2018年6月15日金曜日

2017年映画極私的もろもろベスト

題して「バカなほうのベスト」。

……2017年が終わってから半年経過しちゃってまで書くような記事なのかって?
もちろん書くまでの記事なんかじゃないさ!!! 超本人が言うのも難だけどな!!

参考記事:
2013年極私的映画もろもろベスト
2014年極私的映画もろもろベスト
2015年極私的映画もろもろベスト
2016年極私的映画もろもろベスト


2017年映画ベストガール


  1. ルビー・ローズ(トリプルX:再起動/ジョン・ウィック チャプター2)
  2. シウハーちゃん(リン・ミンチェン)(霊幻道士 こちらキョンシー退治局)
  3. ジェーン・ドウ(オルウェン・ケリー)(ジェーン・ドウの解剖)
  4. ラヴ(シルヴィア・フークス)(ブレードランナー2049)
  5. アマネット王女(ソフィア・ブテラ)(ザ・マミー 呪われた砂漠の王女)
  6. ロレーン(シャーリーズ・セロン)(アトミック・ブロンド)
  7. ワンダーウーマン(ガル・ガドット)(ワンダーウーマン/ジャスティス・リーグ)
  8. サーちゃん(Unda Kunteera Yhordchanng)(ドラゴン×マッハ!)
  9. ミシェル(イザベル・ユペール)(ELLE)
  10. コリーンズ(リリー・ローズ・デップ&ハーレイ・クイン・スミス)(コンビニ・ウォーズ バイトJK vs ミニナチ軍団)

どうしてもこのところベストガールの1位は「ガール」を超越した存在になるな。いやそれより問題は2位と3位が(厳密には5位も)実質死体ってとこか。でもシウハーちゃんは付きまとわれたいキョンシー第1位じゃないかと思うの。



2017年映画ベストガイ


  1. ゲイリー・フォークナー(ニコラス・ケイジ)(オレの獲物はビンラディン)
  2. サラザール船長(ハビエル・バルデム)(パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊)
  3. 大家さん(ネヴィル・アーカムボールト)(アブノーマル・ウォッチャー)
  4. ペニーワイズ(ビル・スカルスガルド)(IT イット/”それ”が見えたら、終わり。)
  5. 獄長(マックス・チャン)(ドラゴン×マッハ!)
  6. 新耳袋Gメンの皆さん(怪談新耳袋Gメン復活編)
  7. ホアキン(レオナルド・スバラーリャ)(エンド・オブ・トンネル)
  8. ジミー(シャールト・コプリー)(ハードコア)
  9. デヴィッド/ウォルター(マイケル・ファスベンダー)(エイリアン コヴェナント)
  10. デヴィッド・プラウズ(I AM YOUR FATHER)

何だかんだで今年はベストガールもベストガイも10人ずつになってしまった豊作の年(?)。濃い奴ほど上位に行きやすい本ベストだが、今年しつこく言っているように2位のハビエル・バルデムは「バルデムさん史上No.1の美人」だから上位なんだよ本気だよ。



2017年映画ベストカップル


  1. グロリア&ミシェル(地獄愛)
  2. スッキ&秀子(お嬢さん)
  3. エンツォ&アレッシア(皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ)
  4. ロレーン&デルフィーヌ(アトミック・ブロンド)
  5. ダイアナ&スティーブ・トレバー(ワンダーウーマン)
  6. イップ・マン&チュン・ウィンシン(イップ・マン 継承)
  7. ゲイリー・フォークナー&マーシ・ミッチェル(オレの獲物はビンラディン)
  8. サンファ&ソンギョン(新 感染 ファイナル・エクスプレス)
  9. K&ジョイ(ブレードランナー2049)
  10. バットマン&ジョーカー(レゴバットマン ザ・ムービー)
10位はカップルに入れていいものか考えものだったけど、今回はジョーカーの「めんどくさい彼女」度が上がっていたのでランクインを決めてしまったよ。



2017年映画ベストド外道

  1. ヨンソク常務(キム・ユンソク)(新 感染 ファイナル・エクスプレス)
  2. パク・ソンベ市長(ファン・ジョンミン)(アシュラ)
  3. 首塚サトシ(毎熊克哉)(全員死刑)
  4. チョウ・シウロン(ルイス・クー)(コール・オブ・ヒーローズ)
  5. ジンガロ(ルカ・マリネッリ)(皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ)
  6. 登場人物の8割(我は神なり)
  7. ヘスンの父親(リュ・スンリョン)(ソウル・ステーション パンデミック)
  8. マッド・ドッグ(ウィレム・デフォー)(ドッグ・イート・ドッグ)
  9. 神藤一郎(大森南朋)(ビジランテ)
  10. ホン・マンコン(ルイス・クー)(ドラゴン×マッハ!)
4位と10位でタイプの異なる外道を演じたルイス・クー、1位/6位/7位の外道を生み出したヨン・サンホ監督と、香港&韓国がランキングを制する中、年末に毎熊克哉さんと大森南朋さんが日本代表ド外道として滑り込んできてくれました。ありがとうございます。


2017年映画ベスト名言

  1. 「NASAでは小便の色は皆同じだ」(ドリーム)
  2. 「お前ら全員クソだ!!! ……と言っています」(トンネル 闇に鎖された男)
  3. 「グー、チョキ、パーよりグレネードランチャーだぜ」(トリプルX:再起動)
  4. 「それでも負けることはできる。何度も何度も何度も……永遠に負け続けてやる」(ドクター・ストレンジ)
  5. 「神は自分に似せて人を作ったと言うが、本当は逆だ。君たちが私を作った。だから困っている」(オレの獲物はビンラディン)
  6. 「確かにお前の最大の敵はオレじゃない。お前自身だ」(レゴバットマン ザ・ムービー)
  7. 「死んだらそれで終わりだ。死後の世界なんて信じない。また一からやり直すなんて嫌だ」(DARK STAR H.R.ギーガーの世界)
  8. 「物語は野生動物だ」(怪物はささやく)
  9. 「オカマって?」「ゲイの人々を傷つける言葉だ」(ムーンライト)
  10. 「孫悟空、どこへ行くの?」「妖怪退治だ」(コール・オブ・ヒーローズ)
今書き起こして気づいたが……上位3位が「小便」と「クソ」と「グレネードランチャー」という偏差値の低さ……いや1位はめちゃくちゃ偏差値と人間力の高いことを一番下品に言いまわしてるだけなんだけど。


2017年映画迷言ベスト

  1. 「ナマステ!!!!(ブチギレて電話を切りながら)」(コンビニ・ウォーズ)
  2. 「ココナツ!!(特訓したパンチを思い出させながら)」(キックボクサー リジェネレーション)
  3. 「お前ウィキペディアか!?」(スキップ・トレース)
1位と2位は注釈がないと何でオモシロいのか分からないもんなぁ。


2017年映画ベストサントラ

  1. アトミック・ブロンド
  2. ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス
  3. ネオン・デーモン
2017年のサントラを制したのはタイラー・ベイツと言っても過言ではない(注:この場に限る)。でも『アトミック・ブロンド』を1位に押し上げた決定打は、マリリン・マンソンの "Stigmata" (ミニストリー)カバーなのだよ……!!


2017年映画ベストソング

  1. Open Up Your Heart(ジェーン・ドウの解剖)
  2. Satan, Your Kingdom Must Come Down(アシュラ)
  3. Sois Prudent(地獄愛)
  4. 移民の歌(マイティ・ソー バトルロイヤル)
  5. Rolling In The Deep(スキップ・トレース)
  6. Brighton Rock(ベイビー・ドライバー)
  7. Jeeg Robot, L'Uomo D'Acciaio(皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ)
  8. Reggie Rap(ファンタズムⅤ ザ・ファイナル)
  9. Speakerbox(ワイルド・スピード アイスブレイク)
  10. カナダ国歌(by コリーンズ)(コンビニ・ウォーズ)
なぜかサントラトータルよりも1つの曲がツボなケースが多かった2017年だった。


2017年映画ベストめし

  1. 葬式ケータリングのユッケジャン(アシュラ)
  2. キューバ風アレンジプレート(ムーンライト)
  3. 黄色カップのヨーグルト(皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ)
  4. ローラの手作りカップケーキ(パターソン)
  5. 飴(お嬢さん)
  6. ロブスター(レゴバットマン ザ・ムービー)
  7. 牛の横隔膜(犯人は生首に訊け)
  8. 牛肉麺(コール・オブ・ヒーローズ)
  9. 紅茶とイチゴジャムトースト(ダンケルク)
  10. コグマン流スシ(トランスフォーマー 最後の騎士王)
1位のユッケジャンは市長が来る予定はないが作ってしまったぐらい。ちなみに10位の「スシ」はどう見てもカルパッチョだったけど、映画全体に比べたら些細な綻びにすぎない。


2017年映画ワーストめし

  1. ローラのオリジナル創作パイ(パターソン)
ベスト入りのカップケーキを作ったローラだが、ワーストめしをも制している。いくら愛するパターソンの好物を入れたパイでも、芽キャベツは加熱しすぎたらヘドロになっちまうわ。
生地の中でチェダーチーズと混ざってヘドロパイになっちまうわ。
自家栽培生バジルをトッピングしてもヘドロのフォローはできねぇわ。
そりゃ一口ごとに水で流し込まねば食えねぇわ。
そんなわけで、芽キャベツは1分ぐらい茹でたあとベーコンと一緒に軽く炒めて塩コショウするぐらいがベターだと思うよ。


2017年映画ベストここはオレに任せて先に行け

  1. アレス(ルビー・ローズ)(ジョン・ウィック チャプター2)
  2. サンファ(マ・ドンソク)(新 感染 ファイナル・エクスプレス)
  3. ドク(ケヴィン・スペイシー)(ベイビー・ドライバー)
このあとまもなく、ケヴィン・スペイシーは「ここはオレに任せて云々」などと言ってる場合じゃなくなってしまうのでありました……(哀)


2017年映画に学ぶ間違った教訓

  1. 魚雷が氷上を滑ってきたら手で押し返せ(ワイルド・スピード アイスブレイク)
  2. サバイバル生活に必要なのはダニエル・ラドクリフの死体(スイス・アーミー・マン)
  3. 追い詰められたらコップを噛み砕け(アシュラ)
  4. ラスト5分ですべてを丸く収める方法がある(カンフー・ヨガ)
  5. ソシオパスの気がある強い執事は「ヤバいニンジャ執事」と形容する(トランスフォーマー 最後の騎士王)
  6. ヌンチャクはドラムスティック(グレートウォール)
  7. 鶏モモ肉の骨も殺傷兵器(コール・オブ・ヒーローズ)
  8. ヨガのポーズで戦える(コンビニ・ウォーズ)
  9. 気まずいときの飯はとりあえずフォンデュ(まともな男)
  10. 一度死ぬとスキルアップできます(フラットライナーズ)
そもそも『ワイスピ8』を観なければと思ったのは、滑ってきた魚雷を「オレに任せろ!!」と押し返すドウェイン・ジョンソンを予告編で見てから。「んなバカな」と「ロック様ならさもありなん」のバランスが絶妙すぎるんだもんよ。


2017年映画に学ぶ正しい教訓

  1. アメリカ国防の中枢はドニー・イェンなら潰せる(トリプルX:再起動)
……いや、割と正しいと思ってますが何か?


2017年映画に学ぶ役に立つけど使いどころのない教訓

  1. 宇宙探索するなら滑り止めの効いた靴を履け&ノーヘル厳禁(エイリアン コヴェナント)
  2. カーペットを素足でスリスリすると気持ちいい(ドッグ・イート・ドッグ)
  3. 鈍器と鋭利なものはとにかく使え(アトミック・ブロンド)
これ以来、雨の日などに濡れたフロアでツルっと足が滑ると「ヤベェ、これがコヴェナント号だったら死んでるヤツだ……」と注意するようになりました。


2017年映画に学ぶやってみたいけどやっちゃいけないし第一出来ない技

  1. 通路と座席を使ってゾンビに飛び蹴り(新 感染 ファイナル・エクスプレス)
  2. 立ち塞がる相手を片腕片脚でシメながら上司をお迎えに上がる(コール・オブ・ヒーローズ)
  3. 両膝からバスに乗る(ドラゴン×マッハ!)
  4. 膝スライディング忠誠(バーフバリ 伝説誕生)
  5. 体重をかけて敵の骨を折る(おじいちゃんはデブゴン)
やってみたいけどやっちゃいけないことはすべてツインさん(配給会社)に学びました。


2017年映画グッドデザイン賞

  1. サイレント・メアリー号とクルーの皆様(パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊)
  2. ネオモーフ(エイリアン コヴェナント)
  3. カルヴィン君(ライフ)
ネオモーフ型の涼感抱き枕の商品化は今でも待ってます。カルヴィン君風イカ刺し定食商品化も待ってます。


2017年映画夢のガジェット

  1. サイレント・メアリー号(パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊)
  2. メニー君(スイス・アーミー・マン)
  3. 首刈り馬車/改め牛車(バーフバリ 伝説誕生/バーフバリ 王の凱旋)
前方皆殺しバラーラデーヴァ戦車も、漂流ゼロ円生活に欠かせない万能死体もロマン(仮)がある。
けど、船本体がサメっぽく大口を開くだけじゃなく、熱感知魚雷とほぼ同じように扱えるゾンビザメを内臓しているという点で、Z級サメ映画スピリットに触れたもん勝ちなんだ……!!!

2018年1月3日水曜日

2017年映画極私的ベスト10

2017年=墨・韓・伊・白の伏兵にぶっ飛ばされる。

ランキングの現状におそらく作った本人が一番びっくりしてますよ。
「今年もマーベルは豊作だしなーーしかも前作が面白かった『GotG』の続編と一番お気に入りシリーズの『マイティ・ソー』3作目来るしなーー怪獣映画に振り切った『キングコング』も来るしなーーー何より去年から楽しみにしてた『釜山行き』が来るじゃないか!! うーーんどれがベストに来るかなーーーー」ってわくわくしていたのにいざ年末きたら結果コレですよ。
いや、そりゃ確かに去年だって未体験ゾーンからLet Us Prey(デス・ノート/デッド・ノート)がランクインしましたよ。
それにしたって……ここまで来るとはなーー……。

参照記事一覧
2012年極私的ベスト
2013年極私的ベスト
2014年極私的ベスト
2015年極私的ベスト
2016年極私的ベスト

1位 ダークレイン

ポスタービジュアルが詐欺! 惹句が詐欺! 「ラスト○○分の衝撃」もたぶん詐欺! しかしダマされた結果超幸せな気分に! 
この映画のせいで私は2017年隙あらば『ダークレイン』勧めるマンに変貌してしまった。勧めた相手がコレを好きになるか嫌いになるかは全く分からないが、「はあぁ!!??」と言いたくなるであろうことは確実! 何なら観た人のポカン顔で白飯が食えるかもしれない! 
前作『パラドクス』然り、イサーク・エスバン監督は良くも悪くも「とにかくコレがオレの世界なの! オレのルールで行くの!!」のゴリ押し型なのだが、やはり色々映画観ていると、こういう監督の存在が案外ありがたかったりするんだよなぁ。


2位 新感染 ファイナル・エクスプレス

韓国のゾンビってやっぱりしつこいんだろうなぁ、しぶといんだろうなぁ、やっつけるほうも牛骨とまではいかなくても鈍器使うんだろうなぁ……と、ずっと楽しみにしていた列車ゾンビパンデミック。結果、ゾンビ映画としてはもとより、人間関係の描き方、イライラ、愛情、爽快感、感動、すべてが基準値軽々オーバーの濃厚&超高密度ドラマだった。ただでさえ高い好感度をさらにガン上げた漢気のマ・ドンソクはもとより、徹底した憎まれ役をやり遂げたキム・ウィソンにも拍手ですよ。


3位 皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ

スーパーパワーを手に入れたらまずATM強盗してヨーグルトとAV買いまくるヒーローvsユーチューバーになりたいヴィランという極狭町内バトル。「これを観ているお前だって、ヒーロー願望があろうとパワーがあろうとこんなもんだぞ」と痛いところを指摘されているようでもあるし、ヒーローではなくヴィランのほうが音楽大好き歌うの大好きという点が『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』と対になっていて、よりヒーローもののダークホース色が強まっている。


4位 地獄愛

2017年極私的No.1ラブストーリー。ファブリス・ドゥ・ヴェルツ監督のラブストーリーは『変態村』や短編『ワンダフル・ラブ』からブレることなく、どう見ても病んでいる世界の芯にこの上なくピュアな愛が見えてくる。解体する死体を前にしてグロリアが歌い上げるラブソング "Sois Prudent" には、今年のどのミュージカルよりも感動してしまいましたとも。


5位 レゴバットマン ザ・ムービー

イロモノのフリして「バットマンとはどういう奴なのか」の核心を突いてきた、これまたヒーロー映画のダークホース。TV時代から新作映画からあらゆるバットマンを踏まえ、さらにバットマンもヴィランも大好きなファンにとってこの上なくハッピーな結末を用意してくれた。もうバットマンもジョーカーもこのままみんな幸せになってしまえ!!


6位 IT イット/“それ”が見えたら、終わり。

主人公たちの子供時代(回想)と大人時代(現在)が交錯する原作を、バッサリ子供時代(前編)と大人時代(後編)に分ける大胆な決定。おかげで暗黒の『グーニーズ』とでもいうべき子供たちの冒険譚にして、ファンタジックな怪物と怪物のように恐ろしい現実を乗り越えていく成長譚となった。そのぶん後編への期待値(と不安値)もガン上がりしたがそれでも楽しみだ! そして頑張れペニーワイズ=ビル・スカルスガルド! ニューラインシネマから出てきた以上、君も立派なフレディ・クルーガーの後輩だ!! 君の強みは動き方や顔の歪み方に滲み出る「厭さ」だ!!


7位 ブレードランナー2049

かつて『ブレードランナー』が提示した「レプリカントと人間にどれほどの違いがあるというのか」という問いに対し、「両者の間に大差はない。それどころか、明確な実体を持たずスイッチひとつで消えてしまうようなAIですら、限りなく人間になり得るのだ」と30年越しの回答を出した続編。「スケールの壮大な“ピノキオ”」と言ってしまえばそれまでだが、ブルーフェアリーのいないピノキオが人間になる道を選んでいく過程はあまりにも切ない。
しかし、「夢のあるディストピア」として描かれていた2019年の世界、30年経っていっそう夢がなくなっていたのはちと残酷だし、しかも現実味があるってね……。


8位 アシュラ

韓流特濃バイオレンスの1つの高み……というより、暴力とゲスのインフレが過ぎて終いには清々しい気分になってくる。主要人物が「全員悪人」ならぬ「全員外道」(しかも全員タイプの異なる外道)なのだが、中でもその頂点に君臨するスーパーサイコパス市長パク・ソンベの存在感たるや。ノーパンで一人立食パーティーを敢行する姿は今年のファン・ジョンミンの極私的ベストアクトです。『哭声 コクソン』のズンドコ祈祷師も信用していいのかよくないのか分からなくて良かったけど。


9位 DARK STAR H.R.ギーガーの世界

木々を鬱蒼と茂らせ、おぞましくも艶かしいアートワークに囲まれて暮らすギーガー。しかし彼はその中で家族やマネージャーたちと和やかな時間を過ごし、愛猫ムギに翻弄され、庭で自作の幽霊列車に乗ってご満悦。現パートナーはもちろんのこと、元パートナーたちも別れたあともアシスタントとして共に働いている。セルティック・フロスト/トリプティコンのトム・G・ウォリアーも秘書としてギーガー宅で働いていたこと(しかも自転車通勤していること)、ギーガーに対する恩義と尊敬の念の強さも本作で初めて知った。
ギーガーとは「黒い星」でありつつ、感受性豊かで穏やかな「太陽」だったのかもしれない。


10位 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス

無名のヒーローチームにしろトロマ出身の監督にしろ’60~’70年代選曲なサントラにしろ「まさかコイツが……?」な大活躍を見せてくれた前作。たった1作で映画も音楽ももはや安定の域に達してしまうのだから分からないもんである。
それでも、鮮やかさと毒々しさは紙一重なエゴの惑星や、電流攻撃くらって骨格が透けて見えるなんてベタなマンガ表現を全力でやってしまうところにトロマ魂を感じるよ。
一番ツボだったのは、ソヴリン=自称高貴な人々が、傍から見てどれほど滑稽なもんかという見せ方にモンティ・パイソン魂を感じたこと。

次点(と言いつつ大量):

『ゲット・アウト』(そういう形の「差別」と「侵害」もあるのか……)
『キングコング 髑髏島の巨神』(レジェンダリー怪獣まつり!)
『お嬢さん』(これも変態の皮を被った素晴らしいラブストーリー)
『ネオン・デーモン』(ハリウッド・ナイトメア的『不思議の国のアリス』)
『マイティ・ソー バトルロイヤル』(神話の世界を80年代エレクトロでぶち壊す英断)
『エイリアン コヴェナント』(聖書やシェリーを引用した深遠な世界の表層でドジっ子クルーの血みどろドタバタ劇場! そしてファスベンダー祭り!)
『ディストピア パンドラの少女』(今年最も美しいゾンビ映画)
『怪談新耳袋Gメン 復活編』(ブリーフマンとスーパーXの不在に懸念はあったが、それを覆いつくさんばかりの佐藤周監督の気合&ふんどし修験者と化した西村喜廣の存在感)
『哭声 コクソン』(恐怖の國村準)

あとこちらも。

2017年リバイバル映画ベスト10

1位 イン・ザ・スープ(in 早稲田松竹)
2位 戦争のはらわた(in シネマカリテ)
3位 ロスト・ハイウェイ(in 角川シネマ新宿/デヴィッド・リンチの映画)
4位 サニー 永遠の仲間たち(in キネカ大森/さよならCJEJ)
5位 バウンド(in シネマート新宿)
6位 マルホランド・ドライブ(in 角川シネマ新宿/デヴィッド・リンチの映画)
7位 スモーク(in 恵比寿ガーデンシネマ&早稲田松竹)
8位 乱(in 恵比寿ガーデンシネマ)
9位 マングラー(in キネカ大森/ホラー秘宝まつり)
10位 ベテラン(in キネカ大森/さよならCJEJ)

2017年未公開映画ベスト10

(レンタル・配信期間の都合上昨年の作品が混ざっています)
1位 デスレース2050
2位 ザ・ベビーシッター
3位 ホテル・インフェルノ2 カテドラル・オブ・ペイン
4位 グッド・ネイバー
5位 KIANU キアヌ
6位 ソムニア 悪夢の少年
7位 Let Me Make You A Martyr
8位 テイキング・オブ・デボラ・ローガン
9位 ヘイヴンハースト
10位 デスノート(Netflix版)

昨年の反省を踏まえて今年はもっと未公開作を追うようにしよう(そしてNetflixの月額をムダにしないようにしよう)と努力……してはみたものの、振り返ればアレやコレの取りこぼしが多々あり。追いつけないよNetflixさん。ましてやドラマはもう追尾不能だよ! 唯一追えてるの『ゴッサム』だけだよ!

2017年10月24日火曜日

ラウドパーク2017(10月14日編)

帝王と皇帝と魔王と。

LOUD PARK '17
2017.10.14. さいたまスーパーアリーナ



7年ぶりである。
当日会場で過去ポスターを目にしてやっと思い出したが、最後に来た2010年のラウドパークも、2日間参戦だったのだ。あのときは1日目ストーン・サワー ⇒ ハルフォード ⇒ KORN、2日目モーターヘッド ⇒ アヴェンジド・セブンフォールド ⇒ オジーとラストの3ステージを生き延びるの大変だったなぁ……。

と懐かしい気分になりつつ、そういえばさいたまスーパーアリーナという会場は、幕張メッセのオズフェストジャパンやノットフェストより過ごしやすいことにも気づいた。
アリーナの涼しさと上のフードエリアの暖かさのバランスがいいし、必要とあらばホットドリンク(コーヒーのみだが)が買える売店もある。トイレも清潔だし、数が多いからあまり並ばずに済む(もちろんこれはオズフェストやノットフェス自体ではなく、会場たる幕張メッセにお願いしたい課題だ)。

そして何より、アリーナの後方にオフィシャルバーがあり、バッグに入れてさえいればライブエリアに水のボトルは持ち込めるという環境でありながら、床にプラカップやボトルがほとんど散乱していないこと。昔のラウドパークと比べてもかなり床がきれいだ。
エリア出入り口警備はやりながら水規制はしなかったことが良かったのか、それとも開催歴史の差なのか……この辺は他のフェスと比較検討できればなぁ。

あと10年前の07年も1日だけ行きました。
目当てはもちろんマリリン・マンソンで。
  


10年前に観たとき以上にパワフルになっているように思えたANTHEMの途中からライブエリアに入り、ブルヘリアから参戦スタート。
メキシコ産、メンバーは覆面着用で素性がよく分からず(有名メタルバンドのメンバーも所属していたりする)、インディペンデント時代には死体の写真をアルバムジャケットにしていたことがある。治安の悪さと良い感じの胡散臭さがプンプン漂うグラインドコアだ。

「Brujeria! Brujeria!」「Viva Mexico!!」と開演前からコールに包まれてスタート(少し予定時間フライング気味に出てきたように思えたのだが、気のせいだろうか?)。前方エリアとはいえかなり後ろのほうに立っていたのに、あまりの音圧に死ぬ心地。10年前のラウドパークで買った耳栓を持ってこなかったことを早くも後悔した。
歌詞と大半のMCはスペイン語であったため、果たして今言ったことに「イェーーー!!」と叫び返していいものかと逡巡したのか「お、おぉー……!?」とレスポンスが微妙になってしまう瞬間も。数少ない英語MCで聞き取れたのが「世界には災害が溢れているが、最大の災害はアメリカ、ホワイトハウスにいる! ファック、ドナルド・トランプ!!」で、これには割と喝采上がってしまったよ。
もっとも、日本人オーディエンスのスペイン語理解力を考慮してか、コール&レスポンス用に「SI」&「ハイ」、「NO」&「イイエ」というカンペを用意してくれる一幕も。

死体と麻薬と政治ステイトメントが満ち満ちているステージだが、時折ふとアタマの悪さ(褒めてます)を覗かせるのがマリファナ肯定系ソング。上記の「ハイ」「イイエ」のレスポンス用カンペも、マリファナに対してイエスというためである。
中にはマッシュルームソングもあったが、「半分人間、半分マッシュルームのモンスターの曲だ!!」と英語MCで言っていたし、プレイ中しばしば謎のポーズ(ちょっと可愛い)を取っていたっけ。

そのマリファナバカ一代の最たるものが、最後の最後にカラオケで流れた、タイトルそのまま "Marijuana" 。しかもコレ「マカレナ」の替え歌なので、それまでブルータルに疾走する音楽だったのが突然能天気なチャカポコ調で、観客も交えて「エーーーーマリワナ!!」と合唱する。この少しの愛嬌で、結構彼らを好きになってしまったよ。

全体的にぽっちゃり系なところもちょっと愛嬌。

昼飯休憩を挟んでオーペス。メキシコのブルータルから一転スウェーデンのプログレへ。
もちろんブルータルなパートはあるが、哀愁と美しさに満ちた静のパートも交えて巧みに世界を構築していく。初っ端から昨年の新譜より "Sorceress" でオーディエンスは妖しい渦に巻き込まれ、"Ghost Of Perdition" の荒々しい導入で熱狂していく。派手にモッシュやジャンプが起きるわけではないものの、みんな心地よさそうにグラグラと揺れていた。

フェスにおけるプログレ系の難点は、曲の長さゆえに数が少なくステージの体感時間が短いこと。ミカエル・オーカーフェルド(Vo)は「時間が少ないからお喋りは控えめにするよ」と言っていたが、ゆったりと話し観客の歓声もまめに拾ってくれるミカエルのMCももう少し聞きたいものだ。やはりフルスケールの単独ライブが一番なのかな。
それでも、静のアルバム『Damnation』(雨の日に聴くと最強だ)から "In My Time Of Need"、それと対を成す動のアルバム『Deliverance』から "Deliverance" という黄金の流れを聴けたことには大感激である。

昔イギリスでメタルTを買ったとき、
オーペスのロゴTを買わなかったことを今頃後悔した。

ちなみに、アリス・クーパーまでの間にちゃちゃっとキューバンステーキサンドで夕飯を済ませている間に、フードエリアをスコットランド民族衣装のバグパイプ奏者おじさんが闊歩していった。ありゃ何者なんだろうとツイートしていたら、後にそのつぶやきをリツイートしていた加藤健二郎さんという方で、しかももはやラウドパーク名物というぐらい何年も演奏している方だそうな。
こりゃそのうちKORNのステージでジョナサンと一緒にバグパイプやるっきゃないっすよ。

「一生のうち1度はステージを見てみたい……でもあまり来日しないみたいだし、そろそろ70だし……」と思っていた魔王が、とうとう君臨する。
前方ブロックにぎゅうぎゅうになったオーディエンスが思いのほか若いのは、そういうショック・ロック界のレジェンドを生で目にしてみたいという後続のファンを多く集めたからなのかもしれない。

そんな我々に、アリスは開演前から睨みを効かせていた……

「引き返そうと思ってももう遅い……奴が来る……!!」
仰々しい口上を経ていよいよこの幕が落ちた瞬間、ただでさえアリス・クーパーのステージが始まるという高揚感が頂点に達しているというのに、私にとってはさらに高揚感が頂点をぶっちぎる瞬間が待っていた。幕開けの曲が "Brutal Planet" だったのだ!!

マリリン・マンソンを軸にロックの系譜を紐解き始めた25年前、一番最初に聴いたアリスのアルバムが『Brutal Planet』であり、冒頭のこのタイトル曲だった。
聴いた途端「コレは本当にヤバいやつだ! この人本当にぶっ飛んでるとしか考えられない!」とさえ思っていた。しかし後になって、当時頻繁に出入りしていたメタルコミュニティで、このアルバムは「モダン・ヘヴィネスに寄ったものの相性は良くない」(もともとアリスの曲は凶悪な演出とミスマッチなほどポップでキャッチーなのだ)とオールドスクールのハードロックファンからの評価が芳しくないことを知り、ちとヘコんだのだった。ということは、今ライブで聴ける可能性はまず無いのかもな……とさえ考えていた。

その矢先にこの幕開けである!! ……まぁ、確かにちょっと最近のセットリストでも調べればすぐ分かることだったが、『Blutal Planet』収録曲に期待を持たせすぎたくないからと調べもしなかった自分にとっては、嬉しすぎる大誤算だったことは分かっていただきたい。
音楽と、ステージ上でステッキを振るうアリスの姿に感激し通しの一時から、続けざまに "No More Mr. Nice Guy" を打ち込まれたときには、ブルヘリアの音圧とはまた違った意味で死にそうになった。
逆にこの曲からの "Under My Wheels" ~ "Poison" とフロアからの大合唱は生きるエネルギーになった。

何が "No More Mr. Nice Guy" だよ!
私みたいなファンにとっちゃ、この流れを作ってくれた時点でナイスガイだよ!


このクラスのベテランアーティスト勢が衰え知らずである理由の1つには、バンドメンバーをちょくちょく若返らせていることがある。アリスのメンバーも私が所有するライブDVDとはだいぶ替わっていて、中でも一番目を引いたのがニタ・ストラウス(g)。
ギタープレイもさることながら、佇まいだけで彼女はカッコいい。たまにアリスが背後から髪の毛を持ち上げてイタズラしに来るが、ニタのソロになると彼女を前にぐいぐい押し出したりもする。アリスとしても推したいミュージシャンなのかも。

もう1つ最高に嬉しかったことに、アリスのライブ定番のシアトリカルな演出が思いのほかたくさん観られた。
短いステージだしそんなにギミックはないかもとハードル低めに考えていたが、中盤 "Feed My Frankenstein" で一変。アリスが血のついた白衣姿でB級SFチックなポッドを引きつれてきて、やがてそこから電気と煙とともに大きなフランケンシュタインの怪物(操り人形)が生まれる。
"Cold Ethyl" になると本当に「冷たいエセル人形」が出てきて、アリスがそれを引きずったり引っ叩いたり。
"Only Women Bleed" ではとうとう生きたダンサー人形(本物の女優さん演)が周囲を踊って回るが、アリスは彼女をも絞め殺し、謎のガスマスクコンビに連行される。そして用意されたのが……アリスのショーの定番にして一部では悪名高いギロチンである‼︎ 
ドラムロールに合わせて勿体つけながら、遂にガシャンと落ちる刃!
掲げられるアリスの生首(ハリボテ)!
ライアン・ロキシー(g)&トミー・ヘンリクセン(g)リードのもと観客が歌う "I Love The Dead" !
そして間もなく "I'm Eighteen" でアリス復活! 首を落とされたのに松葉杖で現れるのはご愛敬! ……いや、DVDでしかお目にかかれなかった演出の数々を生でこの目で拝めるなんて、一体この日だけで何回「死にそう」と思っているんだろう。

最後の "School's Out" では巨大バルーンが頭上に投げ込まれ、お約束のトス合戦が始まる。アリスがステッキで刺すと、割れたバルーンからは紙吹雪が舞い散る。ピンク・フロイド "Another Brick In The Wall" のコーラスも交え、見事オーディエンスを悪ガキに退化させたアリス、最後は紙テープ砲でショーを締めくくったのだった。
確かにアリスもそろそろ70ではあるが、ひょっとするとまた会えるんじゃないかと思うよ。というかまた会いたい!!

さて、魔王は去っていったが、気を抜くのはまだ早い。次にステージに君臨するは、ノルウェーより来たりしブラックメタルの闇の皇帝、エンペラーである。
現在のライブは彼らの名盤『Anthems To The Welkin At Dusk』20周年のためらしい。というわけで、アルバムの冒頭を飾る "Alsvartr (The Oath)" ~ "Ye Entrancemperium" という鬼のような轟音疾走ナンバーで暗黒の宴は始まった。
暗黒と言っても、もはやブラックメタル隆盛期当時のコープスペイントを施しているメンバーはいないし、長髪で黒ずくめではあっても比較的主張の少ない外見。イーサーン(Vo/g)に至ってはバンド活動と並行して音楽の先生(授業受けたいです)もやっているので、一見ただの眼鏡をかけた物腰穏やかな紳士である。

しかしこのステージからだだ漏れる「魔」は何だ。
イーサーンとサモス(g/殺人罪や暴行罪で服役・逮捕歴あったり、それがもとでライブ入国ができなかったり……よくぞここまで復活した)のトレモロは時に暴力的になったり時に冷ややかになったり、常に空気を黒く塗りつぶし続ける。
タリム(Ds)のブラストビートは、今立っているまさに足元からビキビキと地割れが起きんばかりの威力。
そして、相変わらず禍々しいデスボイスとテノールが響く荘厳なクリーンボイスとで魅了してくるイーサーンのボーカル。
これが皇帝の威厳か……!! と、平伏す代わりにメロイックサインで敬意を表する。

"Thus Spake The Nightspirit" "With Strength I Burn" など『Anthems』収録曲はすべて披露してくれたが、アルバム収録ではないがエンペラー代表曲といえる "Curse You All Men!" と "Inno A Satana" も燃えに燃えた。"Inno A Satana" に至ってはまさに悪魔崇拝の賛美歌である。ライブが終わった……というより、黒ミサが終わった気分だった。
分かりやすいバフォメットみたいな悪魔は降臨しなくとも、皇帝の編み出す「魔」はアリーナのあちこちに降りていたさ。

オール・ヘイル・エンペラー。

魔王が来た……皇帝が来た……それでもまだまだ気は抜けない!! 
何故なら最後には帝王がやって来るからだ!! 
そう、スラッシュ四天王の一翼を担う帝王、スレイヤーが!! 
まったく今年は何回ステージに(気持ちだけ)平伏せばいいんだ!!

アリス・クーパーと同様開演直前までステージは幕で隠されていた。その表面に赤い十字架が4つ浮かび上がり、ゆっくりと回転して逆十字になっていく。
さらに逆十字は逆ペンタグラムに変化し、幕の上を漂う。
そしてバーーーンと浮かぶSLAYERのロゴ……からの幕が落ちて "Repentless" で始まる疾走! 完璧なオープニングである。
続けて "The Antichrist" からの "Disciple" でオーディエンスの「God Hates Us All!!!」絶叫も、完璧な流れだった。

年々トム・アラヤ(Vo/b)とケリー・キング(g)の体躯が重量を増していることに少し心配にもなるが(余計なお世話か)、それより何よりそもそも音が重量級。ブルヘリアの音圧に押されるのとはまた異なり、反対側のステージエリアの端からという離れた位置にいても、ドラム/ベース/ギターそれぞれの音が全身ボコボコにぶん殴りにきているようだ。もはや、このライブ自体が巨大な暴力装置なのだ。
……と、物騒なことを言いつつ、トムが話し出すと一気に空気が穏やかになり、オーディエンスに真摯に感謝を示すときにはむしろ仏の顔だったことは明記しておきたい。

前方ブロックに巨大サークルピットができる一方、離れた位置ではデイヴ・ロンバルド(Ds)のブラストビートに合わせるように小刻みにヘッドバンギングしている人を多く見受けられる。確か自分もやっていた気がする。
その様相はヘドバンというよりもはや痙攣に近い。これに似たものをどこかで観たことがあるような気がしたら、『俺たちに明日はない』のマシンガンで撃たれていくときの「死の舞踊」だ。それも、ステージが終わるまでひたすら音の砲弾を浴び続けなければならない。つまり、メタルヘッズには幸せなことこの上ない死に様だ。生きてるけど。
ちなみに私、"Raining Blood" の最中、疲れが溜まったせいか小刻みヘドバンしながら数秒間意識がブラックアウトしておりました。これはスレイヤーにより「数秒だけ死んだ」ということにしといてもよろしいでしょうか……? ラストの "Angel Of Death" で強制的に復活したけどね。

「今年は何回ステージに(気持ちだけ)平伏せばいいんだ!!」と先述したが、それ以上に「今年は何回死にそうになればいいんだ!!」なラウドパーク初日だった。


帝王が帝王すぎてエライことになった。

2017年2月20日月曜日

The Haunted World Of El Superbeasto

ゾンビ店長特製全部乗せ闇鍋。

The Haunted World Of El Superbeasto ('09)
監督:ロブ・ゾンビ
出演(声):トム・パパ、シェリ・ムーン・ゾンビ




自分には一からキャラクターや世界観を作りこみストーリーを作る能力が乏しいのだと気付いたとき、「どうせオフィシャルに出すもんじゃないんだから著作権とか歴史とか現実にはどうとか知るか!」と、とにかく合理性ガン無視で、好きなジャンルネタばかり詰めた話を書いたことがある。

とっくに死んでるロックスターもホラー映画のキャラクターも混在する世界で、ロック好きの小学生4人組(好きなジャンルはメタルやグランジなどバラつきがあるが、なぜかみんなブラック・サバスを尊敬している)が、サバス主催のロックフェスに行くため車を飛ばす。
途中フェスのオープニングアクトを務めるバンドのゴッドヘッドと道中を共にしたり、ホラーのクリーチャーや悪魔のシスターらに妨害されたり、ピンチになるとなぜかリッチー・エドワーズ(失踪してしまったマニック・ストリート・プリーチャーズのギタリスト)が現れて助けてくれたり、壊し屋キース・ムーンの生霊に取り憑かれているゴスの小学生がチェーンソー抱えて殺人鬼もドン引きの暴走を始めたりしながら会場に着く……というようなものだった。
結果、言うまでもなく、ただの味のない闇鍋と化したこの話は永久に封じられたのだった。

エル・スーパービーストは覆面レスラーであり、映画監督であり、(ポルノ)俳優でもあり、そして実生活でもヒーロー。世界の誰からも好かれ、同じくらい嫌われてもいる。撮影を終え、いつものようにバーに繰り出したビーストは、No.1ストリッパーのベルベット・フォン・ブラックにベタ惚れするが、その直後彼女は頭にネジの生えた改造ゴリラに誘拐されてしまう。
下心満載のビーストは、ヒトラーの首をめぐってナチスゾンビと追っかけっこを繰り広げていた、腹違いの妹にしてスーパースパイのスージーXと共に事件を捜査する。するとその背後には、運命の花嫁を娶ることで世界征服に乗り出さんとするドクター・サタン(本名スティーヴ・ワショウスキー)の影が……。

ホラー映画、おっぱい、セックス、モンスター、尻、ロボット、おっぱい、サント映画、尻、ナチスプロイテーション、おっぱい、オレの嫁(の尻)、キャットファイト、おっぱい……と、すべてがロブ・ゾンビの好きなものだけでできている世界。おおむね同じものが好きなゾンビ監督のファンにもたまらない世界となっている……それだけに日本のゾンビファンのために国内盤が出ていないことが無念。

車を飛ばしついでにマイケル・マイヤーズ(たぶんロブ・ゾンビリメイク版『ハロウィン』)を轢き逃げしたり、ナチスの古城にゾンビと狼男とセクシー女将校がいたり。
バーに行けばフランケンシュタインの花嫁やら大アマゾンの半魚人やらエイリアンやら『シャイニング』のジャック・ニコルソンやら、果ては『デビルズ・リジェクツ』のファイアフライ一家や『ファスター・プッシーキャット キル! キル!』のヴァーラまでいるなんて、どんな理想郷だよ!!!
しかも何がスゴいかって、そんなカメオ出演的キャラクターのために、ビル・モーズリィ、シド・ヘイグ、ケン・フォリー、ダニー・トレホ、ディー・ウォーレス、そしてトゥラ・サターナらが直々に声を当ててくれているのだ!
 
そしてそして音楽はゾンビ映画の常連にして『ザ・ペイル・エンペラー』ではマンソンと共同作業もしていたタイラー・ベイツ! 
さらにHard'n Phirmなるユニットが素晴らしくバカな曲をサントラに提供!
(オススメは、ただただ画面上で起きていることをそのまま歌うだけの『Zombie Nazis』、あるホラー映画の有名シーンを丸パクリしたくだりの『The Old Bloodbath Routine』、日本人が毎日アダルトアニメでヌいてますとバラされる『Catfight!』です)好きなものを寄せ集めるなら徹底しないと、美味い闇鍋はできないのである。

あ、もちろん一番セクシーで一番強くて一番頼もしいスージーXの声は、大好きな嫁=シェリ・ムーン・ゾンビ。思えば『マーダー・ライド・ショー』のベイビーでもその傾向は表れていたとはいえ、こんなにもナチュラルボーンアニメ声だったとはな……。

しかし、そんな豪華な声の出演陣でも特筆すべきは、メインとなるキャラクターを担当するロザリオ・ドーソンとポール・ジアマッティであろう。
ロザリオ=ベルベット・フォン・ブラックは、脅威のおっぱいと尻を誇るNo.1ストリッパーではあるが、口汚さと下品さもNo.1。かなりダミ声寄りになりつつ、モンスターもドン引きするほど明け透けな悪口雑言の嵐をまくし立てる。
ここからNetflixの『ディフェンダーズ』シリーズの強くて優しい医師クレアの姿など到底浮かばないし、『シン・シティ』のゲイルにすら気品を感じてくる始末だ。

ドクター・サタンの声を充てるポール・ジアマッティも凄まじい。バカみたいな高笑いや情けない泣き声、勝手にドアを開けられた際の思春期みたいな絶叫、デビー・レイノルズの「タミー」をBGMに○○○○するウホウホハァハァ声まで! 余計なお世話でしかないのに俳優としてのキャリアを心配したくなるほどの暴走っぷりだ。
プロの声優(日本ならではの職業観かもしれないが)ではない芸能人が声の仕事をすることに苦言を呈されることが多々ある国内エンタメ、これぐらいの吹っ切れと技術力が必要とされているんじゃないだろうか。

無理やりな分類だがヒーローものと言えなくもない本作。しかし、実はそのヒーローたるエル・スーパービーストは、よくよく見れば結構ヤな奴だ。
自分がカッコよく見えているかどうかが最大の関心事だし、その次に関心が高いのはおっぱいと尻だし、回想シーンに出てくる高校時代などはいじめっ子ジョックスの典型。普通のホラー映画なら、比較的早いうちに死んでいるはずのキャラクターだ。むしろ、かつてイケてないオタクでいじめられっ子だったドクター・サタンのほうにシンパシーが湧くだろう。

それでもいじめられっ子の逆襲が世界を滅ぼすことを潔しとしなかったのは、はみ出し者魂が創造に向かったゾンビ監督ならではの視点なのか、問答無用のセレブリティでモテモテで物理的に強いヒーローというものに対する憧れなのか。
まぁ、最愛の嫁の化身たるスージーがこんなにも輝ける世界なら、ぶち壊したくはないもんだよ。

2017年1月10日火曜日

2016年映画極私的もろもろベスト

ベストから漏れたなら、こっちで拾っちゃえばいいじゃない。

メインのベスト10作るよりこっちのほうが楽しくなってきたら、ちょっとは危機感持つことを検討してみようかと思いますよ。

参考記事:
2013年極私的映画もろもろベスト
2014年極私的映画もろもろベスト
2015年極私的映画もろもろベスト


2016年映画ベストガール

  1. ハーレイ・クイン(マーゴット・ロビー)(スーサイド・スクワッド)
  2. 鋸村ギーコ(内田理央)(血まみれスケバンチェーンソー)
  3. ワンダーウーマン(ガル・ガドット)(バットマンvsスーパーマン)
  4. 貞子&伽椰子(七海エリー&遠藤留奈)(貞子vs伽椰子)
  5. ヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)(デッドプール)

なぜかまとめてみると、洋画はアメコミ映画、邦画はホラー&スプラッターという結果に。好みの傾向である「強くて毒気のある女性」を突き詰めるとアメコミヒーロー/ヴィランになるのは分かるが、日本だとオバケに行き着くのか……2位のギーコちゃんは違うけど、チェーンソー装備&下駄履き&ふんどし着用で、最大の武器は人望の厚さというハイスペックスケバンなので。ちなみに1位のハーレイちゃん、この路線でいくなら、ジョーカーとはチャッキー&ティファニー(チャイルド・プレイ)のような殺人バカップル街道を歩んでほしいです。



2016年映画ベストガイ

  1. 伝説の戦士(ローレンス・マコアレ)(ザ・ラスト・ウォーリアー)
  2. アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)(ボーダーライン)
  3. ケヴィン・ベーコン(コップ・カー)
  4. マイク・バニング(ジェラルド・バトラー)(エンド・オブ・キングダム)
  5. ビーバップ&ロックステディ(ゲイリー・アンソニー・ウィリアムズ&スティーヴン・ファレリー)(ミュータント・ニンジャ・タートルズ 影)

ベストガイ選出傾向=アクの強さで考えていたら、伝説の戦士ことローレンスさんの顔面力という殿堂入りクラスのビジュアルに出会ってしまった2016年。3位のケヴィン・ベーコンは、もう作品内でのキャラクターがどうこうというより「ベーコン力(りょく)」押しだったので本人名で。あと、アクの強さも突き詰めると、イノシシとサイの改造人間(超ポジティブ)に行き着くのな。

未体験ゾーンのページにも貼りましたが、
ここで改めてローレンスさんの顔面力↓を再確認しましょう。



2016年映画ベストバディ

  1. チアルート&ベイズ(ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー)
  2. ビーバップ&ロックステディ(ミュータント・ニンジャ・タートルズ 影)
  3. マイク・バニング&ベンジャミン・アッシャー(エンド・オブ・キングダム)
こんな相棒同士になれたらいいなぁ……と思っても、1位と3位は両者または一方の殺傷スペックが高すぎるので、偏差値低いモン同士「うぇーーい」ってやってられる2位ならまだ望みが……と思ったけど、アイツらでさえ実は戦車運転できるし、その前に改造人間だし。



2016年映画ベストソング

  1. EVIL IDOL SONG(EVIL IDOL SONG)
  2. 呪いのシャ・ナ・ナ・ナ(貞子vs伽椰子)
  3. I Can't Help Falling In Love With You(死霊館 エンフィールド事件)
  4. デッドプール・ラップ(デッドプール)
  5. SOS(クリント・マンセル編曲版)(ハイ・ライズ)

上位3位をホラーが占めることになったけど、1位&2位は高揚感、3位はしみじみ感の曲。不気味なのはむしろABBAの曲を静かにアレンジした5位。4位はまぁ……「セクシーマザーファッカー♪」なので。



2016年映画ベストサントラ

  1. スーサイド・スクワッド
  2. イット・フォローズ
  3. ヘイトフル・エイト
  4. デッドプール
  5. オデッセイ

正直1位の映画本編での曲の使い方はそんなにベストではないんだけど、なぜか図ったように自分の好きな曲ばかりがぶっこまれているというひいき目で。2
位と3位はオリジナルスコア(3位は一部既成曲)だが、ほぼ既成曲の4位と5位については、そんなに好きな音楽でもないワム! やディスコミュージックが作中で最高の使われ方をしていた点で評価高。ただ、それでも単体でワム! や「ホット・スタッフ」を聴くのはちとキツいのだけど。


2016年ベスト(ワースト)イヤミス映画

  1. 無垢の祈り
  2. グッドナイト・マミー
  3. ザ・ギフト
  4. ヒメアノ~ル
  5. ドント・ブリーズ

メインのベストに入れるのが難しかった『無垢の祈り』、どうにか1位に入れる枠がないものかと考えてみた結果。「イヤミス」といいつつ「これは果たしてミステリなのか」という疑問は残るけど……。



2016年映画ベスト名言

  1. 「人々は私のせいにしたがるが、私はただの目撃者だ。私が見たものには天使も涙する。私を否定してもいいが、君の目に宿る炎は私だ。君にこの地上の腐った、邪悪な魂をすべて与えよう。君は復讐し、私は彼らの魂を燃やす。正直に言えば、君なしでは凍えそうだ」(Let Us Prey)
  2. 「まるで映画だ。オレたちは偶然の主人公。監督はデヴィッド。天国から演出中だ」(バンド・コールド・デス)
  3. 「オレたちは必要ないってさ。あの子は世間をケツの穴まで知ってる。たぶんお前より大人だよ」(無垢の祈り)
  4. 「ママもへやにさよならして」(ルーム)
  5. 「侵略しに行かなくても、落とし物保管所に行けばよかったんだ」(マイケル・ムーアの世界侵略のススメ)

次点は、最後の最後に岡田くんと観客の心をグッサリ刺していく「お母さーーん、麦茶2つ持ってきてーー!」(ヒメアノ~ル)です。



2016年映画ベスト迷言

  1. 「メタルをくらえ‼︎ (ケツにチェーンソーをぶっこみながら)」(デビルズ・メタル)
  2. オザキ8(X-ミッション)
  3. 「俺は超合神だ‼︎」(キング・オブ・エジプト)
  4. 「くそ、あいつは死なないのか⁉︎」(エンド・オブ・キングダム)
  5. 「オレはヤクザだぁぁぁぁ‼︎」(テラフォーマーズ)


3位と4位にランクインしたということで、2016年総合迷言賞はジェラルド・バトラーです。
2位だけはセリフじゃないんだけど、「オザキ8」という造語それ自体のパワーがあったので。



2016年ワースト映画危険めし

  1. ヘドロ的な何か(エヴォリューション)
  2. ボブが淹れたコーヒー(ヘイトフル・エイト)
  3. 男子が作ったカレー(ドロメ)
  4. ヴィジョンが作ったパプリカーシュ(シビル・ウォー キャプテン・アメリカ)
  5. レモンにタバスコ(ダーティー・コップス)

今年は食欲をそそられる飯より、ヤバいだろとしか思えない飯のほうが印象に残った。
1位、あれは本当に人間の食べるモノではない。
2位のコーヒー、どんな淹れ方をすれば靴下でも入れたような味になるのか!? 
3位、どんな作り方をすれば水っぽいおでんのようなカレーができるのか!? 
4位はそもそも人造人間の味覚が謎だから、どの程度ヒドいかも謎だが……。
5位、なぜそれをやろうと思ったんだニコラス・ケイジ!? そしてなぜイライジャ・ウッドに食わせた!? 

ちなみに、ベストめしはミニーが作ったシチューと、同じくミニーの服飾店で売ってたミント(ヘイトフル・エイト)。あと竹内結子が作ってたご飯(クリーピー 偽りの隣人)も全部美味しそう。
ただ、『ハンニバル』シーズン2があったぶん、飯のグレードはドラマのほうが比重高かったかな……もちろん肉の調達元は考えない方向性で。



2016年映画夢のガジェット

  1. 無人在来線爆弾(シン・ゴジラ)
  2. ターンテーブル(ノック・ノック)
  3. コップ・カー(コップ・カー)
  4. 改造チェーンソー(血まみれスケバンチェーンソー)
  5. 対ゴースト兵器の数々(ゴーストバスターズ)

「無人在来線爆弾」って、言葉の響きが既に勝ちだよね! 2位と3位は現実味あるけど、ターンテーブルなんてスペース、予算、使いこなす技術において夢のまた夢。まして警察車両なんぞ、フランスのおまわりさんがタクシー感覚で乗せてくれたとき(実話)以来乗ってないよ。



2016年映画に学ぶ間違った教訓

  1. 必要なくても殺せ(エンド・オブ・キングダム)
  2. バケモンにはバケモンをぶつけんだよ(貞子vs伽椰子)
  3. 太陽は燃えるジェフリー・ラッシュのパワーで地球の上を動いている(キング・オブ・エジプト)
  4. 靴磨き機の使い方(Let Us Prey)
  5. 事故に見せかけて殺せ=事故っぽかったら別に目立っててもOK(メカニック:ワールドミッション)

何というか、だいぶバイオレントなことばかり学んできた年でした。



2016年映画に学ぶ正しい教訓


  1. 悲惨なときこそユーモアの力が問われる(オデッセイ/デッドプール)
  2. まずは君が落ち着け(シン・ゴジラ)
  3. 水没したスマホはお米に入れておくと復活するかもしれない(ノック・ノック)

毎年毎年ヘンな教訓しか学んでないので、たまにはちゃんとした教訓も……と思ったけど、1位以外はそんなにイイ話またはまっとうな情報でもなかったよ。



2016年映画言ってみたいけど一生言えないセリフ

  1. (「幸運を」と言われて)「必要ない。お前がいる」(ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー)
  2. 「数えきれないほど人を殺してきたオレだ。君1人くらい守れる」(メカニック:ワールドミッション)
  3. 「地獄でもポップコーンは大人気だぜ」(31)


その代わりといってはなんですが、今年一番実生活で使ったセリフは「え? 蒲田に?」(シン・ゴジラ)でした。話の文脈上、特に蒲田が関係なくても言ってました。

2017年1月8日日曜日

2016年映画極私的ベスト10

2016年=まだまだこの国はやれる、そう感じるよ。

今年は映画ファンにとって邦画の当たり年だったなぁと思って。ベスト10内にも4作入ったし。
……まぁ、それだけの良作が生まれるために、それなりの事故映画も生まれているんだけどな。何せワーストランキング作ってみたら1位と2位が邦画だったからな……!

参照記事一覧
2012年極私的ベスト
2013年極私的ベスト
2014年極私的ベスト
2015年極私的ベスト

1位 ヘイトフル・エイト

『デス・プルーフ』までの映画オタクと足フェチ期、歴史上で虐げられてきた人々の代理復讐を遂げた『イングロリアス・バスターズ』『ジャンゴ』ときて、「アメリカはこのままでいいのか? 憎しみを乗り越える希望があってもいいんじゃないのか?」と新たな道を示し始めたタラ。50を過ぎてから大人になったものだなぁ。そんな今年に、白人警官による安易な黒人射殺事件およびその報復事件が相次いだことは実に哀しい。この世界のどこかに、「リンカーンの手紙」は存在しないものか。

2位 イット・フォローズ

「それ」はどこまでもついてくる……けど、与えられるのは死の恐怖だけではない。まさか、ホラー映画におけるセックスと死の因果応報が、青春物語であり、ここまで壮大な人間愛の物語に押し広げられるとはなぁ……。

3位 シン・ゴジラ

正直、去年ギャレス・エドワーズの『GODZILLA』が公開され、「怪獣王ゴジラのプロレス興行」を呼び起こしてくれていた中、そのわずか翌年の日本のゴジラ復活は負ける確率の高い壮大な後出しジャンケンだった。しかしその分、ギャレス版ゴジラでは描ききれていなかった「災害としてのゴジラ」像があり、しかも3.11を想起させる描き方。何より、ギャレス版で強いて言うなら納得がいかなかった「核の扱い」にどう向き合ったのか。バジェットや技術に勝るハリウッドに、拙さがありつつも日本なりの回答を打ち出せたことが一番嬉しい収穫だった。

4位 Let Us Prey(デス・ノート/デッド・ノート)

『DEATH NOTE Light Up The New World』と同じ年に公開されてしまったことは、本当に不運でしかなかった。ときにデスノートのパチモン扱いされ、あまつさえマイナーだからといってC級映画と言われてしまうなど……。この際言うけどな、デスノート本家よりこっちのほうが小粒でもパワフルでゴアゴアでカッコよかったぞ! 死神は出てこなくても、死神よりもクールな「ある男」がいたぞ!

5位 EVIL IDOL SONG

『へんげ』に続き、小粒ながらもクライマックスはカタルシスに満ちている大畑作品。「いっそみんな死ねばいいのに」という万人が思うであろう呪詛と、「どうせ死ぬなら最高の曲を聴きながら死にたい」という音楽好きにとってある種の夢を具現化してくれました。

6位 この世界の片隅に

今であれ戦時中であれ、世界は日々の生活の積み重ねでできている。ご飯の材料が足りなければ今手に入るもので補い、寝てる場合じゃないときにも眠くなり、楽しいことを見つけようと思えば見つけられる。それができる人は、一見フワフワしているように思えて、実はとても芯が通った生き方のできる人だ。だが、そんな人ですら、積み重ねてきた世界が物理的または精神的に崩れていくときにはあまりにも無力である。それでも世界は続くということは、残酷でもあり、希望でもあるのかもしれない。

7位 ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー

ざっくり言ってしまえばスターウォーズサーガは、強いフォースの使い手にして「選ばれし者」たるスカイウォーカー一家を中心としている。そこへいくと、本作で活躍する人々は何の特殊能力も持たず(ドニーさんは存在するだけで強いけど)、中でも中心人物たちは反乱軍側に属しつつその中でも異分子であり、もっとも選ばれない者たちである。そんな人々が希望をつなげるためだけに死力を尽くす姿は、時に英雄譚よりも心動かされるものがある。

8位 ノック・ノック

浮気に関するニュースにコメンテーターがああだこうだ言ってるのを見かけると、「うん、とりあえずみんな『ノック・ノック』観ようか」と言いたくなった。パートナーもいないし浮気とか関係ないし家に人をあげることもないし……と安全圏にいるつもりの人も、「人生はいとも簡単にぶっ壊れる。しかもぶっ壊すのは他人とは限らないかもしれない」という危機感ぐらいは持ってみてほしい。そして最後の小さじ1杯ほどの悪意に笑おう。

9位 セトウツミ

「ほとんど2人が喋ってるだけの映画をスクリーンで観る意味はあるのか」と基本劇場主義の映画ファンですら思うようだが、個人的にはスクリーンで観る価値大いにありの作品である。理由その1は、同じ日に観たあるワースト入り映画が、演者の笑いセンスに頼ったTVバラエティの域を出なかったのを見ていたこと。理由その2は、いわゆる劇的かつ爽やかさと甘酸っぱさに満ちた青春像とは無縁だった多くの人間から見た、「高校時代にドラマなどない」「短くてくだらない、良いひとときの積み重ねでできていた」という普遍性がスクリーンから広がっていったことだ。それに、菅田将暉と池松壮亮の頭脳戦だったら、デスノートよりこっちのほうがアタマいいぞ。

10位 デビルズ・メタル

そりゃね、音楽と青春の映画として優れているのは『シング・ストリート』ですよ。ジョン・カーニーがとてもピュアに音楽の力を信じていることも伝わってきましたよ。でもね、鬱屈を創造性に結びつけるの下手クソで、自分で撒いちゃった種を自分で回収するのにいっぱいいっぱいで、それがまぁとにかく見苦しくてみっともない(しかも血みどろ)という本作のほうが、私にとっての音楽と青春のリアリティなのですよ。


次点としては、『帰ってきたヒトラー』『貞子vs伽椰子』『クリーピー 偽りの隣人』『ヒメアノ~ル』『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』『ドント・ブリーズ』『手紙は覚えている』『残穢 -住んではいけない部屋-』『ズートピア』『死霊館 エンフィールド事件』等々。あと、ランク付けするのは難しいけど今年の忘れられない映画として、特別枠に『無垢の祈り』も挙げておきたい。

そしてもうひとつのランキングが……

2016年リバイバル映画ベスト10


1位 黒い十人の女(in 角川シネマ新宿/西端100年記念映画祭 市川崑 光と影の仕草)
2位 七人の侍(in 楽天地シネマ錦糸町/午前十時の映画祭)
3位 不思議惑星キン・ザ・ザ(in キネカ大森)
4位 丑三つの村(in シネマヴェーラ渋谷/映画作家・田中登)
5位 犬神家の一族(in 角川シネマ新宿/西端100年記念映画祭 市川崑 光と影の仕草)
6位 2000人の狂人(in キネカ大森/ホラー秘宝まつり)
7位 カリガリ博士(in シネマート新宿/活弁シネマート)
8位 獄門島(in 神保町シアター/本格推理作家の世界)
9位 哀しき獣(in シネマート新宿)
10位 ヘル・レイザー(in キネカ大森/ホラー秘宝まつり)


今年の反省としては、未公開作品に触れる機会がガン下がりしていて、去年のようなランキングが作れなかったことか。それだけレンタル店に行く頻度が減ってしまったということかな、配信に頼ってるということかな……とも思ったのだが、Netflixですらそこまで観てなかったという事実が。劇場中心生活は当面続きそうではあるけど、せっかく毎月1000円近く払ってるんだから、もっと活用せねばなぁ。

2016年10月11日火曜日

デビルズ・メタル

鋼鉄の絆! 鋼鉄の音楽! 鋼鉄のバカ!!

デビルズ・メタル('15)
監督:ジェイソン・リー・ホーデン
出演:ミロ・コーソーン、ジェームズ・ブレイク



「メタル好きだから」「ホラー好きだから」と直接の偏見をくらったことはない。……が、意を決してマリリン・マンソンTを高校(制服はあるけど着用義務はないので自分は私服でした)に着ていったものの、特に誰にも何も指摘されなかったのもそれはそれで寂しいもんだよ。めんどくさい悩みだけど。

母親が逮捕されたので親類の家に引き取られたメタル好きの高校生ブロディ。叔父夫婦はクリスチャン、同じ学校に通うイトコのデヴィッドはジョックスでいじめっ子、数少ない友人はロールプレイングゲーム好きのオタクたちと、家でも学校でもカースト最下位の生活だった。そんな彼の救いは、メタルを聴くこと、メタル仲間の不良ザックと友人になって結成したバンド「デスガズム」、デヴィッドの彼女ではあるが自分に好意的な学校いちの美女メディナ。
ある日、ブロディとザックは、数年前行方をくらませたギタリストの隠れ家で古びた謎の楽譜を手に入れる。これをデスガズムの曲として発表しちゃおうぜ! といつものようにガレージで演奏を始めるが、実はそれは悪魔を召還し世界に破滅をもたらす「黒い賛美歌」だった……。

『ホビット』シリーズや『アベンジャーズ』のヴィジュアルエフェクト担当が監督……という背景からは到底結びつかないような、黒い血ドボドボゲロゲロスプラッター。
何せ「黒い賛美歌」により悪魔に取り憑かれた人々(ほぼゾンビ?)が、身体のあらゆる穴から血を流したり豪快な血ゲロを噴出したりしている。
それに対して銃なんてスマートな武器は流通していないので、スライサーやら斧やらチェーンソーやらえげつなさ全開の凶器でメッタ斬り殺す。絵面はおおむねキタナい(注:褒めてます)が、ゴアゴア祭りの豪快さは気合十分だ。

良識から見ればケシカランもの同士ヘヴィメタルとスプラッターの相性は抜群だが、そこに謎の爽快感すら生み出してしまったもう1つの要素が、鋼鉄級のバカスピリット。
森の中でデスガズムのミュージックビデオを撮影し(そして途中でやってられなくなる)、コープスペイントのまま意中の彼女と出くわしてしまう日常はもとより、悪魔憑依で街中が血みどろになってからも(メタル)バカはバカ。
即席の武器としてギターネックに有刺鉄線や丸ノコを装備し、チェーンソーでケツをぶった切りながら「メタルをくらえ!!」の雄叫びを上げる。この時点で「ヤベェなんか楽しそう」と思えてきたアナタはもう(気持ちだけは)デスガズムのメンバーです。

なお、街には「黒い賛美歌」の楽譜を狙う悪魔崇拝者たちもやってくるのだが、彼らもうっかり高級カーペットの上で首チョンパしてしまう程度にはおバカさんなので、案外メタルバカといい勝負である。

しかしまぁ、いくら銃の代わりにえげつない武器を持たねばならないとはいえ……まさかラバー製デカ○○○とか、×××ビーズとか、バイブレータ(もちろんそっちの意味でだ!)でゾンビもどきをシバけるとは。アダルトグッズも結構有効な凶器なんですね。

ところで、本作の監督および脚本のジェイソン・リー・ホーデン、割と本気のメタル系ボンクラだったんじゃないか。エンペラーやイーサーンやAxCx(これはジャケットのみの登場だけど)といった音楽のチョイス、カンニバル・コープスのボーカルに関するちょっとした考察といったバンド話はもとより、ブロディ君の置かれた状況や心境からの推定である。

実はメタルヘッズにザックのようなガタイのいい不良はそう多くはなく、大半はブロディ君のように大人しめ。
たとえ現状にムカついていてもめったに口には出せず、やられてもやり返せる度胸と腕力に欠けている。ドン底を見たあまりに、いっそ自分を取り囲むすべての崩壊を願ってしまうことだってある。
もっとも、それが実現してしまったら自分だけの力ではどうにも収拾つけられないボンクラなので、願い事には気をつけなくちゃならない。世界滅亡級というスケールには及ばなくとも、いちいち深い共感とあまりつつかれたくないイタさを呼び起こす描写に、監督がこちら側の人間に思えて仕方なくなる。

そこまではリアルだが、気になっていた女の子が自分に好意を持ってくれて、しかもメタルのCDを貸したら案外ハマってくれたくだりはさすがに願望の領域といえる。
CD貸した相手がそのアーティストにハマるなんてことも少なくとも私の場合なかなか無かったのに、メタルを聴いた瞬間の自己妄想(我、従僕を侍らせ世界の頂点に君臨す!!)までほぼ一致するなんて……やっぱりズルいんじゃないかブロディ君よ!!

ちなみに、本作はエンドクレジットの途中で席を立ったり停止ボタンを押してはいけない類。映画観てると常々思うんだけどさ、地獄って実は楽しいとこなんじゃないの!?

2016年8月12日金曜日

パシフィック・リム&マッドマックス怒りのデスロード絶叫上映@新文芸坐

バケモン(KAIJU&ロボ)にはバケモン(MAD)をぶつけんだよ。

パシフィック・リム&マッドマックス怒りのデス・ロード絶叫上映
2016.7.31. 池袋新文芸坐 ヴァルハラ坐

「殺す気か――――っ!!!!????」
……と、その発表があったとき、全絶叫上映ファンが歓喜の悲鳴を上げたとか上げなかったとか(少なくとも内心では上げたのではないかと思うが)。


ジプシー・デンジャー、文芸坐前ドックから出撃準備。

2013年、いい齢こいた大人たちを超合金ロボとソフビ怪獣で遊ぶ5歳児に急速後退させた『パシフィック・リム』。
2015年、車に詳しい人にもそうでない人にもV8エンジンを崇めさせた『マッドマックス 怒りのデス・ロード』。

近年きってのカルト作であり、訓練された絶叫上映参加者を数多く輩出した映画の二本立て。しかも、小道具・鳴り物・仮装OK。隅田川花火大会も霞む(*主観です)、この夏最大級の祭り襲来である。財布事情や終演後のテンションを予想するに、色んな意味で死を覚悟した。
こんなイベントを企画した新文芸坐の担当さんは、KAIJUブルーの浴びすぎでMADに染まったんじゃないかと思った(?)

ただ、我がTwitterタイムラインではチケット販売直前までパシリムにもマッドにも絶叫にもほとんど言及されなかったので、もう熱が冷めてしまったのだろうか……
と思っていたが、新文芸座の並び待ち購入は最後尾にたどり着く前に売り切れの可能性もあるくらいだったし、チケットぴあ発売解禁後も次々と「買えた!」報告が入っていた。さすが訓練されたクルー&ウォーボーイズ/ガールズ……。

当日、文芸坐には両作品のさまざまなファンアートが展示された。
いつもながら、この界隈の方々は想像力も創造力もレベルが高いなぁ。










もちろんコスプレの方々も気合十分&ハイクオリティ。
まずはパシフィック・リム編。

パシリムオシャレ番長勢といえば。

そしてイェーガーズ。
キュートなチェルノとガチすぎるクリムゾン&ストライカー。

今回の極私的ベストパシリムT賞。

一方こちらはMADな方々。

リクターーース!!(キネカにもいらっしゃったかな?)

絶叫上映に初めて出現されたミス・ギディ。

ジョー様キネカから引き続きキュートです!

ちなみに私、ジョー様Tシャツの上からシャツ&タイつけていつもの簡易ニュートをやろうかと思っていたら、持ってきたYシャツがサイズ小さめで着られなかったという大失態でした。

このように、ファンの気合が尋常じゃないイベントだが、主催者の気合も尋常じゃない。一部コスプレイヤーさんとともに前説登壇するらしいとは、タイムラインで何となくしっていたのだが、まさかマックスの口枷をつけたまま『萌&健太』の看板を持ってくるとは……いわく彼は「元『萌&健太』の店長であり、KAIJUによる都市崩壊後、荒野をさまよっていたところジョー様に捕らえられた」そうです。また同じ場所にあった「竹ノ塚ファイナンス」経営者は友人だそうです。

登壇の瞬間動画。

前説は始まって早々から名言の数々でしたとも。
「夏休みも真っ盛りですが、海にも山にも『シン・ゴジラ』にも行かず、(←すみません前々日の公開初日に行きました)
(東京都知事選の)投票にも行かず……(←さすがに行きました)
行きましたか? 『イモータン・ジョー』とか書きませんでしたか?
都知事イモータン・ジョーになっちゃいますけど」(←正直いっそジョー様と書いてしまいたいと思った瞬間もあったけど水源を押さえられたら困る)
「お客様同士仲良くドリフトして楽しみましょう!」
「ゴミやKAIJUの死骸などはお持ち帰りいただくか一箇所に集めてください」
……絶叫上映においては、主催者さんも訓練されすぎているのです。


上記挨拶以降の前説の様子動画。ずっと名言の嵐です。
最後ブラックアウトするのは、撮影者がV8のためにiPhoneを膝上放置したからです。



そんな熱狂の中、まず始まった『パシフィック・リム』絶叫上映。
絶叫上映としては先輩格のパシリムだが、実はクラッカー鳴らす上映は今回が初。普通はバトルシーンでイェーガーのパンチやプラズマキャノンやエアミサイルのタイミングで鳴らすのでは……
と思うところだが、訓練されたパシリムファンはそこでイェーガーと同じ動きでKAIJUと戦い出すのが身体に染み付いているため、クラッカー音は少なめなのだ!
その代わり『マッドマックス』で覚えたのか、「今鳴らすんかい(笑)!」という面白タイミングクラッカーが多発。例えば、

  • ニュート「ロックスターになれるかも」 KAIJUの脳(コン)←ココ!
  • ローリーとテンドー再会のハグ
  • 食堂でのカイダノフスキー夫妻の仲睦まじさ

などなど。クラッカーでなくとも、息子を叱るべきタイミングが分からないハークにローリーが「今叱るべきです」と言うとき、クイズの正解ボタンが「ピンポンピンポーン♪」と鳴っていたよ。
もちろん絶叫のほうは慣れたもので、今日もまた、

  • 「佐藤何か言え!!」
  • 「ニュートと呼んでくれ」→「ニュートーー!!」
  • 「チェルノォォォォォォ!!!」(相変わらずの人気)
  • 「芦田先生!!」
  • 「萌&健太!!」(あと今回初めて「竹ノ塚ファイナンス!」の声が)
  • 「大事なことなので二度言いました!」
  • 「あと1回! あと1回!」
  • 「後ろ! 後ろぉぉぉぉ!!」
  • (エンドクレジット半ば)「お帰りーーー!!!」

と、定番の一言が。でも、絶叫上映は立川の第1回を除いてずっと吹替版だったせいか、「ロケットパーーーンチ!!」の代わりに「エルボーロケット!! ナウ!!!」は初めてだったなぁ。
それにしても、みんなで地球を救った(=パシリム絶叫上映)のはおおよそ2年ぶりか。それでもこのドリフト具合と楽しみ具合か……まるで5年ぶりに、しかも初ドリフト相手のマコとジプシーに乗りながらレザーバックとオオタチを倒したローリーだな。


ここで休憩が挟まれたのだが、普段男子トイレ前におじさん方が列を作っていることが多い新文芸坐において、女子トイレの前に長蛇の列が出来るという異例の事態が発生。
改めて、両方とも女性ファンにムーブメントを支えられた映画だなと実感していた。


KAIJUから世界を救ったばかりのところではあるが、世界は瞬く間に石油戦争と核戦争で荒廃してしまった。次は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』である。
ここでも再び主催者さんが前説に現れ、イモータン・嬢(女性なので)に命じられて場内を「V8! V8!」コールで盛り上げる。
それにしてもアジテーションの言葉が「トカゲが出ますよ!? きなこもちが出ますよ!? アンゼたかしが出ますよ!?」って。どれも絶叫上映上級者のフレーズじゃないかい。

クラッカー使用については「報知機が鳴るので控えめに」という立場ではあったが、結局最後は舞台上&映写室からクラッカーを客席にバラまいていた文芸坐さんであった。

V8コールの強さは、ジョー様から○サインが出たらOKです。

そんな文芸坐さんを裏切り……いやあるいは期待に応え、ワーナーロゴが出た段階からパンパン鳴り始めるクラッカー。そして予言どおり「ト・カ・ゲ! ト・カ・ゲ!」と、いつの間にやら人気者になった双頭のトカゲに手拍子付コールが。
冒頭の長髪マックスに「また髪伸びたな!」との声もあり、車が走り出せばパフパフが鳴り……こちらも相変わらずの統率力&適度なフリーダムさである。
「V8!! V8!!」「イモータン・ジョーーーー!!!」「Witness Me!!」コールの凄まじさはもはや当然として……

  • 「大隊長!! こっち見て!!」
  • 「フュリオサがオレを見た!」→「ちーがーいーまーすー! 地平線を見たんですーー!!」(小学4年か)
  • (ニュークスとスリットのにらみ合いで)「チューしろー!」
  • 「きなこもち!!」
  • 本日の極私的ヒット絶叫:「Water」とスプレンディドに水を要求するマックスに「ヘレン・ケラーかよ!!」
  • 「一生その顔でいいの?」の直前に「もう一声!!」
  • 武器将軍の舌打ちに鳴るクラッカー。
  • 「ア・ン・ゼ! ア・ン・ゼ!」

終盤のカーチェイス&バトルに突入するころには、今までクラッカーセーブしていたけどこの際使い切ってしまわねば!! と思った人が私以外にも結構いらっしゃったのだろうか。もとより絶えなかった硝煙の匂いがさらに濃くなっていた。ヤケになった武器将軍並みのガンフィーバーであった。

そして不評だった日本オリジナルエンディング「Out Of Control」も、もはやライブ会場のノリと化すのがお約束に。不思議なもので、意にそぐわぬ企画にただクサるのをやめ、ここまで陽性のエンターテインメントに昇華できると、「(何にかは分からないが)勝った!!」という謎の高揚感に包まれるのだった。

あ、ちなみにドゥーフウォリアーが映るたびにぶん回される赤のサイリウムですが、砂嵐の中でニュークスが取り出す発炎筒、武器将軍の目前に掲げる発炎筒、そしてエンドロールの「Out Of Control」で振る用といろいろ活用できるので、100均のでもいいので持って行くことをお勧めします。
パシリム同時上映だったら、冒頭のジプシー誘導やクリムゾンタイフーンと一緒にサンダークラウドフォーメーションででも使えたしね。

熱狂の中いざ客席が明るくなってみると、劇場の上半分が、よく報知機が作動しなかったな……というほど煙で真っ白に。前説いわく、万一報知機が作動した場合は「上映を中断し、コスプレファッションショーをやる」つもりだったとか。……うーん、それはそれで見たかったけど、やっぱり上映中断しないで良かったな! というか、よくそこまでギャンブルなイベントを実施してくれたな新文芸坐さん!

そんな新文芸坐さんや絶叫上映の運営・企画の方々。登壇してくださったコスの皆様。登壇せずとも素敵なコスを披露してくださった皆様。ファンアート提供の皆様。そして、一緒に客席でクラッカー鳴らしたり、人類を滅亡の淵から救うべくKAIJUと戦ったり、世紀末の荒野をヒャッハーしながら駆け抜けてくれた皆様。

こんなラブリーデイにレッツゴーフィッシンできたのは皆々様のおかげです。
ありがとう! ありがとう! ありがとう!
V8!! V8!! V8!!

マックス! フュリオサ! 萌&健太! そして新文芸坐さん!
みんな本当にありがとう!!


【参考資料】パシフィック・リム&マッドマックス絶叫上映激闘の歴史(一部)
2013年10月 パシフィック・リム池袋絶叫ナイト
2013年11月 パシフィック・リム立川爆音上映会
2015年10月 マッドマックス池袋新文芸坐絶叫上映
2015年11月 マッドマックスキネカ大森V8上映

2016年7月24日日曜日

イット・フォローズ

それはいつかやってくる。

イット・フォローズ('15)
監督・デヴィッド・ロバート・ミッチェル
出演:マイカ・モンロー、リリー・セペ



だいたいにおいてオタク性と小市民性がまるっと反映された夢しか見てない自分が昔に見た、数少ない象徴的な夢が、この映画が描いてきたものに対するヒントかもしれない。

夢が進むにつれて私は小学生から高校生までに変わっているのだが、その時々で『ファニーゲーム』に出てくるパウルとペーターに似た白服の2人がついてきているのに気づく。
気づいた時点で逃げればしばらく現れないが、時間が経過するとまた現れる。
やがて、何故か海外の巨大スーパーのような場所にて、自分以外の人々にも自分のとは異なる「白い服の2人組」がついてきていることが分かる。みんなそいつらに立ち向かっていくのだが、倒すことは誰にもできないのであった。

19歳のジェイはボーイフレンドのヒューとデートを楽しんでいた。ある夜、車の中でセックスをしたあと、ヒューはジェイに麻酔薬をかがせて意識を失わせる。気が付くと廃ビルの中で車いすに縛り付けられていたジェイに、ヒューは説明した。
「君にセックスを通じてある呪いをうつした。あるものが君のあとを追ってくる。それはゆっくり歩いてくるが、確実に君のもとにやってくる。それに追いつかれたら死ぬ。君がそれに殺されたら、呪いは俺に返ってくる。だから、誰かと早くセックスして、呪いをうつせ」
その後、車で彼女を自宅の前に放り出すと、ヒューは逃げるように走り去って行方をくらませた。
それからしばらくして、大学の授業中に、ジェイは中庭から病院のガウンを着た老婆がこちらに近づいてくるのを目にする。声をかけてみても反応はなく、ただただこちらへ向かって歩いてくる。しかも、他の人には老婆の姿が見えていない。恐怖にかられたジェイは、妹ケリーや幼なじみのポールに助けを求める。

ゾンビに走ってこられたら逃げ切れる気がしない鈍足型なので、個人的にはできればモンスターには来るなら徒歩で来ていただきたい派。
しかし、本作の「イット=それ」は徒歩とはいえ、ついてこられたらとんでもなく厄介である。

ゾンビなら頭を撃てば倒せる。ジェイソンやマイケル・マイヤーズのような殺人鬼でも物理攻撃は効くし、上手くやれば注意を逸らすこともできる。
しかし、「それ」は頭を撃っても死なないし、除霊ができるわけでもない。何かこの世に未練や怨念を抱いたものでは……といったバックグラウンドも不明。とにかく対処法が分からないのだ。
仮に誰かとセックスすることで呪いをうつしても、その相手ががまた他の誰かとセックスしても、その相手が死んでいけばいずれ自分に呪いが帰ってくる。一時的に回避はできても、完全に消し去ることはできないのである。

さらに、「それ」には明確な形がない。あるときは老婆、あるときは小便を漏らし続ける下着姿の女。
明らかに不審な姿ならともかく、身近なよく知っている人間の姿をしていることさえあると、もはや誰が「それ」なのか分からない。「それ」は喋らないこと、呪いに感染していない人間には見えないことだけが識別手段だ。
ならば、今観ているシーンの奥に映っている、こちらに歩いてくる人影は? あれはただの通行人か、それとも……? ディザスターピースの手掛けるシンセ音楽も相まって、不安の絶えない映画である。


以下、ネタバレに該当する作品解釈の記述あり






セックスしたやつ(あるいはしそうなやつ)から先に殺されるのは、スラッシャー映画のお約束。
そこには「だから安直に快楽を求めるな、セックスには気をつけろ」という教訓的側面と、「どうせオレらには縁のない世界の話だよ! 死ねバーカバーカ!!」という作り手の過去のフラストレーションの反映的側面がある。

本作の「それ」が興味深いのは、そうした従来のホラーの法則に当てはまらないところだ。
「それ」はセックスによって伝染するものだが、セックスによって(しばらくの間は)回避することもできる。セックスは呪いでもあるが、生き延びる手段でもあるのだ。このあたりが、「それ」を単に性病のメタファーであるとは考えにくい所以である。

「それ」はおそらく死そのものである。
そう思われる理由は、友人ヤラが引用するドストエフスキーの『白痴』の1節からも匂わされているが、ジェイが19歳という年齢であり、デートやセックスが大人への道とされていることもある。大人の許可を得られなければ超えることのできない、デトロイトの中心と郊外を分ける「8マイルロード」への言及もそうだ。
大人への道を歩み出すことは、死が近づくことでもある。「それ」に感染することは、死を意識し始めることでもあるのだ。

誰にも死を避けることはできない。だからジェイたちは「それ」を消し去ることができなかった。
ただ、いつかやってくる死の恐怖を、心から信頼できる誰かとそっと分かち合うことはできる。それこそ人間の救いであり、強固な愛情の形ではないだろうか。
そう考えると、あのラストには不吉さと同時に、優しさも感じられると思うのだが。

2016年7月19日火曜日

ノック・ノック

「いいぞもっとやれ」なのか、「もうやめたげて!」なのか。

ノック・ノック('15)
監督:イーライ・ロス
出演:キアヌ・リーブス、ロレンツァ・イッツオ



そうだよな、いくら美女が訪ねてきたっていっても家に上げるのは怖いよな……と、教訓を得た気になってしまったがちょっと待て。
自分をキアヌ・リーブス(イケメン50歳)と同化するんじゃない。だいたい、同じ「大雨に降られて通りすがりの家に駆け込む」というシチュエーションでも、

自分の目には事態がこういう感覚で映っていたとしても……

 駆け込んできた相手の目には、事態はこう映るかもしれないぞ!

上記シチュエーションは『ムカデ人間』を引用しましたが、『ロッキー・ホラー・ショー』でも可です。

建築家のエヴァンはビーチへ休暇に行く家族を見送り、仕事のため一人家に残っていた。その夜、誰かが玄関のドアをノックする。開けてみると、豪雨でずぶ濡れの若い女が2人。道に迷った上、携帯が水没して困っているらしい。
エヴァンはその2人、ジェネシスとベルを家に招き入れ、タクシーを呼んでやることに。彼女らはエヴァンに好意的な素振りを見せ、次第に距離を縮めてくる。家族のことを思い拒否するエヴァンだったが、しまいには誘惑に負けて彼女らと3Pに及んでしまう。それが地獄の始まりだった……。

『ホステル』『グリーン・インフェルノ』といった王道イーライ・ロス作品に比べれば、本作で流れる血の量は申し訳程度。
だが、残酷度はある意味それらをしのぐ域に達している。

旅先で拷問されたり喰われたりといった残酷さには、現実感がないという人もいる。
遠くの地の実情など分からないし、殺人ウィルスや娯楽スナッフや食人族なんか存在しないだろうし、第一よそへ行って怖い目に遭うのが嫌なら、安全圏たる自宅に留まっていればいい。
しかし、その安全圏に実は恐ろしいものを招き入れてしまったら? そいつがあからさまに自分を殺そうとしなくとも、少しずつ確実に自分の築き上げてきた人生を壊し始めたら? 

「そんなの知らない人を家に上げなきゃいいだけのことだし……」と片づけるなかれ。浮気という形で、もうトラブルを招き入れちゃってる人がいないとも限らない。
「いや、浮気とか男女関係とか自分には無縁ですから……」とも片づけるなかれ。安全圏にうっかり招き入れる大ダメージは、人の形をしているとは限らない。例えば、SNSでプライベートな写真や動画をヘタに扱ってしまったとかな。
食人族に喰われることに現実感がないなら、こういうトラブルなら痛いほど現実的じゃないのかな。

イーライの世界には、もはや安全な場所など存在しない(それを言ったら実際、真の安全圏など存在しないけどね)。誰もが全身ただれたり手足を切断されたりするわけじゃない。しかし、肉体的ダメージは大したことなくとも、精神と社会性は生きたまま喰われるぐらいのダメージを喰らうかもしれないから、心当たりのある人は覚悟したほうがいいよ。

それにしても、そんなズタボロになる役をよく引き受けてくれたものだよ、キアヌ・リーブス。昨年の『ジョン・ウィック』で無双ぶりを披露してくれたかと思ったら、今度は美女2人相手にあっけないほどのやられ役ぶり。
元殺し屋でもない限り、「今の生活を壊してはいけない」「自分より(おそらく)弱いであろう相手を殴ってはいけない」という社会の目には弱い。

本作を「浮気心に対する痛すぎるしっぺ返し」とみなした場合、エヴァンの落ち度はギリギリである。バスルームで美女2人全裸待機の段階まで何事もなかったのだから。
とはいえ、そこまで我慢したレベルの浮気心であっても、些細なヒビから陶磁器が割れるようにあっけなく人生はズタボロになるのである。どうしようもない事故なんて言い訳じゃ済まない。

逆に「パーフェクトな人生に対する積もり積もった羨望」とみなすと、エヴァンは冒頭からして有罪である。
高級住宅地の広ーーい家に住み、立派な仕事をしていて、美人で芸術家で優しくてユーモアのある妻がいて、パパが大好きな子どもたちがいて、仕事相手も良き友人で、ターンテーブルとKISSのレコードまで持っていて(個人的にはコレが一番羨ましい!!!)……
と、「不公平だ! せめて早めにハゲろバーカバーカ!!」と地団駄踏みたくなる社会的優位性。経済的にも人間関係的にも負ける気しかない人間にしてみれば、せめてフィクションの中でだけでも形勢逆転してみたいじゃないですか!! というドス黒い発散にもなりうる映画である。
ただ、そこまでして人を転落へと追い込むジェネシスとベルに、いったいどんなモチベーションや人生背景があったのだろうか……と考えるにつけ、自分のざまぁみさらせメンタリティがいかにちっぽけか思い直させられるよ。


以下、ネタバレではないにしろひとまず伏せておいたほうがいいかもしれない記述あり




さらにもう一つ、イーライ自身が示した、この映画に対する興味深い仮説がある。それは、「ジェネシスとベルは実は存在せず、すべてはエヴァンの頭の中で起きたこと」かもしれないという可能性である。(映画秘宝2016年7月号P51参照)
鵜呑みにするにはいろいろと疑問が生じる話ではあるが、この説が正しいとしたら、きっかけは久々にターンテーブルでかけた爆音のレコードか、久々に嗜んでみたパイプか、あるいは家族の目を気にせず一人で過ごす夜そのものか。

いずれにしても、エヴァンは気づいてしまったのかもしれない。
「オレはここで何をしているんだ? DJとしてカッコいい音楽をかけまくって、あちこちを飛び回って、若い女の子にモテまくっているはずじゃなかったのか? 家族を気にして、社会性を気にして、満ち足りてはいるけれどちっぽけな型にハマった人生じゃないか! オレはこんなはずじゃない……!!」等々。

つまり、その後すべてをことごとくぶち壊してしまったのは、エヴァン本人ということになるのだ。
そう思うと、「浮気も家族も自分には関係ない」「安全圏にいれば大丈夫」「トラブルを招き入れないようにすれば大丈夫」なんて、ますます言ってられなくなるよね。

しかし、いずれの観方にしても、揺るぎない事実をジェネシスとベルは語っていた。
「犠牲になるのは家族」
これこそ、最も残酷にして最も現実的な真実ってやつじゃないんですかね?