2012年9月23日日曜日

ピラニア3D

飛び出したっていいじゃないか。バカだもの。

ピラニア3D('10)
監督:アレクサンドル・アジャ
出演:エリザベス・シュー、ヴィング・レイムス



「3Dはそういうことに使うもんじゃありませんっ!!」(大いに意訳)
と、本作を観たジェームズ・キャメロン先生がスゲェ怒ったらしい。しかし、これはさすがにやっちゃいかんだろうなと思うことをやりたくなっちゃう人は、世の中に必ずいますから。というかこの映画の場合、オリジナルである'78年のジョー・ダンテ監督作『ピラニア』に、中学生レベルのエログロ発想を心に秘めてる人ならまず考えちゃうことをいろいろ上乗せしたまでですから。
ただ、まさかアレクサンドル・アジャが、ここまで徹底して「やってはいけない3D」をやらかすとは思わなかっただけで……。

海底地震により湖の底に亀裂が入って、古代から密かに進化してきた凶暴ピラニアが出てきちゃって、若者が大はしゃぎのビーチになだれ込んだからさぁ大変……
というだけのストーリーに、程よくアタマ悪い感じのエロと、行き過ぎじゃないかってほどのグロをこれでもかこれでもかと盛り付けまくっただけの映画。しかし、監督自身がこの手の映画が好きで、非常に分かってらっしゃる方だということは、キャスティングの上手さや小ネタの行き届き具合からしっかりにじみ出ている。

そもそも、ピラニアの第一犠牲者になるおじいさんに、オリジナルの『ピラニア』のそのまたオリジナルである『ジョーズ』のリチャード・ドレイファスを持ってくるというマニア心を刺激するネタでニヤリ。第一犠牲者なのに、肝心の襲ってくるピラニアがとってもチープなCGという狙い澄ました扱いの悪さも、この手の映画に付き物のアホさ加減を漂わせている。
古代魚の専門家というより偏屈なオタク爺さんクリストファー・ロイドと、保安官エリザベス・シューで、『バック・トゥ・ザ・フューチャー2&3』のドクとジェニファー再顔合わせネタも嬉しいところ。

そんなアホや小ネタよりも重要なメインイベント、エロ。それも3Dでやるからには、最重要事項はアレだろう!! ってことに違いない、ダイナミックおっぱいの数々(立体感っていうよりはダイナミズムかも。自分で言っておきながら何の解説なんだか)。
水着だけじゃなく、ノーブラのTシャツの女の子にホースやウォーターガンで水をぶっかける「濡れ濡れTシャツコンテスト」なるイベントがあるのが、なかなかいい感じにバカ。
それ以外にも、ポルノ女優2人の水中全裸レズシーンをムダに長回しとか、女体テキーラ飲みシーンをどアップでとか、3Dとエロときて考えついたことをひたすら実践したような演出が。

ただし、女体テキーラのシーンでは、船酔いしちゃった女の子がデッキから吐いてしまい、飛び出すエロが一転飛び出すゲロに。血しぶきとはまた違うベクトルで、観客をのけぞらせた確信犯的悪趣味である。

しかし、もう1つのメインイベントたるビーチでの血の惨劇は、犠牲者が生きていようと死んでいようと喰われた痕が生々しく痛々しく、冒頭の安い死にざまは何だったのってぐらい容赦ない。さらには、ボートで逃げようとした人がまだ水の中にいる人々を轢き逃げしたり、高台や船が人員オーバーで転覆したりといった二次災害も発生し、追い詰められた人間のエグさがわかる。血みどろでイヤな死に方ときて考えついたことをひたすら実践した、人体徹底破壊ショーである。あまりに過剰すぎて、見る人によっては笑えるレベルだ。

ただ、犠牲になる奴らが、水着でキャッキャ遊んでイチャついて、人の忠告をまったく聞かない若者という伝統的スプラッターホラー死んでよし要員なのは幸い。何ていうか、ざまぁみろ的カタルシスが生まれますし。
また、女の子が喰われたあとに豊胸用シリコンが漂ってるとか、食いちぎられた×××をピラニアが食ってすぐペッしちゃうとか、倫理的には笑ってはいけないのだろうが笑わずにはいられないバカ演出までご健在。
なお、犠牲者の1人が遺した最期の一言「濡れ濡れTシャツ……見た…かっ…た……(ガクッ)」は、この際映画史上に残る名断末魔として刻んでいただきたい。

これで続編『ピラニア リターンズ』が、キャメロン先生の『殺人魚フライングキラー』の黒歴史を容赦なくえぐってピラニアをガンガン飛ばしてくれたら言うことはなかったのだが、残念ながらアジャ監督を欠いた『リターンズ』はそこまでメーターを振り切れず、何とも中途半端な出来に。
エロにしろグロにしろゲロにしろ、バカをやるなら徹底的にやれということは、モンティ・パイソンの時代からの教訓なのですね。

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