2012年1月27日金曜日

モンティ・パイソンのスパマロット@赤坂ACTシアター

聖杯は、みんなの心の中にある! 的な何か。

モンティ・パイソンのスパマロット featuring SPAM
2012.01.15. 赤坂ACTシアター
出演:ユースケ・サンタマリア、池田成志、彩吹真央

英国のバカミュージカルは、いかにして日本のバカミュージカルに変化したか。

実際に舞台を観て気づいたんですが、聖杯探しという一応の本筋は意外とちゃんと残っていたんですね。ブロードウェイ版のサウンドトラック聴いただけじゃ気づかなかったけど。
脱線はしすぎずに、それでいてオリジナルの『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』好きには嬉しい、映画のあのシーンやこのシーンを盛り込んである。TVシリーズ『空飛ぶモンティ・パイソン』ネタも盛り込んである。さらには、オリジナルでパイソンズがやっていた「1人複数役」制度もあり。
元ネタに詳しいパイソニアンも、特に何も知らない方々も楽しめるように作ってあるあたりに、エリック・アイドルの商売上手がうかがえる。モンティ・パイソンにおけるエリックの持ちキャラの名言を借りて言うならば、「このぉ、ちょんちょん!!」である。

大筋は当然本家『スパマロット』と同じだが、ギャグなどの小ネタに関しては、ミュージカルを制作する国のスタイルに委ねられているらしい。
一番分かりやすいところでは、「ブロードウェイじゃユダヤ人がいないと成功できない」と歌う「You Won't Succeed On Broadway」という曲が、「日本じゃ韓流アイドルじゃないと成功できない」がテーマの「コリアンスター」になり、筋肉アピール系の男性アイドルが出てきたり、女性アイドルが少女時代やKARAもどきのダンスを踊っていたりする。
また、第二幕に入ってから出番がない湖の貴婦人の歌「私の出番は?」(原曲『Whatever Happened To My Part?』)の歌詞には、演じる彩吹真央のバックグラウンドを取り入れて「この中で一番歌うまいのに」「宝塚をナメないで」のフレーズが。
しかし、一番「日本のバカ」に貢献していたのは、時事ネタ・劇場を提供してるTBSおちょくりネタ・最底辺レベルのダジャレを含む、役者さんのしゃべくり(アドリブもあったのだろうか?)だろう。

シェイクスピア劇風のグレアム・チャップマンや、ティム"フランク"・カリーに比べると、ユースケさんのアーサー王は威厳もないしカリスマもないし軽いし、史上トップクラスにユルい。トップって確証は全然ないけど。
この人のユルさは結構日本版『スパマロット』にハマると思っていたが、振り返ってみると、ハマるどころかこのミュージカルの中核だった。ヘタレアーサー王の周りを、全編ツッコミ担当の従者パッツィやら、やたらアクの強い円卓の騎士やら、もっとアクの強いサブキャラやらが歌い踊ることで、妙なお笑い化学反応が成立していた。

アクの強さで例に挙げると、グループ魂ファンとしてはつい「港カヲルさん」といいたくなる皆川猿時さん。ベディヴィア卿ほか3役を演じている。「ほか3役のほうが大変そう」とパンフレットのインタビューで語っていたが、実際あるシーンで、付けヒゲが落ちカツラがズレるほどの激しいツッコミ(半ばボケ?)応酬を魅せてくれた。
が、そんな皆川さんをも上回ったのが、ランスロット卿ほか3役の池田成志さん。「ニッの騎士」の延々続く一人芝居といい、宙に浮く「吉田さん」といい、比喩が微妙すぎて伝わりにくい悪口で罵倒するフランス人衛兵といい、ひとたびキャラにスポットがあたると、もうこの人の独壇場。観客ばかりか、うっかりすると同じステージに立っている演者さんたちも笑ってしまうほど。それまでノーマークの役者さんだっただけに、大いなる不意打ちをくらいましたよ。

ここまでくるとすっかり英国色が薄れてしまった気がするけど、この平たい顔で(しかもそれをカバーするほどのメイクもなく)ブリテン人で居続けるのもちょっと無理があるので、これぐらいジャパンナイズされててもいいですよね、エリック?


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