2012年12月4日火曜日

「ガヤスクリーン」に関する思いのたけ

ガヤガヤしてもいいじゃない(たまには)。

「上映中はお静かに」は、いつでも映画館の常識とは限らない。
例えば、世界のあちこちでやってる『ロッキー・ホラー・ショー』は、有志の素人役者がスクリーン前でキャラクターになりきったり、コスプレの観客が映画のセリフを真似したりツッコミを入れたりするのが当たり前。ここ日本でも、川崎ハロウィンで毎年のようにパフォーマンスやりたい放題上映会をやっている。

わざわざコスプレしたり演技したりしなくとも、海外の劇場の場合、観客が歓声を上げたり、悪役にブーイングしたり、スクリーンに向かって「サイコー!!!」「何やってんだよバカ!!」などツッコミを入れることがある。そのへんの様相は、『マチェーテ』のDVD/Blu-ray収録の「観客の歓声入りモード」でだいたい分かる。ド派手なアクションがあれば「うぉぉぉ!!!」裸のおねえさんが出てくれば「ひょーーー!!!」って、どシンプルなノリですが。

そういえば、最近はインド映画『ボス その男シヴァージ』でも、歌ったり踊ったり騒いだり食べたりしていい「マサラ上映会」が一部で実施されていた。インドでは上映中に踊るってのもアリなんですね。
あと、『エクスペンダブルズ2』の「バドワイザー立ち飲み試写会」でもワイワイ盛り上がったようで(特にチャック・ノリスの登場に)。その場にいなかったので明言はできないが、立ち飲みみたいな雰囲気だと、気兼ねなくどよめいたりできるような気が。

個人的には、こういうノリには大いに興味がある。というか、大いにやってみたい。
劇場で映画を観て感じられる「ほかの観客との一体感」が、コメディで笑い、感動ポイントで泣けてくるってだけじゃ物足りないときもある。それこそ『アベンジャーズ』や『エクスペンダブルズ』みたいなお祭り映画は、みんなで騒ぎながら観てみると面白いだろう。ヒーローの活躍に歓声上げたり、悪役ひいきなら悪役に喝采送ってみたり。
何だったらホラー映画でも、ツッコミを入れつつ観賞してみると、恐怖を楽しむだけでなく、怖さの背後にあるおかしさやお約束事に気がつくかもしれない。

そこでですね、全国のシネコンさん。あれだけスクリーンがあるなら、上映中観客がにぎやかにしていてもいい「ガヤ専用スクリーン」を設置してくれないでしょうか。ネーミングは、マキシマム・ザ・ホルモンのライヴ企画「マスター・オブ・テリトリー」のガヤエリアから何となく拝借しただけなので、新しく考えていただいて結構ですから。
ガヤスクリーンではもちろん、騒いで観賞するのが当たり前。先に挙げたように、お気に入りキャラの登場やキメのシーンで歓声あげるも良し。どう見ても次の展開へのフラグとしか思えない行動やセリフに大声でツッコミ入れるもよし。セリフをほとんど覚えるほど愛してやまない作品の上映で、延々一人芝居繰り広げるも良し。
まぁ、「つまんねーよ!!」とか、ファンにとって不快なことを叫ぶ輩がいるかもしれない……という危険性もはらんでいるのですが。わざわざそれなりの料金を払って嫌がらせにくるっていうのも、なんだか哀しいなぁ。
ガヤスクリーンでもう1つやってほしいのが、昔の作品のリバイバル上映。上映権がなかったら、ブルーレイかDVD上映でもお願いしたい。名目は「名作映画の温故知新」だけど、はっきり言っちゃえば面白そうな光景が拝めそうだから
『燃えよドラゴン』でみんな奇声を発するとか。
『ロッキー』終盤でみんな一斉に「エイドリアーーーン!!!」って吠えるとか。
ハロウィン(1978年版)』で「ローリー! 後ろ、後ろぉぉぉぉ!!」って叫ぶとか。
『マチェーテ』の上映会だったら、観客にチープな紙製マチェーテ(上映後は団扇にどうぞ)なんか配布してほしいですね。で、決起のシーンとか、トレホの親爺さんのキメポーズシーンで、観客も一緒にペラペラマチェーテを掲げるとかね。
 もちろん、リバイバル上映の鉄板は『ロッキー・ホラー・ショー』!! そして願わくば『ファントム・オブ・パラダイス』との2本立て上映で!!……結局それが一番言いたかったんだけどね。

2012年11月24日土曜日

勝手にエクスペンダブルズ1

もしもガイ・リッチーがエクスペンダブルズを作ったら。

アベンジャーズ』のときもありましたよね。「日本だったらこのヒーローでアベンジャーズ作る!!」みたいなノリが。
この記事の場合、そのノリ以上に軽い……というか、Twitter上でのちょっとしたやりとりから、「もし○○監督がエクスペンダブルズを作ったら?」ネタで自分が勝手に妄想を膨らませてしまって、しかもそれがそこそこ具体化してきちゃったから、ここらで吐き出しておこうぜと。なお、このネタについてはTwitterで何度かつぶやきましたが、あれから再考していくつか変更してます。
とりあえず、生ぬるーーーく読み流していただければ幸いです。

勝手にストーリー

主人公は、ロンドン裏社会のチンピラを取り締まったり面倒見たりしつつ、ボス格に気を使う中間管理職的小悪党。面倒臭い役回りながら、仲間もいることだしなんとか上手くやってきた。
しかし、あるときボスに頼まれた仕事のさなか、警察が乗り込んできて、危うく自分も仲間も逮捕されかける。トカゲの尻尾切り式に捨て駒扱いされたことにぶち切れた主人公は、仲間を引き連れてボスへの反逆を決行。一方、彼らの動きを察したボスも、屈強なチームを引き連れて迎え撃つ。
裏社会で生き残るには力も大事だが、決め手はやっぱり悪運だ!

勝手にキャスティング

ジェイソン・ステイサム:
主人公の中間管理職にしてエクスペンダブルズ(仮)のリーダー格。ツキにいまいち恵まれず、何だかんだ面倒臭い仕事を嫌々引き受けては、冷めた顔して文句たらたら。しかし、文句を言いつつ暴力要員どもを単身フルボッコにできるくらい腕っぷしは強い。
(本家エクスペンダブルズではスタローンに指示出される側なので、心もちノリノリで仲間に指示出してたり、右腕フレミングを従えてのし歩いてると面白い)

ジェイソン・フレミング:
主人公の右腕的存在にして腐れ縁の親友。大立ち回りは基本的にステイサムに丸投げする手抜き癖があるが、本人も結構近接戦に強い。密かに赤毛がコンプレックスで、ジンジャーレッド呼ばわりされると凶暴さ5割増しに。指摘しても問題ないのは付き合い長いステイサムぐらい。
(『X-Men』のアザゼルや『タイタンの戦い』のアクリシウス王など意外と剣術で戦うキャラクターもやってるもので。赤毛コンプレックスはフレミングの過去話から)

ヴィニー・ジョーンズ:
チームの切り込み隊長。バトルとなったら猪突猛進な頑強男。普段は気の利いたスラングやユーモア豊富なお喋り。ステイサムやフレミングとつるんでることも多い。仕事でコンビを組んでいるのが調子のいいトビー・ケベルなので、よくどうでもいい話で揉めている。
(ジャガーノートな活躍も見たいが、『ロック・ストック……』組のダベりも見たい)

トム・ハーディー:
力持ち要員。昔世話になったことがあるので、リーダーたるステイサムに忠実。パワーファイターだがもともとの性格はおとなしい。仕事ではイドリス・エルバがおもな相方。
(『ダークナイト・ライジング』のベインばりの増量でお願いしたい)

イドリス・エルバ:
チームの頭脳派その1。偵察や射撃援護担当でもある(でもあくまでチンピラ集団の一員なので、プロのスナイパーというわけではない)。いつも冷静で、チーム内で揉め事が起きたときにはよく仲裁役になる。そのせいかストレスが蓄積ぎみ。おとなしめのトムと一緒だとストレスが少ないらしい。

トビー・ケベル:
チームの頭脳派その2。筋肉質ながらわりと細身で屈強には見えないが、とっさの知恵が回るのが強み。ただ、お調子者なところもあるので、しなくてもいい挑発をしてしまったり、チーム内でケンカの火種になったりするので、よくイドリスから怒られる。
(『ロックンローラ』のジョニーのキャラクターを踏襲)

マーク・ストロング:
相談役。取引や売買をやってくれる渉外役でもある。裏社会経験はステイサムより少し先輩。普段は表立ってアクションをやるほうではないが、フェンシング技に強く、ヤバくなったらその場にあるステッキ状のもので応戦してくれる。
(『シャーロック・ホームズ』『スターダスト』など剣術キャラが多いので)

アラン・フォード:
エクスペンダブルズ(仮)がいつもたむろしているバーのオーナー。飄々としていながら、実は昔その道で拷問や死体処理など怖い仕事をしていたらしい。

ロバート・ダウニー・Jr.:
顔見せ程度だが、エクスペンダブルズ側の助っ人キャラ。財力と頭脳と腕力でロンドンの不動産裏業界を牛耳る男。マーク・ストロングとはやや折り合いが悪い(『シャーロック・ホームズ』参照)。

ジェラルド・バトラー:
現在、ロンドン裏社会をおもに牛耳っているボス。それまで裏社会トップクラスにいたボス連中を旧体制として蹴落としてきた。今でも、使えないやつや気に入らないやつは容赦なく蹴落とすスパルタ男。
(当初は助っ人キャラに想定していたけど、ステイサムとタイマン張るならレオニダス王かなと)

タンディ・ニュートン:
ボス直属の殺し屋。唯一の主要女性キャラクターだが、『ロックンローラ』同様男性陣との関係性は常にサラリとしている。
(フレミングかイドリスかトビーとのタイマン勝負が欲しい)

ラデ・シェルベッジア:
ボスの参謀長兼戦力の束ね役。彼が率いるロシア人戦闘員たちは、そこそこダメージを受けてもすぐ復活してきて、なぜかなかなか死なない(ガイ・リッチー映画のお約束)。

ブラッド・ピット:
カメオ出演1。登場5分もしないうちにステイサムにぶっとばされるチンピラその1ぐらい。

ベニチオ・デル・トロ:
カメオ出演2。ヘマして殺し屋タンディにあっさり銃殺される、ボスにこっそり加担してた議員。

デニス・ファリーナ:
カメオ出演3。ジェラルドに追い落とされた以前のボスその1。

トム・ウィルキンソン:
カメオ出演4。ジェラルドに追い落とされた以前のボスその2。


もし、「私なら○○中心にこういうエクスペンダブルズ作る!!」「オレだったら○○監督のエクスペンダブルズ観たい!!」というネタで一緒に盛り上がれる友人がいたら、もうエクスペンダブルズボンクラ同盟を結成してもいいと思うんですよ。

2012年11月20日火曜日

川崎ハロウィン2012

異形スピリット開放デー。

Kawasaki Halloween
2012.10.28. 川崎チッタデッラ


いつもの商店街にこんなのがやってくる!↓

宗教的意味合いはもとより、トリック・オア・トリートも根付かない日本のハロウィン。(根付いたらむしろタカリに来られそうな気がして困るんだけど)
ただ、「今なら普段できないようなカッコして堂々と練り歩いてよーーーし!!!」なノリはそこそこ伝わってるようで。
今年も川崎ハロウィンには、オバケとホラーアイコンとヴィランズとその他もろもろが集いましたよ。

そこ退けそこ退けカボチャが通る。↓

今年のパレードにはアベンジャーズが多いんじゃないかなと踏んでいたのだが、蓋を開けてみれば『ダークナイト・ライジング』効果でバットマンやキャットウーマンが多かった。前作キャラだけどジョーカーもいたし、なかなかサマになっていたのが嬉しい。ただ、『ライジング』のメインキャラたるベインはあまり見なかったような……。あと、昨年も見かけたゴーストライダーや、スパイダーマン、密かに『X-Men』のマグニートーがいましたね。
まぁ、アベンジャーズはコスチュームが大変そうだもんなぁ。1組だけ見かけたけど、なかなかクオリティの高いスーツでした。特にアイアンマン。ハルクの無理やり感も好きですが。

そうそう、クオリティが高いといえば、口裂け女。特殊メイクが本格的で。あれは見て泣いたお子様もいらっしゃるんじゃないでしょうか。だとしたら大成功ですよ。

ホラーアイコン勢では、今年はジェイソンを結構見かけた。やろうと思えば百均のマスクででも手軽にできるからだろうか(もちろん、ホッケーマスクの汚れ具合も本格的ジェイソンのほうが多かったけど)。さすがに間違えてチェーンソー持ってきちゃった人はいなかったから安心。

そのほかのホラーアイコンでは、『ヘルレイザー』のピンヘッド&フィメール、『スクリーム』シリーズのゴーストフェイス(ただし衣装に独自のアレンジあり)が記憶に。『ハロウィン』のマイケル・マイヤーズがいないのは地味だからだろうか。まさか、知名度が低いからなんて悲しい理由では……。

しかし! マイケル以上に納得いかないのは、エルム街の悪夢』のフレディ・クルーガーの不在!! やっぱりアレですか、火傷メイクがめんどくさいからですか!? 赤緑ボーダーセーターの入手がめんどくさいからですか!? まさか、性格の悪さで嫌われてるんですか!!??

とはいえ、ここに集ってるからには、何も本格的なメイクやコスチュームでなくともいいんです。チープでもいいんです。なんなら、もう何がやりたいのか分からないような出で立ちでもいいんです。
この日は異形が主役、異形で当たり前の日なんだから。


川崎ハロウィンの夜といえば、クラブチッタで開催される『ロッキー・ホラー・ショー』上映会(昨年の模様はこちらから)。
毎年ステージ前での有志パフォーマンスを盛り上げてくれるロッキー・ホラーファンクラブ「LIP'S」の皆様は、今年は『ゴーストバスターズ』のダンスで登場。おまけに、昨年日本版ロッキー・ホラー・ショーミュージカルで演った「Eddie's Teddy」(邦題:どあほのエディ)もパフォーム。
もちろん、上映前にはヴァージン(ロッキー・ホラー・ショー初心者)イジり「誰が一番バナナをヤらしく食べるか」競技も開催。去年も見たけど、バナナパフォーマンスのレベルの高さといい、強いキャラクターといい、ここに上がってくる皆さんはホントにヴァージンなんでしょうか? 

昨年のレポにも書いた通り、『ロッキー・ホラー・ショー』の上映中は、ノリで歓声あげてもよし。映画の内容やキャラクターにツッコミを叫んでもよし。一緒に歌ってもよし。ほとんど暗記したセリフで延々一人芝居しててもよし。「タイムワープ」は一緒に踊ることをお勧めしますが。
とりあえず、ブラッドが出てきたら「asshole(バーカ)!」、ジャネットだったら「slut(アバズレ)!」と言うのが、海外でもおなじみのお約束。

日本語の場合だと、ブラッドがスコット博士を見かけて「スコッティ!」と言うシーンの直前に「ティッシュは何使ってるの?」と叫ぶとか、フランクがスピーチ中に「イエス」という直前に「ズバリ、あんたはオカマでしょう!!」と叫ぶのが定番化しつつある。
また、犯罪学者を演じるチャールズ・グレイの顔の大きさがアンタッチャブル山崎を彷彿とさせるせいか、この人が登場するたびに「ザキヤマーー!!」「おじゃマップ!!」「あざーーっす!!!」と山崎関連のボケが殺到。ディナーのシーンで入った、リフラフとマジェンタが雑にワインを注いでまわるところで「ワイルドだぜぇ?」ってネタは、まぁ貴重な今年限定ものでしょうね。

そういえば、最前列にいたアメリカ人が、逐一お約束のセリフとツッコミを叫んでいたなぁ。あれが全部分かったら、また違う面白さも発見できるんだろうなぁ。
あ、上映終わったらまた「タイムワープ」踊ることもお勧めしますよ。というか、勧めるまでもなく踊る気満々になっていたら嬉しい限りです。
今年一番力入ってたカボチャ。

貞子! ビルの壁は慣れないだろうけど頑張れ!!

2012年11月15日木曜日

エクスペンダブルズ2

すべては筋肉ですが文句ありますか!! ないですね!!!!

エクスペンダブルズ2('12)
監督:サイモン・ウェスト
出演:シルベスター・スタローン、ジェイソン・ステイサム



「オレたち消耗品!! 命知らずの傭兵軍団!! 危険とか戦場とかドンと来い!!!」って感じの看板を掲げているのに、ホントに犠牲者が出ちゃうと「何してくれるんじゃコラァァ!!!!」と倍返しどころじゃない復讐に走るって、よくよく考えたらちょっと理不尽ですね。まぁ、だからこそ面白くなったんだけど。

バーニー・ロス率いる少数精鋭の傭兵軍団エクスペンダブルズは、バルカン半島に墜落した輸送機からある機密データを回収する任務を請け負った。簡単な仕事のはずだったが、データを狙っていたヴィラン率いる悪の武装集団サングに急襲され、仲間の1人が命を落としてしまう。データを取り戻すため、また仲間の復讐のために、エクスペンダブルズはヴィランを追う!!

何せ1作目から、というか企画段階から、アクション俳優ひたすら集めた筋肉男祭り!!! のエクスペンダブルズ。となれば最も重要なことは、各アクションスターが自分の見せ場をドヤ顔でキメてくれること。それを最大限に活かすには、葛藤も伏線も恋も取っ払い、ひたすら火薬と拳で勧善懲悪というどストレートな構図が大正解。ご都合主義な展開も大歓迎。なおかつ、火薬と拳のシーンは、ドッカンドッカンバキバキとど派手にやるのが大正解だ。

というわけで、銃撃すれば敵が血しぶきを撒き散らして倒れ、重戦車や飛行艇で突撃すれば必要以上に爆破と破壊。肉弾戦ともなれば、スタローンがカイザーナックルでぶん殴り、ステイサムがナイフを飛ばしつつ、ジェット・リーがフライパンを武器に宙を舞い、ヴァン・ダムが2連続ヘリコプターキック!ステイサムvsスコット・アドキンスという軽々動ける同士のバトルも見ごたえ十分すぎる。何より、スタローン&ブルース・ウィリス&シュワルツェネッガーが横並びで銃撃するシーンは、派手なうえに豪華で絵になることこの上なし! 
ここまで筋肉アクションメガ盛り祭りにしてくれると、楽しまなければ損な気さえしてくるものだ。

さらにニクいのは、アクションだけでもキャラの立つメンバーたちに、とんでもなく大人げないノリという魅力までプラスされていること。前回から続くバーニー&リーおよびイン・ヤン&ガンナーの仲良し口ゲンカごっこや、バーニーの特に意味なくドクロなアイテムが一例である。みんなしてシュワちゃんの「I'll be back!」をはじめとした『ターミネーター』ネタを徹底的におちょくるところも、ベタながら大いに楽しませてもらえるポイントだ。

その最たるポイントは、CIAから来た女性マギーが今回行動を共にし、しかも廃屋で一緒に野宿するということで、妙に浮き足立つメンバーの様相。特に、相方クリスマスの彼女に文句つけたりするわりには、近くに女性がいるとどうにも落ち着かない雰囲気丸出しのバーニー隊長の変化は顕著。「(人生の最後に食べる飯を選ぶとしたら)中華が食いたい」とど下手なナンパに走るガンナーはもっと顕著。「いつも男ばっかのとこに今日は女子がいるー♪」という小規模なわくわく感が漂う様はもはや中学生。このときばかりは最強傭兵軍団という設定が遠ざかるよ。

また、前作で裏切り者兼問題児だったガンナーは、マサチューセッツ工科大の優等生というムダな才能の持ち主で、そのうえちっともそうは見えないお調子者のドジさんぶりを披露する、前作とはまた違った大人げなさ全開。この人の経歴も、演じるドルフ・ラングレンのスゴくて哀しい実録をガチ反映していたりするものなぁ。

しかし、本作を語るうえで、出番が少ないにも関わらず1、2を争う重要性を担っているのが、チャック・ノリス。自分よろしく、それまでチャック・ノリスをよく知らなかった人間にまでも、「人類最強」だの「伝説級」だのといった飾り文句を信じこませる存在感。「チャック・ノリス・ファクト」を信じようって気にさえなる。
何せ、どこからともなく現れて、どんなに大勢の敵でもたちどころに死体の山に変える。その気になればアサルトライフルで戦車も爆破できる。その表情は仏のように穏やかなままで、銃を持つ手がブレることもない。スッと来て、バーーーーーっと殲滅。それがチャック・ノリス。
こんなスゴい人を脇で、しかも絶妙のタイミングで使えるなんて贅沢は、エクスペンダブルズでしか味わえません。

2012年10月31日水曜日

マリリン・マンソン/This Is Halloween

異形の神、異形のテーマを歌う。

MARILYN MANSON
This Is Halloween('06)




マンソンが「異形の神」扱いだったり、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』のサントラ全体ではなくマンソン単体なのは、時間短縮のためだけではなく、個人的な思い入れが強いからです。というか、プロフィールにある通り、ロック界における我が人生の師匠だからです!

異形のものたちが主役に躍り出るハロウィン・ソングは、もともと異形の存在であるロックスターの中でもキワモノすれすれ(いやきっぱりとキワモノ?)な感じに異形なマンソンがカヴァーするのにぴったりだろう。音のほうも、ヘヴィなギターはそこそこに、シンセサイザーが幽霊屋敷のようなチープかつ怪しげな空気を漂わせている。「チープかつ怪しげ」は、ハロウィンを魅力的にするポイントだ。

この曲に漂うファンタジーっぽさや可愛らしさを抽出するという点では、2枚組サントラ収録のパニック!アット・ザ・ディスコのカヴァーのほうが上手いといえる。ただ、可愛らしさはにじみ出るけどベースはあくまでおどろおどろしいんだぜというハロウィンタウンの住人たちの雰囲気には、やはりマンソンの声が合う。何より、彼一人で何種類ものゴースト/クリーチャーの声が務まってしまうんだから。

本当は、マンソンがハロウィンイベントでコレを歌っているライヴ映像を貼りたかったのだが、残念ながら元動画は消えてしまった。
代わりに、『ナイトメア…』のオープニング部分にマンソンのカヴァー版をのせたバージョンの動画↓を添付しました。

ナイトメア・ビフォア・クリスマス

異形っていうのは普通のこと。

ナイトメア・ビフォア・クリスマス('93)
監督:ヘンリー・セリック
出演(声):クリス・サランドン、キャサリン・オハラ



これは、年間を通して店頭に並ぶハロウィンであり、ハロウィンムービーであると同時にクリスマスムービーにもなる一本であり、ホラーに出てくる幽霊やクリーチャーがダメな人でも手にとれるモンスターであり、ティム・バートンファンのバイブルである。と同時に、バートンのストライプ・うずまき・縫い目フェティシズムの集大成でもある。
そうそう、この映画はティム・バートン作品にクレジットされているけれど、本作の監督はヘンリー・セリックなので、お間違いのないよう。

ハロウィン・タウンの王様、ジャックは今年もハロウィンを大成功に収めるが、その陰で毎年ハロウィンをくり返し恐怖をつかさどることに虚しさを感じていた。ジャックの気持ちに気づいているのは、密かに彼に思いを寄せているつぎはぎ人形のサリーだけ。
そんなとき、間違ってクリスマス・タウンに迷い込んだジャックは、その暖かく華やかな世界に魅せられる。戻ってからもクリスマス・タウンの様子が忘れらないジャックは、今年は自分たちハロウィン・タウンの住人でクリスマスを作ろうとするが……。

ストーリーを要約すると、主人公の自分探し劇に陥ってしまうところだが、それが巧妙に隠されているのは、ひとえにダニー・エルフマンのスコアと、異形のキャラクターたちのおかげだ。
主人公は骸骨、ヒロインはつぎはぎ人形。そのほかのハロウィンタウンの住人たちも、口が裂けてたり顔がつぶれぎみだったり、というかそもそも人外魔境で、一般的な意味で可愛いとは言いがたい。でも、ハロウィンの世界では、それこそ当たり前。もっと言えば、アウトサイダーの代表格たるティム・バートンにとっては、異形が当たり前なのだ。

ハロウィンタウンの住人たちには、バートンの異形に対する愛情が詰まっている。
バートンお気に入りのストライプ柄やうずまき模様や縫い目デザイン、外見とは不釣り合いなような愛嬌や優しさ、ダニー・エルフマン作の素敵な歌をプレゼントされている。そのため、一般的には可愛くないはずのキャラクターたちが、何とも可愛らしく見えてくる。
特に、ジャックは長い手足がエレガントにすら映るし、異形の王様ながら異形であり続けることに密かに悩むアウトサイダー中のアウトサイダーなところは、バートンらしさのカタマリ。
サリーはパッチワークドレスがおしゃれで、それ以上にジャックに献身的な様子が泣けてくるほど健気。
悪役のウギー・ブギーですら、ズタ袋な体からちょこんと伸びた手足でヒョコヒョコ踊る様が何ともおかしい。
ここでは、可愛くてきらびやかで、一般受けのいいクリスマスこそヨソ者なのだ。

なお、この映画のDVDコレクターズ・エディションには、バートンの初期短編アニメ『ヴィンセント』と、短編実写映画『フランケンウィニー』が収録。古典のユニバーサル・ホラーに影響を受けた異形愛が、顕著に炸裂しています。

2012年10月30日火曜日

ハロウィンⅡ(2010)

かぞくがいちばん(死んでるけどね)。

ハロウィンⅡ('10)
監督:ロブ・ゾンビ
出演:マルコム・マクダウエル、ブラッド・ドゥーリフ



家族愛。日本人がやたら好きなテーマ(海外がどうかはよく分かっていません)。映画業界も家族愛を売りにしたがる傾向に。
というわけで家族愛好きの皆様、こちらも立派な家族愛テーマの映画ですよ。観ててもあまりほっこりしないし、血みどろだし、やたら人死ぬけど。

ハロウィンの夜、殺人鬼マイケル・マイヤーズは妹ローリーの手で葬られたはずだった。しかし、遺体を運搬する最中に輸送車が事故に遭い、運転手らは死亡、マイケルは行方不明に。
それから1年後。トラウマを抱えたローリーは、事件のあったハロウィンの日が近づくにつれ、マイケルの悪夢に怯えるようになる。ルーミス医師はマイケルについての著書を出版し、講演で多忙な生活を送る一方で、事件の遺族に売名行為と糾弾されていた。
そして、姿をくらましていたマイケルは、母親の幻に導かれ、再びハロウィンの日のハドンフィールドへと向かっていた……。

前作『ハロウィン』で、後半のスラッシャーパートに「ロブ・ゾンビのオレオレ度が低めでちょっと物足りない」と注文つけた身なので、そのオレオレじゃないパートをいっそう引き延ばした本作のほうが、どうしても前作以上に物足りなくなってしまうもので。
もちろんスラッシャーホラーとしては優等生級なのだが、ロブ・ゾンビの場合、優等生になるよりも、多少ごった煮状態でも我が道を爆進していただいたほうが面白くなりそうに思える。

また、一番オレオレが炸裂していたキャスティングについても、相変わらずホラー好き的に濃い面々がそろっているのだが、だいたいが前作からの続投なので、これまたどうしてもサプライズ感が減ってしまうもので。嫁さんシェリ・ムーン・ゾンビの魅せ方にも気合が入っているが、個人的には彼女はああいう幻想的な存在よりも、生身の人間として存在し、ちょっと下品な魅力を振りまくほうが素敵なように思える。

そんな中、『悪魔のいけにえ2』のDJストレッチことキャロライン・ウィリアムズがいたのは嬉しい限り。
また、ローリーたちのパーティー仮装が、『ロッキー・ホラー・ショー』のフランクとマジェンタとコロンビアというあたりにも、ロッキー・ホラー中毒者としてニヤリ。

前作では、人間としての背景に肉付けはされたものの、心はほとんど空洞のままだったマイケルだが、今回ロブはマイケルの心にもいくぶん肉付けをしたらしい。
それは、マイケルの原動力が「愛する家族の再生」ということ。思えば、前作でマイケルの母が家族のためにストリップクラブで踊るときに流れる曲「Love Hurts」が本作の締めくくりになるのは、「家族愛」が一貫したテーマである印の一つ。マイケルの過去と同様に、評価が割れるポイントだが、そこへ踏み込む冒険心と意欲はやはり買い。
当然だが、一般的な意味での暖かさや涙に溢れた家族の再生物語ではない(涙はあるけどね、違う意味で)。現に、ラストはバッドエンドとハッピーエンドの狭間のよう。スカウト・テイラー=コンプトンは、あのラストショットのためにローリー役に起用されたのではと勘繰りたくなる。

家族愛をテーマに持ってきながら、普通の家族観とはだいぶ違ってひねくれているあたりでは、ティム・バートンのノリに近いものがある。ロブもまた、「こんな素敵な嫁さんいるけど、オレ普通の家庭人にはならないもーん」アピールの人なのだろうか。

2012年10月25日木曜日

ハロウィン(2008)

肉付けされた亡霊。

ハロウィン('08)
監督:ロブ・ゾンビ
出演:マルコム・マクダウエル、ブラッド・ドゥーリフ



なんか分かる。マイケル・マイヤーズにもう少し具体的な背景を作りたくなる気持ち、スゲェよく分かる。
何せ、オリジナルの1978年版『ハロウィン』で、誰にも気づかれずぬぼーっと佇むマイケルの姿が、郊外で行き場をなくしたアウトサイダーの亡霊に見えてしまった人間。自身もアウトサイダーたるロブ・ゾンビが自己投影したかのようなマイケル像には、大変納得がいく(あれがロブの実際の家庭環境だったってわけではないものの)。

もちろん、そこが最大の評価の分かれ目には違いない。
だが、原作にリスペクトがあって、原作の重要なポイントも押さえていながら、賛否を大きく分ける要素も盛り込む意欲はリメイクとして優秀なほうに思える。

ハロウィンの夜に家族を殺した少年が、成長してから精神病院を脱走して故郷に戻り、実の妹を追い詰める……という基礎は、もとのジョン・カーペンター版とあまり変わらない。ロブ版のほうがいくぶんカラフルで、犠牲者数も増えて、流血描写もアップしてるぐらい。
ただし、人間として生まれてはきたのだが、次第に亡霊のような殺人鬼になっていくマイケル・マイヤーズの「人間」の部分に、ロブはアウトサイダーの要素を用いて肉付けしていった。貧乏な家庭に生まれ、同居している母のヒモ男にはバカにされ、姉からは邪険に扱われる。学校では友だちもなく、母がストリッパー稼業をしていることでまたバカにされる。そしてついにハロウィンの日、自分を虐待してきた人々を惨殺……と書くと社会が生んだモンスターみたいだが、家庭と学校の苛酷な環境がマイケルを殺人鬼にしたのかといわれると、それは違うんじゃないかと。

そう思うのは、ロブがマイケルの心にまでは肉をつけず、空洞のままにしたからだ。
愛情を注いでくれる人(母)も、愛情を注ぐ対象(妹)もいながら、家族を殺していまう。収監されてからも母はマイケルに向き合おうとしているし、親切にしてくれる看守(ダニー・トレホ。ガチの刑務所経験がある人が語ると説得力増します)もいるのに、目を離した隙に看護士を殺害。成長して巨漢の青年になったと思ったら、護送と同時に警官を殺し、トレホ看守すら手にかけてしまう。
なぜ周りの愛情が哀しいほど届かないのかは分からない。行動の説明が今一つつかない。マイケルの闇に手をつけなかったから、人間・マイケルが徐々に怪物性を増し、亡霊/殺人鬼と化す過程が保たれたのかもしれない。

「人間」マイケル・マイヤーズには自己を投影し、「亡霊」ブギーマンにはスラッシャー・ホラーの星としてのリスペクトを注ぐというのがロブの魂胆だろうか。となると、マイケルが故郷で大量殺戮をくり広げる後半がちょっと物足りないのは、ロブのオレオレ度が低めだから?

まぁ、今回ロブ・ゾンビのオレオレが一番出ているのは、何といってもキャスト。マイケル・マイヤーズに翻弄されたり殺されたりしているメンツが、ちょい役も含め実にホラーオタク向け。
『時計じかけのオレンジ』のアレックス君に、『チャイルド・プレイ』シリーズのチャッキー君、女王シビル様(本名か)。
マーダー・ライド・ショー』&『デビルズ・リジェクト』からは、ファイアフライ一家のオーティスとベイビーとマザーとルーファス(これはマイケル当人か)、ワイデル保安官兄弟、アンホーリー・ツーのロンド兄貴、キャプテン・スポールディングと義兄弟チャーリー・オルタモントと、もはや鉄板のロブ・ゾンビ組。こういう顔ぶれを探す遊び心は、ロブファンにとっては嬉しいところ。
あと、嫁さんシェリ・ムーン・ゾンビを魅力的なキャラにするってポイントにおいては、ロブはまったくブレないし達人ですよ。

2012年10月23日火曜日

インブレッド

これが、変態鬼畜の、モンティ・パイソン形!

インブレッド('11)
監督:アレックス・シャンドン
出演:ジョー・ハートリー、シェイマス・オニール



下に貼ったのは、本作のメインテーマ「The Inbred Song (Ee by gum)」。Ee by gumは北部の方言でOh my godだそうです。日本語訳は「こんチクショウめ」になっています。
言われなくても分かることですが、下に書いてあるのは歌詞の訳ではありません。


♪ 聞かせてやろうー 悲劇の実話をー Ee by, ee by gum!
  監督に釣られてー つい観てしまったー Ee by, ee by gum!!
(間奏)
♪ コレ語るときー ボルテージ上がるー Ee by, ee by gum!
  たぶん普段よりー ドン引きされるー Ee by, ee by gum!!
(間奏)
♪ しかもテーマ曲ー 頭っから離れないー Ee by, ee by gum!
  ついにiTunesでー 購入に至るー EE BY, EE BY GUM……!!!

……観ていて気分悪くはならなかったものの、どうやら自分は違う意味で大丈夫じゃないようです。

更生プログラムの一環として、社会奉仕活動を義務付けられた少年犯罪者たちと、引率の保護観察官。彼らがたどり着いたのは、カーナビに載っていないモートレイクという村で、住人たちはどこか怪しげ。
不審に思いながらも翌日活動を始めた中、彼らは村の若者たちとモメて、挙句監察官の1人がケガをしてしまう。助けを求める少年たちと監察官だったが、パブの店主をはじめとする村人たちに捕えられ、殺人ショーの見世物にされていく。

Inbredとは「近親交配の」という意味。劇中では明言されていないが、どうやらモートレイク(Mort Lake=『死の湖』ってまたどストレートな……)の住民たちは、かつて隔離施設に収容されていた精神異常者の近親婚で生まれた子孫たちで、現在もタガが外れまくった方向に磨きをかけて繁栄中……という「はい、倫理的にアウトーー!!!」な設定らしい。全員薄汚くて(一部はあからさまに汚くて)歯並びガバガバという見た目設定もいろいろアウトだろう。

しかし、基盤は思いっきりインモラルながら、中核となる残虐描写は、スプラッターファンからしてみるとちょっと拍子抜けするかもしれない。もちろん、普通の観点からすれば十分ムゴいのだが、「あ、あれ? 来るぞ来るぞって結構引っ張ったわりにすぐ死んじゃったけど!?」というあっさり気味に。
被害者たちが射殺や轢き逃げで村人に逆襲というところで、ずいぶんと派手に人体を破壊するサービス精神(仮)もあるのだが。

意外にあっさりな死や、ド田舎で大量殺戮系ストーリーは、ハーシェル・ゴードン・ルイス(スプラッターの始祖といわれる監督。要はスクリーンで初めて人間の内臓を出しちゃった人)の『2000人の狂人』を明らかに意識しているといえる。
そのへんを知っていると、あるいはシャンドン監督の過去の血みどろ作品がビバご都合主義で結構ワンパクだと知っていると妙に納得するところもあるのだが、事前情報なしのまっさらな状態で観ると辛口になってしまいそうだ。
このあたりは、「変態鬼畜の最新進化系」だの「殺人オリンピック」だの「殺しのハイスコア」だの「ガマン大会」だの、ちょっと本来の筋と違ってしまった宣伝の煽り文句にも責任があるんじゃないかという気もする。

そんなわけで、私個人がこの映画で「おおっ!」と感動すら覚えたのは、スプラッター描写ではなく、ブラックすぎるお笑い部分だった。この手の映画で、まさかモンティ・パイソンを意識した笑いが見られるとは思わなかった。
和気藹々としながら殺しに興じる村人たちの様相は、和気藹々とした雰囲気でタブーなやりとりをするパイソンズのごとし。また、動物虐待と、逆に過剰な(そして間違った方向性の)動物愛をおちょくるところも、パイソンズおなじみのネタ。『人生狂騒曲』を観た人なら、アレで人体がパーンとなるシーンで、テリーJが演じたデブ男クレオソートを連想するだろう。何より、見世物小屋の「裸のオルガン奏者」を見たら、第3シーズンのテリーJを思い出さずにはいられない! 

そういえば、ボツになったパイソンズのスケッチの中に、レストランでワインを飲んだと思ったらそれは×××××だったという通称「ウィー・ウィー・スケッチ」があったらしいのだが、それに近いネタもあるといえばある。シャンドン監督、実は結構なパイソニアンじゃなかろうか。

また、パイソンズを観る限り、イギリス人は自虐ネタを嬉々としてやるようだけど、舞台となったヨークシャーの皆さんはこの映画をどう思ってるんだろう?

ちなみに、シャンドン監督が過去に制作した低予算ホラー『Cradle Of Fear』の予告がこちら↓。私ひいきのバンド、クレイドル・オブ・フィルスのボーカリスト、ダニ・フィルスが主役に。念のため、流血がダメな方はご覧にならないほうが。本編を観たい方は、今のところYouTubeで検索したら出てきます。字幕はありません。
あと、BGMのクレイドルの曲も、ダニのボーカルがキャーキャーしてて、ダメな方には耳に障るかもしれません。私は初めて聴いたときから大好きですが。

2012年10月22日月曜日

ハロウィン(1978)

郊外こわい。

ハロウィン('78)
監督:ジョン・カーペンター
出演:ドナルド・プレザンス、ジェイミー・リー・カーティス



行ったこともない人間が言うのもなんだけど、アメリカの郊外は見ていて怖い。同じような中産階級の家が並んでて、学校時代に成立した階級制度(スポーツができて健康的なジョックスがトップで、オタク=ギークや黒ずくめでロック好きのゴスが肩身狭い)が、そこに住み続ける限り後の人生にずっと影響する。開放的に見えて、結構な閉鎖空間だ。
あれはあれでじわじわ怖いのに、そこに殺人鬼なんか放り込まれた日には……。

1963年、イリノイ州ハドンフィールド、ハロウィンの夜に、6歳の少年マイケル・マイヤーズが姉を殺害する事件が起きた。それから15年後、成長したマイケルは精神病院を脱走し、故郷ハドンフィールドへと戻る。マイケルの担当医ルーミスは彼を追跡するが、マイケルはすでに高校生のローリーに接近していて……。

スラッシャーホラーもののメインを張れる、なかなか死なない系殺人鬼の元祖、マイケル・マイヤーズ。いわばジェイソン・ボーヒーズやフレディ・クルーガーの先輩。ただし彼らとは違って、シリーズ化されたから何度も甦ったのではない。このパート1の時点で何度も甦っているのである。
過去のシーンを見る限り、マイケルはごく普通の典型的郊外住まい中産階級家庭に生まれたようだし、見た目はごく普通の男の子。しかし、どういうわけか、感情だの良心だの倫理だのがすっぽりと抜け落ちてしまっているらしい。それが証拠に、幼いころの姉殺害も、動機が何一つわからない。後のシリーズで実はマイケルの妹と判明するローリーについても、なぜそんなに殺したいのかわからない。
マイケルの心はあの白マスク(裏地がカーク船長なのはマニアなら知ってますが)そのまま、トラウマも快楽もない無表情で、限りなくブラックホールなのだ。

もともとはただの人間のはずのマイケルだったが、終盤にくると不死身の領域へ。どんなに致命傷(もしくはかなりの深手)と思われる傷を負っても、むっくり起き上がる。まるで、マスクと心の空っぽさに、怪物性が追い付いてしまったかのようだ。
ただ、厳密にいうと、マイケルは「怪物」というより「亡霊」だ。実はマイケル、殺人やヒロインとの追っかけっこに興じるよりも、ただそこいらにぬぼーーっと突っ立って、人々(その多くは後々殺される)を見つめている時間のほうが長いのである。

大いに個人的な解釈をすると、マイケルは殺人鬼である以前に、郊外で居場所をなくした亡霊だ。チアガールだったりちょっと不良な明るい子だったり彼女いる男子だったりと、日の当たるところにいる連中は、白昼だろうと夜間だろうと、マスクとツナギ姿でこちらを凝視している異様も異様な男になぜか気づかない。マジメ寄りのローリーや、いじめられっ子のトミー少年がおもにその姿を目にとめる。
郊外という閉鎖空間で、隅に追いやられがちなはみ出し者の行き場のない心の投影が、ブギーマン=マイケル・マイヤーズにも見えてしまうのである。とはいえ、そんな心の具現化に友だちをバッサバッサと殺されては、たまったもんじゃないのだけど……。

スラッシャーの先駆けとはいっても、出てくる血は申しわけ程度だし、マイケルも犠牲者メッタ切りや首ハネなどの豪快なことは何一つやってない。ただ、穏やかな日常風景(実は閉鎖的なのだが)にいつの間にか亡霊が紛れ込み、じわじわと距離を縮めてきて殺害に至るというサスペンス要素が、シンプルな物語を最大限に盛り上げている。

さらにそのサスペンスを助長させるのが、ジョン・カーペンター自身がサラリと作ってしまったこれまたシンプルな音楽。この音楽とともに流れるラストショットの郊外風景は、実にゾクッとする。
だって伝わってくるんですよ、どこかにブギーマンがいるんだって。

2012年10月14日日曜日

アイアン・スカイ

月面ナチスの大部分はオタクの夢で出来ています。

アイアン・スカイ('12)
監督:ティモ・ヴオレンソラ
出演:ユリア・ディーツェ、ゲッツ・オットー



今年のニューヨーク、マンハッタン界隈は大変だ。
ワームホールから宇宙人が襲来してくるし、そのせいで核ミサイルまで飛ばされるし。
コウモリでおなじみのあの街もマンハッタンあたりがモデルだとしたら、頑強マスク一派による核爆弾&都市孤立化事件まで起きたことになる。
で、こいつらも来ちゃったし。

終戦時に実は月へと逃亡してたナチスが、満を持して地球に攻めてきました。……それ以上でもそれ以下でもないお話。
一応、「アメリカ保守派のやってることだって実はナチスとあまり変わらないんでない?」「ある意味もっとヒドくない?」「利権が絡めば国連だって泥仕合になるよねー」などの皮肉や、アメリカ宇宙戦艦「ジョージ・W・ブッシュ」号などのブラックユーモアがちりばめてあるが、スパイス程度。メインはとにもかくにも「月からナチスがやってきたんだーーー!!!」の一点。そしてその一点をゴリ押ししたのが大変良い。だからこそスパイスもよりよく活きる。

そのゴリ押しの最たるものこそ「鋼鉄」。月面ナチスの鉤十字要塞しかり、円盤「ワルキューレ」しかり、最終兵器「神々の黄昏」号しかり、黒ずんだ鉄や歯車がむき出しで、ゴゴゴゴゴと重々しい音を発して動く。小型・薄型とはほど遠く、洗練からはもっと遠く、スケールと重量でいっぱいいっぱい。
一見、笑いをとるためにやりすぎ感で盛り上げたようだし、実際その意味もあるが、それ以上に、ムダに重厚な装備やマシンの類についガッツポーズしたくなるオタクの愛情で盛り上がっているのである。実際、この映画はWebで予告を観たファンからカンパを募って作られたのだから、月面ナチスと鋼鉄の機械はいわば映画ボンクラの結晶だ。
大統領広報官改め宇宙軍指揮官には「短小コンプレックスの表れね」と切り捨てられていたが、どちらかというと中学男子的スピリット(実際の年齢・性別不問)の表れである。

なお、機械だけでなく、音楽も鋼鉄。ナチス・全体主義的イメージで批判を浴びた(もちろん確信犯)スロヴェニアのバンド、ライバッハが担当している。鋼鉄といってもヘヴィ・メタルではなく、ノイズや機械音に彩られた重々しいインダストリアル。先述の鋼鉄要塞&飛行物体にあまりにもぴったり。
愛国歌を替え歌した「月面帝国国歌」があったり、ナチス軍ではなくアメリカを筆頭とした国連宇宙軍の攻撃時に「ワルキューレ」(『地獄の黙示録』でおなじみのアレ)のアレンジ版が流れたり、終盤の最も不毛かつ皮肉なシーンでアメリカ合衆国国家の替え歌&アレンジ版が流れるなど、表現のために批判の最前線へ突っ込んでいくライバッハらしい皮肉も。ビートルズやストーンズや『ジーザス・クライスト・スーパースター』の独自すぎるカヴァー曲をやったセンスが活きている。

そうそう、ナチス軍服のヒロインというと、女王様風格だったり、露出が高くていい感じに下品なところが魅力的なタイプによくお目にかかる(下のフェイク予告に出てくるシビル・ダニングやシェリ・ムーン・ゾンビが例)。
そこへいくと、ユリア・ディーツェ演じる本作ヒロインのレナーテは、どちらかというと可愛らしいタイプで、性格もピュア。おまけに声も可愛い。彼女だったら、ナチ軍服だろうとナチ式敬礼しようと演説ぶとうと、好感度が上がります。むしろ演説やっていただきたいものです。

ナチスついでに、タランティーノ&ロドリゲスの趣味企画・グラインドハウスのフェイク予告編でロブ・ゾンビが作った『ナチ親衛隊の狼女』ってのもありまして(リンク先日本語字幕なし)。
フェイク予告のはずが本当に本編が作られた『マチェーテ』『ホーボー・ウィズ・ショットガン』よろしく、こちらも制作が進められると思ったが、誠に残念ながら中止に。観たかったなぁ、マッド・サイエンティストなビル・モーズリィと、素敵に方向性を見失ったニコラス・ケイジのフー・マンチュー。ちなみに、『アイアン・スカイ』で月面総統だったウド・キアーもいらっしゃいます。