2011年9月9日金曜日

セシル・B ザ・シネマ・ウォーズ

腐った映画を、地獄へ道づれ。

セシル・B ザ・シネマ・ウォーズ('00年)
監督:ジョン・ウォーターズ
出演:メラニー・グリフィス、スティーヴン・ドーフ



いつの時代にもおもしろい映画は必ずあるから、「今どきの映画はつまらない」なんて言う気にはなれない。
しかし、映画業界は年々まずくなっているんじゃないだろうか。テレビ局の後ろ盾がないと、大々的な宣伝も上映館数の増加もできない。あるいはテレビドラマの劇場版の乱発。シネコンが増加した分、マイナーな良作を世に出すミニシアター系劇場が減少。
何よりアレは何とかならんのだろうか、芸能人による映画プロモーション。芸能人のゴシップ(お笑いの人ならネタ披露)ばかりが採り上げられて、肝心の映画宣伝はおざなりになっているのだから。

……という文句を飛び越えて、映画業界に体当たりで喧嘩を売っている監督が、ジョン・ウォーターズ。下劣モード全開の『ピンク・フラミンゴ』が有名だが、それとはまた違ったベクトルで「スゴいものに出くわした」感を味あわせてくれるのが、この映画である。

わがままで尊大なハリウッド大女優、ハニー・ホイットロックが、プレミア試写会の場で誘拐される。犯人は、映画監督セシル・B・ディメンテッド率いるゲリラ映画撮影隊「スプロケット・ホールズ」。彼らはハニーを主演女優に強引に抜擢し、予算ゼロの映画製作を通じて、ハリウッドの商業主義・検閲だらけの映画システムに戦いを挑む。巻き込まれるかたちとなったハニーだが、己のビジョンと映画のために命を懸ける彼らと撮影を続けるうちに、女優魂を開花させていく。

セシルがウォーターズ監督そのものであることにほぼ疑いはない。ウォーターズ自身、過去にゲリラ撮影、しかも全裸撮影を決行して逮捕というヘビーすぎるエピソードを持っている。ただ幸いにして、ウォーターズは両親からの理解に恵まれていたため、セシルのようにシネコンや撮影現場へ直々に殴り込むほどのバイオレンスに走ることなく、エネルギーを映画製作につぎ込んでいた。
とはいえ、危険度とインディペンデント精神に溢れた自分の作品をシーンに送り込むこと自体、ウォーターズ流の爆弾小包であるように映るのだが。

セシルを演じるのはスティーヴン・ドーフ。端正なお顔をギラギラさせるキャラが多い人だが、ここでも顔面をギラつかせて、映画愛を全身全霊で体現。
主演というより、監督の共犯者というほうがしっくりくるようにすら思えてしまうのだった。

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