。今度は人間をつなげるのだ。それも、口と肛門をつなげて消化器官を一体化し、前の人間が食したものを排泄と同時に後続の人間が食すシステム。題して「ムカデ人間」だ! 
タイヤのパンクで助けを求めてきたアメリカ人観光客リンジーとジェニー、よく怒鳴るが英語もドイツ語も通じない日本人ヤクザのカツローを捕獲した博士は、いよいよ夢の実現に向けて一歩を踏み出す……!!


「月からナチスが来た!」(アイアン・スカイ)みたいなアイディア一発勝負映画にはよく出くわすが、「人間の口と肛門つないでムカデ人間!」ほどくだらなくて下ネタな一発ネタは珍しい。しかもその一発勝負に勝っちゃってるんだから、世の中何が起きるか分からない。

よりにもよって口とケツがつながってるとか、要するに前の人のウ○コを自動的に飲まなきゃならないとか、生理的嫌悪要素は満載なのだが、意外にも直接的描写は避けられている。それどころか冷ややかな照明と色彩で、大変品のある変態ワールドになっているのだ。ハイター博士が冷ややかで気品ある変態であることに起因しているのかもしれないが。

ここまで悲惨な目に遭っていながら、もっと悲惨なことにはっきり言ってムカデ人間自体は、ほぼ出オチ扱いである。
ただ、唯一喋ることができる先頭のカツローと博士との言語/思考のディスコミュニケーションは、限りなくブラックなコメディパートとして、博士とムカデの(不)愉快な日常ストーリーを牽引してくれる。北村昭博さんが監督にアイディアを出してくれたおかげで、海外映画の中で日本人が聞いていて違和感ゼロで生きた日本語になっているし、「火事場のクソ力じゃあぁぁぁ!!!」「あっ……う、ウ○コ……」と日本人のほうがニュアンスを笑えそうなセリフも多々あり。

そうそう、一応古典ホラー的な教訓めいたところもある。「知らない場所で近道をしてはいけない」とか「タイヤ交換は覚えておくべし」とか「基本的に野グ○はいかんよ」とか。
しかしそうは言っても、この場合リンジーとジェニーが取るべき最良手段は、「あの車越しに絡んできたエロ親父を殴り倒して車を強奪する」だったんじゃないかと思ってしまうんだけどね。

そして何より、本作の中心にいるハイター博士。『武器人間』のフランケンシュタイン博士や、『死霊のしたたり』のハーバート・ウェストらホラー映画界のマッドサイエンティストの仲間入りを果たしたわけだが、ハイター博士はその中でもトップクラスに可愛いのである!! (※個人の価値観に基づく)

最初に作ったムカデ犬の在りし日の写真を見ながら涙ぐむ姿の登場シーンに始まり、絶妙にざっくりしたイラストで犠牲者の皆さんに「ムカデ人間手術プロセス」を得意気にプレゼンする姿、ムカデ人間が思うように動いてくれなくてヒステリー起こす姿、脚にプロテクター付けて「噛みついてみろ!」と挑発する大人げない姿、訪ねてきた刑事に対して挙動不審すぎて色々ごまかしきれてない姿に、いちいち愛嬌があって憎めない。
いかにも緻密な計画を持っていそうなのに、ムカデ素材の捕獲作業や、ムカデ人間の栄養補給、刑事のあしらい方はなぜか穴だらけというツッコミどころすら、「ちょっと(いやかなり)抜けてるところが可愛い」に転じてしまう。

なぜそう思ってしまうのかと考えると、やはりディーター・ラーザー自身のチャームが原因なのだろうか。また、ユーモアのさじ加減が快・不快ギリギリのバランスを保っているからかもしれない(ギリギリどころかアウトだという人も多いだろうが)。
後にチェックしてみたところ、当時御年70歳。ロバート・イングランドやランス・ヘンリクセンに近い齢で、一見彼らより遥かにギスギスした風貌ながら、彼らに勝るとも劣らぬ可愛らしさを放出するとは……知性とユーモアの力は絶大だなぁ。

中でもハイライトは、とうとう念願のムカデ人間完成時。写真を撮りまくり、鏡を差し出して絶対に見たくないであろう己の変わり果てた姿を見せつけ、絶望のあまり泣き出す3人をよそに一人鏡にキスして歓喜の涙を流している。ムカデ人間の絶望を忘れて、「うんうん、良かったね! 良かったね博士!」と力いっぱい博士に肩入れしてしまう。
思えば、世界を変える級の野望があるわけでもなく、人間嫌いゆえに共犯者がいるわけでもない孤軍奮闘生活の成果がようやく出たんだもの、そりゃ泣いちゃうよな。

まぁ、博士に肩入れする決定的なきっかけになったのは、一人脱走したリンジーに「マトモじゃないわ、変態よ!」と言われて「ああ私は変態だ!!」と堂々断言した瞬間なのだが。こういう正々堂々とした態度は見習いたいものですね………………いやきっと勘違いでしょうけどね。

2015年9月15日火曜日

ABC・オブ・デス2

今年もよく死んだ!!

ABC・オブ・デス2('14)
監督:エヴァン・カッツ、ジュリアン・バラット他
出演:



「死」をテーマにした5分以内26の短編……という名目ながら、その実それぞれの監督たちの趣味の悪さ(転じて良さ)および変態度が世界中のホラーファンに測られるという意味でも、えげつなく恐ろしい企画。

今年は全体的に趣味が良く変態度は控えめ……と映ってしまうのは、前回の『ABC・オブ・デス』にウ○コとかゲ○ネタが多く、しかも我らが日本勢に井口昇(このまま世界が終わるなら憧れの女教師のおならで窒息したい美少女)と西村喜廣(人類絶滅はアメリカの○○○と日本の×××から始まるのだ)というスーパー変態がいたからか。また、「『ABC・オブ・デス』の企画に悩む監督自身」というメタネタも、前回「Q」と「W」でダブリが生じてしまったせいか今回は見受けられない。

以下、前回同様タイトルが極私的お気に入り、タイトルが極私的まずまずの1本である。

A=Amateur(アマチュア)

仕事の依頼が舞い込んできた殺し屋。潜入と殺害のシミュレーションは完璧。あとは実行に移すのみ。ところが彼は……。
物理的にも精神的にも痛々しい殺し屋さんの失態が、不器用人間には身につまされるだけにいっそうイタく映る。それだけにあのバカみたいなラストが痛快ですらある。今回もツカミの一本は優秀だった。

B=Badger(アナグマ)

地域の環境汚染により死滅してしまったアナグマについてのドキュメンタリーを撮るクルーとイヤミな動物学者。だがどうやらアナグマは死滅したのではなかったらしく……。モンティ・パイソンを彷彿とさせるチープなブラックコメディ。

C=Capital Punishment(死刑)

少女殺害の容疑者と、彼の死刑を求める村民たち。無実を訴える容疑者は警察の手に委ねられる……のではなく、村民たちの手によって断頭されることに。
中学の社会の授業で、「ギロチン以前は斧で首を落としていたが、死刑執行人の手際が悪いと一撃で死ねず大変なことになった」と習ったものだが、本エピソードがまさにそれ。何より悲惨なのは、彼は本来「容疑者」止まりにすぎなかったこと。ということは、その因果が向かう先は……

D=Deloused(駆除)

謎の集団に殺された男は、踏みつぶされた虫の力を借りて甦り、復讐を果たして虫に借りを返すが……。『ヘルレイザー』meetsクローネンバーグ(虫が尻から捕食したり意思を伝えたりするし)のような、粘着質で肉々しくてエグいクレイアニメ。

E=Equilibrium(平衡)

流れ着いた無人島で気ままに暮らしている男2人。ある日、自分たちと同じく漂着した美女を助け、一緒に暮らし始める。しかし、男2人に女1人は釣り合いがとれず……。
重要なのはバランスだって『テキサス・チェーンソー・ビギニング』のホイト叔父さんも言ってましたよね。どちらをとるかは人によるだろうけど。
ちなみに監督は『ゾンビ革命 フアン・オブ・ザ・デッド』のアレハンドロ・ブルゲス。アホなほど能天気な音楽もイイ。

F=Falling(落下)

イスラエルの女兵士がパラシュート落下したのはパレスチナ。そこへ少年兵が通りかかり、彼女にライフルを向ける。この顛末の痛々しさと虚しさは、監督がイスラエル出身ゆえか。

G=Grandad(祖父)

口の悪いジイさんとアタマ悪そうな孫のいがみ合いと殺人。おめでとうジム・ホスキング監督。今回の「ABC・オブ・ド変態」枠は君だ。何だあのジジイは。

H=Head Games(駆け引き)

男女の駆け引きを、文字通りアタマの戦いとしてシュールな線画で描く。しかしこれこそ「D」みたいなグロテスクアニメで作ってほしかったな。

I=Invincible(無敵)

財産目当てにあらゆる手を使って母親を殺害しようと試みる兄弟たち。だが、この老婆は訳あって何をやっても死なないのだ! 最強(最凶)ババアってフィクションで観ている分には痛快だなぁ! 
ちなみに監督はシンガポール出身。アジアンホラーも勢いづいているのである。 

J=Jesus(ジーザス)

ゲイの息子を無理やり「矯正」させようとする狂信的な父親と神父。すると息子の両手と頭に聖痕が現れ、さらに……。
ゲイは罪で、ゲイ殺しは罪に問わんのか! と、散々培われてきたキリスト教原理主義に対するイライラがまたしても募ります。

K=Knell(凶兆)

マンションの自室でペディキュアを塗っていた女性は、隣のマンションの上空に黒い球形の影が漂っているのを目撃する。ほどなくして、マンションの住民たちは殺し合いを始める。そして異変は彼女の住まいにも押し寄せてくる。
何かが迫ってきているのだが何だか分からない不安感、ペディキュアの赤黒、経血の赤黒、謎の影の赤黒が入り混じるおぞましさと美しさ。繊細なラインの上に立つ一本だった。

L=Legacy(遺物)

ウビニランドなるどこぞの未開の地。王妃の計略で生贄に捧げられそうになった王子は、死刑執行人の計らいで命を助けられる。だが王子の怒りにより、ウビニには怪物が現れ、人々を襲いだした。
この怪物が着ぐるみ(厳密にはあまりくるんでない)丸出しで何か可愛いのだよ!


M=Masticate(かみつき魔)

今回の一般公募枠。完全にイッちゃった目で走ってくるパンイチのおっさんが、通行人に噛みついて射殺されるまでをスローモーションで描く。このネタを完全なものにしているのは、最後の最後にオマケ程度に挟まれる「34分前の出来事」ってのがオカシイ。

N=Nexus(連鎖)

ハロウィンの日に起きたあまりにも不幸な惨劇。あと少し早ければ、あのときこうでなければ……という仮定はいくらでもできるが、どう考えても99%はタクシー運転手が悪い。
ところでこの監督ラリー・フェッセンデンはホラーにちょこちょこ顔を出す俳優でもある。彼が第一犠牲者を演じた『サプライズ』の殺人鬼が被っているヒツジマスクが出てくるのはそのせい?

O=Ochlocracy(Mob Rule)(愚民政治)

日本代表の1人、『へんげ』の大畑創監督。ゾンビの自我を戻すワクチンが開発されたなら、ゾンビハザードピーク時にゾンビを殺しまくった人間は殺人罪に問われるのだろうか? という深いような実はそんなことはないような裁判劇。どう見てもアタマ悪そうなゾンビ裁判官やゾンビ弁護士、証人も首だけだったりして、バカバカしくて救いようがなくておかしい。
ところで、2015年現在の国会答弁と照らし合わせて考えてみると、何か一気に笑えないムードになるね。

P=P-P-P-P-SCARY! (ピ ピ PS 怖い!)

残念ながら、今年のワースト枠。吃音のある脱走囚人3人組が遭遇する不条理な恐怖……といったところだが、デヴィッド・リンチを意識して思いっきりスベっているようだ。
なお、囚人の一人ポピーがPで始まる単語でなくとも「P-P-P-P」と詰まってしまう癖があるからこのタイトルになったのではと踏んでいるが、それにしたって設定活かされてないし、タイトルとのつながりも薄いからなぁ。
唯一収獲といえば、あの謎のおっさんが笑うとリーランド・パーマーことレイ・ワイズに似てるってこと。

Q=Questionnaire(アンケート)

路上でアンケート(というよりかなり頭をひねるクイズ)に答えている男。果たしてこの調査の目的は……と言いつつアンケートの様子と同時進行で、調査の結果何が起こるかも描いているのだが。オチとしてはちと弱いので、むしろこのオチの後が観たい。

R=Roulette(ルーレット)

死のルーレットといえばロシアン・ルーレット。当然たった1つの弾に当たった人が終わりだが、5つのハズレを引いて生き延びた人が幸運とは限らないことだってある。
何が興味深いって、監督メルヴィン・クレンがドイツ人であり、このシチュエーションがナチスから隠れるユダヤ人を彷彿させること。

S=Split(破局)

電話で話す夫婦。そのとき妻のもとに侵入者が……。死による夫婦の別離(Split)と、もう一つの夫婦の破局(Split)、そしてデ・パルマの系譜ともいえる画面の分割(Split)という鮮やかなトリプルミーニング。
そういえば、前作の「N=Nuptial」でも嫉妬に狂った人間の恐ろしさが描かれてましたね。あれはブラックな笑いだったけど。

T=Torture Porn(残虐ポルノ)

新人女優を下心満載で品定めするつもりのポルノスタッフたちが血の惨劇に。
もしこれが無名の監督の作品だったら「まあまあ面白いじゃん」ぐらいの評価だっただろうが、『アメリカン・メアリー』(原題。邦題の『アメリカン・ドクターX』とジャケデザインには納得いかん)で華麗なる人体改造と冷ややかな空気を見せてくれたソスカ姉妹の作品となると……どうしても「思ったよりおとなしい」という感想になってしまうなぁ。
ちなみにエンドクレジット後、最近悪趣味ホラー界に彗星のごとく現れた、強烈なルックスで勝利を収めたあのお方が出演してたりします。しかも、自身の出演作T着用で。

U=Utopia(ユートピア)

ブランドの広告のようにスタイリッシュで、美男美女だらけの世界。そこではブサイクはどうなるかというと……。『CUBE』のヴィンチェンゾ・ナタリらしい不条理ワールドだが、こうなると抹消され続けてきたブサイクの逆襲劇が観たくて仕方なくなってしまう。

V=Vacation(バカンス)

悪友とのバカンス先(タイ?)で、本国の彼女とSkype通話をする男。実は昨晩、売春婦の母娘と酒・ドラッグ・セックスとホラー映画死亡フラグ三種の神器を楽しんでいたのだった。バカ騒ぎが彼女にバレて一波乱かと思いきや、もっと悲惨な事態がすぐそこに待ち受けていた……。
スラッシャーミュージカル『絶叫のオペラ座へようこそ』のジェローム・セイブルが監督だが、歌も極彩色もなしで手堅いPOVもの。Skypeも立派な低予算映画手法となったものだ。

W=Wish(願い)

カシオ王子と魔王ゾーブが戦うファンタジーワールド「ゾーブ」のフィギュアで遊びながら、「王子を助けに行きたいな」と口にした少年2人は、「ゾーブ」の世界に吸い込まれてしまう。そこで2人が目にしたのは、ゾーブ軍による虐殺と拷問。しかも、ヒーロー側のキャラクターとて、彼らを助けてくれるわけではないのだった。
「アストロン6」のスティーヴン・コスタンスキ監督だけあって、手作り感溢れるチープ&グロテスクな世界は、まさに『マンボーグ』の系譜。ゾーブの城の拷問人には「T」のソスカ姉妹、捕まった兵士の中にはブランドン・クローネンバーグもいるぞ!

X=Xylophone(木琴)

レコードをかける祖母の横で、木琴を叩き続ける幼い少女。祖母は木琴の騒音に我慢ならなかったのか、孫の若さと可愛らしさに嫉妬したのか。そして、帰宅した両親が目にしたものは……。
去年の「X=XXL」に続き、またも「X」枠をフランスが獲得。これまた去年に続き、悪趣味でむごくて後味悪い結末にもかかわらず、ほんのスパイス程度に添えられた皮肉によって、洗練された良質の恐怖に昇華されている。恐るべしフレンチホラー、恐るべしチーム・屋敷女(ジュリアン・モーリー&アレクサンドル・バスティロ監督とベアトリス・ダル)。

Y=Youth(若さ)

これも日本代表・梅沢壮一監督作。だらしなく、自分に無関心な母と義父のもとで育ち、自らを傷つけてきた女子高生が、遂に反旗を翻す瞬間。
この作品に関しては突き進む先が「死」ではなく「生」。生きていくため、憎悪のきっかけになった思い出を使って、イヤな母と義父を頭の中で殺していく。先の「W」とはまた一味ちがった、チープ&グロテスクなジャパンの特撮です。

Z=Zygote(受精卵)

出産間近の身重の妻を置いて、遠出してしまう夫。自分が戻るまで子を産むなとの言いつけ通り、妻は産道を閉じる薬=木の根をかじって帰りを待っていた。それから13年。夫はまだ戻らず、妻はまだ子を産まず、子どもは母の胎内で大きく育っていた……。
何と言っても、終盤のゴキボキグシャッペッという、クローネンバーグかクライヴ・バーカーかというぐらいのトランスフォーム(いや厳密にはフォームは変わってない)が見どころです。そしてインモラルに突っ走りそうなオチ。


今年は半分以上が割と気に入ってる枠となったが、他の人の意見・感想を見てみると、私が好む「A」や「O」はイマイチだったり、まあまあかなぐらいに思っていた「K」が一番好評だったり。どれを好むかによって、観客の映画の趣味や変態度もだいたい分かってしまう、やはり恐ろしいシステムだなぁ。

前述の通り、比較的趣味のいい死に様(?)だった死のABC第2弾。反動で今度の『ABC・オブ・デス3』は変態だらけになってたりするかもしれないが、それはそれで恐ろしくも楽しみである。
あと、監督に名前が挙がっていながら結局出なかった、園子温やアレックス・デ・ラ・イグレシアにも是非参加していただきたいなぁ。

↓「Y」で梅沢監督が使った特撮道具、キネカ大森に展示されてました。
どうやって使われてるか気になったら観てほしいよ。

2015年9月14日月曜日

マリリン・マンソン@サマーソニック2015

大人な師匠の大人げないステージ。

SUMMER SONIC 2015
2015.8.15.QVCマリンフィールド&幕張メッセ

セットリスト
1. Deep Six
2. Disposable Teens
3. mOBSCENE
4. No Reflection
5. Third Day Of A Seven Day Binge
6. Sweet Dreams
7. Angel With The Scabbed Wings
8. Personal Jesus
9. The Dope Show
10. Rock Is Dead
11. Antichrist Superstar
12. The Beautiful People

一つ言い訳すると、サマーソニック中心で書くかマンソン中心で書くか迷って、結果手をつけるまで1ヵ月かかりました。とはいえ、レポート1ヵ月遅れ癖はマッドマックスコンベンションも同じなので、通用しない言い訳ですが。

4年ぶりに帰ってきたぞ!

昼から参戦組ではあったが、夕方くらいまでほとんどの時間は会場めぐりと写真撮影と飯に費やした。フジだろうとサマソニだろうと、夏フェス会場は毎年何がしか変わっていく。そりゃ絶好のフォトスポットはフジには負けるが、いかんせん4年ぶりだし、会場御礼参りの意味もあるんですよ。こっちが勝手に御礼と思ってるだけだとしても。

ちなみに、今回のフェス飯カオマンガイ(タイ料理。蒸し鶏とスープで炊いたお米)ソーキソバ、いずれも美味しくいただきました。とりわけフェス屋台のタイ料理は、なかなかハズレを引かないので嬉しいところです。

↓マリンステージはステージ準備中。日中は完全にフライパンの底だ。
夜になっても蒸し器の底になる程度の差だったけどね。

観覧車まで! マリンフィールド周辺はいつの間にこんなにお祭りになってたんだ……

ちなみに、今年のアイランドステージはアジアンロックフェスである。

屋内も屋内で、知らないうちに豪華になってるような気が……


ウォームアップを兼ねてのステージ観戦は夕方になってからだった。
9㎜ Pallabelum Bulletは2011年のアタリ・ティーンエイジ・ライオットのゲストアクト以来だが、相変わらずパワフル。あのときは「ウォームアップじゃ生ぬるいからバーニングアップで」とテンション高いステージを披露し、それにうっかり燃えすぎるほど全力でついて行ってしまったものだが、すみませんこの日は体力セーブに努めました。
その結果、さほど飛ぶでもなく叫ぶでもなく、グラグラと謎の踊りを踊っていました。

続いて観たジョン・スペンサー・ブルーズ・エクスプロージョンは、ブルースとプログレロックの融合。グルーヴがありつつ変則的なリズムが心地よかったので、PAの後ろのあたりで寝そべって背中全体でリズムを受け止めるという贅沢をしてしまった。BGVがハマーホラー風味なのも好感高い。

ソニックステージも知らないうちにきらびやかになってる気が……


そしていよいよマウンテン・ステージのトリたるマリリン・マンソン師匠である。マンソンといえば、フェスといえども開演予定時刻を10分くらい過ぎるのは当たり前……だったはずなのだがその師匠が! 時間通りに! セットを! 始めた!!! それも久しぶりに荘厳かつ不吉なクラシック音楽で登場して!! 手には『Eat Me, Drink Me』ツアー以来おなじみになりつつあるナイフ型マイク!! 
……『The Pale Emperor』を聴いたときも「師匠大人になったなぁ」なんて思っていたが、時間を守るという意味でも大人になったのだなぁ。何か感慨の方向性が間違ってるような気もするけど、いつものことだから。

そんな感慨も早々に、「Deep Six」「Disposable Teens」という最初の2曲で急激にボルテージを上げたオーディエンス(前方)は、もうバケツの水被ったように汗だく。続く「mOBSCENE」にハットをかぶって戻ってくるマンソンにもまた狂喜し、「Be! Obscene!」のコーラスを叫んだ。

それにしても、マンソンのボーカルに張りが戻ってシャウトも絶好調ということの感動たるや。何でそんな普通のボーカリストなら当たり前のことで感動しなければならないのかというと、2012年の来日のときのダラけた歌唱法である。不調なわけではなくワザとやっていた疑惑が高いし、一体アレは何だったのか。
ともあれ、ミュージシャンとしての評価は、前回来日時よりはマシになったにちがいない。

開演10分前ぐらいの緊張感が一番心臓に悪いです師匠。

しかし、時間厳守やボーカル手抜きしないといった点で大人になったからといって、ステージ上のアティチュードまでが大人になったわけではないのがマンソンのマンソンたる所以。
マイクスタンドを蹴倒す。その場でスタッフさんが出てきて直したと思ってもまた倒す。また直しに来たら、今度はアンプを蹴倒す。「Third Day Of A Seven Day Binge」では、トゥイギー・ラミレズ(g)のアタマをタンバリンでリズミカルに叩いている。「Sweet Dreams」では懐かしの竹馬でステージをのし歩く。

もはや『Dead To The World』(汚物を含む問題映像と問題エピソードだらけの『Antichrist Superstar』期のライブ映像。VHSのみ)でしか聴けないと思っていた「Angel With The Scabbed Wings」を聴かせ、オールドファンを感極まらせた……かと思いきや、「Personal Jesus」直前にサングラスをかけて登場するも歌うより前にポイしたり、「The Dope Show」でトゥイギーに白い粉をぶっかけたり(2012年にはオーディエンスにぶっかけていたけど)。
ステージにおいてクソガキであることこそ、オーディエンスが求めるマリリン・マンソン像。トゥイギー以外のメンバーのキャラクター立ちもなくなり、ますますライブはマンソンのワンマンという印象が強まった。

ただ、バンドのコンディションとは別に、マンソンのステージは常にもう一つの懸念が付きまとう。「本人がご機嫌麗しいか否か」である。
結論から言うと、こちらの懸念は現実のものとなってしまっていた。いわく「昨日(ソニックマニア)の奴らよりおとなしいぞ!!」。マンソンのことだからうっかりすると「もうやめた」と帰りかねないのではと考えているだけに、演奏中のボルテージ高さとは裏腹に曲間は肝を冷やす思いが。
我々(少なくとも前方ブロック組)できる限り騒ぎ散らしてたのですが……ダメでしたか、師匠?

ウィリアム・ブレイクのレッド・ドラゴンを引用しつつ聖書を燃やした「Antichrist Superstar」、黒人ホーン・セクションとパーカッションを導入した「The Beautiful People」はさすがに最骨頂……だったはずだが、バンドの皆様相手に「こいつらは英語分からないから」とオーディエンスをイジっていたので、まだご不満だった模様。

そんな師匠は最後にステージから飛び降り、最前列の皆様に突進……したはいいが、いざステージに戻ろうとしたら上がれない事件が発生していた。慌てて押し上げるセキュリティさんに「頑張れよ、オレそんなに重くないだろ?」と言うが、「最近は健康に気を使ってジムに通っているらしい」という雑誌記事を疑う程度にはそういう体型ではあった……。
ごめん師匠。師匠はご機嫌よろしくないまま(おそらくやってもいいかなと思っていたアンコールもすっ飛ばして)帰っちゃったけど、こっちはちょっとオモシロイ気分で帰っちゃったんだ。

ところで、「The Beautiful People」でステージに来たパーカッションの人、マンソンにドラムを蹴倒されて「あ゛ーーーっ!!??」って顔になってましたね。頑張ってください。それが師匠です。
ちなみに前任ドラマーは師匠にドラムセットごとマイクスタンド攻撃をくらって骨折しました。

師匠ぉぉぉぉぉーーー!!!


そういえば、今回『The Pale Emperor』からの選曲は2つだけで、映画スコアに入った「Killing Strangers」「Cupid Carries A Gun」もPVまで作られた「Mephistopheles Of Los Angels」もなし。
どうかどうか、師匠が単独来日して下さらないものか。どうかどうか、この辺の曲もやって下さらないものか。そしたら今回のステージの倍はしゃぎ立てますから!!!

↓是非とも生で聴きたい「Mephistopheles Of Los Angels」MV。

2015年8月26日水曜日

毛皮のヴィーナス

至高の女は、恐ろしい。

毛皮のヴィーナス('14)
監督:ロマン・ポランスキー
出演:エマニュエル・セニエ、マチュー・アマルリック



極私的ボンドガールベスト然り、ここ数年やってる映画ベストガール然り、華と毒気と強さを備えた女性キャラが大好き傾向の自分。
しかし、こんな女性を「いいなぁ」なんてうっとり観てられるのは、彼女らがスクリーンの中の存在だから。だって、ベストボンドガールはゼニア・オナトップにメイ・デイにエレクトラ・キング、去年のベストガールもアルテミシアにマザー・ロシアにハンマーガール……
このメンバーが目の前に現れたら、そりゃ憧れたり見とれたりするだろうけど、最後には死ぬ気しかしなくなるよ。

パリの劇場。演出家トマは自身の脚色作『毛皮のヴィーナス』のヒロインオーディションを終えるも、どの女優にも満足できず苛立っているところだった。
そこへ一人の女がやってくる。名前はワンダ。奇しくも『毛皮のヴィーナス』のヒロインと同じ名前である。大幅に遅刻してきたうえ、がさつで教養もなさそうなワンダをトマは適当に追い返そうとするが、彼女は強引にオーディションを始める。
しぶしぶ相手役を務めたトマだったが、ワンダは先ほどとは別人のように淑女そのものの立ち振る舞いで、セリフも完璧。彼女との芝居に没頭していくトマは、役柄に倣うように彼女に服従し、支配されていく。

ポランスキーについては『ゴーストライター』で、「自身の人生が映画よりも劇的なせいか、どんな切羽詰まった状況を描いてもどこか平熱」と書いた。
だが本作では、登場人物はワンダとトマの二人だけで、舞台は劇場の中だけという大幅な制約の中、ずっと劇的で情熱的だった。

「どこにいるのか分からなくなってきた」とは作中のトマの一言だが、観ているこっちだって自分がどこにいるのか分からなくなる。ワンダとトマのやり取りと、劇中作のワンダとクシェムスキーのやり取りには当初線引きがあったはずなのだが、次第にその境界線があやふやになっていき、今喋っているのは女優のワンダなのか役柄のワンダなのか分からなくなってくるのだ。

が、その「分からない」というところが、話をややこしくする以上に魅力的なのである。観ている側も、トマあるいはクシェムスキーと同じくワンダにのめり込み、ワンダに振り回されるのを楽しんでいる。これがマゾッホ的感覚というやつなのだろうか……
とも思うが、実は「傲慢にして魅力的な女と、彼女に恍惚として従う男」という構図すら、安直なSM発想として足蹴にされる運命にある。

もう少し下世話な観方をすると、本作がいつになく劇的で情熱的なのは、エマニュエル・セニエの夫たるポランスキー監督自身こそ、一番ワンダに振り回されるのを楽しんでいるからじゃないだろうな?

そして、ワンダの魅力には、怖い代償もついてくる。そもそもなぜワンダが魅力的なのかといえば、淑女と女王様、貞節と淫靡、教養と無知、繊細とガサツさ、男が女に求める両極端な要素を併せ持っているうえに、使い分けが巧みだからである。付け加えるなら、自分のドツボである「華と毒気と強さ」もある。
しかし、すべての要素を持ち自在に操れる女はまずなかなかいない。そんな至高の女がいるとすればそれは……。

結論をたぐりよせるころには、トマも観客も、皆毛皮のヴィーナスに突き放され捨てて行かれる。それは、無意識のうちに醸し出している女性蔑視への、あるいは単純なSM概念への逆襲のようでもある。
女性と結婚にまつわる普遍的な不安と恐怖をあぶり出したのが『ゴーン・ガール』だとたら、本作は理想の女性像を至高の域に高めた結果、とんでもなく恐ろしいものがあぶり出される映画だ。
自分にとってはスクリーン越しの出来事だったから、腰が砕けた心地になった程度で済んだのかもなぁ。

2015年7月27日月曜日

マッドマックス 怒りのデス・ロード

何てマッドなクセにラブリーな映画だ!!!

マッドマックス 怒りのデス・ロード('15)
監督:ジョージ・ミラー
出演:トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン



ヒャッハーーーーーー!!!!!!
ウィーアーウォーボーイズ!!! ウォーボーイズ!!!
V8!! V8!! V8!!!
ジョー! ジョー! ジョー!! イモータン・ジョーーーー!!!!
ヴァルハラァァァァァァァァ!!!!!!

感想を言おうとすると頭の中がいつもこうなってしまうため、まとめるのに苦心しました。

荒廃した核戦争後の世界。元警官のマックス・ロカタンスキーは、愛する者たちを失い、今は砂漠を放浪しただ生き延びていた。しかし、武装集団に襲撃され、愛車インターセプターを奪われ、自らも輸血用の血液袋として砦(シタデル)に捕えられてしまう。
砦を牛耳っているのはイモータン・ジョー。自らを救世主と呼び、私設軍隊ウォー・ボーイズに神として崇められている。水資源を抑え、栄養源として植物栽培と母乳製造のシステムを作り、さらに自身の子孫繁栄のために若い女を「子産み女」として囲っていた。
だが、大隊長フュリオサがジョーを裏切り、子産み女たちを連れて脱走を図った。持てる軍隊を総動員してジョーが追撃を始める中、ウォー・ボーイズの一員ニュークスの輸血袋となってしまったマックスも、戦いの渦中に放り込まれる。

『マッドマックス2』のタンクローリーにオマージュを捧げたような出で立ちのウォー・タンク
曲芸師のように高いポールでビョンビョンしながら追ってくる暴走族
アンプにドラム、ギタリスト(ギターはダブルネック火炎放射器)搭載のドゥーフワゴン
予告で観てきたこれらのビジュアルに、この映画はアタマおかしいと称賛を送ったものだ。

が、母乳製造工場、電ノコ付トゲトゲショベルカー、戦車の履帯に車を乗っけた車両=ピースメーカー、乳首いじってばかりの肉襦袢オヤジ(=人喰い男爵)、ヤマハバイクを走らせるヘルズ・バアさんズ空飛ぶモンティ・パイソン第1シリーズ第8話参照)が出てくる本編は、もっと素敵にアタマがおかしかった……!

しかし、ビジュアルはマッドだが、映画自体の作りは実に骨太かつ緻密。
「支配から逃げる」というシンプルなストーリーを基軸に、キャラクターの背景や人となりは仕草や行動や短いセリフのみで表されている。ドラマが透けて見えるゆえ、敵味方を問わず脇役に至るまでキャラクターが愛されているし、いちいち長い/わかりやすいセリフで表さずとも伝わるはずという監督と観客の信頼関係がきちんと成立しているのだ。
近年、たまにその信頼関係が成立してない映画にも出くわすもので……。

子を産み母乳を作るシステムに押し込まれている女性を解放するというポイントで、よくフェミニズムに関連づけられる本作だが、それよりももっと普遍的な復讐(=retaliation)と救済(=redemption)の物語と思われる。

イモータン・ジョーの強権的統治方法は、無法地帯の世界においてまったく間違っているわけではないのだが、当然多くの犠牲を伴う。体制の中でまともに生きてこられなかった者たちは、覚悟を決めて次の世界へと進んでいく。あるいは進むべき者たちを送り出していく。もはや老若男女を超えている。
その物語を彩る……どころかド派手に盛ってくれるカークラッシュやアクションの生々しさからいっても、これからも受け継がれていく映画であってほしいと思わせてくれた。

「マッドマックス」というタイトルを冠せられていながら、マッドなのはマックスよりもその周りであるという構造。これに似ているのが、ぶっ飛んだビジュアルを生み出していながらジョージ・ミラーが本作をとても理知的に作り上げているのに対し、そこに群がったファンのほうがマッドに染まっている現象だ。
暴君に対する復讐や新天地を目指す人々の救済の物語に惹かれたとしても、観終わった人間のメンタリティは限りなく悪役寄りになっていることが多い。
現に、観賞後にV8エンジンを崇めるポーズを真似したり、イモータン・ジョーに忠誠を誓ったり、果てはウォーボーイズを真似て口に吹き付けるため食用銀色スプレーを購入する人が続出した。

思えば、本作に限らずマッドマックスシリーズには、観客を悪役側に引き寄せる力がある。1を観れば夜空を見るたびにナイトライダーを思い出し、2を観てはヒューマンガス様に心酔しウェズのように吼える。(『サンダードーム』の除外をご了承ください。ティナ・ターナーはああ見えてルール厳守の比較的マジメな取締役で、警備兵たちはほぼ体当たり芸人です)

こうした傾向は、ミラー監督が悪役をロックスター風に描いているところに起因すると思われる。
ナイトライダーのセリフ "I'm a rocker, I'm a roller, I'm a out of controller!!!!" はAC/DCの歌詞だし、トーカッターはアイメイクがグラムロック風だし、ヒューマンガス様は言わずもがな「ロックンロールのアヤトラ」。先ほど除外しておいてなんだが、ティナ・ターナーは現職ロックシンガー

本作のイモータン・ジョーに至っては、砦の上からマイクで演説をかます姿がまずいきなりステージ上のロックスター。
V8サインを掲げ、目線が合っただけでも狂喜するウォーボーイズは熱狂的なファンのようなもの
。砦の住人たちが「イモータン・ジョー!!」と何度も叫ぶのも、ライブ前のオーディエンスのコールを思わせる。
何より、出陣時には生バンド=ドゥーフワゴンを率いてくれるのだから、もはやライブツアーですよ。

まさか、好きなアーティストのライブに行ったときのヒャッハー感に一番近い感覚を、この映画が引き出してくれちゃうとはなぁ。

2015年7月12日日曜日

マッドマックス・コンベンション2015

何てロックでローラーでアウトオブコントローラーな日だ!!

マッドマックス・コンベンション2015
2015.6.7. 新宿・アントニオ猪木酒場


突然何かに気づいたり驚いたりすることを「ハッとする」と表現することはあるが、驚きのあまり本当に声に出して「はっ!?」と言ってしまったのはおそらくこの時が初めてである。
何せ、会場のアントニオ猪木酒場に到着寸前、ふと気づくと目の前をカンダリーニとジェシーが仲良く並んで歩いていたのだから。そしてアタマが落ち着く暇もなく、ウェズ、ジョニー、ナイトライダー、スタントマンのデイルが会場入りしていったのだから……。
というわけで、初っ端からトーカッター・ギャングのバイクに立て続けに轢かれたような衝撃をくらいつつ、会場受付へずるずると向かうことになったのだった。


会場となったアントニオ猪木酒場は、2006年に行ったアンドリュー・W.K.のライヴ最前ブロック以来の男性比率の高さ。やはりこの中にも、長野コンベンションのようにガチでバイクや車の改造をされいるツワモノがいらっしゃるのだろうか。
ちなみに私は無免許兼ゴーカート操作もままならない文系ファン。まぁ、結果的にそこまでのバイカーさんに遭遇することはなかったものの、同じテーブルを囲んだ参加者さんたち(リアルタイムで観たファンあり、新作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』から入ったシリーズ初体験者あり)とマッドマックス話やその他映画話に花を咲かせられたことは非常に嬉しい。

先月のハリコンNo.6に続き、自宅にデジカメを所有してることを完全に忘れ(だからブレブレのスマホ写真しか持っていないのだ)、サインをもらえたらよさそうなコレクターズアイテムもないまま挑むことになってしまった。また、いかんせん申込みが遅かったので、指定席は一番ステージから遠いテーブルに。
と、自分に関しては始まる前からポンコツな事態だったが、それをカバーするほどの幸運にもうっかり恵まれてしまった。私の座ったテーブルは、ゲストの皆様が出入りする控室のドアの真ん前。つまり、ゲストが出入りするたびに、どさくさに紛れて何度も握手・ハイタッチをしていただけたのである。思えばハリコンのときもトークショーの前後にランスと握手できたし……今年は映画の神様が味方してくださったのだろうか。

ジェシー・ロカタンスキー&バッドガイズ!!!


おそらくメンバー1変わらないのが、カンダリーニことポール・ジョンストン。赤いハート型サングラスに真っ赤なバイカーファッションというキャラと同様に、ファッションも帽子やスカーフなどがメンバー1特徴的な洒落者おじさんだった。主催者さんの「手首ついてます?」というボケに対し、自分の右手を見て「奇跡だ!!」とボケ返していた。(※カンダリーニはジェシーの車に飛びつこうとして右手首を失います)

ジョニー・ザ・ボーイことティム・バーンズは、さすがにグレーヘアのジョニー・ジ・オールドマンになっていた。でもオーストラリア訛りのきつい独特の喋り方は、やっぱりまぎれもなくジョニー。といってもステージ外ではそんなに訛ってなかったが。

ジョアンヌ・サミュエルは、あのままジェシーがずっとスプロッグ(マックスの息子)を育てていったら、こんな感じの優しくもたくましいお母さんになっていただろうと思わせる。他のゲストに比べるとあまりたくさん喋るほうではなかったけど楽しそう。

死亡説の流れたスタントライダーのデイル・ベンチは、もはやこうしたイベントのお約束なのか「死んでないよ!」「生きてるよ!」アピール。件のバイク前輪が頭に衝突シーン拝見しましたけど、確かに死んでないにしろダメージが心配なショットでした。

ナイトライダーことヴィンセント・ギルは、本日少々お疲れだった模様。主催者さんはじめみんなが「ナイトライダァァァァ!!!」と叫ぶので、心臓に悪いというジェスチャーをしていた。聞けば、今日は4時間しか寝てないという……お疲れ様です。

そして、唯一『マッドマックス2』より、ウェズことヴァーノン・ウェルズ。モヒカンや肩パッドで増量していた感があったけど、そうでなくとも元がデカいんだな……と遠目に迫力を確認。"You can run, but you can't hide!!" の名言も聴くことができましたが、そちらの迫力もご健在です。

モヒカンや肩パッドがなくとも、ウェズの迫力は最後列にも伝わりました。

ナイトライダーがお疲れなのは、車を飛ばしてきたからではない。

And we know who you are! と言ってそうなジョニー。

そういえばゲストの皆さんは、6月5日の新宿ピカデリーマッドマックス上映会のあとに久しぶりにミラー監督に会ったらしい。
ポール・ジョンストンいわく、1作目のあとジョージ・ミラーとカフェでよく会い、1作目で明確に死亡が描かれていないカンダリーニとジョニーを2に出したらどうかというアイディアを出したとのこと。片足首のないジョニーがハンドルを握り、片手首のないカンダリーニがアクセル/ブレーキ操作する奇妙な車を出してはどうかと。しかし実際は2人は登場することなく、「ヴァーノン・ウェルズが2人のギャラを持って行った(笑)」そうな。
この話ついでにジョアンヌも、「ジェシーだって明確に死んだところが描かれてないんだから、ジェシーもそのうち出してほしい!」と便乗。

でも、極私的には悪くないどころか美味しいアイディアである。何せ、新作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の悪役イモータン・ジョーを演じるのはヒュー・キース=バーン。1作目の暴走族ボスのトーカッターがまさかの転生である。
だったら今までのキャラクターの転生だってあってもイイんじゃないですかね!? 先の2人で車を操縦するそれぞれ片手片脚のない謎のドライバーがいてもいいし、全身義手義足だらけでどこかの砂漠コミュニティの女王となったジェシーってのもアリじゃないですかね!? せっかく昔のキャストとミラー監督が再会したのだし、そういうオールドファンへの目配せがあったら嬉しいんだけどなぁ。

サイン会の準備中、店内のTVで初代『マッドマックス』が流れる。ナイトライダーの死をきっかけに暴走族たちが集合し、1人がバイクテクを披露するシーンになると、デイルがバイクに乗ってる真似をしながら当時のスタント再現(仮)。本当はタイヤの後輪の痕で円形を作ったあと、きれいに一本線のタイヤ痕をつけて走行していたそうなのだが、ミラー監督がそれを気に入らなかったらしく、円を描いたあとはタイヤ痕がないカットが使われているらしい。
また、例の名言「ナイトライダー、それが奴の名だ。夜空を見るたびに奴のことを思い出せ」で脅しをかけられる駅員さん役の俳優さんは亡くなったと知りました。

夜空を見るたびに思い出すことになるにはまだ早いぜ。

サイン会待機の前、控え室出入り口前で握手を求めたところ、"What's your name?" と聞いてくれた。ティム・バーンズのサインをもらわなくてはと確信したのはこのときでした。「安い決め手」というのは禁句です。それに、いくら全員のサイン&ツーショット欲しいと思ったところで、サイン代金とおよびサイン会の時間の限りとの兼ね合いもあるんです。
ポートレート(1000円)を購入してサインをもらうこともできたのだが、持参のマッドノート(このあと『怒りのデス・ロード』観賞半券をスクラップ予定)にもらうことに。ティムには、できたらポートレートあげたいけど有料だから……と言われちゃいましたが仕方ない。本当できれば欲しいけどね。

ちなみに私の1、2人前のサイン参加者の方が、「あなたは好きだけどジョニーはキライだよ! グースを殺したから(笑)!!」と言っていた。確かにジョニーは身勝手でトーカッター・ギャングの足を引っ張るし、ヘタレのくせに口先だけは立派で、おそらく作中の嫌われ者No.1(だからラストのあの仕打ちに溜飲が下がるのだ)。でももう出てきて欲しくないかといったら……前述の通り、な。

ティムのサイン列に並んでいたころ、隣のポールはツーショット写真の際、カンダリーニのハート形サングラスを参加者とおそろいでかけること多々あり。また、「これって失礼かな?」とティムに見せたマッドマックスBlu-rayジャケットには、サインに加えてメル・ギブソンの顔にカンダリーニサングラスが描かれていた。まぁ本人がいないから大丈夫大丈夫。たぶん。
ジョアンヌさんとのツーショット写真撮影の中には、マックスよろしく髪をタオルでクシャクシャしてもらってるショットをリクエスト&実行した人いたな。

30年経ったってボーイなんだぜ。

ゲスト休憩中、スタントマンの雨宮さんが登壇。2の現場にも行って取材し、さらにはインターセプターに乗ったことがあるらしい。撮影中のレアな写真を多数お持ちのようだったが、最前列の方でなければとてもアルバムが見えない。この現場にきていた映画秘宝さんに掲載が期待されているようだが果たして……?

休憩が明けて、ヴァーノン・ウェルズとのサイン&撮影。さすがにファンの多い『2』からのゲストは並び待ちが多く、実は私はゲスト休憩前から並んでいたのだがしばらく整理番号順に待機していた。
相変わらずまっとうに話しかけられない&サインもらってる最中に写真撮るのを忘れるという失態はついてまわったものの、ツーショット撮影の際には遠慮なく肩組むぞ!! と挑んだところ……。
思えば、2013年のロバート・イングランドにしろ今年のランス・ヘンリクセンにしろ、今までツーショット撮影をお願いした俳優さんは、背丈が私より幾分上なぐらいの比較的小柄な方々だったので、肩の高さは大して変わらなかった。
したがって、ヴァーノンの肩に手をかけると、腕がちょっとした棚の上のものを取るときぐらいの高さに上がっていることに気づいた瞬間、「あれ??」と思わずにはいられなかった。いや、ウェズの体格のデカさはもうコンベンション開催時から重々承知していたのですが、改めて実感しましたよ。


右肩に手をかけたはずなんだけどなぁ。見えてないよ。

サイン会は閉会ギリギリまで続き、特にヴァーノンのサイン待ち列は一番の長蛇。その間主催さんがコンベンション裏話について話してくれた。
今回、会場がアントニオ猪木酒場になったのは、お店の方が「ここにしたら?」と提案してくれたという、素晴らしき偶然とノリで決まったからだそうな。もしここじゃなかったらカラオケの鉄人が会場になっていたかもという驚愕の真相も。

次にコンベンションを開催するとしたらゲストに誰を呼んでほしいかという要望を客席に聞くと、一番多いのはグース役のスティーヴ・ビズレー。バイクのカスタマイズをグース仕様にしている方も多いようだし、ファン人気は高そう。
今回のコンベンションのことを知ってポール・ジョンストンに「何だその面白そうなイベントは! オレも行きたいよ!」と語っていたらしいので、呼べば来てくれる可能性大? 
また、『2』に女戦士役で出ていたヴァージニア・ヘイも、コンタクトが取れるので見込みがありそうだとか。

トーカッターとジャイロキャプテンもリクエストがあったが、前者は『怒りのデス・ロード』、後者は『ロード・オブ・ザ・リング』の出演で役者として格が上がっちゃったので難しいらしい。
みんな大好きヒューマンガス様ことケル・ニルソンは今でもあのボディビル体型を維持しているらしいが、声は違う人がやっているらしいからなのか、あまりイベントに出てこないのだとか。
『2』のフェラル・キッド役エミール・ミンティはすでに俳優を辞めていて、現在は宝石商の仕事が忙しいから無理そうだ……とロックでローラーからはほど遠い残念な話も。

他にも『1』からはババ・ザネッティ、フィフ隊長、チャーリー、ナイトライダーの彼女、『2』からはパッパガーロなどの要望が出たが、一番コアな要望は『1』の「(グースが楽しそうに語った凄惨な交通事故死体の話で)食欲なくした人」……それ本人も何でイベントに呼ばれるのかピンとこないだろうよ。

主催者さんの話の中には、ヴァーノン自身が語った、ウェズと金髪の少年の関係性のことがあった。「ウェズが拾って育ててきた子であって、愛人ではないと思っていた」とのこと。(このたびの『マッドマックス 怒りのデス・ロード』プログラム巻末のインタビューでも言ってましたね)
ただし主催者さんいわく、「BD画質で見ると(ウェズの)ケツが赤いんですよ……でもそれ以上本人に聞けないし……」
うーん、ヴァーノンの話が正解とすると、ケツの赤さの原因は寒暖差が激しい砂漠の気候じゃないですかね。実際プログラム巻末のトリビアページによると、ケツが青くなっているかどうかで寒さを判断していたそうだし。……ってなぜここでまでウェズのケツについてマジメに語ってるんだ。

アントニオ猪木酒場の貸切終了時間ギリギリながら(これ以上延ばすと猪木さんを呼びますよとの最後通告付)、ゲストが全員サイン会を終え、最後はステージで挨拶。
ジョアンヌはジェシーのやってた「あなたに夢中」の手話をやってくれたし、ティムは "We remember The Nightrider, and we know who you are!" ヴァーノンは "You can run, but you can't hide!" をまた言ってくれた。
ゲストの方々も、同じテーブルを囲んだ皆様も、またコンベンションで集まれるチャンスがあってほしいものだ。今度は三部作に加えて、『怒りのデス・ロード』話でも盛り上がれるはずだもんな!!

会場にいらっしゃったグースとヒューマンガス様。
いわく「50でこのポーズ(中腰)はキツイです……!!」……50いってたんですか。

戦利品。マックスのブレスレット(デスロード仕様)は劇場につけて行きました。

2015年5月13日水曜日

戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE‐01~劇場版・序章

戦慄暴走ファイル 工藤がコワすぎ!

戦慄怪奇ファイル コワすぎ!
監督:白石晃士
出演:大迫茂生、久保山智夏

面白い映画には、だいたい魅力的な悪役がいる。この「魅力的」ってのが厄介で、現実なら近くには絶対に寄せ付けたくないヤな奴のクセして、スクリーンやテレビで観ているとやること成すこと面白くって、たとえ悪行だろうと外道だろうといいぞもっとやれと後押ししている自分がいる。

まぁ、工藤ディレクターは純然たる悪役とは言えないが……上司にこんな奴がいたらメンタルがもたなくて仕事辞めてると思う。
しかし、画面越しである限り、市川ADとカメラマン田代の苦労を無視して思ってしまう。「いいぞ工藤Dもっとやれ!!!」

FILE-01 口裂け女捕獲作戦('12)




投稿者から送られてきた映像に映っていた、大きなマスクをして信じられないスピードで走ってくる長身の女。かつて日本中を噂が駆け巡った「口裂け女」ではないかと推測された。ディレクターの工藤は、「口裂け女を捕獲する」という目的のもと、取材を開始する。

「撮影する」でもなく「真相を確かめる」でもなく、「捕獲する」という飛躍の激しい工藤Dの目標。
一瞬何かが映ったとか暗がりに見えたといった奥ゆかしさ(?)もなく、白昼にも夜間にもカメラに堂々と映り込む怪異(ただし、思わず鳥肌の立つ映り込み方ってのもちゃんとありますよ)。
追う側も追われる側もアグレッシブで、心霊モキュメンタリーを観るつもりでいたはずが、始まったのは見世物小屋という個人的には嬉しい誤算。同じモキュメンタリーなら『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』よりは『食人族』に近いんじゃなかろうか。ただし白石監督いわく、もっとも影響を受けたモキュメンタリー映画は『ありふれた事件』だそうだ。

何よりこのシリーズのイメージを決定づけたのは、工藤Dの暴走だった。謎に迫るためには、恐喝・暴力だいたい何でもやらかす。ホームレスをぶん殴り、何か知っていると思しき呪術師を怒らせ、投稿者にも協力を仰ぐといって危ない橋を渡らせる。
もちろんいつも身近にいるAD市川さんとカメラマン田代は、ちょっと反対意見を言うだけでどやされる。幽霊や妖怪の類に遭遇するよりもよっぽど後味が悪い。しかももっと困ったことに、この横暴男は幽霊より確固たる現実なのだ。

終盤、口裂け女を追う工藤Dは、金属バット片手に夜の住宅街を走り回る。口裂け女はどこに行ったか分からないので、我々の目に見えるアブナイ存在は、バットを持って叫びながら疾走するおっさんのみ。大げさな言い方になるが、狂気が怪異に追いつき追い越した、金字塔的瞬間だった。

FILE-02 震える幽霊('12)




幽霊が出ると噂の廃墟で撮影された映像。そこに記録されていたのは、鈴のような音、謎の足音、そして小刻みに震える人型のようなもの。工藤は投稿者らとともに問題の廃墟に足を踏み入れ、いくつかの怪現象を確認。
しかし、投稿者の中の女性一人が失踪したのを皮切りに、その女性が持つ不可解な能力、スカイツリー上空に浮かぶ物体、「先生」と呼ばれる人物など、謎はさらに広がっていく。

『パラノーマル・アクティビティ』系統の心霊もので来たか? と思いきや、スカイツリーの怪や謎の人物まで現れ、予想外の展開へとなだれ込んでいく。ただ、風呂敷が思わぬ方向に広がったはいいが、今回は収拾のめどがつかないまま幕を閉じてしまう。おそらく後に伏線が回収されるのだろうと予想しつつも、若干の消化不良は残るだろう。

その結果、市川や田代そして投稿者たちを悩ませる工藤Dの暴走が、モヤモヤの多い作中の清涼剤と化すという不思議な逆転現象が生じている。
前回、髪の毛を編み込んだ呪いの道具を気軽に持って帰ってしまうという暴挙に出た工藤だが、それを「実験だよ!」と言っていわくつきの場所で活用するというさらなる暴挙に出た。呪具の力がスゴいのか、工藤Dの暴力がスゴいのか、ここに「工藤D×呪いの編み飾り」という痛快コンボが誕生してしまう……。ついでに、工藤Dのもとに映像を持ち込んだ投稿者は悲惨な目に遭うという法則まで確率してしまうのだが。

脅しありビンタあり投稿者巻き込みありと、今回も不穏な活躍には事欠かない工藤D。彼が呪いの編み飾りを首にかけ、怪現象の真っ只中へ迷いなく突っ走っていく姿を観て、うっかり感動してしまった自分は、きっと幽霊よりもある意味厄介なものに憑かれてます。

FILE-03 人喰い河童伝説('13)




投稿者のカップルが立ち入り禁止の池で撮影した映像には、食い荒らされた動物の死骸とキュウリとともに、謎の生物が映っていた。その池には河童が棲んでいるという噂があった……。
市川と田代は入院中の工藤に変わって現地調査に赴き、その地に古くから伝わる河童の伝説、また河童について何か知っているらしい農家の男の存在も確認。そこへ、無断で病院を抜け出してきた工藤が「河童を捕獲する」と言い張って合流し……。

「普通に考えたら物理攻撃で何とかなりそうにない相手に物理攻撃で挑む」というシチュエーションが大好物の自分にとって、FILE-01のときから金属バットを振りかざす工藤Dの姿勢は大変に望ましいものだった。それが3作目に来て、遂に観たかったものを提示してくれたのだ。
そう、河童の体当たりを食らって転倒&ケガを負う工藤Dに、反撃に河童を殴り倒す工藤D! あととばっちりを喰らって河童に引きずられた市川AD! 宇宙人をグーで殴る『プラン9・フロム・アウタースペース』、火星人とボクシングする『マーズ・アタック!』、魔女をぶん殴る『ヘンゼル&グレーテル』、宇宙人とプロレスする『バトルシップ』……などなど挙げだしたらキリがないが、本作はこの「物理攻撃シリーズ(仮)」に邦画代表として君臨した。
ちなみに河童をぶっ飛ばしたパンチには、例の呪いの編み飾りが一役買っているのだが……そんな形で呪具を使いこなしてしまう工藤D、とうとうヘタすると陰陽師より使えるという域に達してしまった。ただの暴力人間と何が違うんだって奴なのに。

1作目で金字塔になり、2作目では清涼剤になり、3作目に至っては不在だと心もとなく、戻ってくるとようやく安定感が生まれる。……これはマズいぞ。工藤Dに、ひいては白石監督にダマされてる証拠だぞ。ダマされる甲斐もあるけどな。

FILE-04 真相! トイレの花子さん('13)




2人の少女が廃校で撮影したビデオに映っていた、トイレから飛び出してくる少女は「トイレの花子さん」なのか? その翌日のビデオ映像に見えた、投稿者自身の死のビジョンは未来を予言しているのか? 
工藤Dは今回、霊媒師・真壁を伴って現場を訪れた。彼女は「ここは向こうの世界とつながっている」「時間も空間も歪んでいる」と語る。そしてほどなく、投稿者のうち1人が姿を消す……。

いや、とんだ学習不足だった。FILE-02だっていかにも心霊ホラー的なシチュエーションを提示しておきながら、異世界の謎の種をバラまきまくった一本だったじゃないか。だったらテーマがトイレの花子さんだからって、ただの学校の怪談の範疇に収まるわけないと予測もできたじゃないか。実際FILE-02に近いものがある怪現象も起きていたじゃないか。
しかし、まさか、サブタイトルになっている花子さんの影が思ってたより薄く、メインはみんなでレッツ・ドゥ・ザ・タイムワープ・アゲインなんて……!!!

今回の工藤Dはおとなしめ……といっても恫喝ぐらいはやらかす。代わりに市川ADが珍しくキレる光景が見られる。そのぶん異世界側からのアプローチと、それに対抗する真壁の能力がアグレッシブで目まぐるしい。何せ、怪異のほうは時間や空間をねじ曲げてしまい、真壁は時間を遡ったり先へ飛んだりできるので、一同昼夜を行ったり来たり、また学校と投稿者宅を行ったり来たり……「あれ、これ『X-MEN』だっけ……?」と勘違いするようなしないような。
そしてしまいには、シリーズ通して示唆されてきた「向こう側の世界」にとうとう触れることになる。ホラーやミステリーよりもギャグ寄りじゃないかというような見せ方ではあるのだが、もうこのシリーズはこれぐらい吹っ切れてもいいよな! と思いきれるだけのパワーを手にしてしまったからなぁ。
それにしても、わずかなショットながら、異次元に飛んでも工藤Dは工藤Dなのだな……。

劇場版・序章 真説・四谷怪談 お岩の呪い('14)




前回の事件よりしばらく『コワすぎ!』シリーズから遠ざかっていた取材班が、ここへきて再び企画始動に乗り出す。「向こう側の世界」の真相を探る、どうやら関わりがあるらしい工藤の過去と「向こう側の世界」の関係性を明らかにする、そして借金返済といった理由のもとに……。

今回の投稿映像は撮影中止になった映画の一部。顔が半分崩れた女の姿と、FILE-04で撮影された異世界の入口のような影が映っていた。また、このシーンに出演していた女優が音信不通だという。「四谷怪談」に関わる映画を撮る際にはお祓いをするのが通例なのだが、1シーンでお岩さんに言及する程度だからと、お祓いをしなかったことが原因ではとされていた。
工藤Dらは音信不通の女優の家を訪ねるが、彼女は片目が腫れ、意味不明な言動をくり返し、果ては包丁で襲いかかってくる始末。さらに取材中のカメラにもお岩さんのような人影が映り出し、とうとうその影響は市川ADにまで及び始める。

口裂け女も花子さんも、実は異世界からの斥候にすぎなかった。ってことは今回のお岩さんも……と思ったら本当に「傀儡にすぎない」(霊能者・宇龍院談)。真の敵は異世界にあり! それに挑むは我らが工藤D!!! 
……あの、よく映画で世界の命運を握って戦うべき人が「コイツに世界を委ねるのか!?」みたいに言われるじゃないですか。コレは……普通に考えておそらく一番世界を委ねちゃいかん奴じゃないですかね。だってあの工藤Dですよ。

前回比較的おとなしかった反動か、工藤Dの暴走は再び加速。その被害を今回ほぼすべて市川ADが受ける羽目になった。取材始めに引っぱたかれたのを皮切りに、よりによってお岩さんの呪いと思しき何かに憑かれてしまい、再び「向こう側の世界」へ。
しかも、市川の除霊のために訪ねた霊能者の宇龍院道玄は、工藤Dとタメを張れるほど態度が悪い。除霊でトランス状態の市川&ときどき映り込むお岩さんの影にビビる田代をよそに、「オレは命かけてんだよ!」「こっちだって命かけてんだよ!」と醜い(?)争いを繰り広げる工藤Dと宇龍院。これほど「似た者同士」を的確に映し出した光景にはめったにお目にかかれない。あと、「こんなときのためにピッキングを習った」なんて人にもめったにお目にかかれない。工藤さんあなたですよ。

そんな無茶苦茶を観ているにもかかわらず、呪いの編み飾り片手に異世界へ(田代を道連れに)飛び込み、うねうねした有象無象を呪具で殴りちらす工藤Dの何とヒロイックなことか。「工藤さーーん!!!」「市川ーーー!!!」と手を伸ばし合う瞬間なんぞ、『クリフハンガー』的な感動すら漂っていたし。迷いなくああいう行動に出ることができる工藤Dには、ヘタすると羨望すら覚える……いや待て待て待て。これは私の背後に金属バット持ったおっさんの生霊が憑いているのかもしれんぞ。


さて、ここへきてFILE-01とも新たなつながりを見せ始めたシリーズはやっと劇場版へ。
映画化企画を「よし決めた!」「ザ・ムービーだよ!」と二次会行こうぜぐらいの軽いノリで進めてしまう工藤Dと愉快ではなさそうな仲間たちの行く末は?
FILE-02でバラまくだけバラまかれて回収されていない謎は収拾をつけられるのか?
FILE-03の河童はこれ以上絡みようがあるのか?
そして、ある意味オバケよりコワい工藤Dはどこまで突っ走るのか……?

2015年5月5日火曜日

ハリウッド・コレクターズ・コンベンション No.6

(超絶アガリ症の)人間にしてはやったと思いたい。

ハリウッド・コレクターズ・コンベンション No.6
2015.5.4. ホテルグランドパレス2F

緊張すると胃がキリキリしたりスピンしたりする人間ですが(『ザ・ロック』のニコラス・ケイジも「胃がフラフープのように回ってる」って言ってましたよね)、今回は胃のぐるぐると心臓のばくばくが相まって、チェストバスターが出てくる心地でしたよ。

今年のハリコンはシュワが出迎えてくれました。

ランスとなじみの深い(?)こんな方もいらっしゃいます。


ハリコン参加は2回目。2013年5月のハリコンNo.2(ゲスト:ロバート・イングランド&ショーン・アスティン)以来だ。そのときに比べると、今年はディーラーブースがずいぶんこじんまりしているし、来場者数も少なめのように思える。
ちょっとお祭り気分には乏しいのが残念だが、ゲストがその辺をふらっと歩いていくという奇跡のような現場を拝めることもありましたよ。

今年のゲストはビショップことランス・ヘンリクセンと、T-1000ことロバート・パトリック。ロバートは娘さん(すごく可愛い)同伴だった。
ロバートは以前の来日時に覚えた日本語が「モウカリマッカ」だったらしく、第一声が「コニチワ、モウカリマッカ!」。その後サインor撮影に来たお客さんへの挨拶が「ヘイ、What's up? モウカリマッカ!」。T-1000も陽気で豪快なおじさんになったなぁ。
ロバートのサイン・撮影会には参加できなかったんだけど、陽性エネルギーがブースを飛び出してくるようなお方だったよ。

先に始まったのはツーショット写真撮影会。出演作をご覧になれば分かる通り、ランスは小柄なので、並んだ時の目線の近さが半端じゃない。
私、何かと頭蓋骨に着目するクセのある人間なので、ランスのチャームポイントにも「デコ骨の左右のでっぱり」を挙げていたりするのだが、振り返ってみればおでこに着目することもド忘れする始末。覚えているのは色素が薄くサイズの大きい眼球だった。日ごろ人の目を見て話すのが苦手なだけに、フェイスハガーでも被りたい心境ではあったけど、さすがに失礼すぎるものなぁ。

そしてもう一つ覚えているのが、肩を組んで撮影に臨んでくださったランスの身体が、めちゃくちゃソフトだったように思えたこと。お年のせいなのか、こっちの脳ミソが舞い上がってふわっふわになってたせいなのかは分からないが。
あまりのことにカメラに表情を作ることを忘れてしまい、出来上がった写真を見てみたら、案の定ぶっ倒れる10秒前みたいな笑顔になってたのだった。

ランスは素敵なショットでしたよ。ランスは。


サイン待ちの最中、撮影待ちのランスのワンショットを偶然収められました。

当初はツーショット写真とトークショーのチケットしか購入していなかったのだが、やはりここまで来たのならと、急遽サインチケットも購入。サインしてもらう用に『ニア・ダーク 月夜の出来事』のポートレートも購入した。ビショップもいいけど、魅力的なならず者(吸血鬼)たるジェシーもカッコいいし、映画自体も好きなのである。本当は『ハード・ターゲット』のエミール・フーションがあれば良かったのだけれども。(いやそれ以前に、自宅から『パンプキンヘッド』の輸入BDを持っていくのが真のベストだったはず。何やっているんだか)

サイン中は机の反対側に行かなければゲストの写真を撮ってもOKだったのだが、何たることかサインをいただいている間ただただランスの手元を凝視してしまい、スマートフォンのカメラを起動させることすら忘れていたのだった。本当にこの日の自分は何から何まで抜け落ちているよ。
ひとつ言い訳させてもらうと、嬉しかったんです。写真の色合いに応じてペンの色を変えてくださったランスの御心遣いが。

左端にご注目いただきたい。背景とペンの色合いが被っちゃってるところは、
ペンを黒から銀に変えて書き直してくださっているのだ!!
ちなみに私の名前のところも修正していただいてます。

ところで、今回のハリコンでもう一つ目玉になっていたのが、スター・ウォーズのバトルポッド。エンドアやホスやデス・スターなどステージを選び、反乱軍パイロットとして帝国軍と戦いミッションを遂行する。しかも、バトルの際の揺れや風や衝撃まで体感できるのだ。
私、自宅にゲームの類を置いたこともなければゲーセンにも数えるほどしか行ってないド級の素人だが、こんなチャンスはあるまいと意を決してポッドに搭乗。
通常ミッション所要時間4分ほどのところを、見当違いの方向に飛び回った挙句2分で撃墜されたのだった。

ポンコツパイロットでも乗れるだけありがたかったバトルポッド。

「あーあ」と思いながら出ようとしたら、
↓のストームトルーパーさんが出入口に張り付いていた。
つまりあのひっどい飛行状態が帝国軍にバレていたわけで。
二重に残念なパイロットになってしまったよイウォーク君。

そんな軽いガッカリがありつつ、気を取り直してランス・ヘンリクセントークショーへ。Facebookで事前に集めた質問のQ&Aと、その場でのファンからのQ&A。覚えている限りで、どんなやり取りがあったのか簡単にまとめると……

『ターミネーター』についての話を聞きたいです:
制作会社へのプロモーション時にターミネーターを演じていたのだけど、そのとき凄味を見せようとしてドアを蹴飛ばしたので、会社からの印象が悪くなってターミネーター役から脱落してしまった。それでシュワルツェネッガーに……彼はブルドーザーみたいだからね。(シュワがブルドーザーみたいという例えは、このあとも何度か出ました)

自身のキャリアで一番印象に残っているキャラクターは?:
一番最近撮った映画が一番印象に残っている。昔のことはどこかに行ってしまうから。映画の仕事は暗闇でキスするようなもの。どこで、いつ、誰とキスしたのかも分からない。気が付いたら「あ、仕事がきた」というような。

『殺人魚フライングキラー』の現場で、キャメロン監督と殺人ピラニアの模型を作ったという話は本当?:
本当だよ。(ここでファン一同喜びのざわつき)キャリアの最初の映画は重要だ。キャメロンにとってはまぁ……(やはり黒歴史なんでしょうね)

『ストレイン 沈黙のエクリプス』の声の出演について:
ギレルモ・デル・トロは詩的でもあり暴力的でもある。そこが好きなんだ。

『エイリアン』の新作では3がなかったことにされているらしいが、3に出演した身としてはどう思うか? また新作への出演は?:
今度の南アフリカ出身の監督(ニール・ブロムカンプ)はクリエイティブだから楽しみにしている。まだ脚本はできていないから出演については分からないけど、脚本家が午前4時ぐらいに「どうしようかな……そうだ、ビショップ呼び戻そう」って思いつくかもしれないよ。

『ミレニアム』について:
新作企画はできているけどね。フランクが子どもに対する虐待疑惑をかけられるエピソードのときに、ちょうど自分の子どもが生まれたから、余計自分の子に対する思い入れが強くなったよ。

『エイリアン』と『ターミネーター』どちらが好き?:
『エイリアン』。(回答はわりと早めでした)

もし自身がT-800を演じていたら、"I'll be back"の代わりに何と言ったと思う?:
当時『エイリアン2』はまだ公開されていなかったからアーノルドのほうが有名だったけど、もしエイリアンが先だったら状況はだいぶ違っていたかもしれない。自分だったら爬虫類や蜘蛛みたいな動きを取り入れていたと思う。「目玉に毛がどうこう(うろ覚え)」というカリフォルニア特有のスラングで話すか、もしくは何も言わないかな。

アンドロイドを演じた人間として、アンドロイドは人間にとっていいものと考えるか、悪いと考えるか?:
ビショップには人間を傷つけたい気持ちもどこかにあって、またそうすることを恐れてもいた。キャメロン監督がそういう危うさを出したがっていたんだ。(もとの質問内容を忘れていたらしく)あ、アンドロイドはいいものだと思うよ。

日本に来てからおいしいものは食べましたか?昨日の夜とか……:
新幹線の中で食べたけど、あれが何なのか知らないな。(両指で四角を描いて)お米があったのは覚えてるけど、何ていうものかは分からない。おいしかったけど。(お弁当じゃないでしょうかね? 最初に間があったから、前のQ&Aの内容と相まって「ビショップがバグった!?」とか思ってしまってすみません)

惜しむらくはハリコン主催さんと通訳さんが、あまりランスの映画に明るくないようだったことか。映画のタイトルやキャラクターについての理解が不明瞭だったために、質問と回答に齟齬が生じること多々あり。
せっかく『ハード・ターゲット』の話題になったときも、ピク(・ヴァン・クリーフ。フーションの相棒の名前。アーノルド・ヴォスルー演)のことを通訳さんが動詞のpickと間違えたあたりから話が迷走してしまったもんなぁ。
『Savage Dawn』と『ストーン・コールド』とハカイダーの話もごっちゃになってしまったし(そしてランスが "Fly Me To The Moon"を歌いだし、空気を和ませたのだった)。

ただそれでも、すべてを帳消しにする総員感動の瞬間があったことは間違いない。ファンのリクエストで、ビショップの名ゼリフ「人間にしてはやるね(Not bad for a human)」を言ってくださったときだ。
しかも、「じゃあ言うよ」とペットボトルを開けたので、喉を潤してコンディションを整えるのかと思いきや、口に含んだ水をコポコポ吐きながら「Not bad for a human」と!!! これはまさしく、白い体液を吐きながら喋るビショップというシチュエーションに忠実な再現。まさかそこまでやってくださるとは思わなかった。
今までそうだとは考えてなかったけど、本当にユーモアとサービス精神が図抜けた方なんだなぁとようやく実感したのだった。

なお、このときの最大のラッキーは、自分の座っているところ(通路側)がランスの通り道になってたおかげで、行きと帰りに握手&タッチをしてもらえたことです。

トークショー後、スタッフさんと密談中(に見えた)。

到着早々、ランスもちょっと食いついていたエイリアンクイーンのヘッド。
そこにトークショー終了後……

「Lance Henriksen  Bishop」のサインが入ることに!!
ビショップの30年越しの仕返しに見えなくもない。

個人的今年のハリコンの締めくくりは、『パシフィック・リム』のギレルモ・デル・トロが原作・監督・脚本・製作を手掛けたドラマ『ストレイン 沈黙のエクリプス』1・2話観賞会だった。
今回のデル・トロワールドは、パンデミックサスペンス×『ブレイド2』。
こんな感じのストーリーはスティーヴン・キングもので読んだり観たりしたことがあるはずなのだが、次にどう転ぶか楽しみで楽しみで、引き込まれて仕方ない。登場人物がいちいち魅力的で、リーパーズ以来のエグい解剖シーンを拝めるのもデル・トロ流。

ホラー寄りなのでエグいシーンもあるが、この手の映画にありがちなびっくらかし演出を嫌うデル・トロだけあって、ときにじわじわときにカラリと恐怖を魅せてくれるところが一番好感が持てる。ラミン・ジャワディの適度に不穏さを煽るスコアもいいが、既出曲の使い方も絶妙。「Sweet Caroline」をあんなシーンで流すセンス、個人的に大好物です。

ちなみに、ランスもこの映画に声の出演中。さっきまでの怒涛のランス祭りの直後に、このドラマであの声を聴くと、『ドラキュラ』のレンフィールドよろしく「マスタァァァァァァ」と見えないランスに頭を下げてしまいそうです。ドラマを観た方には「そのままじゃん」と言われそうですが。


それにしても今回は、ちゃんとしたズームができるデジカメを忘れ、気兼ねなくサインしてもらえるアイテムだった『パンプキンヘッド』BDを忘れ、もっともランスのクロースアップを撮れるはずだったサイン中の撮影を忘れ……
トークショー中に「ビショップがバグった?」なんて思ってる場合じゃないよ。一番修正不能なほどバグってるのは私の脳ミソじゃないか!!!

おまけ:今回の戦利品、『SAW』のトーキング栓抜き。
ボトル開けようとするたびに
「ゲームをしよう」「おめでとう、君は生還した」「ゲームオーバー」
等、ジグソウ先生のありがたいお言葉を聞かせてくれる。
ただし持ち主は聞きながらまったりビール飲んじゃってるので何となくアウト。