2011年9月12日月曜日

ザ・シスターズ・オブ・マーシー

スモークの闇からこんばんは。

THE SISTERS OF MERCY
Original Album Series('10年)









このバンドは暗黒にお住まいである。
ボーカリストのアンドリュー・エルドリッチは、アルバムごとにメンバーをクビにしたりメンバーに愛想をつかされたりで唯一のオリジナルメンバーになったという経歴からして、平和的なお方じゃない。
ネットで拝見した近年のお姿は、スキンヘッドのせいか昔の写真より怖さ10割増。
どちらかといえばラヴ&ピースな空間のフジ・ロックに、なぜ彼らは呼ばれたのか。答えは主催者の日高さんのみぞ知る。
しかし今となっては、この機会にザ・シスターズ・オブ・マーシーに出会えたことに感謝している。

エルドリッチは「ゴシックロック(ゴス)」という称号を嫌っていたらしいが、シスターズは「ゴスの重鎮」として紹介されている。乱暴に言いきってしまえば、ゴスの特色は黒ずくめファッション、ダークな歌詞、ダークなメロディであり、シスターズもそれらを満たしている。
しかし、1st『First And Last And Always』から、シスターズはダークなのを通り越して重苦しい。
2nd『Floodland』は女性ボーカルが加わって妖艶さを増したが、それでもなお重苦しい。
3rd『Vision Thing』はハードロック風だがやっぱり重苦しい。
Bサイド集『Some Girls Wander By Mistake』にはイギー・ポップやローリング・ストーンズのカバー曲もあったが、それも重苦しくなっていた。ベスト盤『A Slight Case Of Overbombing』は……もう言うまでもない。

いわゆるゴスに分類されるバンドの中で、シスターズの音は一際陰鬱なように思える。ビートはドラムマシンなので単調、エルドリッチのボーカルも同じくらい淡々としていて、感情の起伏がない。
ただし、深くて低い声のせいか、異常に不気味に響く。不思議なことには時に艶っぽくさえ感じる。でもひとたびドスを効かせると、やっぱりすべてを闇で包みこんでしまうのである。

ところで、フジのシスターズは、暗黒音楽の引力と、レッド・マーキー(テントステージ)がガラガラという状況と、大量のスモークでステージが見えないという視覚的理由から、かなり前のほうで拝見させていただいた。
エルドリッチはCDで聴くよりもドス声になっていて、低音ボーカル大好き人間には嬉しかった。もう少しボーカルが前に出ていればよかったのだが……PAトラブルでもあったんだろうか? 
一方で、なぜそれを選んだのか疑問な蛍光黄色シャツや、煙草をふかしつつサングラス越しにオーディエンスに睨みを効かせるお姿は笑えるような怖いような。ただ、たまたま私がいたエリアを3分以上睨みっぱなしだった時だけは、さすがに怖さのほうが勝った。散々ふてぶてしい態度をとってきたエルドリッチだが、去り際には深々とお辞儀。
以来、シュールさと素敵さの間を行き来するこのお方を、私は敬意と親しみをこめて「エルドリッチおじさん」と呼んでいる。

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