2015年5月13日水曜日

戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE‐01~劇場版・序章

戦慄暴走ファイル 工藤がコワすぎ!

戦慄怪奇ファイル コワすぎ!
監督:白石晃士
出演:大迫茂生、久保山智夏

面白い映画には、だいたい魅力的な悪役がいる。この「魅力的」ってのが厄介で、現実なら近くには絶対に寄せ付けたくないヤな奴のクセして、スクリーンやテレビで観ているとやること成すこと面白くって、たとえ悪行だろうと外道だろうといいぞもっとやれと後押ししている自分がいる。

まぁ、工藤ディレクターは純然たる悪役とは言えないが……上司にこんな奴がいたらメンタルがもたなくて仕事辞めてると思う。
しかし、画面越しである限り、市川ADとカメラマン田代の苦労を無視して思ってしまう。「いいぞ工藤Dもっとやれ!!!」

FILE-01 口裂け女捕獲作戦('12)




投稿者から送られてきた映像に映っていた、大きなマスクをして信じられないスピードで走ってくる長身の女。かつて日本中を噂が駆け巡った「口裂け女」ではないかと推測された。ディレクターの工藤は、「口裂け女を捕獲する」という目的のもと、取材を開始する。

「撮影する」でもなく「真相を確かめる」でもなく、「捕獲する」という飛躍の激しい工藤Dの目標。
一瞬何かが映ったとか暗がりに見えたといった奥ゆかしさ(?)もなく、白昼にも夜間にもカメラに堂々と映り込む怪異(ただし、思わず鳥肌の立つ映り込み方ってのもちゃんとありますよ)。
追う側も追われる側もアグレッシブで、心霊モキュメンタリーを観るつもりでいたはずが、始まったのは見世物小屋という個人的には嬉しい誤算。同じモキュメンタリーなら『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』よりは『食人族』に近いんじゃなかろうか。ただし白石監督いわく、もっとも影響を受けたモキュメンタリー映画は『ありふれた事件』だそうだ。

何よりこのシリーズのイメージを決定づけたのは、工藤Dの暴走だった。謎に迫るためには、恐喝・暴力だいたい何でもやらかす。ホームレスをぶん殴り、何か知っていると思しき呪術師を怒らせ、投稿者にも協力を仰ぐといって危ない橋を渡らせる。
もちろんいつも身近にいるAD市川さんとカメラマン田代は、ちょっと反対意見を言うだけでどやされる。幽霊や妖怪の類に遭遇するよりもよっぽど後味が悪い。しかももっと困ったことに、この横暴男は幽霊より確固たる現実なのだ。

終盤、口裂け女を追う工藤Dは、金属バット片手に夜の住宅街を走り回る。口裂け女はどこに行ったか分からないので、我々の目に見えるアブナイ存在は、バットを持って叫びながら疾走するおっさんのみ。大げさな言い方になるが、狂気が怪異に追いつき追い越した、金字塔的瞬間だった。

FILE-02 震える幽霊('12)




幽霊が出ると噂の廃墟で撮影された映像。そこに記録されていたのは、鈴のような音、謎の足音、そして小刻みに震える人型のようなもの。工藤は投稿者らとともに問題の廃墟に足を踏み入れ、いくつかの怪現象を確認。
しかし、投稿者の中の女性一人が失踪したのを皮切りに、その女性が持つ不可解な能力、スカイツリー上空に浮かぶ物体、「先生」と呼ばれる人物など、謎はさらに広がっていく。

『パラノーマル・アクティビティ』系統の心霊もので来たか? と思いきや、スカイツリーの怪や謎の人物まで現れ、予想外の展開へとなだれ込んでいく。ただ、風呂敷が思わぬ方向に広がったはいいが、今回は収拾のめどがつかないまま幕を閉じてしまう。おそらく後に伏線が回収されるのだろうと予想しつつも、若干の消化不良は残るだろう。

その結果、市川や田代そして投稿者たちを悩ませる工藤Dの暴走が、モヤモヤの多い作中の清涼剤と化すという不思議な逆転現象が生じている。
前回、髪の毛を編み込んだ呪いの道具を気軽に持って帰ってしまうという暴挙に出た工藤だが、それを「実験だよ!」と言っていわくつきの場所で活用するというさらなる暴挙に出た。呪具の力がスゴいのか、工藤Dの暴力がスゴいのか、ここに「工藤D×呪いの編み飾り」という痛快コンボが誕生してしまう……。ついでに、工藤Dのもとに映像を持ち込んだ投稿者は悲惨な目に遭うという法則まで確率してしまうのだが。

脅しありビンタあり投稿者巻き込みありと、今回も不穏な活躍には事欠かない工藤D。彼が呪いの編み飾りを首にかけ、怪現象の真っ只中へ迷いなく突っ走っていく姿を観て、うっかり感動してしまった自分は、きっと幽霊よりもある意味厄介なものに憑かれてます。

FILE-03 人喰い河童伝説('13)




投稿者のカップルが立ち入り禁止の池で撮影した映像には、食い荒らされた動物の死骸とキュウリとともに、謎の生物が映っていた。その池には河童が棲んでいるという噂があった……。
市川と田代は入院中の工藤に変わって現地調査に赴き、その地に古くから伝わる河童の伝説、また河童について何か知っているらしい農家の男の存在も確認。そこへ、無断で病院を抜け出してきた工藤が「河童を捕獲する」と言い張って合流し……。

「普通に考えたら物理攻撃で何とかなりそうにない相手に物理攻撃で挑む」というシチュエーションが大好物の自分にとって、FILE-01のときから金属バットを振りかざす工藤Dの姿勢は大変に望ましいものだった。それが3作目に来て、遂に観たかったものを提示してくれたのだ。
そう、河童の体当たりを食らって転倒&ケガを負う工藤Dに、反撃に河童を殴り倒す工藤D! あととばっちりを喰らって河童に引きずられた市川AD! 宇宙人をグーで殴る『プラン9・フロム・アウタースペース』、火星人とボクシングする『マーズ・アタック!』、魔女をぶん殴る『ヘンゼル&グレーテル』、宇宙人とプロレスする『バトルシップ』……などなど挙げだしたらキリがないが、本作はこの「物理攻撃シリーズ(仮)」に邦画代表として君臨した。
ちなみに河童をぶっ飛ばしたパンチには、例の呪いの編み飾りが一役買っているのだが……そんな形で呪具を使いこなしてしまう工藤D、とうとうヘタすると陰陽師より使えるという域に達してしまった。ただの暴力人間と何が違うんだって奴なのに。

1作目で金字塔になり、2作目では清涼剤になり、3作目に至っては不在だと心もとなく、戻ってくるとようやく安定感が生まれる。……これはマズいぞ。工藤Dに、ひいては白石監督にダマされてる証拠だぞ。ダマされる甲斐もあるけどな。

FILE-04 真相! トイレの花子さん('13)




2人の少女が廃校で撮影したビデオに映っていた、トイレから飛び出してくる少女は「トイレの花子さん」なのか? その翌日のビデオ映像に見えた、投稿者自身の死のビジョンは未来を予言しているのか? 
工藤Dは今回、霊媒師・真壁を伴って現場を訪れた。彼女は「ここは向こうの世界とつながっている」「時間も空間も歪んでいる」と語る。そしてほどなく、投稿者のうち1人が姿を消す……。

いや、とんだ学習不足だった。FILE-02だっていかにも心霊ホラー的なシチュエーションを提示しておきながら、異世界の謎の種をバラまきまくった一本だったじゃないか。だったらテーマがトイレの花子さんだからって、ただの学校の怪談の範疇に収まるわけないと予測もできたじゃないか。実際FILE-02に近いものがある怪現象も起きていたじゃないか。
しかし、まさか、サブタイトルになっている花子さんの影が思ってたより薄く、メインはみんなでレッツ・ドゥ・ザ・タイムワープ・アゲインなんて……!!!

今回の工藤Dはおとなしめ……といっても恫喝ぐらいはやらかす。代わりに市川ADが珍しくキレる光景が見られる。そのぶん異世界側からのアプローチと、それに対抗する真壁の能力がアグレッシブで目まぐるしい。何せ、怪異のほうは時間や空間をねじ曲げてしまい、真壁は時間を遡ったり先へ飛んだりできるので、一同昼夜を行ったり来たり、また学校と投稿者宅を行ったり来たり……「あれ、これ『X-MEN』だっけ……?」と勘違いするようなしないような。
そしてしまいには、シリーズ通して示唆されてきた「向こう側の世界」にとうとう触れることになる。ホラーやミステリーよりもギャグ寄りじゃないかというような見せ方ではあるのだが、もうこのシリーズはこれぐらい吹っ切れてもいいよな! と思いきれるだけのパワーを手にしてしまったからなぁ。
それにしても、わずかなショットながら、異次元に飛んでも工藤Dは工藤Dなのだな……。

劇場版・序章 真説・四谷怪談 お岩の呪い('14)




前回の事件よりしばらく『コワすぎ!』シリーズから遠ざかっていた取材班が、ここへきて再び企画始動に乗り出す。「向こう側の世界」の真相を探る、どうやら関わりがあるらしい工藤の過去と「向こう側の世界」の関係性を明らかにする、そして借金返済といった理由のもとに……。

今回の投稿映像は撮影中止になった映画の一部。顔が半分崩れた女の姿と、FILE-04で撮影された異世界の入口のような影が映っていた。また、このシーンに出演していた女優が音信不通だという。「四谷怪談」に関わる映画を撮る際にはお祓いをするのが通例なのだが、1シーンでお岩さんに言及する程度だからと、お祓いをしなかったことが原因ではとされていた。
工藤Dらは音信不通の女優の家を訪ねるが、彼女は片目が腫れ、意味不明な言動をくり返し、果ては包丁で襲いかかってくる始末。さらに取材中のカメラにもお岩さんのような人影が映り出し、とうとうその影響は市川ADにまで及び始める。

口裂け女も花子さんも、実は異世界からの斥候にすぎなかった。ってことは今回のお岩さんも……と思ったら本当に「傀儡にすぎない」(霊能者・宇龍院談)。真の敵は異世界にあり! それに挑むは我らが工藤D!!! 
……あの、よく映画で世界の命運を握って戦うべき人が「コイツに世界を委ねるのか!?」みたいに言われるじゃないですか。コレは……普通に考えておそらく一番世界を委ねちゃいかん奴じゃないですかね。だってあの工藤Dですよ。

前回比較的おとなしかった反動か、工藤Dの暴走は再び加速。その被害を今回ほぼすべて市川ADが受ける羽目になった。取材始めに引っぱたかれたのを皮切りに、よりによってお岩さんの呪いと思しき何かに憑かれてしまい、再び「向こう側の世界」へ。
しかも、市川の除霊のために訪ねた霊能者の宇龍院道玄は、工藤Dとタメを張れるほど態度が悪い。除霊でトランス状態の市川&ときどき映り込むお岩さんの影にビビる田代をよそに、「オレは命かけてんだよ!」「こっちだって命かけてんだよ!」と醜い(?)争いを繰り広げる工藤Dと宇龍院。これほど「似た者同士」を的確に映し出した光景にはめったにお目にかかれない。あと、「こんなときのためにピッキングを習った」なんて人にもめったにお目にかかれない。工藤さんあなたですよ。

そんな無茶苦茶を観ているにもかかわらず、呪いの編み飾り片手に異世界へ(田代を道連れに)飛び込み、うねうねした有象無象を呪具で殴りちらす工藤Dの何とヒロイックなことか。「工藤さーーん!!!」「市川ーーー!!!」と手を伸ばし合う瞬間なんぞ、『クリフハンガー』的な感動すら漂っていたし。迷いなくああいう行動に出ることができる工藤Dには、ヘタすると羨望すら覚える……いや待て待て待て。これは私の背後に金属バット持ったおっさんの生霊が憑いているのかもしれんぞ。


さて、ここへきてFILE-01とも新たなつながりを見せ始めたシリーズはやっと劇場版へ。
映画化企画を「よし決めた!」「ザ・ムービーだよ!」と二次会行こうぜぐらいの軽いノリで進めてしまう工藤Dと愉快ではなさそうな仲間たちの行く末は?
FILE-02でバラまくだけバラまかれて回収されていない謎は収拾をつけられるのか?
FILE-03の河童はこれ以上絡みようがあるのか?
そして、ある意味オバケよりコワい工藤Dはどこまで突っ走るのか……?

2015年5月5日火曜日

ハリウッド・コレクターズ・コンベンション No.6

(超絶アガリ症の)人間にしてはやったと思いたい。

ハリウッド・コレクターズ・コンベンション No.6
2015.5.4. ホテルグランドパレス2F

緊張すると胃がキリキリしたりスピンしたりする人間ですが(『ザ・ロック』のニコラス・ケイジも「胃がフラフープのように回ってる」って言ってましたよね)、今回は胃のぐるぐると心臓のばくばくが相まって、チェストバスターが出てくる心地でしたよ。

今年のハリコンはシュワが出迎えてくれました。

ランスとなじみの深い(?)こんな方もいらっしゃいます。


ハリコン参加は2回目。2013年5月のハリコンNo.2(ゲスト:ロバート・イングランド&ショーン・アスティン)以来だ。そのときに比べると、今年はディーラーブースがずいぶんこじんまりしているし、来場者数も少なめのように思える。
ちょっとお祭り気分には乏しいのが残念だが、ゲストがその辺をふらっと歩いていくという奇跡のような現場を拝めることもありましたよ。

今年のゲストはビショップことランス・ヘンリクセンと、T-1000ことロバート・パトリック。ロバートは娘さん(すごく可愛い)同伴だった。
ロバートは以前の来日時に覚えた日本語が「モウカリマッカ」だったらしく、第一声が「コニチワ、モウカリマッカ!」。その後サインor撮影に来たお客さんへの挨拶が「ヘイ、What's up? モウカリマッカ!」。T-1000も陽気で豪快なおじさんになったなぁ。
ロバートのサイン・撮影会には参加できなかったんだけど、陽性エネルギーがブースを飛び出してくるようなお方だったよ。

先に始まったのはツーショット写真撮影会。出演作をご覧になれば分かる通り、ランスは小柄なので、並んだ時の目線の近さが半端じゃない。
私、何かと頭蓋骨に着目するクセのある人間なので、ランスのチャームポイントにも「デコ骨の左右のでっぱり」を挙げていたりするのだが、振り返ってみればおでこに着目することもド忘れする始末。覚えているのは色素が薄くサイズの大きい眼球だった。日ごろ人の目を見て話すのが苦手なだけに、フェイスハガーでも被りたい心境ではあったけど、さすがに失礼すぎるものなぁ。

そしてもう一つ覚えているのが、肩を組んで撮影に臨んでくださったランスの身体が、めちゃくちゃソフトだったように思えたこと。お年のせいなのか、こっちの脳ミソが舞い上がってふわっふわになってたせいなのかは分からないが。
あまりのことにカメラに表情を作ることを忘れてしまい、出来上がった写真を見てみたら、案の定ぶっ倒れる10秒前みたいな笑顔になってたのだった。

ランスは素敵なショットでしたよ。ランスは。


サイン待ちの最中、撮影待ちのランスのワンショットを偶然収められました。

当初はツーショット写真とトークショーのチケットしか購入していなかったのだが、やはりここまで来たのならと、急遽サインチケットも購入。サインしてもらう用に『ニア・ダーク 月夜の出来事』のポートレートも購入した。ビショップもいいけど、魅力的なならず者(吸血鬼)たるジェシーもカッコいいし、映画自体も好きなのである。本当は『ハード・ターゲット』のエミール・フーションがあれば良かったのだけれども。(いやそれ以前に、自宅から『パンプキンヘッド』の輸入BDを持っていくのが真のベストだったはず。何やっているんだか)

サイン中は机の反対側に行かなければゲストの写真を撮ってもOKだったのだが、何たることかサインをいただいている間ただただランスの手元を凝視してしまい、スマートフォンのカメラを起動させることすら忘れていたのだった。本当にこの日の自分は何から何まで抜け落ちているよ。
ひとつ言い訳させてもらうと、嬉しかったんです。写真の色合いに応じてペンの色を変えてくださったランスの御心遣いが。

左端にご注目いただきたい。背景とペンの色合いが被っちゃってるところは、
ペンを黒から銀に変えて書き直してくださっているのだ!!
ちなみに私の名前のところも修正していただいてます。

ところで、今回のハリコンでもう一つ目玉になっていたのが、スター・ウォーズのバトルポッド。エンドアやホスやデス・スターなどステージを選び、反乱軍パイロットとして帝国軍と戦いミッションを遂行する。しかも、バトルの際の揺れや風や衝撃まで体感できるのだ。
私、自宅にゲームの類を置いたこともなければゲーセンにも数えるほどしか行ってないド級の素人だが、こんなチャンスはあるまいと意を決してポッドに搭乗。
通常ミッション所要時間4分ほどのところを、見当違いの方向に飛び回った挙句2分で撃墜されたのだった。

ポンコツパイロットでも乗れるだけありがたかったバトルポッド。

「あーあ」と思いながら出ようとしたら、
↓のストームトルーパーさんが出入口に張り付いていた。
つまりあのひっどい飛行状態が帝国軍にバレていたわけで。
二重に残念なパイロットになってしまったよイウォーク君。

そんな軽いガッカリがありつつ、気を取り直してランス・ヘンリクセントークショーへ。Facebookで事前に集めた質問のQ&Aと、その場でのファンからのQ&A。覚えている限りで、どんなやり取りがあったのか簡単にまとめると……

『ターミネーター』についての話を聞きたいです:
制作会社へのプロモーション時にターミネーターを演じていたのだけど、そのとき凄味を見せようとしてドアを蹴飛ばしたので、会社からの印象が悪くなってターミネーター役から脱落してしまった。それでシュワルツェネッガーに……彼はブルドーザーみたいだからね。(シュワがブルドーザーみたいという例えは、このあとも何度か出ました)

自身のキャリアで一番印象に残っているキャラクターは?:
一番最近撮った映画が一番印象に残っている。昔のことはどこかに行ってしまうから。映画の仕事は暗闇でキスするようなもの。どこで、いつ、誰とキスしたのかも分からない。気が付いたら「あ、仕事がきた」というような。

『殺人魚フライングキラー』の現場で、キャメロン監督と殺人ピラニアの模型を作ったという話は本当?:
本当だよ。(ここでファン一同喜びのざわつき)キャリアの最初の映画は重要だ。キャメロンにとってはまぁ……(やはり黒歴史なんでしょうね)

『ストレイン 沈黙のエクリプス』の声の出演について:
ギレルモ・デル・トロは詩的でもあり暴力的でもある。そこが好きなんだ。

『エイリアン』の新作では3がなかったことにされているらしいが、3に出演した身としてはどう思うか? また新作への出演は?:
今度の南アフリカ出身の監督(ニール・ブロムカンプ)はクリエイティブだから楽しみにしている。まだ脚本はできていないから出演については分からないけど、脚本家が午前4時ぐらいに「どうしようかな……そうだ、ビショップ呼び戻そう」って思いつくかもしれないよ。

『ミレニアム』について:
新作企画はできているけどね。フランクが子どもに対する虐待疑惑をかけられるエピソードのときに、ちょうど自分の子どもが生まれたから、余計自分の子に対する思い入れが強くなったよ。

『エイリアン』と『ターミネーター』どちらが好き?:
『エイリアン』。(回答はわりと早めでした)

もし自身がT-800を演じていたら、"I'll be back"の代わりに何と言ったと思う?:
当時『エイリアン2』はまだ公開されていなかったからアーノルドのほうが有名だったけど、もしエイリアンが先だったら状況はだいぶ違っていたかもしれない。自分だったら爬虫類や蜘蛛みたいな動きを取り入れていたと思う。「目玉に毛がどうこう(うろ覚え)」というカリフォルニア特有のスラングで話すか、もしくは何も言わないかな。

アンドロイドを演じた人間として、アンドロイドは人間にとっていいものと考えるか、悪いと考えるか?:
ビショップには人間を傷つけたい気持ちもどこかにあって、またそうすることを恐れてもいた。キャメロン監督がそういう危うさを出したがっていたんだ。(もとの質問内容を忘れていたらしく)あ、アンドロイドはいいものだと思うよ。

日本に来てからおいしいものは食べましたか?昨日の夜とか……:
新幹線の中で食べたけど、あれが何なのか知らないな。(両指で四角を描いて)お米があったのは覚えてるけど、何ていうものかは分からない。おいしかったけど。(お弁当じゃないでしょうかね? 最初に間があったから、前のQ&Aの内容と相まって「ビショップがバグった!?」とか思ってしまってすみません)

惜しむらくはハリコン主催さんと通訳さんが、あまりランスの映画に明るくないようだったことか。映画のタイトルやキャラクターについての理解が不明瞭だったために、質問と回答に齟齬が生じること多々あり。
せっかく『ハード・ターゲット』の話題になったときも、ピク(・ヴァン・クリーフ。フーションの相棒の名前。アーノルド・ヴォスルー演)のことを通訳さんが動詞のpickと間違えたあたりから話が迷走してしまったもんなぁ。
『Savage Dawn』と『ストーン・コールド』とハカイダーの話もごっちゃになってしまったし(そしてランスが "Fly Me To The Moon"を歌いだし、空気を和ませたのだった)。

ただそれでも、すべてを帳消しにする総員感動の瞬間があったことは間違いない。ファンのリクエストで、ビショップの名ゼリフ「人間にしてはやるね(Not bad for a human)」を言ってくださったときだ。
しかも、「じゃあ言うよ」とペットボトルを開けたので、喉を潤してコンディションを整えるのかと思いきや、口に含んだ水をコポコポ吐きながら「Not bad for a human」と!!! これはまさしく、白い体液を吐きながら喋るビショップというシチュエーションに忠実な再現。まさかそこまでやってくださるとは思わなかった。
今までそうだとは考えてなかったけど、本当にユーモアとサービス精神が図抜けた方なんだなぁとようやく実感したのだった。

なお、このときの最大のラッキーは、自分の座っているところ(通路側)がランスの通り道になってたおかげで、行きと帰りに握手&タッチをしてもらえたことです。

トークショー後、スタッフさんと密談中(に見えた)。

到着早々、ランスもちょっと食いついていたエイリアンクイーンのヘッド。
そこにトークショー終了後……

「Lance Henriksen  Bishop」のサインが入ることに!!
ビショップの30年越しの仕返しに見えなくもない。

個人的今年のハリコンの締めくくりは、『パシフィック・リム』のギレルモ・デル・トロが原作・監督・脚本・製作を手掛けたドラマ『ストレイン 沈黙のエクリプス』1・2話観賞会だった。
今回のデル・トロワールドは、パンデミックサスペンス×『ブレイド2』。
こんな感じのストーリーはスティーヴン・キングもので読んだり観たりしたことがあるはずなのだが、次にどう転ぶか楽しみで楽しみで、引き込まれて仕方ない。登場人物がいちいち魅力的で、リーパーズ以来のエグい解剖シーンを拝めるのもデル・トロ流。

ホラー寄りなのでエグいシーンもあるが、この手の映画にありがちなびっくらかし演出を嫌うデル・トロだけあって、ときにじわじわときにカラリと恐怖を魅せてくれるところが一番好感が持てる。ラミン・ジャワディの適度に不穏さを煽るスコアもいいが、既出曲の使い方も絶妙。「Sweet Caroline」をあんなシーンで流すセンス、個人的に大好物です。

ちなみに、ランスもこの映画に声の出演中。さっきまでの怒涛のランス祭りの直後に、このドラマであの声を聴くと、『ドラキュラ』のレンフィールドよろしく「マスタァァァァァァ」と見えないランスに頭を下げてしまいそうです。ドラマを観た方には「そのままじゃん」と言われそうですが。


それにしても今回は、ちゃんとしたズームができるデジカメを忘れ、気兼ねなくサインしてもらえるアイテムだった『パンプキンヘッド』BDを忘れ、もっともランスのクロースアップを撮れるはずだったサイン中の撮影を忘れ……
トークショー中に「ビショップがバグった?」なんて思ってる場合じゃないよ。一番修正不能なほどバグってるのは私の脳ミソじゃないか!!!

おまけ:今回の戦利品、『SAW』のトーキング栓抜き。
ボトル開けようとするたびに
「ゲームをしよう」「おめでとう、君は生還した」「ゲームオーバー」
等、ジグソウ先生のありがたいお言葉を聞かせてくれる。
ただし持ち主は聞きながらまったりビール飲んじゃってるので何となくアウト。

2015年4月30日木曜日

劇場版 ビーバス&バットヘッド DO AMERICA

ビーバス&バットヘッド あるいは(無知がもたらす思わぬ奇跡)。

劇場版 ビーバス&バットヘッド DO AMERICA('96)
監督:マイク・ジャッジ
出演(声):マイク・ジャッジ、ブルース・ウィリス、デミ・ムーア




『バードマン あるいは(無知がもたらす思わぬ奇跡)』関係者の皆様およびファンの皆様すみません。だって、コイツら本当にバカで無知ゆえに、奇跡的なまでの惨劇と活躍を見せてくれちゃうんだもんよ。

アメリカは架空の町ハイランドで、テレビを観てばかりで過ごしているバカの14歳コンビ、ビーバス&バットヘッド(B&B)。
ある日、眠っている間に大事な大事なテレビを盗まれてしまった。テレビがなければ生きていけない2人は、意地でもテレビを観ようと侵入したモーテルで、勘違いが重なった末にギャングの妻の暗殺を請け負ってしまう。
一路ラスベガスへ送られた2人はターゲットの妻の元へ赴くが、今度は言いくるめられて超小型の細菌兵器を持たされたままアメリカを横断することに。暗殺依頼人のギャングやFBIが追跡する中、そんなヤバい事態になっていようとはひとっっっかけらも理解できていないB&Bの行く末は……?

元のMTVシリーズ未見のまま、本作を初めて観たのが高校生のとき。絶え間なく続くB&Bの「エヘヘヘヘヘ」という締まらない笑いに若干イラッときたものの、その当時の自分にも身に染みて分かるほど強烈な教訓を得た。それは「バカで無知ほど恐ろしく、なおかつ無敵なものはない」ということだ。

熟慮なんてことはもとより、少し考えることすらロクにできないB&Bは、暗殺依頼がいかに危険な要件なのか分かっていない(それどころかセックスの話と勘違いし童貞卒業のチャンス! と盛り上がっている)。
細菌兵器のことは気づかないように持たされたから仕方ないとしても、もっとヤバい話を持ちかけられていることはまったくわかっていない(それどころか金と女が手に入ると勘違いしている)。
人と場合によっては巻き込まれ型サスペンスになりそうな土台でも、バカが中心にいるだけですべて脱力&下ネタと化すのである。

B&Bは徹底して無知でもある。ラスベガスからワシントンまで行けと言われても、どれほど距離があるか知らないゆえに、「ワシントンってこっちの方向? じゃ行くか」と広大な砂漠のど真ん中を歩き出す。走行中の車から飛び降りることがいかに危険かも知らないから、「着地と同時に走れば大丈夫じゃね?」と実行してしまう。
考えようによっては無知だからこそできる思い切った無茶なので、知識によって抑制がかかっているより人生エキサイティングなんじゃないですか? ……と観ているこっちが勘違いすることもあったりなかったり。

個人的に一番恐ろしくも面白いのは、彼らが文字もロクに読めないがために(そしてテレビの成人指定チャンネルが見られると勘違いしたがために)、フーヴァーダム決壊を招くところ。バカは時として大惨事を招く。

しかし何がタチ悪いかって、バカじゃなきゃ大丈夫なのかというと、決してそんなことはないってこと。
B&Bが通う学校のカウンセラーの先生は、ソフトなことばかり言って不良のB&Bに厳しい指導ができない。
逆にB&Bにキビしくあたる校長も、生徒のためを思う指導じゃなくて自分の精神不安定の原因を排除したいからそうしてるだけ。いつも「あぁぁぁあぁ~」と小刻みに震えているし。
頼みの綱のFBIも、実はB&Bがただのバカであることは見抜けなかったわけだし……
本当に「アメリカする(DO AMERICA)」映画だね。この国ヤバいぞという内部告発的な意味で。

ちなみに、もとはMTV放映のアニメーションということで、音楽勢はやたら豪華。オープニングはアイザック・ヘイズだし、挿入曲にオジー・オズボーンもあるし、砂漠で死にかけてるB&Bが見るサイケデリックな幻覚アニメはロブ・ゾンビの作。

音楽以外で贅沢なことには、お互いに殺し合い騙し合いをくり広げるギャングの夫婦の声がブルース・ウィリス&デミ・ムーアと、当時ホンモノの夫婦だった2人。デミ・ムーアはともかく、ダイハードなブロックバスター映画のみならず年に最低1回はB級映画に顔を出すブルース・ウィリスの姿勢は、この当時からブレてないんだな。

2015年4月29日水曜日

Repo! The Genetic Opera

歌って踊ってザックザク(刺殺音)。

Repo! The Genetic Opera('08)
監督:ダーレン・リン・バウズマン
出演:アレクサ・ヴェガ、アンソニー・スチュアート・ヘッド



スラッシャー映画とミュージカル。ヘンな組み合わせに思えるかもしれないが、ある種の人間には大変にテンションの上がる最強コンボである。問題は、一般的に需要が限られていることと、「ある種の人間」というのが自分の周辺で自分しか心当たりがないことだが。

2056年、世界規模で発生した内臓の疫病の蔓延で、人類の多くは死滅していた。ジーン・コーポレーションが開発した臓器移植という対抗策が生まれてからは、病は脅威ではなくなり、整形手術ですらファッション感覚で受けられる時代になっていた。ただし、臓器移植にかかる医療費はローン制であり、返済が滞った移植者は臓器を強制的に没収=殺害される。その殺人を請け負う人間こそ、ジーン社に所属する合法的暗殺者「レポマン」だった。
政府並みの力を持つジーン社だが、社長のロッティ・ラルゴには死期が迫っていた。ラルゴ家の後継者は、短気ですぐ周りの人間をぶっ殺してしまう長男ルイージ、美容整形中毒の長女アンバー、女の顔の皮膚をマスク代わりに被るのが趣味の次男パヴィ。当然ロッティはバカでサイコな我が子らに会社を継がせるつもりはなかった。
ジーン社が牛耳る街には、シャイロという17歳の少女が住んでいた。極めてまれな血液の難病を抱える彼女は、家から一歩も出ることを許されずに生きてきて、孤独と苛立ちを密かに募らせていた。
父ネイサンは、亡き妻の忘れ形見であるシャイロを大切にしていたが、そんな我が子にも打ち明けられない秘密を抱えていた。妻の本当の死因は自分の作った治療薬であったこと。そして、ジーン社のもとでレポマンとして債務者の臓器を回収していること……
シャイロとネイサン、ラルゴ一家の運命は、ジーン社主催のステージ「ジェネティック・オペラ」の夜に交錯していく。

『SAW2~4』のダーレン・リン・バウズマンの監督作……ということよりも、元X-JAPANのYOSHIKIがサントラのプロデューサーを務め、サラ・ブライトマンとパリス・ヒルトンが出演しているということが日本では宣伝になったらしい。
一度劇場公開はされたのだが、権利関係の問題なのかソフト発売はされていない。確かに観る人を非常に選ぶ作品ではあるけれど、日本盤が出ないのはやはりもったいない(輸入盤での購入は可能だが)。

ダーレン・スミス&テレンス・ズダニッチが手掛けるロックミュージックに、血しぶきと内臓溢れる古典的スプラッター色、それに手術台や車椅子などからうかがえる『SAW』風味がなぜか相性抜群。さながら、スタイリッシュとグロテスクを増長させた『ロッキー・ホラー・ショー』となった。
実際、ロッキー・ホラーの流れをくむカルトミュージカルになることは間違いないと思われる。一緒に歌ったり合いの手入れたりする「観客参加型」で観賞しても面白いだろうしね(日本国内で出来るもんならなぁ!!!!)

個人的には、ガチで痛覚神経に訴えてくる『SAW』シリーズより、内臓引きずり出しながらノリノリで歌ってる本作のほうが見やすくていいですね(それはそれでどうよという意見も一般には多いでしょうが)。

もう一つ『ロッキー・ホラー・ショー』との類似点であり、またこの後のバウズマン&ズダニッチ作ミュージカル『The Devil's Carnival』にも通ずる点が、濃いキャラクター祭りである。
一番曲者ぞろいなのがジーン社のメンバー。ボスのロッティ=マフィアのボスといえばこのお方のポール・ソルヴィーノを筆頭に、チョップトップことビル・モーズリィ&スキニー・パピーのニヴェック・オーガがバカ兄弟、バカ娘に至ってはパリス・ヒルトンだ。
特にパリスは、我がままで金遣いが荒くて、女王様のような恰好で闇マーケットにクスリ(整形手術用の鎮痛剤なのだが依存性が高い)を買いに来るという堕落令嬢。現実のパリスの素行を顧みるにキツいセルフパロディだ。

パリスのほかに出演が宣伝になったサラ・ブライトマンは、視力と引き換えに未来永劫ジーン社に尽くさねばならなくなったオペラ歌手ブラインド・マグ。歌はもちろんのこと、作中随一の良心としても一際光っている。
また、物語の語り部的な役割である墓泥棒を演じているのは、スコア担当のテレンス・ズダニッチ。低い歌声が大変魅力的です。ちなみにもう一人のスコア担当ダーレン・スミスは、ジェネティック・オペラのぶっ飛んだバンドマスターです。

こうも濃いキャラだらけだと主役級がかすむのではという危惧もあるのだが、本作はむしろシャイロ役アレクサ・ヴェガのピュアさと芯の強さが際立つようになっているので安心。歌もイイし。

なお、ネイサン=レポマンのアンソニー・スチュアート・ヘッドは、実は舞台版『ロッキー・ホラー・ショー』でフランクをやったこともあるらしい。確かにあの声はフランクに似合うなぁ。それも観てみたいよ。

予告編。この時点で「カルト・クラシック」と銘打たれているがそれも正しい。
中盤あたりから聴けるのがアンソニーの歌声。この声のフランクか……いいな!


闇市で墓泥棒が違法に精製した鎮痛剤(ザイドレイト)を売りさばく「Zydrate Anatomy」。
美容整形中毒のアンバーもザイドレイト目当てにやってくる。
イメージとはいえ少しだけ流血があるので苦手な方は注意。

警告を伝えるためシャイロのもとを訪れたブラインド・マグが歌う「Chase The Morning」。
実は彼女にとってもシャイロは大切な子なのである。
本作のサラ・ブライトマンは人間離れした魅力に満ちているよ。


しかし個人的に一番お気に入りの曲は「Mark It Up」ですね。
「会社を継ぐのはオレだもん」というバカ兄弟(ビル兄さんとオーガ)の争い。
作中ではまだソフトなほうとはいえ一応流血ありなので注意。

2015年4月20日月曜日

ホラー・シネマ・パラダイス

世間よ、これがホラーファンだ。

ホラー・シネマ・パラダイス('10)

監督:ジョシュア・グラネル
出演:ナターシャ・リオン、トーマス・デッカー

  

「世界には僕を見てほしくない/理解してるとは思えないから」(グー・グー・ドールズ『Iris』)という歌詞は好きだけど、実際のところは世間に自分みたいな人間を多少なりとも理解していただきたいからこの記事は見てほしい。特にこの手のジャンルの話に関しては。

愛する父から受け継いだ映画館ヴィクトリア・シアターを運営しているデボラ。深夜のホラー上映だけが売りの劇場は観客もまばらで経営難だが、劇場を敬愛する映写技師トゥイグスは無償で働き続けてくれるし、ホラー映画を愛する高校生スティーヴンも足しげく通い詰めていた。だが、デボラの意地悪な母は勝手に映画館の売却話を進め、罵りまじりに契約書へのサインを要求。
逆上したデボラは、衝動的に映画館のロビーで母を殺してしまった。しかも、その夜の上映作品の映写機をスタートさせるつもりが、パニックのあまり先ほどの殺人を映した監視カメラの映像をスクリーンに流してしまった。だが、その映像はよくできたアマチュアスラッシャー短編と勘違いされ、スティーヴンら観客に大ウケ。
ここに映画館再生の道を見出したデボラとトゥイグスは、サイコで暴力的なメンバーを迎え入れ、本物の殺人ショートフィルムを次々作成し上映。評判はたちまち拡散し、ヴィクトリア・シアターには観客が殺到、デボラは一躍新進気鋭のホラー監督として有名に。スティーヴンもファンとしてデボラの成功を喜ぶが、次第に映画の中の殺人は本物ではないかと気づき始める……。

陽気なスラッシャーを観にきたつもりだった。いや確かに陽気なスラッシャーを存分に楽しんだ。しかし同時に、「ホラー映画(特にスラッシャーもの)を楽しむ人=あなたとは」という姿を、ホラー好きのスティーヴンを鏡として見せてくる映画でもあった。

言うまでもなく私はホラー/スラッシャーが大好きだ。登場人物のエグい死に様が好きだ。殺人鬼の不気味な佇まいや非道な性格が好きだ。
しかしそうやって笑っていられるのは、今スクリーンの中で起きている死は現実じゃないと知っているからこそ。もしスクリーンに映っている殺人が本当だとしたら、この映画のために惨殺された人が本当にいたとしたら、それはきらびやかな悪夢じゃなくてただの悪夢だ。現実の死は基本的に悲劇でしかない。だから、デボラの映画が本物の殺人と知ったとき、スティーヴンの心はたちまち彼女から離れていく。

しかし、世間の目はむしろ逆。ホラー好きってことは何か心の闇でも抱えているんじゃない? ホラー好きは変質者に決まってる! ホラー好きなんだからそのうち事件を起こすに違いない! 
……と、親から同級生から教師から、スティーヴンに対する風当たりは厳しく、デボラの起こした殺人事件(傍目には失踪事件)でスティーヴンが疑われるというとばっちりすら受ける。中でも「マリリン・マンソンだって教師が彼のことをもっと気にかけていればああはならなかったはずよ」というスティーブンの担任の言い分には「ふざけんなぁぁぁ!!!!」と劇場で立ち上がりたい気持ちになりましたね。気持ちだけは。

ホラー好き=異常者なんて安直な発想だなぁ……と悠長なこと言っていたいけど、現在の日本においては前述の「ホラー」を「萌え系アニメ」に置き換えたような論調が存在するだけに、対岸の火事には思えない焦燥感よ。

本作はスクリーン上に本物の殺人が映される悪夢を描いているのだが、そもそもこの作品自体もちろんフィクションなので、極彩色と濃いキャラたちとノリの良さがブレンドされた楽しい悪夢だ。
『All About Eve(イヴの総て)』をパロったタイトルから、昔のホラー映画ポスターをパロディにしたオープニングクレジット、それに「Kill her, mommy」「It's only a movie」みたいなベタベタな引用もイイ。

中でも最高のブラックユーモアは、デボラ作の殺人ショートフィルムの使われ方。携帯で喋りっぱなしのゴス女のおっぱいをギロチンにかける映画=「上映中の携帯はオフに」、お喋りで声もデカイ女の口を縫い合わせる映画=「上映中はお静かに」という劇場マナーCM映画なのだ! マジでマナーCMとして各劇場で上映してほしいぐらいですよ! これ観てドン引かないくらい心臓の強いお客さんしか来なくなっちゃいそうだけどね!!

そういえば、本作のジョシュア・グラネル監督、何と本作に出演しているドラァグクイーンのピーチズ・クライストさんその人であることが判明。もしや、濃いキャラアンサンブルや世間の偏見を描くのが上手いのはここに起因するのでしょうか……?

↓監督さん(映画出演時モード)。


ちなみに、そんな濃いキャラ祭りの本作における極私的MVPは、デボラの映画製作クルーに勧誘された暴力人間エイドリアンを演じるノア・セガンド変態なぐらいが面白いという稀有なイケメンであることが証明された。ノアといえば『LOOPER』のキッド・ブルー君だったが、やること成すこと空回りのブルー君よりエイドリアン君のほうが何百倍も人間としてダメだよ(スラッシャーものの加害者においては褒め言葉だよ)。
あと、登場から退場に至るまで不機嫌顔を崩さない美人殺人鬼双子ちゃんも良かったなぁ。
スティーヴンのお母さんだって実はエルヴァイラの中の人だったし……。

改めて言おう。陽気な極彩色スラッシャー万歳!!!

2015年4月4日土曜日

The Devil's Carnival

捨てる神あれば、拾う悪魔あり。

The Devil's Carnival('12)
監督:ダーレン・リン・バウズマン
出演:テレンス・ズダニッチ、エミリー・オータム



遥か昔、保育園に置いてあった紙芝居『蜘蛛の糸』は、その地獄絵図の生々しさゆえに私を含めた園児たちのトラウマになった。
それにひきかえ、成長してから映像作品で観てきた地獄は、キリスト教的価値観に対する反発が強いアーティストのものが多いせいか、活き活きしてて天国よりも楽しそう。
地獄の怖さを教え込むのも道徳教育の一手段ではあったと理解はしているものの、ポップな地獄を知った今となっては、あのときのトラウマ体験を返せこの野郎! との一言も言いたくなりますよ。

作り損じの人形=出来損ないの魂をゴミ箱へ捨てる神。今宵も3つの魂が捨てられた。幼い息子の死を悲しむあまり自ら命を絶ってしまったジョン。悪質なボーイフレンドから逃げようとして殺されたタマラ。警察に包囲され射殺された宝飾品泥棒のメリーウッド。
気が付くと3人は、色鮮やかながら毒々しいカーニバルの会場=地獄にいた。地獄はルシファーが主催するカーニバルであり、堕ちてきた人間たちの罪を童話になぞらえてショーを催していた。メリーウッドは「犬と肉(The Dog and Her Reflection)」、タマラは「サソリとカエル(The Scorpion and The Frog)」、ジョンは「悪魔とその対価(The Devil and His Due)」のショーへ……

本作における地獄とは、神が失敗作の人形=魂をポイするゴミ捨て場
盗癖のあるメリーウッド、キリスト教におけるタブーである自殺を選んだジョンはもとより、深く考えずに悪い相手を信じてついていく悪癖はあるものの罪深いとはいえなさそうなタマラですら地獄行きなのである。
つまり、己の美意識にそぐわない魂を簡単に捨てる神は、堕ちてきた魂をカーニバルの出し物として弄ぶルシファーと同じくらい悪辣な存在として描かれている。「無垢な子どもを殺すのは悪魔の仕事ではない。神の権限だ」とは本作のルシファーの弁。

むしろ、「堕ちた魂を拾い上げてくれる」と解釈すれば、ルシファーのほうが神よりずっと懐が深いのではないだろうか? 
罪を童話になぞらえたショーを見る限り、神よりユーモアを解しているのではないか? 
不気味でありつつ活き活きとして陽気なカーニー(カーニバル構成員)たちを見る限り、天国より地獄のほうがよほど楽しそうなのではないか? 
……と思ってしまったら、それはもうルシファー(を演じスコアも担当しているテレンス・ズダニッチ)の術中にどっぷりハマっている証拠。新たなるカーニーとして一緒に歌ってはどうでしょうか?

Repo! The Genetic Opera』といい本作といい、ダーレン・リン・バウズマンの本領は『SAW』シリーズよりもこうしたホラーミュージカルじゃないかと考えている。バウズマンの描く毒々しい世界観と、グロテスクなテーマを扱いつつ時にポップ時にロックなテレンス・ズダニッチの音楽は、実に相性がいい。
本作はカーニバル音楽らしい明るさと毒を持ち、なおかつショーの中心人物になるカーニーたちのステージには、それぞれの持ち味が活きるソロがある。バリトンがステキなホーボー・クラウンの「A Penny For A Tale」や、ゴシック風味のペインテッド・ドールの「Prick! Goes The Scorpion's Tale」、ルシファー自らもステージに立つ「Grace for Sale」など。
エンド・クレジットに入ることになったルシファーとタマラの「In All My Dreams I Drown」も、本編漏れが惜しいほど。

なお、メインを張らないカーニーたちでも、ウィック役のアレクサ・ヴェガやマジシャン役のビル・モーズリィ(チョップトップ兄さん!)など実に濃いキャラクターが集っているから楽しい。しかも神様はポール・ソルヴィーノだし、だいたいのRepo! メンバーがリユニオンしてます。
ロックファン的にはスリップノットの#6クラウンことショーン・クラハンが出演してるのも嬉しい。喋らないけど……。

ところで本作のランタイムは55分と、映画にしては異常に短い。それは、本作がシリーズとしてスタートしたものの、実はバウズマン監督が自腹で製作費を出しているのでキツキツだから……という世知辛い理由もあるけどそれだけじゃない。アメリカ各地での上映会に監督や出演者たちが登場し、さらに観客は本作やRepo! のキャラクターのコスプレでやってくる、ここまで体験してのデビルズ・カーニバルだからである。まさに移動式カーニバルな形態で本作を楽しめる、アメリカのファンたちが羨ましい限りですよ!!


本編には入らなかったルシファーとタマラのデュエット「In All My Dreams I Drown」。
監督の真意は不明だが、タマラをカーニーに迎える意図があったのでは……と推測されている。
だとしたらやっぱりルシファーのほうが神よりイイ奴じゃないかよ。

何と、続編製作費も確保できたようで、すでにトレーラーが!!
いざ、天国へ殴り込みか!?

2015年3月27日金曜日

PIG/ザ・スワイニング

世界一カッコいい豚野郎。

PIG
THE SWINING('93)

 


レイモンド・ワッツ。
本アルバム発表当時32歳。
イギリス人。長身脚長。
ジャケ写では伝わりにくいが、陰のあるハンサムに部類される顔。
音楽の才能もあり声もイイ(後述)。
ステージではシルバーのロングコートにテンガロンハットという独特すぎるファッションも着こなせる男。
そんな男がワンマンプロジェクト名「豚」って、何のイヤミかと思わずにはいられませんよ。真意は違えど。

80年代末から90年代にかけて台頭してきた、プログラミングやノイズギターを中心としたインダストリアル・ロックの1バンド……
と言っても、インダストリアルというジャンルはそんなに爆発的に広がらなかったし、おそらくもっともメジャーなのはナイン・インチ・ネイルズ(マンソンもここに入ったり入らなかったりだが、少なくとも純然たるインダストリアルではない)。
あとは『マトリックス』のサントラ収録のミニストリーやラムシュタインあたり(初期ロブ・ゾンビもここに入ったり入らなかったり)がまずまず知られているだろうか。

そんなインダストリアルの主流とはいえないが、インディーズで短期間に多作、それも秀作が多いバンドがスキニー・パピーやKMFDMそしてPIGである。レイモンド自身、もとはKMFDMのメンバーだったのだけれど(その後戻ったり出たりをくり返す)。

PIGの音楽性を特徴づけているのは、他のインダストリアルバンドと比べて、他ジャンルの要素を多く取り入れているところ。
特にジャズやラテンミュージックの影響は顕著だが、シンセサイザーでオーケストラ風の荘厳さを出すこともあり、5th『WRECKED』などはインダストリアル・メタル色を濃く押し出していた。
また、日本のバンド・BUCK-TICKとの親交もあり、メンバーとSCHAFTやSCHWEINといったプロジェクトを手掛けてアルバムをリリースしていたこともある。

本作は3rdアルバムで、まだ宅録らしいサウンドの安さとポップさがあるが、M2「The Seven Veils」はオーケストラ風味、M5「Black Mambo」は暗黒ラテンミュージック、M8「Symphony For The Devil」はプログレ風と、すでに引き出しの多さを確立している。M4「Find It Fuck It Forget It」では「山の魔王の宮殿にて」のメロディを引用する遊びも入っている。
音楽的な柔軟性・多様性があり人脈もそれなりに広く持っていながら、活動がどうにもコンパクトなのは、「大きすぎる会場はキライ」と豪語するメジャー志向のなさゆえなのか……。

PIGがまず間違いなくメジャーにはなれない理由であり、音楽性の引き出しの多さ以上にPIGのキャラクターを決定づける最大の理由は、レイモンドの書く歌詞とボーカルである。
これがとにもかくにも、陰湿で猥雑で粘着質で変態性が高く性格が悪い
それを歌うレイモンドの声はドスが効いていて、暴力性よりも粘着性のほうが勝る。プログラミングサウンドの妖しさも相まって、ねっとり感がまるでラードじゃないかというほど。
レイモンドのこうした傾向はKMFDM時代から徹底されていて、曲を聴くより先に歌詞を見たらどれがレイモンドの作品が見当がつけられた。なるほど、この性格悪さとねちっこさは「豚」と名付けられてもおかしくはない。

なお、その他の歌詞の特徴として「頭韻を多用する」(M4『Find It Fuck It Forget It』なんかまさにそれですね)があり、ひとくちに豚といっても大変に知性のある豚であることはお分かりいただけると思います。

短期間に多作……とはいったものの、それは90年代までのことで、実は単独でのオリジナルアルバムは'05年の7th「PIGMATA」以来出されていない。
他のアーティストをプロデュースしたり、コラボレーションしたりすることは多く、さらに'09年以降はコレクションに曲を提供するなどアレクサンダー・マックイーン絡みの仕事をしていることも多いとか。
レイモンド自身が活動を続けていることは彼自身のTwitterで分かるのだが……あのドス声をフルで聴ける機会が減っていることは、やっぱり残念だなぁ。

PVが少ないうえに、アップされていても画像の悪いものしかないので、ライヴ映像を。
2006年のアメリカツアーより、本作のM6「Ojo Por Pjo」~M7「Blades」。
少々長めだが、レイモンドの「粘着性の高いドス声」がお分かりいただければと。

2015年3月21日土曜日

マリリン・マンソン/ザ・ペイル・エンペラー

20年越しの大人。

MARILYN MANSON
THE PALE EMPEROR('15)



「師匠……大人になったなぁ……」と率直に思った。
ロックスターが大人になるというと、「初期衝動を脱却する」とか「尖らなくなる」とかマイナスイメージが出てくるだろうが、この場合は改めて「師匠みたいな大人になりたい!」という憧れの意で。
「目指すところがおかしい!」とか「その前にもう少し真っ当な大人になれ!」というご叱責は確実にあるでしょうがね!!

ミドルテンポ曲主体は、6th『イート・ミー、ドリンク・ミー』以降踏襲されている路線。中身については、6thでは内省、7th『ハイ・エンド・オブ・ロウ』では初期のようなアメリカの悪童路線に返るところもありつつ、8th『ボーン・ヴィラン』では文学と退廃を全面に押し出してきた。
そのたびに音楽性がどんどん洗練されてきたのだが、ここへきて洗練度が一番高まった。『ボーン・ヴィラン』のときも「荒削りがぐっと少なくなった」と書いたが、その時以上に装飾が極力減らされている。
その最たるものが、デラックス・エディション収録のボーナス・トラックM11~M13 。原曲のアコースティックバージョンか……と、いつもならそれだけ止まりの曲のはずが、むしろアコースティックバージョンのほうがカッコいいんじゃないか!? と、こっちのほうをついヘヴィローテーションしてしまうほど。

この変化は、今までトゥイギーなりティム・スコルドなり自分なりとバンドメンバー内で行ってきたソングライティングを、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『デビルズ・リジェクト マーダー・ライド・ショー2』といった映画音楽を手掛けてきたタイラー・ベイツに任せたところが大きいようである。
サザン・ロック風味が強いという点では、『デビルズ・リジェクト』が本作の方向性に近いように思えるのだが。ちなみに、M1「Killing Strangers」は『ジョン・ウィック』、M9「Cupid Carries A Gun」はドラマ『Salem』のメインテーマへと、サントラへの曲提供が急に増えたのも、ベイツとのコラボが影響しているのだろうか?

と、ここまで新風も取り入れてぐっと大人のサウンドを聞かせておきながら、いざライヴに行ってみたら、オーディエンスに中指立てたりケツを向けてたりと思いっきり大人げなくなっている可能性もなきにしもあらずだけど、自分そういう師匠もキライじゃないです。いやむしろ、だいたい何やっても好意的なコメント出せる程度には盲目ですから。

ローリング・ストーン誌(日本版)によると、かつてほどアブサンをがぶ飲みしなくなったとか、ジムに通い始めたとか、さすがに46歳になって健康に気を使いはじめたらしい師匠。
その一方で、いまだ奇行があったり、部屋の設定温度をバカ低くしていたり、現在ちょっと低迷モードに入っているジョニー・デップとライヴゲスト出演を含めよくつるんでいたり、また新たな年下彼女との生活はいろんな意味で好調だったり、マンソンはマンソンだとしか言いようのないブレのなさも。

「俺はいつだって乗り切っていく/俺はロサンゼルスのメフィストフェレスだ」(M4『The Mephistopheles Of Los Angels』およびM12『Fated, Faithful, Fatal』)のリリックに違いなしであることを今後も願ってますよ、師匠。


2015年3月10日火曜日

マッド・ナース

白衣(露出レベル高)の天使。

マッド・ナース('13)
監督:ダグラス・アーニオコスキー
出演:パス・デ・ラ・ウエルタ、カトリーナ・ボウデン




映画に出てくる怖いナースといえば、『ゾンゲリア』の目に注射器ぶっ刺すリサ・ブロントが一番に出てくる自分。
あと、彼女に倣った『プラネット・テラー』のマーリー・シェルトンも。
そういえば、『ミザリー』のアニー・ウィルクス(キャシー・ベイツ)も元ナースだったな。
『ダークナイト』のジョーカー……は反則か。
……と思ってたら来ちゃいましたね。怖いナースの最高峰(エロ度も最高峰)が!!!

セクシーでサイコなナース、アビゲイル・ラッセルの、浮気/セクハラ男血祭り三昧! そしてキュートな新人ナース・ダニーをめぐる血みどろ三角関係! 男はほとんど舞台装置か死んでよし要員! 伏線もミステリも申し訳程度! 余計な涙などもってのほかだ!! という潔いほどB級街道を邁進する一本である。
三角関係という一歩間違えればドロドロになる要素も含んでいるが、そこに陰湿さはカケラもなく、ただただヤバそうな方向にテンポよく突き進むのみ。後半に行くに従って、スケベ男殺しという本筋を忘れた殺人劇に至るところも、大変にB級で素敵である。

日本劇場公開時は2Dだったが本家は3Dなので、メスやノコギリがこちらに迫ってきたり、ハサミが飛んできたりする。エフェクトとしてはチープなのだが、そのチープさが本作のB級な空気にぴったりなので、ちょっと体感してみたかったなぁ。
まぁ、一番観たかった3Dエフェクトは、アビー様が精神科医に向けたお尻がこちらに突き出てくるとこなんだけど。たぶんそんなに飛び出してないだろうけど、多少の立体感ぐらいは味わえるんじゃないかと……

そう、本作の最大の魅力にして、これがなかったら成立しないであろう絶対的な肝は、アビー様を演じるパス・デ・ラ・ウエルタの存在。Twitterを見ていると、ダニーを演じるカトリーナ・ボウデンのほうが好きという人も多いようなのですが、私は断然パス・デ・ラ・ウエルタ推しですね!!! ついでに、いまだに彼女の名前をどこで区切ったらいいのか分かりませんね。「パス姐さん」と呼ぶのもはばかられるような気がするし。

モデル・グラビア出身の完璧なボディはもはや言うことなしだが、どうも顔が苦手という意見をよく見かける。
ときどきくたびれたように見えるし、特に目つきは可愛げのない三白眼に見えたり、さくらももこさんが描くちょい不細工キャラの目に似てしまう瞬間もある。唇に紅を塗ったくりすぎてタラコになっちゃってる瞬間もある。髪も無造作を通り越してクシャクシャになってたりする。

だが言いたい。このクセのある容貌にあのボディで、しかも甘くて子どもっぽくもある声というちぐはぐなところこそ、彼女が唯一無二たるポイントなんじゃないか!!!! アンバランスで不思議なところに男も女も惹かれるんじゃないのか!!?? 何だったら先述のタラコ唇だって、キレイになるメイクというより戦士が戦いの前にやるフェイスペイントみたいでカッコよく見えたりもするぞ!

また、あの容貌だからこそ、背面シースルーとか胸元全開とかライトの具合でボディライン丸見えとか、やりすぎともいえる露出ドレスの数々を煽情的に着こなせるのではないか。レディー・ガガが奇抜コスチュームを颯爽と着こなすのに通じるものがあると思う。実際、ガガの衣装担当さんがデザインしてたし。

そんなパス・デ・ラ・ウエルタの一番特徴的な着こなしは、全裸にブラジャーのみ着用という謎の露出。全部脱いじゃってブラだけ残すパターンと、朝起きて真っ先にブラをつけるもあとは全開のままのパターンがある。なぜパンツ優先じゃないのか。しかし、謎を残しつつなぜか納得してしまうだけの説得力がある姿なんだよな、姐さん。

さて、こんなナースにならお仕置きされて死んでもイイってアンケートを取ったら、どのくらい伸びてくれるんでしょうかね。その前に「続編がほしい」ってアンケートもあったら伸びてほしいところです。

2015年2月27日金曜日

未体験ゾーンの映画たち2015

いい映画は劇場で観たい。そうでなくても劇場で観たい。

未体験ゾーンの映画の映画たち2015
ヒューマントラストシネマ渋谷 2015.1.3.~2015.2.27.

「この言葉 グッときたなら 劇場へ」と言わんばかりのアツい文言。
ゾーンは昨年末から燃えていた。

壁一面のポスターと感想。絶景だ!


上映経費を抑えながらパッケージ(ソフト)の宣伝にもなる特集上映……という仕組みで成り立っているのが「未体験ゾーンの映画たち」。もちろんその仕組みを後押ししているのは、いい映画は劇場でかけたいという仕掛け人さんの思い。(映画秘宝2015年2月号/西澤彰弘さんインタビュー参照)
付け加えるなら、いい映画……といえるかどうかっていう映画も、できる限り劇場でかけてほしい。そりゃDVDレンタルや映画チャンネルで観たほうが安上がりだが、自宅TVで観ていながら「劇場で観たかったなー……」と思うこと数知れず。B級映画特有のゆるーい空気が劇場に充満する感じ、個人的には大好きなもので。
(この他、未体験ゾーンについての思うところは去年こちらに書きました。映画を劇場で上映するって本当に難しいんだなぁ)

49本中27本制覇! でも24本制覇のDVDプレゼントには間に合わず。

せっかくなので、去年に倣って極私的ベストを作りつつ、今年は観てきた未体験ゾーン作品にちょっとずつ触れていきたい。もはやDVDしか観る媒体がなくとも、発掘してほしい映画もあるんです。

未体験ゾーン2015極私的ベスト10


1位 ホラー・シネマ・パラダイス
私の大好きな極彩色スラッシャーホラーというジャンルで魅せつつ、「ホラー映画を楽しむ人とは? 面白ければ本物の殺人ネタも好きなのか?」という一部の人間にとっては深刻な誤解にも踏み込んできた。登場人物がどいつもこいつもキャラが立ってる中、MVPは「けっこうな変態なぐらいが面白い系イケメン」ノア・セガンで。

2位 絶叫のオペラ座へようこそ
これまた大好物の極彩色スラッシャーホラー。しかもミュージカル! しかも怪人がカブキマスクでギターかき鳴らしながら「イ゛ェェアァァァァァァァ」ってハイトーンシャウトをキメる! 何を言ってるか分からんでしょうがホントにそんな絵面です。『ベイマックス』しかり、怪人を目指すならカブキマスクの時代到来だ!! たぶん!!

3位 マシンガン・ツアー ~リトアニア強奪避航~
イケメンを使いません! 美女も使いません! スクリーンにカッコいいものは何一つ映しません! チンケな強盗に始まりヨーロッパ東西ギャング対決になだれ込むドタバタを、ムサい顔面(しかもバカ)ばかりが牽引する!!

4位 ブルー・リベンジ
去年の『MUD』と同様、極私的好みではベスト3に入らなかったが、映画として優れているのはこちら! 枠。派手な演出も余計な会話/シーンも使わず、話し合いが通じなさそうなヒルビリーの怖さ、終わりが見えない復讐の地獄絵図をなぜかスッキリした後味で描く低予算傑作。主人公に味方してくれるガンマニア&デスメタルファンのベンがイイキャラしてます。真っ当な奴じゃないけど。

5位 余命90分の男
主演のロビン・ウィリアムズの死と重ね合わせずにはいられない。彼の最期が決して幸せではなかったことを思うと、ハッピーエンドがなおさら哀しい。せめてこういう形で去っていったのなら、まだ救いがあったのに。

6位 ブレスト要塞大攻防戦
ソビエト万歳感は拭いきれないが、水もなく武器も限られていく籠城戦の消耗と疲弊はビシビシと伝わってくる。戦争というものについて何よりも多く物語るのは、出口あるいは水を求めた人々の屍の山。

7位 オキュラス/怨霊鏡
鏡の幽霊なんて何か不気味な人が映ってくるだけでしょ……と思いきや、お父さんを操り家族を追い込み、現実を曖昧にし、過去と現在を巧みに入り乱れさせる! さすがアメリカは幽霊もアグレッシブだな! 呪われた鏡に挑むお姉ちゃん(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のネビュラの中の人)の、『ホーム・アローン』と『SAW』を足して2で割ったような仕掛けもスゴい。

8位 オール・チアリーダーズ・ダイ
タイトルそのまま、チアリーダーはみんな死にます。でも何だかんだで蘇ります。でもそれはそれで面倒なことになります。女同士の三角関係がストーリー上どうでもよさそうなところが好きです。

9位 AFFLICTED
どんどん人間じゃなくなっていく友人デレクを撮るPOV(途中からそのデレクがカメラの持ち手になる)。そんなに目新しくもないはずの手法だし、ハッピーエンドは見えそうにない流れなのに、超人的な身体能力を手に入れたデレクの目線で建物からの大ジャンプをキメたり警官をぶっ飛ばしたりと、妙にヒャッハーな気分になれる不思議な映画。

10位 FEAR X
ニコラス・ウィンディング・レフン監督の初期作。赤の使い方がダリオ・アルジェントチックかつ『オンリー・ゴッド』への布石のよう。ジョン・タトゥーロの顔面がイイ味出してる。音楽は実はブライアン・イーノ。もっと認知されてほしい一本。


ザ・B級アクション賞

コードネーム:プリンス(こういうところに年1回は顔出すブルース・ウィリスとジョン・キューザック)
タイムリミット‐72(ルーク・ゴスがもっと仕事に恵まれますようにとお布施)
エージェント:コール(ゲイリー・ダニエルズも仕事に恵まれますようにとお布施)

ザ・B級SF賞

アノマリー(ヘムズワース家の長男見ーつけた)
タイム・チェイサー(お久しぶりですハーレイ君。いいバイプレイヤーになってください)

今年のゾンビ枠賞

ザ・デッド:インディア(もしもこの国でゾンビハザードが起きたらシリーズとしてまた作ってほしい)
人造人間13号(人造人間と謳ってますが生態はゾンビですよね?)

めちゃくちゃ貴重で賞

ネクロマンティック(粗い撮影とチープな音楽、合間に入れたガチの畜殺映像、それに死体愛好というアブない題材が奇跡的に映画の「味」となった一本。劇場で観られる機会はまずなさそう)

このままシリーズ化してほしいで賞

シャークトパスvsプテラクーダ(ゆくゆくは掛け合わせ怪獣三つ巴、四つ巴のバトルを……)

エンドロールがカッコいいで賞

悪魔の存在を証明した男(IMKなるアーティストの "Something Real" という曲が使われてるのは分かったけど、残念ながらオフィシャルな情報があまりない)

着メロを変えたい衝動にかられた賞

13の選択(あのメロディよく聞くけど "Enter Of The Gladiators" って曲名なんだ。初めて知ったよ)

ジャンル間違えてました賞

ロスト・フロア(ごめん、オカルト系だと思ってたらマジメなサスペンスだったよ)

異色の字幕で賞

Facebookで大逆転(字幕で「www」「キタコレ」って初のケースだよ)

ジェイソンかマイケルに来てほしいで賞

ファイナル・デッド・クルーズ(ハメ外したバカな若者が次々死ぬのはスラッシャーホラーと同じだが、本作の場合は仲間割れによる自滅。大型殺人鬼不在だと、人間こうも面倒臭いんだなぁ)


頑張れ! ルーク・ゴス

デス・クルー(傭兵アクションかと思ったらアレ? そっちの話ですか!? な一本。トレホもいるよ)
タイムリミット‐72(72時間の逃走劇と思ったらアレ? 世直し道中ですか!? な一本。RZAもいるよ)

動ける・イケメン・ハゲがカッコいいと三拍子そろっているのに、なぜかジェイソン・ステイサムクラスに届かない不遇の男、ルーク・ゴス。大作出演時には特殊メイクで顔が分からないというネックもあり。いつか素顔で表舞台で活躍してくれることを祈る!

スゴいぜ韓国

ハイヒールの男(長身のムキムキハンサムがヤクザ相手に女装で無双アクション!)
その怪物(頭のネジが外れた殺人鬼vs頭のネジが外れた露天商姉さん。10歳児が一番マトモだ)

この2作品に共通しているのは、バイオレンスの合間に場違いなほどの笑いをぶっこんでくるという思い切りの良さです。


もしかすると出会えなかったかもしれない映画の数々を、スクリーンで体験させてくれた未体験ゾーン。また来年も、そしてその先も、できる限りたくさんの映画に出会える機会をいただけると嬉しいです。仕掛け人の西澤さん、そしてヒューマントラストシネマ渋谷さん、今年もありがとうございました。

2015年2月11日水曜日

死霊のしたたり

変質者頂上決戦、遺体置き場にて開催中。

死霊のしたたり('85)
監督:スチュアート・ゴードン
出演:ジェフリー・コムズ、バーバラ・クランプトン



私個人が『死霊のしたたり』なるタイトルを初めて聞いたのは、実は『アメリカン・ビューティー』を観ていたとき。ケヴィン・スペイシーがお隣さんのウェス・ベントリーからドラッグを買うときの暗号が「『死霊のしたたり』貸して」。当時はそれが実在の映画とは知らず、『死霊のはらわた』をパクった架空タイトルかと思っていた。

それから10数年後、本作は実在し、タイトル……というか邦題がパクりっぽいのは、当時悪魔の何たらとか死霊の何たらという邦題が氾濫していたからなのだと学習。
というわけで、唯一本当にパクりっぽいのは、『サイコ』オマージュってレベルじゃないでしょ! なメインテーマなのでした。

↓でもハマっちゃうとクセになるんだ。
『死霊のしたたり』のテーマ。


スイスの医科大学にて、脳科学の権威であるグルーバー教授が狂ったように暴れて死亡する事件が起きる。博士と同じ部屋にいた助手のハーバート・ウェストは、博士を死なせたのかと問いただされたのに対し「生き返らせたのだ」と答える。
その後、ウェストはミスカトニック大学に医学生として編入する。出席早々、大学の脳研究者ヒル教授の理論に真っ向から食ってかかる傍ら、優秀な学生ダン・ケインの同居人となって地下で自身の研究を進める。その研究とは、ウェスト作の蘇生薬を死体の脳に注射することで、生き返らせることができるというものだった。
かくして、ケイン、ケインの恋人メグ、メグの父で学長のアラン、そしてヒル教授を巻き込んだウェストの一大実験が始まる。

『バタリアン』のタールマンみたいなゾンビがぬーっとやってきそうな邦題だが、実態はドロドロな感じはみじんもなく、人を投げたりシメたりどついたりするタフでアグレッシブなゾンビ。人を噛んだり感染したりもなし。そしてしまいには、ある意味でもっとレベルの高いゾンビも現れる。かつては『ZOMBIO/死霊のしたたり』という邦題だったようだが、「ZOMBIO」のほうが話の内容に近い邦題なんじゃないでしょうかね?

原作はH.P.ラヴクラフトの『死体蘇生人ハーバート・ウェスト』とのことだが、ラヴクラフト読者とはいえない私からしてみても、「ラヴクラフトそんなに下世話じゃないでしょ……」と思うぐらい別モノ。
ハーバート・ウェストというマッドサイエンティストが死体蘇生に情熱注ぐってところぐらいしか共通してない。しかし、下世話エンターテインメントと化した本作は、ラヴクラフト臭の薄さなぞ関係ないぐらいパワフルだった。

ウェストの蘇生薬は死体を蘇らせることはできるが、知性までは蘇らないうえになぜかやたらめったら凶暴化するので、一度蘇生薬を試すと死体が猫だろうと人間だろうと、飛びつかれたりぶっ飛ばされたり、棚は倒れ器具は壊れ、その場が荒れに荒れまくる。ホラーの域を思いっきりはみ出して、もはやドタバタコメディーの域である。こういう物理的にアブない状況に陥ると、さりげなくケインの陰に隠れようとするウェスト君が密かな見どころ。

ラストは遺体置き場で複数の死体と内臓も露わに一大バトルが繰り広げられるし、ブライアン・ユズナ&スチュアート・ゴードン作品のエロ担当と言ってもいいバーバラ・クランプトンは思いっきり脱いでくれるし、エログロの面白さのツボはきっちり押さえてくれている嬉しい一本なのである。

本作……というより3まで続いた本シリーズ最大の魅力は、ハーバート・ウェストのキャラクターと、それにピタリとハマったジェフリー・コムズの怪演。
原作のウェストとは小柄という点以外共通項がないコムズだが、一度目にしてしまうとどう見てもウェストに思えてしまうから不思議。蘇生実験に没頭するときはもとより、常日ごろから真っ直ぐにフロム・ビヨンドを見つめてそうな目つきは、どう見ても関わったらイカン人に他ならない。
真性マッドサイエンティストなんだけど、実験中にうっかり死人が出れば「新鮮な被検体だ!」と死を悼む間もなく蘇生液を注射しちゃうんだけど、衝動的に殺しをやれば死体の始末云々より「首と胴が別々でも生き返るのかな?」と実験開始するぐらいトンじゃってるんだけど、ウェストには実は天性の人たらしの才があるのではないだろうか。観客からの好感度が高いのはもちろんだけど、1~2作目ではケイン、3では新人医師ハワードを、どう考えてもヤバい計画に乗り気にさせてしまうんだから。

そのウェストの天敵にして、彼に並ぶマッド……というよりは変態サイエンティストなのがヒル教授。
物腰穏やかな顔して、ウェストの研究を横取りしようと脅しにかかる腹黒さ……までの段階では、あっさりウェストに返り討ちにされ、首と胴が分かれた状態で死んでしまう程度。
しかし、この状態のヒル教授に、ウェストが興味本位で蘇生薬を投与したのが功を奏し(?)、ウェストを気絶させて研究材料一式を分捕り形勢逆転。
そうして何をするかと思えば、自分を殺したウェストへの復讐でも、自身の研究の発展でもなく、長年ストーカー的に思いを寄せてきたメグへの堂々たるセクハラという、最も矮小にして最もゲスい欲望の充足。人間、モラルや社会の目がどうでもよくなると手近なエロと暴力に走るということは、『インビジブル』でポール・ヴァーホーヴェン先生も提示していましたね。
ウェスト君とはまた異なった、生首ヒル教授の変に生々しい(けど笑える)欲望は、そのド外道性で観る者を魅了した。

さて、この若きマッドサイエンティストvs熟年変態の決戦のゆくえ、そして不幸にも巻き込まれた皆さんの運命やいかに……? と勿体つけたわりには、次回いろいろ辻褄の合わないキャスト続投もあったりするのはご愛嬌ですよ。