2013年12月31日火曜日

2013年映画極私的ベスト10

2013年=イイやつには「悪」がつく年。

いかんせん今年は新作だけでも80本近く劇場観賞したので、ベスト10本に絞るのに苦心。それ以上に、絞り込んだあとの順位のつけ方でも苦心。2012年ベストでも、順位のつけ方に困ってましたが。
で、その結果、新作ベストにもリバイバルベストにも、タイトルに「悪」がつく作品がやたらランクインすることに……。ちなみに、ベストには入れられなかったけど、『悪いやつら』も実に素晴らしいほど特濃暴力&ゲスだらけ韓流映画です。


1位 パシフィック・リム

そりゃ劇場に20回観に行っちゃうほど(うち2回は爆音/絶叫上映)ドハマりした映画だけど、これが1位でいいものなのか……と結構迷ってました。
しかし、2012年には「月面ナチスが来たぜうぉぉぉぉぉ!!!」な『アイアン・スカイ』がボンクラパワーで1位になったので、「KAIJUと巨大ロボが戦うぜうぉぉぉぉ!!!」な本作が1位でもいいか、ということで決定。




2位 悪の法則

コーマック・マッカーシーの描く世界はいつでも誰にでも容赦ない。それでも惹きつけられずにはいられない。
彼女とフェラーリとの「婦人科的すぎてセクシーじゃない」セックスシーンにビビりつつ、彼女から離れられないバルデムさんみたいなもんですか?



3位 マニアック

劇場公開時の残酷シーンにボカシ問題という課題はあったものの、思わず泣けてくるほど切ないラストという、この手の映画には意外な展開が大いにプラス。



4位 キャビン

ホラー映画愛してます! ホラー映画のお約束愛してます! だからホラー映画のアレとかコレがアベンジャーズ・アッセンブル! 最凶無敵のその先へ!! ……というラブレター。


5位 アイアン・フィスト

信念を貫くことの大切さを教えてくれる映画。「カンフーが好きだ!! ヒップホップが好きだ!! 『北斗の拳』が好きだ!! だから全部オレの映画デビュー作にぶち込むのが筋ってもんじゃあぁぁぁ!!!!」っていう。



6位 地獄でなぜ悪い

映画撮ったことはないけど、映画大好きな人間としては、映画1本にここまで命をかける意気込みが欲しいなぁって思ってしまいますよ。



7位 凶悪

山田孝之のみならず観客まで魅了するピエール瀧&リリー・フランキーが凶悪。正義を追及しているはずがどんどん業が深くなっていく山田孝之の顔が凶悪。思いがけなく池脇千鶴が凶悪。これを観ているお前は凶悪じゃないといえるのか? と尋ねてくるこの映画が凶悪。



8位 フィルス

『ビトレイヤー』では膝の古傷に溜まった膿を出し続ける日々、『トランス』では実は性癖がアレな男だったジェームズ・マカヴォイの2013年ヨゴレ集大成



9位 イノセント・ガーデン

「足首から先がエロい」というタランティーノ的感性を理解できる作品。
もとい、細やかな音や色彩や仕草から、美しさと危うさとエロティシズムがにじみ出る作品。



10位 飛びだす 悪魔のいけにえ/レザーフェイス一家の逆襲

あの伝説の作品が3Dで甦る! 己のルーツをたどり、失われた家族の絆を取り戻す、2013年一番の感動巨編――!! ……何か間違ってますか?

次点には『ジャンゴ 繋がれざる者』『塀の中のジュリアス・シーザー』『ラストスタンド』『悪いやつら』『コズモポリス』など……と、鑑賞映画が多いと次点もたくさんつけたくなってしまい、もうベスト30ぐらいまでおよんでしまいそうな。
そこは自重しましたが、自重しきれなかったリバイバル映画ベストだけは挙げさせてください。



2013年極私的ベストリバイバル映画


1位 悪魔のいけにえ2(in 吉祥寺バウスシアター/爆音映画祭)
2位 グラインドハウスU.S.A.版(in 新橋文化劇場)
3位 悪魔の毒々モンスター(in 新宿武蔵野館)
4位 ロックンロール・ハイスクール(in オーディトリウム渋谷/コーマン・スクール)
5位 スキャナーズ(in 新宿武蔵野館/デヴィッド・クローネンバーグ/受胎)
6位 カリフォルニア・ドールズ(in オーディトリウム渋谷)
7位 プッシャー トリロジー(in オーディトリウム渋谷)
8位 キャリー(1976年版)(in 新橋文化劇場)
9位 ダークナイト(IMAX版)(in ユナイテッド・シネマとしまえん)
10位 怪物の花嫁(in 新橋文化劇場)

劇場名もプラスしたのは、リバイバル作を観る劇場も大切な場合があるから。例えば、2位の『グランドハウス』や10位『怪物の花嫁』なんか、キレイなシネコンより、高架下の電車ガタゴト音&ワンカップ酒とオニギリの臭い漂う名画坐で観るほうが雰囲気を味わえるってもんです。



2013年は、極私的「いつか本物を近くで見てみたいよ」(ニュート談)が叶った年でもありました。

5月には、ハリウッド・コレクターズ・コンベンションNo.2で、『エルム街の悪夢』のフレディ・クルーガーことロバート・イングランドにご対面。近くで見るどころか、サイン&ツーショット写真獲得。欲をいえば、ハリコンNo.3で処刑人兄弟も近くで見たかったなぁ。

7月には、爆音映画祭の『悪魔のいけにえ2』リバイバルで、『飛びだす 悪魔のいけにえ』PRのためチェーンソーをぶん回しにきたレザーフェイス君に遭遇。こちらも近くで見るのみならず、どさくさに紛れてツーショット写真を撮ってもらうに至った。

そして9月以降はイェーガーとKAIJU!! といっても、DC&ワーナーフェスには行けなかったので、ないふへっど君と記念撮影はしていない。リバイバル上映のたびに前方列で『パシフィック・リム』を観賞し続けたってだけなのだが、一応「本物を近くで見た」体験にカウントしておきたいところ。一度は最前列で観賞したわけだし。
あのときばかりは一部始終を最前列で観たいジグソウ(『ソウ』シリーズ)の気持ちが分かったよ。

2013年映画極私的もろもろベスト

どうでもいいと思うか、ニヤリとするか、それが問題だ。

「映画にまつわる雑惑」ラベルでは、かなり変な視点から映画を楽しんでいたりもすることだし、こんな見方/楽しみ方もありますよという参考までに。参考にならない確率のほうが高そうだが。

2013年ベストオープニング


  1. パシフィック・リム
  2. マニアック
  3. 2GUNS

イェーガーを起動しKAIJUと戦い陸地に辿りつくまで、標的のあとをつけて殺人に至るまでと一連のキモを描いて心を掴んだ1位と2位。3位は主人公コンビのキャラを説明する軽妙なやりとりがツボだった。



2013年ベストタイトルバック


  1. アイアン・フィスト
  2. 飛びだす 悪魔のいけにえ/レザーフェイス一家の逆襲
  3. ジャンゴ 繋がれざる者

2位は、伝説の1作目の名場面を3Dで観られたという上げ底があるので、だいぶズルいですが。



2013年ベスト映画音楽


  1. パシフィック・リム
  2. ロード・オブ・セイラム
  3. フィルス
  4. オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ
  5. コズモポリス
  6. 地獄でなぜ悪い
  7. マンボーグ

ラミン・ジャヴァディとクリント・マンセルは信用できる音楽担当。昔のゲーム音楽みたいなチープさが良かったので、急遽『マンボーグ』も入れました。『地獄でなぜ悪い』は、ほとんど「全力歯ぎしりレッツゴー♪」効力。
 
 


2013年映画ベスト名言


  1. 「世界は滅亡しようとしている。どこで死にたい? ここか、イェーガーの中か!?」(パシフィック・リム)
  2. 「婦人科的すぎてセクシーじゃない」悪の法則
  3. 「オレはお前に救ってほしかったのに」(コズモポリス)
  4. 「オレに助言する資格はない。だが、お前が間違ったときには、反面教師にしろ」(フィルス)
  5. 「芸術を知ってから、この監獄は牢獄になった」(塀の中のジュリアス・シーザー)
  6. 「逃げたら殺す。完成しなかったら殺す。上手く出来なきゃお前を殺す」(地獄でなぜ悪い)
  7. 「あっ、コレ先生関係なかったわ(笑)」(凶悪)



2013年映画ベスト迷言


  1. 「Welcome to hell ...」(G.I.ジョー バック2リベンジ)
  2. 「天皇陛下! It's standing!!」ABC・オブ・デス『Zetsumetsu』)
  3. 「2000万やるからあっち向いてろ!」(ラストスタンド)
  4. 「あんたを好きになりかけてたのに!」(REDリターンズ)

というわけで、2013年総合映画迷言賞はイ・ビョンホンです。



2013年声に出して読みたい映画タイトル


  1. チキン・オブ・ザ・デッド 悪魔の毒々バリューセット
  2. 飛びだす 悪魔のいけにえ/レザーフェイス一家の逆襲
  3. バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所
  4. オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ

3位のタイトルはちゃんと間違えずに言えた試しがありません。




2013年ベストホラーヒロイン


  1. ヘザー(アレクサンドラ・ダダリオ)(飛びだす 悪魔のいけにえ/レザーフェイス一家の逆襲)
  2. エリン(シャーリー・ビンソン)(サプライズ)
  3. キャリー・ホワイト(クロエ・グレース・モレッツ)(キャリー)

度胸とスキルのみならず、芸術センスもまさにソーヤー一家の血筋なヘザーちゃん。サバイバーキャンプパワーで驚異の状況適応力と判断力を身に着けたエリンちゃん。血まみれや超能力を差し置いて、女優パワーが突き抜けたキャリーちゃん……いやむしろクロエちゃん。




2013年ベストゲス野郎


  1. ラド(ベニチオ・デル・トロ)(野蛮なやつら SAVAGES)
  2. ブルース・ロバートソン(ジェームズ・マカヴォイ)(フィルス)
  3. チェ・イクヒョン(チェ・ミンシク)(悪いやつら)

真のゲスたる者、仁義など捨てるべし。真のゲスたる者、器を小さく持つべし。真のゲスたる者、みみっちくあれ。真のゲスたる者、唾か小便を引っかけられる経験はすべし。




2013年映画ベスト空回り君


  1. キッド・ブルー(LOOPER)
  2. ストームシャドー(G.I.ジョー バック2リベンジ)
  3. コルテス(ラストスタンド)

目標間近でシュワのバックドロップに沈められたコルテスも、いつもの癖で脱いじゃったばかりに火傷→せっかくの空中戦シーンで袋詰め空輸に終わったストームシャドーも、たいへんよく空回りました。
しかし、やること為すことすべてがキレイに裏目に出てしまうキッド・ブルー君こそ、2013年に、ひいては映画史上に君臨する空回り王といえましょう。なんかもう他人とは思えないし。



2013年映画に学ぶ間違った教訓


  1. 宇宙に行くならジョージ・クルーニー必携(ゼロ・グラビティ)
  2. メモリーはラッセル・クロウで残せ(マン・オブ・スティール)
  3. 殺人鬼対策はサバイバーキャンプで学べ(サプライズ)



2013年ベスト夢のガジェット


  1. イェーガー(パシフィック・リム)
  2. ゼン・イーのXブレード(アイアン・フィスト)
  3. ファイアフライのホタル爆弾&バイク爆弾(G.I.ジョー バック2リベンジ)


技術者の皆様、どうかこれらのガジェットを実用化してください。破壊と血しぶき以外の使い道が分かりませんが。あ、でもKAIJUが襲来してきたらイェーガーの出番ですよ。

2013年12月25日水曜日

悪の法則

シガーがいなくても、そこは血と暴力の国。

悪の法則('13)
監督:リドリー・スコット
出演:マイケル・ファスベンダー、ペネロペ・クルス




①きっかけは、ほんの出来心で少しばかり道を踏み外したこと。
②結果として、コントロールできない脅威に呑みこまれる。
③それまでの価値観も経験も理念も、もはや何の役にも立たない。
④コントロールできない脅威は、大して関係のない人間にすら容赦ない。
⑤取り残されることは、時として殺されるのと同じくらいむごい仕打ちになる。
⑥観客すら、不条理な世界に取り残されたまま幕を閉じる。
⑦テキサス~メキシコの間に、崩壊しゆく世界の縮図を描く。

コーマック・マッカーシーは作品比較されたくないかもしれないが、本作と『ノーカントリー』にはざっとこんな共通項がある。『血と暴力の国』は『ノーカントリー』の原作本のタイトルだが、本作にも当てはめられそうだ。

順風満帆な人生を送る、カウンセラーと呼ばれる弁護士。エル・パソに高級な住居を構え、アムステルダムで高価なダイヤを買い、恋人ローラにプロポーズしたばかりだった。ただ、少しばかり欲を出して、実業家の友人ライナーとその恋人マルキナとともに、メキシコの麻薬カルテル絡みのビジネスに手を染めていた。ビジネスに関わる裏社会のブローカー・ウェストリーからは、カルテルの恐ろしさを警告されたものの、カウンセラーはさほど理解できていなかった。
やがて、カルテルの運び屋の青年が惨殺され、運んでいた荷物が持ち去られた事件により、ビジネスに綻びが生じる。その綻びは瞬く間に脅威と化し、カウンセラーと周囲の人間たちを呑みこんでいく。

本作の原題は『The Counselor』。主人公の職業(弁護士)であり、周りからの呼び名。ベタな話だが、巻き込まれた名無しの主人公は、自分を含めた誰にだって置き換えられる。

『ノーカントリー』では、アントン・シガーという人間1人が、生と死の不条理を体現していた。本作には、不特定多数の悪党が出てくるが、彼ら1人1人はシガーのように強く印象に残る人間ではない。
例えば、あるシーンでバイクの高さをスッとメジャーで測ってスッと去って行く1人の男のように、淡々と自分の作業をこなしては退場していくだけ。ただ、その淡々とした作業からもたらされる結果は、恐ろしくむごい。裏切った(とみなされた)人間に対する報復すら、淡々とした作業にすぎない。

彼らには「言い分を聞く」なんて概念は存在しない。裏切りの関係者とおぼしき人間が実際無関係だろうと片足つっこんでいようと関係ない。1人1人は強力ではないが、彼らがひとたび動き出したら、止める術はないのである。
明確な1人ではなく、集団としての「コントロールできない脅威」が描かれているわけだが、正直悪党たちの動きの全体図はよく見えないまま。したがって、強いていうなら、コントロールできない脅威をもっとも具現化しているのは、映画史上屈指の嫌な処刑器具「ボリート」かもしれない。

ところで、直接的にはストーリーと関係ないのだが、本作で強烈な印象を残すエピソードが、ライナーがカウンセラーに語る「マルキナがフェラーリとセックスした話」。魅惑的と思われたものがグロテスクに転じるのを目の当たりにし、恐怖すら覚えながら、それでも離れがたいというライナー。相
手を脅かしつつも魅了し絡め取ることは、コントロール不能な脅威とはまたちがったベクトルで厄介な悪なのかもしれない。下手すると、絡め取られているのは観客のほうだったりもするし。

「誰が悪の法則を操るのか?」という予告や惹句が謎解きサスペンスのような雰囲気を醸し出しているが、本作はどう見ても犯人探しのミステリではない。むしろ、コーマック・マッカーシーが描く残酷な世界を、誰が生き残れるのかがキモなのかもしれない。
それは、世の中の残酷なルールを知っていて、自分はそのルールを操る側ではなく、ルールの一部なのだということも知っている人間だ。

2013年12月9日月曜日

アイアン・フィスト

RZAはオタクの秘孔を突いた!! 
「お前はもうハマっている」

アイアン・フィスト('13)
監督:RZA
出演:RZA、ラッセル・クロウ



権力はセックスとバイオレンスでつかむもの(本作のルーシー・リュー談)だとしたら、オタクの心は好きなものに対するジャングルより深い愛情と、鉄が打てるほど高温の情熱でつかむものなんでしょうかね。

中国はジャングル・ヴィレッジにて、ギャングたちの抗争に巻き込まれて両腕を切り落とされた鍛冶屋(ブラックスミス)が、鉄の拳を装着し、復讐の戦いに臨む!! 
血しぶきと手足が飛ぶ残虐カンフーバトルにヒップホップ!! 踊るチャイナガールにヒップホップ!! 
主演オレ!! 脚本オレ!! 監督もオレ!! 音楽もちろんオレ!!! キャストにはオレの憧れのスターたち!!! 

……と、RZAは映画界本格デビューにあたって、オタクの夢のシナリオをすべて実現してくれた。夢のサポートをしてくれたのが、クェンティン・タランティーノとイーライ・ロスっていうのがまた嬉しい。
ハードな鍛冶屋の仕事やってて、鋼鉄の拳を持って戦うわりにはそんなに筋肉ついてるように見えないRZAだが、そこは「実はオレにはかくかくしかじかで壮絶な過去が……」という取ってつけたような(そしてリュック・ベッソンが好きそうな)設定でカバー。そう言われれば、RZAの目って一度死んで悟りを開いたような目ですよね。錯覚かもしれないけど。

ちなみに、私自身はカンフー映画に詳しいほうではないのだが、それでも本作に詰まった敬意と愛情はビシビシ伝わる。熱意をもって取り組めばジャンルを超えてファンが集うということは、今年の夏『パシフィック・リム』も証明してくれたところです。

タイトルにもなっている鉄の拳が活躍するのはだいぶ後半になってからだが、装着してからはまぁ期待通りの破壊劇を見せてくれる。また、鉄の拳が登場する前から、各キャラクターが持っているガジェットの数々が観ていて楽しい。
例えば、ラッセル・クロウ演じる謎のイギリス人ジャック・ナイフが持っている、ナイフと拳銃の合体拳銃。銃とナイフが一緒になってれば強いんじゃね? というチャイルディッシュな発想の具現化のよう。いざ使ってみると結果はわりとムゴイが、その一方で下ネタとしても有効だったりするので相殺扱いでいいだろうか?
ルーシー・リューのトゲトゲ扇は、実は『ジェヴォーダンの獣』のモニカ・ベルッチと被ってしまっているのだが、こちらのほうがより豪快な使い方。
豪快といえば、何の説明もなく肉体が自由自在に鋼鉄化するブラス・ボディ。WWE出身のデヴィッド・バウティスタってだけでも勝ち目ないのに、金属になっちゃったらもう反則技の極み。
中盤に登場する双飛(ジェミニ)の組み合わせブレードもイイが、それ以上に男女が組体操技みたいな構えで戦うのがアツいポイント。女性のほうはホットパンツだし。

中でも一押しは、ゼン・イーのXブレード鎧。全身に大小さまざまの刀が仕込まれているのだが、どうやって収納しているのか、どういう仕組みで刃が出てくるのかまったく分からない。マジメに考えたらそんな鎧作れるはずがない。
しかし可能なのだ! オタクスピリットがあれば! 刀なんていくらでも鎧に収納できるし、刃だって気合いで出せるのだ!!

自分が大好きなカルチャー(カンフー映画と北斗の拳)に、自分が担ってきたカルチャー(ヒップホップ)をごた混ぜた必殺技で、オタクの秘孔を突いてトドメを刺す。最強の拳っていうのは、RZAの手腕のことかもしれない。

2013年11月25日月曜日

空飛ぶモンティ・パイソン 第2シリーズ第7話



アッティラ・ザ・ハン・ショー
第1シリーズ第13話「アッティラ大王の自首」でもネタにされてた、ヨーロッパ大陸で大殺戮をくり広げた遊牧民族の王アッティラ……とその家族の日常を描いた昔のホームドラマ系シチュエーションコメディ。英雄といわれようと残虐といわれようと、アッティラは家族へのおみやげに敵の首を持って帰ってくるマイホームパパなのです。

アッティラ・ザ・ナン
アッティラがもしハンじゃなくてナン(尼僧)だったら、暴走族なんでしょうかね……?

病室のストリップ
診察からこっちを想像するのは、国を問わない共通の煩悩なんでしょうかね……?

政治家のストリップ
テリーJの脱ぎ芸真骨頂。

政治家のグルーピー
ロックスターのグルーピーみたいなのじゃないにしても、ファンがつく政治家って信用性薄いイメージが。

キラー・シープ
羊ってさ、基本おとなしいイメージだし、童話においては被害者イメージだけど、実は目が無感情だから近くで見ると怖いよ。それに群れで押しかけてきても怖いよ。

アホと現代社会
田舎のアホと都会のアホでは、なまじ家族のコネと財産と学歴があるだけに、後者のほうがタチ悪いようです。パイソンズも毎回のようにネタにしてるし。

変なクリケット中継
クリケットについてはまったく知らないし、調べてもルールを一向に把握してないんですが、本当に厳格にルールに乗っ取って試合すると4日ぐらいかかるってマジですか? そりゃ観客の今にも死にそうな爺ちゃんが本当に死んじゃうぐらいうんざりするわ。
あと、最後におまけみたいについてきた家具の競馬中継、さりげなくスタンドで司祭がはしゃいでましたね。

クイズ、頭に一発!
クイズの謎な賞品よりも、テリーJおばちゃんよりも。笑顔で毒舌&威圧的な司会者のジョンよりも、背後でスリット入りドレスを着てるグレアムに注目してしまうよ。

空飛ぶモンティ・パイソン 第2シリーズ第6話

約1年と10ヵ月パイソンズスケッチ記録をほったらかしていた間に、ジョン・クリーズ吹替えの納谷悟朗さんとマイケル・ペイリン吹替えの青野武さんが亡くなり、その一方で本家パイソンズはなぜか今ごろグレアム・チャップマンの自伝をアニメ映画化し、再結成まで果たし、そして私はメンバーのパイソンズ後の企画『フォルティ・タワーズ』『リッピング・ヤーン』のDVD‐Boxを買いました。最後の項目は無視しなさい。



これがBBC商法だ!
正確には「これが商売だ」という、どうやって自分らテレビ出演者が大金稼いでいるかを紹介する番組。たぶんその稼ぎ方はBBCに限ったことじゃないよ。
吹替え版では「暮らしの知恵」という番組で、テレビ受信料の見返りに水割りもらえますというウソ情報を流してくれる。

時間ですよ!
「3分前です」「3分後には○○時になります」と要らん時報がだだ流れしてくるのは、番組スタッフが退屈だったかららしいのだが……吹替えではさっきの情報番組が不当な金品を要求していると伝える一方で、我々には関係ないとしっかり責任問題を回避している。

オープニング
この回、オープニングアニメーションの冒頭およびタイトルがブラックアウトにより映らないという、ある意味前代未聞の事態が。パイソンズ的にはごく当たり前なのかもしれないが。

表彰式
カトリック系学校の成績優秀者を牧師が表彰する式典……で何かが起こる。表彰されるような功績のない学校生活だった身としては、これぐらいとんでもない事件が起きてくれたほうがいっそ楽しいと思うよ。グレアムのニセ中国人はちょいと問題だろうけど。

パクリ映画専門監督、L.F.ディブリー
前スケッチの表彰式は、『if もしも……』という映画のラスト部分だったらしい。そして、この映画を撮った監督ディブリーさんの作品は、『2001年宇宙の旅』『真夜中のカウボーイ』『裏窓』と、どこかで聞いたようなタイトルがズラリ。もっとも、類似点はタイトルだけですが。
ちなみに本家『if もしも……』は、『時計じかけのオレンジ』のアレックス君ことマルコム・マクダウェル主演です。

事件ですよ!
外務大臣をポイするのはともかく(?)、中東ネタは今や当時以上にアウトなような……。

おまけ!
リニューアルオープンしたてのドラッグストアで、買い物のおまけに絶対使わないコスメのサンプルもらったときには困ったもんだったけど、こっちのおまけはそんなもんの比じゃないくらい困る。吹替えでは、納谷さんの渋い声で「う○こです」と精神年齢の低い便所ネタが聞ける。

サムライ
テリーG監督作『未来世紀ブラジル』の、巨大サムライが現れるシーンの雛型に思える。

ティミー・ウィリアムズの部屋
ティミーの口癖が「スーパー! スーパー!」なのは、第1シリーズ第10話のアーサー・ツリーと同じ。と思ったら、どちらもデヴィッド・フロスト(『フロスト×ニクソン』のフロスト)のパロディキャラだった。この手の無節操芸能人は、時代・国を問わず存在するもんだ。

鼻長男のインタビュー
大きい鉤鼻=ユダヤ系の特徴。自分のひいきの俳優の中だと、ヴァンサン・カッセルが顕著。とはいえこれだけバカでかいつけ鼻で、指摘されるとすぐ「差別だ!」とキレるって描き方は本来かなりマズい。「事件ですよ!」で中東をバカにしたので、ユダヤもバカにして相殺?

戸籍係にて
戸籍係で「結婚したいんですが」と言ったところ……もういっそ何かにつけてめんどくさくなったら、全員で結婚しちゃえばいいと思うよ。

ホクロ王子の冒険
このアニメ、ある単語が検閲に引っかかり、ナレーションが一部差し替えられる事件があった(そのため、もともと女性ナレーションなのに、一ヵ所唐突に男性の声になる)。しかし、なんで「癌」がダメで「壊疽」がOKなのか……。

選挙速報スペシャル
賢者党(Sensible Party)対バカ党(Silly Party)の選挙選。たまに「ちょっとバカ党」「すごいバカ党」が出ている選挙区もあり、つまり政党の多くはバカなわけで……さらに付け加えると、賢者党も果たして政治家として賢いかどうかは保証できないわけで……確かなのは、なぜかバカな候補者ほど名前が面白いってことです。

2013年11月20日水曜日

パシフィック・リム爆音上映会@立川シャッタードーム

(ドリフトで)酔った勢いでやらかした。後悔はしていない。

パシフィック・リム爆音上映会(3D吹替版)
2013. 11. 16. 立川シネマ・ツー 立川シャッタードーム



10年前の自分に告ぐ。良い知らせと悪い知らせとどっちから聞きたい?
……悪い知らせか。悪い知らせは……10年後、君はとある映画の登場人物のコスプレで劇場に駆けつけ、上映中に「ロケットパーーンチ!!」と叫ぶ大人になっている。
良い知らせは……その映画のおかげで「21世紀初のカルト映画」と呼ばれる現象にリアルタイムで参戦できて、映画つながりのお友だちが増えることだ!

みんなチャックの口調を真似て「マーックス」って呼んでいきます。


パシフィック・リム』が再び立川シャッタードームに帰ってくる! しかも今回は、同じ日に札幌、土浦でも爆音上映実施という、シャッタードーム3体同時出現!
もはや伝説となった2013年9月29日の立川爆音の再来とあって、チケットの競争率の高さはカテゴリー5級(なんとなく)。自分は抽選ハズレたところを、Twitter上のチケット余ってます告知に救われた人です。譲ってくださった方には何度お礼を言っても足りないぐらいです。

と言いつつちゃっかりお祭りモードに乗り、池袋のニュートに続いてハーマンスタイルで参戦したのだが……フォロワーさんたちに初めてお会いしたり、会場の様子を見ていると、つくづく自分のコスプレは有り合わせの寄せ集めが露呈するなぁと実感。
まぁ、コスプレが本格的だろうと有り合わせだろうと、いやむしろコスプレしてようとしてなかろうと、シャッタードームの空気に気持ち良く呑まれることさえできれば完全ドリフト気分なのですが。

それにしても、公開時の興行成績はそこまでスマッシュヒットでもなかったのに後々ファンの熱意で細々と上映が続き、冷静に見たら脚本に粗もあるのにそんなことどうでもよくなるぐらいのめり込み、しまいにはこういったコスプレで叫ぶイベントまで催されるあたり、ますます『ロッキー・ホラー・ショー』の流れを組む映画だなぁ。

上映直前。ぎっしり。

 第1回の立川爆音上映を経て、池袋、塚口でドリフト経験を積んだレンジャーたちも多かったせいか、とにかくグッとくるポイントがあったら叫ぶ! 好きなキャラクター/イェーガーが来たら叫ぶ! という手探り感の少ない潔さ。
冒頭のアックスヘッド襲来、イェーガーにより人類の勝機が見えたところから、早速歓声の嵐。また、今回の爆音上映は立ち上がったりアクションしたりするのも可だったので、「ロケットパーーンチ!!」だけにとどまらずイェーガーと同じアクションでKAIJUと戦うレンジャーも多かった。
いくつかの掛け声やツッコミがいつの間にかお約束事と化していたのも、絶叫上映の定着へまた進歩したようで嬉しいところだ。もちろん、新規の掛け声/ツッコミ(ボケ?)も聞くだけで楽しいので大歓迎。
ちなみに、今回は池袋よりファンイベント色が濃く、集まったのもコアなファン層だったため、ネタバレにはずっと寛容な環境である。
今回の主催者たる店主さんの挨拶「まず、携帯の電源はオフにしてください。次に、携帯の電源はオフにしてください」なんかも嬉しい限りでしたよ。


お約束になりつつある……

  • 「ヤンシー起きろ!」
  • 「今何時だ?」→「2時!」
  • 「おい坊や、調子に乗るなよ」→「ヒュー♪」
  • メインテーマがかかったらハンドクラップ
  • 「良い知らせと悪い知らせ、どっちから聞きたい?」→「悪い知らせ!」
  • 「仕事が欲しい奴、食いたい奴はいるか?」→「はーい!!」
  • 「どこで死にたい? ここか、イェーガーの中か!?」→「イェーガーの中!!」
  • 「いや、ニュートって呼んでくれ」→「ニュート!!」
  • 「可愛がるべきかひっぱたくべきか分からず……」→「ひっぱたけ!!」
  • マコ、笑顔でドアを開けるも、そこにいたのはローリーではなく司令官→「あーあ」
  • マコがコーパイに選ばれ、ローリーが一言「似合ってるよ」→「ヒュー♪」
  • ケンカが始まったら「いいぞ!」「やっちまえ!」「親父にも殴られたことないのにー!」
  • 「いいぞ、ジプシー、ぶちのめせ!!」
  • レザーバック戦の最後「あと1回! あと1回!」あと1発! ってのもあった)
  • シェルター内でニュートのメガネ落下→「メガネメガネ」
  • 幼獣オオタチ騒動のあと「後ろ、後ろーー!!」「やめとけーー!!」「逃げてーー!!」
  • おまけのアレ「お帰りーーー!!!」

 

安定の……

  • チェルノ・アルファは今回も人気者。カイダノフスキー夫妻も人気者。
  • いつでもどこでもマックス人気。
  • スコープ越しにローリーをこっそり覗き見ても、部屋を間違えても、外にいる相手を間違えても、マコさんはいつだって可愛い!!
  • マコと組むことを拒否されたローリー……を見て笑うチャック……を見て笑う観客たち。池袋でも起きた謎の現象、今回も起きました。
  • タン兄弟ともどもぼそっとつぶやく「かぶとむし」
  • 香港戦に満を持してのジプシー登場は中盤の山場です。
  • 香港戦からの帰還~司令官の演説~「タイマーを止めろ!!!」この流れは確実に爆音上映のブレインハンドシェイク最骨頂です。


初めて聞きました/やりました(この中から新たな定番が生まれる?)

  • 初めて……というか、今後願わくば起きてほしくないのだが、上映中に地震が発生するというアクシデントが。その際「地震?」に並んで「KAIJU?」「KAIJUだ!」というざわめきがあったことを銘記しておく。
  • 今回は何かが起こりそうな直前に「お? お?」とザワつく傾向。
  • ローリーのナレーションが入った瞬間から「杉田ーー!!!」の歓声。改めて声優さん人気を実感。
  • タイトルが出る直前のブロック崩れみたいなアレにもハンドクラップ
  • 司令官が口に含むカプセルに「おいしい?」……フリスクかい!!
  • 壁建設現場の高さと、そこをノーロープで滑り降りるローリーに畏怖をこめて「ヒュー」
  • エレベーター内を静まり返らせるニュートのKAIJUオタク発言に「あーあ(やっちゃった)」
  • シャッタードームに入ったあとのローリーに「前を見ろ!!」って注意しました。
  • 司令官に自説をまくしたてるゴットリーブ博士が「可愛い!」って言われてたのは、三ツ矢さん効果なのかゴーマンさん効果なのか……(後者だと嬉しい)。
  • ゴットリーブ博士が司令官に逆手敬礼するたびに同じことしてました
  • 「イモをくれ」→「イモ!!」……ハークパパへの一番気の毒系レスポンス。
  • トライアルはローリーよりマコが一本取ったときのほうが盛り上がるのだが、今回は「いいぞーマコさんやっちまえー!」とレザーバック戦に先駆けた掛け声が……
  • 「成功したら僕の勝ち。失敗したら君がやらせたようなもんだから僕の勝ち」と記録するニュートに「ズルいよ!」ってクレーム入れました。
  • ハンニバルがニュートに鼻ナイフ→「痛い痛い!!」
  • 謎のメニュー・通称KAIJUブルーゼリーに「青い!!」
  • ハーネスを外してしまったハークに、チャックともども「外すな!!」「ダメだー!!」
  • 隣のビルからオオタチが突撃してくるところで「ジプシー右だー!!」
  • 幼獣オオタチにまで「おいしかった?」って聞くかい!!
  • 実は池袋でも聞こえてたんですが、「靴は分かりやすいとこに投げて!!」ってリクエストがありました。
  • 海底戦、「右だ!」「左だ!」と、ジプシーやテンドー以上にライジュウに翻弄されてた人。

スタンディング自由、とはいえ3D上映だったせいか、本編中立ち上がる人はほとんど見なかったが、エンドタイトルが始まるとメインテーマにハンドクラップしながら一同起立。一応これが人生初のスタンディングオベーション体験……ってことにしてしまおうか。池袋シャッタードームのときと同様、気分はともにKAIJUと戦ったレンジャーであり、ともに戦いをサポートし続けたシャッタードームクルーであった。

マコさんたち。トライアル版や幼少期版もいらっしゃいました。

PPDCオシャレ番長テンドーは女性率高し。
またお会いしましたね!(池袋の寄生虫さん)


ニュートたち。タトゥーあり、KAIJUネイルあり、鼻血あり……!
後悔してないって言ったけど、せっかくハーマンだったので、ニュートとケンカすれば良かったかな。


チェルノたち。 帽子やバケツなど身近なものから作れるのがいいところ。


こちらのチェルノは装甲に加えカイダノフスキー夫妻も搭乗中です!

そして2人のチェルノが奇跡の対面を果たす……

命の壁を破ってカテゴリー4が出現!!!

ストライカー・エウレカ発進!! どさくさにまぎれてコンボイ(fromトランスフォーマー)も発進!!

この日の極私的MVPはこのTシャツのお方です。


『パシフィック・リム』爆音上映会は、2013年9月29日の立川シャッタードームの戦術を学び、進化した。シャッタードームは思いのほか次々に出没した。池袋、塚口、そしてこの度のトリプルイベント……カテゴリー4(たぶん)のファンイベント熱が発生している。もはやIMAXリバイバルばかりでは有効な手段ではない。定期的なシャッタードーム建設の必要性が……
ってことになりませんかね、全国の映画館さん!!!!

2013年11月15日金曜日

トレマーズ

砂漠でエクストリーム高鬼。

トレマーズ('89)
監督:ロン・アンダーウッド
出演:ケヴィン・ベーコン、フレッド・ウォード



足が遅いので普通の鬼ごっこは苦手だったけど、高鬼はわりと生存率が高かった自分。登ってられる時間や場所の制限、および高さの優位を利用して逃げ回るのは得意だった模様。
だから、うまくすればコイツらからも逃げれそうな気がするんだけど、200%気のせいなので決してやってはいけない。

砂漠地帯の街パーフェクションで、ゴミ処理や修理など便利屋仕事を続けてきたヴァルとアール。この生活に嫌気が差して街を出ていこうとした矢先、住民が鉄塔に登ったまま死んでいたり、首まで埋まった死体で発見されたりとの怪事件が発生。
隣町へ通じる道路がふさがれて車が通れない中、何とか助けを呼びに行こうとした2人が目にしたのは、土の中を移動して人間を捕食する巨大なモンスター(ノリで『グラボイズ』と命名)だった。

『エイリアン』『ジョーズ』など、暗いところや湿気っぽいところでバトルが繰り広げられることが多いモンスターパニックものにおいて、異例ともいえる明るくカラリとした空気の本作。それは晴天の下&砂漠の街という舞台設定だけのおかげではない。
「目は見えないが聴力は鋭い」「地表からの音を頼りに獲物を見つける」「柔らかい土の中は猛スピードで進めるが岩など固いものには弱い」といった生態をもとに、どうやってグラボイズに対抗していくかが本作のキモ。
その対抗手段というのが、岩の上を棒高跳びスタイルで逃げたり、わざとギャーギャー騒いで注意をそらすなど、まるで小学生の遊びの発想の延長線上。緊迫した状況のはずなのに、観ていてなんとも微笑ましい。

そのうちグラボイズたちも知恵をつけてきて、住民たちも戦う/逃げる手段を次から次へと編み出していくことになるあたりも、人数や遊ぶ環境の変化に応じて高鬼のルールが変更されていく過程に似ている。「いつまでもてっぺんにいるのはズルいから、この滑り台にいられるのは10秒までね!」「下水のフタの上は高いとこのうちに入らないからナシね!」みたいな。

陸上版『ジョーズ』ともいわれる本作だが、ジョーズとの決定的な違いは、グラボイズと戦うパーフェクションの住民たちが、何らかの専門家でも精鋭でもないところだ。
地質学を学んでいる大学生のロンダが地底生物の生態にいくばくか詳しく、第三次世界大戦の勃発に備えて家の地下に武器を蓄えまくっている夫婦がいる程度か。
素人軍団が集まって知恵を出し合うという設定は、それこそ「自分でも戦えるかも!」という素敵な勘違いに浸らせてくれる。

また、田舎町のご近所さん同士的な今一つ緊張感のないやり取りも、追い詰められた切迫感や悲壮感をきれいさっぱり消し去っていて口当たりがいい。特にヴァルとアールの掛け合いは、何かとジャンケンで決着つけたがったり、走りながらもムダ口を叩いたりと、タフガイ(気取り)っぽさとユーモアがカラリとした空気の形成に大いに貢献している。
普通だったらそれどころじゃないって状況なのに、若いヴァルとロンダをくっつけてやろうとするアールのニヤケ親父っぷりにも笑えた。

自分オススメのモンスターパニックもののわりにはエロもグロもないし、ケヴィン・ベーコンはまだ露出狂になってないから安心だし……って勧め方はあんまりなので。
今は亡き木曜洋画劇場、現在は午後のロードショーでノーカット放映できるし、96分と程よいさっくり尺だし、ホラー・SF・モンスター好きに関係なく、オススメできる層は広いはず。
映画史上での評価が『ジョーズ』ほどではないにしても、テンポが良くノリが軽くライトに楽しめる点では、『ジョーズ』に勝っているはずだ。

2013年11月4日月曜日

もしもこの作品で爆音絶叫上映をやってみたら

もしも『悪魔のいけにえ2』で爆音絶叫上映をやってみたら。

10月5日の『パシフィック・リム』絶叫ナイトin池袋の感動×6月2日の『悪魔のいけにえ2』爆音上映の楽しさ×もっとガヤスクリーンの面白さを味わいたいという欲求(ガヤスクリーンに対する思いのたけ記事参照)=この惨状。

つまり、=前の項目から生まれたしょうもないTwitter妄想劇を、この際なのでまとめてしまった&書き足してしまったのがこのブログ記事。今さらバカ記事の1つや2つ増えたってどうってことないさ!! という開き直りが原動力です。

なお、言うまでもないことかもしれませんが、本文は個人的見解、想像、偏見、思い込みだらけで構成されています。ご了承ください。

参加スタイル

コスプレ参加歓迎。人皮マスクやレプリカチェーンソー、針金ハンガー持ち込み(ハンガーはくれぐれもケガに注意)。
1作目『悪魔のいけにえ』キャラやリメイク版のコスプレもあり。
悪魔のいけにえTシャツ、Choptop's BBQTシャツもあり。
ジェイソンやフレディなどほかのホラーアイコンのコスプレもいて、レザーフェイスコスプレさんとの即興バトルが繰り広げられる。

 

オープニングタイトル

タイトルおよびキャスト名、そして監督名に歓声第一波。実は一番歓声が大きいのが、「特殊メイク:トム・サヴィーニ」。

本編


  • 各主要キャラクターの登場に歓声が上がるのは定石。
  • 第一犠牲者のバカコンビに暖かい罵声の嵐。
  • 鋭い人はラジオ局のポスターやレコードさえ指摘する。
  • ナビンズ(ヒッチハイカーのミイラ)だ!!! いやババちゃんだーーー!!!! そして殺戮シーンにはもちろん拍手喝采。
  • デニス・ホッパーだぁぁぁぁぁ!!!!
  • 現場検証のシーンで、背後を通る水色の家に誰かがツッコミ入れる。
  • ドレイトン兄いのチリコンテスト優勝に「おめでとう!!!」の声。同時に「人肉じゃん!!!」 とのツッコミも。コショウの固い殻ネタで笑いがとれる。
  • 運転中通話のドレイトンに「事故るぞ!!!」「前を見ろーー!!」と注意喚起。
  • ホッパー叔父貴の豪快試し切りに爆笑。
  • チョップトップきたーーー!!!!!!
  • "Maybe uh……new music!!" → ブィィィィン!! →うわぁぁぁ!!!
  • ババちゃんお兄ちゃんのカツラ削っちゃダメ!!!
  • 戻ってきたLGに「やめろーー!!!」「入っちゃダメだー!!!」
  • ババちゃんの初恋とチェーンソー下ネタに冷やかしの声。
  • ホッパー叔父貴、チェーンソー構えて殴り込み!! ……と思ったらドアをぶった切らず普通に入場する姿に「手で開けるんかい!!!」とツッコミ。
  • ババちゃんのプロポーズに、「うわぁ……」とドン引きする観客と、「うわぁ(笑)」と喜ぶ観客あり。
  • ババちゃんのストレッチぐるぐるダンスに謎のハンドクラップ。
  • LGの男気に最後の喝采となぜか感動の涙。
  • 仲良し兄弟漫才を温かいツッコミで迎える。
  • 兄ちゃん後ろ、後ろーー!!(ストレッチが通過していくシーンで)
  • レフティとフランクリン哀しみの再会にやはり謎の涙が。
  • 通路を彩る人骨アートの職人技も誉めてあげましょう。
  • 彼女(仮)が家族にバレちゃったババちゃん、またも冷やかされる。
  • "Bubba's gotta girlfriend!" "Burn her like a rat!" は手拍子しながらみんなでやる。
  • 一番の決め台詞はもちろんみんなで、"Saw is family!!"
  • 食卓タイム。観客も一緒に歌ってグランパを迎える。
  • ババちゃんのキスはさすがに切ないので、観客の冷やかしも少し減る。
  • ドレイトンに叱られても、ホッパー叔父貴と一緒に「収穫の歌」を歌っちゃってOK。
  • チェーンソーチャンバラには歓声が上がるが、「ババちゃん頑張れ!」の声のほうが大きい。チャンバラ以降の展開には、拍手じゃなくて悲哀の声が満ちる。
  • グレート・グランマには敬意をもって拍手を送りましょう。
  • ラストはストレッチ姉さんと一緒に雄叫びをあげて爽快感を取り戻す。
  • そしてエンドクレジット後のチェーンソー音にもうひと盛り上がりして終わる。

終演後

写真撮影などを介して交流タイム。シアターが閉まるまで、再びコスプレさん同士がバトルやチェイスを繰り広げてくれれば面白い。

その他・各キャラクターに対して


レフティ:
最初は歓声で迎えられるが、しだいに爆笑で迎えられ、中盤以降は「ヒドイよ!」「何やってんの!」「お前のせいで……!」と暖かいブーイングが増える。最終的には「遅いわ!」と怒られる。

ストレッチ:
ホットパンツになると観客のテンションが上がる。

レザーフェイス:
終始可愛い可愛い言われ続け冷やかされる。

チョップトップ:
"Music is my life!" "Lick my plate you dog dick!" など、観客のモノマネ率が高い。

ドレイトン:
最優秀チリへの祝福はもちろんのことだが、零細企業の苦労話に「そうだそうだ!!」「不公平だ!!」と共感の声が。

グランパ:
応援するのは間違ってると思いつつ、ハンマータイムに「頑張れ!!」の嵐。

ナビンズ(ヒッチハイカーのミイラ):
密かな人気を誇る。

LG:
意外に「可愛い!」という声が上がる。ポテトハウスが妙に好評。反面、ツバ吐き癖を注意される。しかし最後にはその男気に拍手の嵐。


そんな可能性も妄想してみると楽しくなりますが、実践の難しさを思うと、当面は自宅で一人ツッコミ大会ということに……さすがに一人絶叫大会じゃ近隣から苦情がくるしな。

2013年10月25日金曜日

ウルヴァリン:SAMURAI

ウルヴァリンは二度死ぬ。

ウルヴァリン:SAMURAI('13)
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ヒュー・ジャックマン、真田広之



これまでのX-MENシリーズ観たら、本当なら死んでるのは二度どころじゃないけどね。

『X-MEN ファイナル・デシジョン』の結末ののち、カナダの山に籠って世捨て人生活を送っていたウルヴァリンは、日本人女性・ユキオに招かれ日本へ飛ぶことになる。ユキオの雇い主は、第二次大戦中長崎で命を救った兵士・矢志田。病気と老衰で死の床にある矢志田は、昔助けられたお礼として、長年ウルヴァリンを苦しめてきた不老不死の能力を取り去ることを申し出る。
その夜矢志田は亡くなり、葬儀が執り行われる中、矢志田の孫・マリコを狙ってヤクザの襲撃が。ウルヴァリンは彼女を助け共に逃げるが、なぜか彼の治癒能力は矢志田の死と同時に失われていた。

主君を失った浪人のごとく孤独な戦いを続けるウルヴァリン……のはずが、蓋を開けてみれば(開けなくてもだいたい想像がつくけど)、ジャパンだ! ヤクザだ! ニンジャだ! そしてサムライ! と、ここが変だよ日本珍道中。
しかも、いち暴力要員ヤクザが新幹線(時速220~300キロぐらい?)の上に生身&ナイフ1本でへばりつけるという、ミュータントとほぼ互角の身体能力という過剰サービス描写。これで世界のジャパニーズヤクザ(またはジャパニーズドス)に対する基準が上がってしまったのではと、妙な心配すら湧いてくる。
一方、ニンジャは代表のハラダさんがどう聞いても日本語カタコトなのは気になるが(実際、役者さんは韓国出身のウィル・ユン・リー)、高田馬場の雑居ビルの上をピョンピョンするパルクール忍術は楽しそうだったよ。

最後には甲冑のシンゲンさん(真田広之!)やシルバーサムライも出てくるし、もう足りないものはゲイシャと「お背中流しましょうか」ぐらいじゃないだろうか。まぁ、確かに背中は流してたけど、アレは拾ってきたド汚い犬をゴシゴシしているようなもんだから……。

ちなみに、そんな昔ながらのお約束的変なジャパニーズカルチャーがある一方、ムダにオモシロ設備のラブホテルとか、英語が分からず「ノーイングリッシュ!」を連呼する受付のおばちゃんとか、その息子がこれまたムダに「オーケー」を連呼するとか、細かいところでは変なリアリティがあるんだよなぁ。まさか、スタッフさんの実体験や目撃談に基づいているのではないだろうな。

日本人キャストも携わり、日本ロケも敢行して、それがどうしてこうなった? というツッコミどころが溢れ返っている。しかし決して雑に扱われてるわけじゃない。
本作の日本を観たときのこの感覚、どこかで経験したような気がと思ったら、『007は二度死ぬ』(1967)だ。秘密警察のボス(丹波哲郎)の基地が地下鉄中野新橋駅にあり、姫路城でニンジャが訓練しているトンデモ日本。しかし、火山の下に秘密基地を持つ悪の組織をボンドが倒す! という豪快なスパイアクションを主軸にした結果、ヘンな日本描写なぞマイナスにならない娯楽作になった。

本作も、ヒーリングファクターを失って苦戦しつつ、鉤爪ファイトに余念のないウルヴァリン無双という主軸はキープ。登場するミュータントは毒蛇美女ヴァイパーぐらいだが、ユキオやシンゲンやヤクザ連中が豪快アクション路線で魅せてくれる。
特にユキオは、福島リラさんがテコンドー経験者ということもあって、アクションのキレがミュータント級。赤ボーダーやミニ丈喪服といったファッションも、黒髪に清楚感ただよう衣装のマリコと対照的で目に楽しい。

トドメの城型要塞と巨大なシルバーサムライなんて、ますます007(コネリー~ロジャー・ムーア期の)だ。一番007との相似を覚えたのは、九州から東京までアウディで1時間ちょいで着くというマジックだが(『二度死ぬ』では、東京~神戸間がトヨタGTで20分ぐらい)。
オモシロさを突き詰めるために、徹底したリアリティは常に必要条件ではないと再認識した次第である。

なお、この映画も大多数のマーベル作品と同様、エンドクレジット始まったからといって席をたっては(あるいはディスクを止めては)いけない作品。
あんなにとっ散らかった『ファイナル・デシジョン』のあと、また風呂敷広げ始めたようで、どうなるんでしょうかね?

2013年10月7日月曜日

パシフィック・リム絶叫ナイト@池袋シャッタードーム

ブレイン・ハンドシェイクはスクリーンを超える。

パシフィック・リム絶叫ナイト(3D吹替版)
2013. 10. 05. シネマサンシャイン池袋 池袋シャッタードーム



以前、「ガヤスクリーンに関する思いのたけ」という記事で、『ロッキー・ホラー・ショー』のように歓声あげたりツッコミ入れたりボケたりしながら映画観賞できたらいいのにという旨をぶちまけたことがある。
まさかそれから1年弱で、しかも自分の大好きな映画で実現されるとはなぁ。

一足先の9月29日に、立川シネマシティ改め立川シャッタードームで実施されていた爆音絶叫上映会。予約の時点からアクセス過多の憂き目でチケットを獲れなかったものの、Twitter経由の実況レポートから見て取れたのは、席から立ち上がってアクションつきで声援やツッコミを飛ばすだけでなく、上映前にDJイベント、コスプレ来場者も多数という、まさしく夢見た「ガヤスクリーン」であった。(その盛り上がり具合はこちらのまとめに詳しく掲載されている)

パシフィック・リム』を観た当初は、確かにその世界観や監督の心意気で一気に大好きになったものの、正直この作品が絶叫上映にピッタリとまでは考えていなかった。
が、立川シャッタードームのレポートを見るにつけ、イェーガーと怪獣とのバトルで声援と歓声に包まれ、シャッタードーム職員と一緒に一丸となって拍手喝采する一体感が目に見えるようで、実は絶叫映画体験に非常に向いた映画だと確信した。
その余波と、ファンからの「立川以外にもシャッタードームを作りたい(=爆音上映やってほしい)」という要望が届いたのだろうか。『パシフィック・リム』3D吹替版を延長上映していたシネマサンシャイン池袋さんが、5日の最終上映を、急遽「絶叫ナイト」にしてくださったのは……。

都心部でキャパシティもそこまで広くない劇場であるせいか、思ったほどコスプレの方は登場せず。でもニュートっぽい人はちらほらと見かける。そういう自分もニュートで来た。
開演前イベントは特になかったので、上映前の雰囲気は普段の映画館と変わらない。しかし、普段なら次回上映作の予告を流すところで、『パシフィック・リム』吹替版予告が2本。肩慣らしとして劇場さんが気を使ってくれたのだろうか、いずれにしても効果は絶大で、突如劇場は歓声と拍手に包まれた。そのあとの「No More 映画泥棒」のCMにすら手拍子が起きるほどだった。

序盤、怪獣との戦いの歴史が語られるところでは、まだざわつくだけだった会場だが、いよいよローリーが登場し、寝ているヤンシーを叩き起こすころになると歓声があがりはじめる。ジプシー・デンジャーが出撃準備に入ると、メインテーマに合わせて手拍子が(そしてその合間、テンドーの初登場に女子の歓声)。ナイフヘッドとの戦いになると、ジプシーの攻撃が決まると歓声&拍手、ナイフヘッドの反撃およびヤンシーの死に悲鳴が上がり、徐々に絶叫上映のモードが形作られていく。
立川に比べると、オーディエンスの手探り感が強いのかもしれないが、急遽作られたイベントとしては上々だったんじゃないかと思いたい。

ところで、池袋の音響システムおよび事情は、やはり立川とはちがうのだろうか。絶叫イベントなので音量は通常の上映より大きめだと思うのだが、それでもときどき観客の声に負けていた。かの「ロケットパーーンチ!!!」(吹替版では『エルボーロケット』ではない)ですら、ちょっと聞こえなかったぐらいだもんな。
ガヤスクリーン記事を書いたときは、「シネコンさんスクリーンの1つぐらい譲ってくれよ」と軽い感覚だったけど、他のスクリーンに響かないようにという配慮や劇場の構造を考えると、音響問題はそう簡単なことじゃないのだろう。反省。

以降は、バトルになれば声援、好きなキャラを歓声で迎え、時折面白ツッコミ(ボケ)が入る。Twitterには忘備録として逐一掲載したが、以下ではその中でも特にインパクトの強かった反応を紹介したい。

  • アラスカ基地へイェーガー計画終了を伝えるお偉方に、「何で!?」「ケチ!!」果ては「クズ!」とブーイングの嵐。
  • 壁の建設現場にて。配給カードを持った親方が「食事と金が欲しいやつはいるか!!」と呼びかけると、客席から「はい!!」とまさかの立候補が。
  • イェーガーではやはりチェルノ・アルファが、カイダノフスキー夫妻込みで一番人気。食堂シーンで、短いながらも仲睦まじい夫婦のショットに「ヒューヒュー!」と冷やかしが
  • 犬のマックスもなぜか安定の人気。
  • 博士コンビ、吹替ボイス効果もあってか安定のお笑い担当。ニュートが怪獣の内臓を床にポイしたのを見て、ゴットリーブより先に「あー!」と言ってしまったよ。
  • 字幕版では「(息子を)叱るべきタイミングが分からず……」発言に「今でしょ!!!」とツッコまれていたハーク。吹替版では「褒めるべきかひっぱたくべきか分からず……」との言葉に「ひっぱたけ!!!」と指導されていた。
  • 半裸のローリーと目があって慌ててドア閉める(でもスコープからこっそり覗く)マコ、部屋を間違えるマコ、ローリーと思って笑顔でドアを開けたら司令官がいて萎縮するマコ。男女問わず常に「可愛いーー!!」と叫ばれていた。
  • ローリーが候補生を倒したときより、マコがローリーから一本取ったときのほうが歓声がデカいトライアル風景。
  • ローリーとチャックのケンカに「いいぞー!!!」と野次とばし。友人の「親父にも殴られたことないのに!」もナイスボケでした。
  • 「ハンニバル様ーー!!」「ハン様!!!」と、ハンニバル・チャウに謎の女性人気。例の片方の靴にすら、「デカい!!」はともかく「その靴ください!!」って。あれはハンニバル親衛隊日本支部だったのだろうか。
  • 香港戦は一番の盛り上がり。出撃の歓声→バトルに声援と悲鳴(特にチェルノ)→そしていよいよやってきたジプシーにここ一番の大喝采。チャック以上に「いいぞ!!」「やっつけろ!!!」と盛り上がる。レザーバックにプラズマを打ち込むときには、立川で有名になった「もう一回! もう一回!」コールが。
  • 一番歓声(というかどよめき)をもらった怪獣は、翼を広げた瞬間のオオタチだったと思う。
  • ハーク「ここで待つか、照明弾でバカな真似をするかだ!」→観客「バカな真似をしよう!!!」
  • シェルター内でニュートがメガネを落とすと、一斉に「メガネメガネ」とエアメガネ探し。
  • 「一緒にドリフトをする」「世界が滅亡しようとしている。他に選択肢があるか?」「も……もちろん! 一緒に怪獣をやっつけよう!(ペチペチ握手返し)」ゴッドリーブ博士が一番歓声をもらった瞬間。その後の2人ドリフトが、一緒にカウントダウンする観客の声が一番大きかった。

香港戦のあとにもなると、もはや観客はシャッタードームの職員たちと一体化していた。パイロットたちを拍手で迎え入れ、司令官の演説に聞き入ったのち本当に戦いに向かう勢いで拍手し、仲間を失うときには悲痛な声が漏れ、「タイマーを止めろ!!」ではもう割れんばかりの喝采が。あれはスクリーンを超えた、クルー1人1人と観客1人1人の巨大なブレイン・ハンドシェイクだったのだと勝手に信じている。
エンドロールでも手拍子が続き、「レイ・ハリーハウゼンと本多猪四郎に捧ぐ」に最後の喝采。場内ライトが点くころには、「ありがとーーー!!!」「お疲れ様でしたーーーっ!!!」の声が飛び交い、辺り一帯は奇妙な連帯感に包まれていた。この瞬間、シネマサンシャイン池袋は、本当の意味でシャッタードーム池袋になった。

そして、この謎の連帯感の勢いで、場内とロビーはちょっとした写真撮影会へ流れ込む。私も勢いで人見知りフィルターが取れてしまったらしく、素晴らしきファンメイドTシャツとグッズの撮影に走るのだった。
拍手のしすぎとボルテージの上がりすぎで、手ぶれを補正してくれるスマートフォンのカメラでさえもたないほど、右手がプルプル震えたままだったのだが……もしや、これがドリフト酔いというやつなのだろうか!? 脳への負荷がデカすぎたのだろうか!? この後東京にオオタチが来てしまうかもしれない!! ……とまで考えてしまいました。

この日いっぱいはドリフト酔いという名の高揚感でいっぱいいっぱいだったのだが、翌日ツイートまとめを確認してみると、先述の音響問題以外の絶叫イベント課題もちらほらと明らかになってきた。
ついついファンイベント感覚になってしまっていたが、池袋という場所と時間柄もあってか、会社帰りなどに初めて本作を観に来たお客さんもいたらしい。そうした方々には、映画の声が聞こえなくなるほどの歓声や、某シーンでの「志村後ろー」的発言などネタバレにつながるツッコミは、ただただ迷惑だったようだ。
一応窓口やWebで「本日この回は絶叫上映です」「静かに楽しみたい方は他の回で」とのアナウンス・表示はあったらしいのだが、もう少し大々的に伝えてもよかったのではないだろうか。その際、「うるさくなる」「ネタバレにつながる可能性あり」という注意書きも必要かもしれない。

確かに、あからさまなネタバレ発言は場を白けさせるだけだし、先の「志村後ろ」も熱心なファンは盛り上がるが初見の方には苛立たしかったのだろう(その点は少し反省したい)。
だが、『ロッキー・ホラー・ショー』の上映会しかり、歓声やツッコミには「お約束事」の意味が含まれることが多い。また、歓声をあげるタイミングも、展開を知っているだけにうっかり周りよりワンテンポ早くなってしまう可能性もある。絶叫イベントで、完全なるネタバレを防ぐのは難しいと思われる。

こうした課題を乗り越える最良の方法は、絶叫上映というイベントを、もっと映画界でポピュラーな存在にしてしまうことだ。
せっかくファンの側からのアプローチで再上映、上映延長、果てはイベント開催までこぎつけた映画現象なのだから、アプローチがさらに進めば、シャッタードームがもっと全国に広まるかもしれない(実際、10月13日には兵庫県尼崎市で『爆音激闘上映』が)。もっと楽天的な見方をすれば、マスコミがエンタメニュースとして拾うかもしれない。

もちろん、そんなに簡単に行くはずのない話である。しかし、大好きな映画をもっと楽しんで観賞したいという映画バカたちの新たな試み、押し進めてみる価値は多いにあると思いたい。


まさか、それをデザインに! 東京シーンの名(迷)看板Tシャツ。背面はコヨーテ・タンゴの勇姿。

ジプシー・デンジャーのクルーTシャツ。ホントに売っててもおかしくないクオリティ!

寄生虫ぬいぐるみ!? 普通創作なんて思いもつかないのに!! 何だここは、天国じゃないか!