2013年3月11日月曜日

キャビン

すべてのホラーには理由(と愛)がある。

キャビン('12)
監督:ドリュー・ゴダード
出演:クリステン・コノリー、クリス・ヘムズワース



実は一足お先に、去年観賞していたこの映画。何か書こうものならうっかりネタバレしかねないが、ネタバレ部分こそが面白さの真髄、さてどう語ればいいものかと悩んでいるうちに……
日本版ポスターとチラシとオフィシャルサイトと予告編がそのへんを思いっきりバラしていて愕然としましたよ。

5人の若者が週末を過ごしに山小屋へ行く。スポーツ得意なイケメン、その金髪の彼女、マジメな秀才くん、マジメでピュアな女の子、マリファナ吸ってばかりのボケキャラ兄ちゃんと、その筋では定番のメンバー……ということにだいたいなっている。

道中、さびれたガソリンスタンドに寄ると、店主は怪しげな頑固じいさん。「あの山小屋には行っちゃならん」的なことを言われるが、もちろん行っちゃう。

昼は湖でキャッキャ、夜は飲み会でキャッキャする若者たち。と、そこでなぜか突然地下室に通じる床ドアが開く。入ってみると、中には古いオルゴールやらフィルムやら箱やら、あからさまに怪しいアイテムがたくさん。その中から日記帳を手に取り、謎の言葉を読み上げると、外でゾンビが復活。彼らは1人ずつ血祭りに……。

なぜ今ごろメジャー映画シーンでこんなベタベタなスラッシャー・ホラーなのか。
なぜこの手のホラーにはお約束の展開が必要なのか。
そして、ちょいちょい出てきて若者たちの様子をチェックしているスーツのおっちゃんたちは一体何なのか……。

日本では「マルチ・レイヤー・スリラー」と、分かるような分からないような宣伝をされていたが、本作が熱烈なホラー愛に基づいてつくられていることは明確である。
もちろん、残酷描写にそこそこ耐性があるならホラー好きでない人にも観てほしいという思いはあるのだが、ホラー好きだからこそ楽しめる側面のほうがデカいと言わざるをえない。
上記あらすじのホラー映画鉄板のストーリーを書くのだって、鉄板のシチュエーションや小道具を持ち込むのだって、それなりにホラー映画を観まくっているからこそできることなのだ。(『死霊のはらわた』を観たことがある人なら、舞台となる山小屋の造りにニヤリとしたくなるだろう)

ちなみに、Jホラーへのオマージュもあったりする。微妙に間違っているところもあるけど、愛は受け止めてあげていただきたい……。

とにかくネタバレ厳禁なので、面白いところに触れられないのが歯がゆくてしかたない。とりあえず、ラストは「祭り」というか「アッセンブル」というか「エクスペンダブルズ」的な……とだけは伝えたい。このラストにこそ一番ホラー愛がぎっしり詰まって、詰まって詰まって詰まりすぎてダムが決壊している。
「そこから先は――賭けてもいい。絶対に読めない」なんて日本の宣伝文句に賭けるよりは、ダムの決壊ぶりを大船に乗って血の海で揺られまくった気分でハイになって楽しんでいただいたほうがいいように思える。

96時間/96時間 リベンジ

ライバルはセガールです(たぶん)。

96時間('08)
監督:ピエール・モレル
出演:リーアム・ニーソン、マギー・グレイス

96時間 リベンジ('12)
監督:オリヴィエ・メガトン
出演:リーアム・ニーソン、マギー・グレイス



「最強のオヤジ」スティーヴン・セガールの専売特許を脅かす「無敵のオヤジ」が、まさか還暦に達してからのこのお方になろうとは……。

96時間

パリを拠点にする人身売買組織。今日も世間知らずでバカっぽいアメリカ人ツーリストの女の子に目をつけ、たやすく誘拐。あとは顧客に売りに出すだけのはずだった。しかしここで思わぬ大誤算が! 誘拐した娘の父親が、最強の元秘密工作員、リーアム・ニーソンだったのだ……!! 

(訳:元秘密工作員のブライアン・ミルズは、臨時雇いの仕事をしながら、ときどき別れた妻レノーアと17歳の娘キムに会うという引退生活を過ごしていた。あるとき、キムが友人とパリへ旅行に行くという。娘を溺愛するブライアンは反対するが、娘との仲に亀裂を入れたくないがために渋々承諾。しかし、パリ到着からまもなく、キムは人身売買の組織員に誘拐されてしまう。被害者の救出が可能なのは、誘拐から96時間以内。ブライアンは、時間内にキムを探し出すことができるのか……)

「娘のためならエッフェル塔も壊す」……と言っても幸いエッフェル塔は無事なのだが、関係者はほとんど無事じゃない。誘拐に関わった人間がバンバン撃たれて首ボキボキ折られるのはまぁ想定内としても、犯人グループの1人の両脚に電極ぶっ刺して拷問&感電死、パリ市警の汚職警官の奥さん(何も知らない)にまで銃で傷を負わせるともなれば、容赦がないにもほどがある。

もしこれがセガールだったら、「しょうがないよ、セガールだもの!!」という免罪符(という名のあきらめ)で乗り切るのだろうが、そこはリーアム・ニーソン。娘に会えてニコニコが止まらなかったり、海外旅行行きたい言われて当惑していた子煩悩パパから、我が子の危機を知った瞬間必殺仕事人の顔に変貌を遂げる。それでいて、変貌前だろうと後だろうと、すべては愛する家族のためと一貫している。それゆえ、たとえ情け無用の殺人マシーン化していようとも、優しさと意志の強さを持った頼れる父親というイメージからブレがないのである。

もちろん、ツッコミどころは上記のように山とあるのだが、リーアムのスゴみの前では「いえ、何でもありません!!」と敬礼付きで口を閉じたくなってしまうものが。

96時間 リベンジ

(娘との通話にて)「いいか、父さんと母さんはまもなく誘拐される! そして奴らはお前のところにも向かっている! だが母さんもお前も父さんが守る!!」
……以上すべて有言実行。それがリーアム・ニーソン・クオリティ。

(訳:イスタンブールで警護の仕事を終えたブライアンのもとに、前作の事件から急速に距離が縮まったレノーアとキムが遊びにきてくれた。ひさびさに家族水入らずで過ごせるかと思いきや、前作で人身売買組織員の息子を殺されたアルバニア人グループが復讐にやってきて、今度はブライアンとレノーアが誘拐される。ブライアンは再び、元秘密工作員のスキルを駆使して、妻と娘を守るべく戦いはじめる。)

少ない手がかりからパリで娘を探し出すという脅威のトラッキング能力を持つブライアン。それは自分が誘拐される側であっても変わらない。
乗せられた車が曲がる方向や時間、移動中の物音を逐一頭に入れたり、犯人グループに発見されずに助かった娘の力を借りたりで、自分の居場所を特定してしまう。それ以前にオープニングで、元妻宅でキムに彼氏がいるという衝撃の事実(当社比)を知らされたブライアンが、次に彼氏宅のシーンになるともう玄関前に立っているという、間違ったトラッキング能力の使い方を披露している。

もはや96時間というタイムリミットは関係ないし、そもそもタイムリミットがない普通の追跡劇。愛する家族のためとはいえ必要以上に相手を痛めつけるブライアンのやりすぎ感も控えめ。サスペンスとバイオレンスが前作より落ちる分、アクションに期待したいところだったのだが、それすらカメラがガチャガチャブレてキメ画に欠けるという難点が。

ただそれでも、自分の居場所特定のためにイスタンブールのど真ん中でキムに手りゅう弾を投げさせたり、まだ無免許のキムに逃走車両を運転させ「左に切れ!!」「突っ込め!!」「いいから加速しろ!!!」と地獄のカーチェイス教習所が始まるなど、ある程度はパパの暴走劇を堪能できる。いざとなったら我が娘でも使えというのが今回の教訓だろうか。たぶん違うだろうけど。
とはいえ、ある意味本当のパパの戦いは、娘に正式に彼氏を紹介されたところから始まるのだろう。


実は背後に「リュック・ベッソン製作」ってのが控えているこのシリーズ。
主人公が男なら「愛する者を命に代えても守り抜く」、女なら「愛する者を殺された復讐に燃える」って設定が大好きらしいベッソンなので(そう考えると『レオン』はベッソンにとって二重に美味しかったのかなと)、前者に相当する本作もそれなりにご満悦だったのではないかと。

また続編が作られるとしてもおかしくはないのだが、そうなると次に誘拐されるのは娘の彼氏だろうか。で、「誤解するな。お前のためじゃない。お前を愛している娘のためだ!」とか言ってリーアムパパが助けにいくとか。パート1ではただ世間知らずで不用心で観客をイラっとさせるばかりだった娘キムも、パート2ではできる限りパパの力になろうと努力するというめざましい成長を遂げていたので、今度は奥さんのレノーアに成長していただきたいところだ。何せ彼女はファムケ・ヤンセン=ゼニア・オナトップですし。

それと、タイトルは「リベンジ」のあとどうするんだろう。「アルティメット」か? 「フォーエバー」か? 「惨劇の館」か? 「リジェネレーション」か? 「怒りの○○」か? まさか「ダークサイド・ムーン」か?

(加筆:「レクイエム」に落ち着いた。でもそんなことよりファムケ・ヤンセンを活躍させないまま退場させたことのほうが問題だぞ)

勝手にエクスペンダブルズ2

もしもロバート・ロドリゲスがエクスペンダブルズを作ったら。

実は、思いつきの「ガイ・リッチー版エクスペンダブルズ」を書いたとき、ついでにもう1つ頭に浮かんできてしまったのがこのバージョン。
エクスペンダブルズというよりは、ただのロドリゲス祭りになってしまったが。あと、男祭りなのに女も結構いるけど、ロドリゲス界ではそのほうが活き活きするので……
なお、今回ストーリーはちょっとドン詰まったので割愛しました。何せどの方向でいっても『デスペラード』か『レジェンド・オブ・メキシコ』か『マチェーテ』と同じ流れになってしまったもので。誰か何か面白いネタがあったら教えていただきたいところです。

勝手にキャスティング


アントニオ・バンデラス
エクスペンダブルズのリーダー。普段の姿はバーのマリアッチ。ギターケースにたくさんの銃器を仕込んで……と思ったら、ギターそのものがマシンガンにカスタマイズされている。もちろん自前の大型二丁拳銃も携帯している。
(『デスペラード』『レジェンド・オブ・メキシコ』のマリアッチからシリアスを抜いてしまったような男)

フレディ・ロドリゲス
普段はバーの清掃係。身軽なうえ、モップでもグラスでもフォークでも、そこいらにあるもの何でも武器にできる。バンデラスにとっては頼れる右腕だが、若手で女性人気票が集まりつつあるという点で危機感を覚えさせる奴でもある。

スティーヴ・ブシェミ
何でお前がエクスペンダブルズにいる? と誰もがツッコミ入れたくなる、戦闘能力ほぼ皆無のもやしっ子。普段はバーの経理係であり、エクスペンダブルズの経理と武器調達人でもある。特技はお喋りと逃げ足の速さ。おかげでいつもうまいこと生き残れる。

ミシェル・ロドリゲス
エクスペンダブルズの紅一点(ということにしてください)。バーの調理担当兼ウェイトレス。フロアのトラブルは彼女がすべて力技込みで抑えこんでいる。ショットガンやマシンガンなど大型武器を扱うほか、ボクシングの腕も。
(外見は『マチェーテ』のタコス屋台の姉さんぐらいの可愛らしさで)

カルロス・ガラルド
バンデラスと一緒にマリアッチをやっている。バンデラスと同じく二丁拳銃と、こちらはギターケースのフタ部分にに閃光弾や催涙弾や電流ショック弾など変則型手りゅう弾を搭載。「元祖ギターケース武器庫はオレ」が口癖。
(そもそもマリアッチ三部作の一作目『エル・マリアッチ』の主人公はこの人でしたから)

ダニー・トレホ
大型から小型までナイフなら何でも扱える。普段はバーのドア前用心棒。金目当てに悪党側に寝返った……と思ったら、それは策略のうちで最初から最後まで味方であり、そのことを知っているのはバンデラスだけだった……という展開が観たい。
(マシェッティ、マチェーテ、ククイ、クッチーロと、ロドリゲスには刃物の名前をよくもらうトレホさん。このパターンを踏襲するとしたら、自分はもうフランス語の『クトゥー』かドイツ語の『メッサー』しか思いつきません)

チーチ・マリン
バーテンダー。エクスペンダブルズを日頃従業員として雇っていたり、店にたむろさせていたりする。もちろんカウンターの下には二丁ショットガン。高アルコールの酒と布とライターで火炎攻撃も。

サルマ・ハエック
エクスペンダブルズが集うバーの実質的オーナー。バンデラスの元カノらしい。元カレがギターケースなら、こちらは本の中にナイフや小型銃やときに手りゅう弾を隠し持っている。エクスペンダブルズへの仕事はたいてい彼女を通して依頼される。

ダリル・サバラ
バーで清掃係というか雑用係で働く青年。昔バンデラスに助けられたことがあり、それ以来彼に懐くかたちでエクスペンダブルズに居座る。バンデラスのギターマシンガンを作ったほか、皆さんにお役立ちガジェットを制作・提供してくれる。

ローズ・マッゴーワン
エクスペンダブルズの助っ人。一見ミニスカートの似合う美脚CIAエージェント。しかし実は右脚が偽足でしかもガトリングガン仕様になっている、伝説の女戦士。
(『プラネット・テラー』のチェリーの別バージョンみたいな)

シルヴェスター・スタローン
テキサスの最強麻薬捜査官……だがその実態は1組織と手を組んで麻薬利益を我がものにする悪徳警官。権力という意味でも筋力という意味でも、その剛腕に逆らえる者はいない。

ブルース・ウィリス
巨大麻薬カルテルのボス。邪魔な他組織をスタローンに一掃してもらい、見返りに売上を献上する間柄。組織が拡大していく過程で何度も死にそうな目に遭っているが、なかなか死なずにここまで生きているので、不死身との噂も。
(真性エクスペンダブルズのお二方に敵として登場してもらえたらと思って。一応それぞれロドリゲス映画に悪役として出演経験があるわけだし。もちろんスタローンはキッズ相手の1人6役などではなくガチの肉弾戦!! 彼らにガチで挑むのは大変危険なので、エクスペンダブルズはチーム戦でいくことをオススメします)

エレクトラ&エリース・アヴェラン
ロドリゲス映画おなじみの美女双子。カルテルに雇われている、抜群のチームプレーを誇る殺し屋。

クエンティン・タランティーノ
カメオ出演1。バーの常連客。序盤あたりにブシェミとくだらないダベリを続けていて(このくだりがムダに長い)、バーテンにそろそろ閉店だと追い出される。

ジョニー・デップ
カメオ出演2。麻薬カルテルの一員のチンピラだが、もうやってられないとばかりにCIAに情報を流したところ、察知したボスの仕向けにより双子美人殺し屋に消される。


さて、そろそろ脱線はおいといて、注文した本家『エクスペンダブルズ2』プレミアム・エディションでも拝みたいところです。

2013年3月4日月曜日

ブレイカウェイ

同じダメなら、素敵なダメになろうぜ。

ブレイカウェイ('00)
監督:アナス・トーマス・イェンセン
出演:ソーレン・ビルマーク、マッツ・ミケルセン




騙されるなよ!!
上のジャケットだとなんかいろいろ破壊するアクションみたいに見えるだろ!?
器物破損は車だけだぞ!!! しかもただのエンジンオーバーヒートで!!
キャッチコピーの「クサった人生、ぶち壊せ!」にも騙されるなよ!!
おっさん(もしくはおっさん一歩手前)たちが見苦しくも哀愁漂わせながら、コツコツと人生切り開こうとしてるだけだ!! 

40を迎えてもうだつのあがらない下っ端ギャングのトーキッド。ボスのエスキモーに借金を返すため、落ち着きがあるがヤク中のピーター、キレやすいガンマニアのアーニー、いつも何か食べている気弱なステファンら仲間とともに、地味な仕事をやらされる日々。
転機は誕生日の夜、ボスの命令で外交官の家に押し込みに入ったときに訪れた。回収を命じられたケースの中には大金が入っていたのだった。これは人生をやり直すチャンスだと、トーキッドたちはその金を持ち逃げし、新天地(希望はバルセロナ)へと向かうことに。
しかし、押し込みの際にピーターが負傷し、車がオーバーヒートし、国境近くの山の中で足止めを食らうことに。仕方なく廃屋で寝泊りしていると、今度は地元の猟師に見つかり、トーキッドは相手に話を合わせて「ここを買い取ってレストランを開く」と嘘をつく。これが、思わぬもう一つの転機となるのだった。

上記あらすじのとおり、おっさんたちは人生切り開くためにやたらめったら大破壊はしない。
文句言ったりキレたり泣き言言ったりしながら、地道に軌道修正しているだけ(アーニーの人生軌道修正だけはある筋の人たちに怒られそうだけど)。おまけに、文句もブチ切れも泣き言も、傍から見たら笑われるレベル。
ただし、4人それぞれが道を踏み外すきっかけとなった過去には、それなりの痛みや悲しみがある。そんな彼らの姿がかえって妙に愛おしくなってしまうという人間ドラマが、本当の本筋である。

ギャングとはいえ端くれだし、付き合いの長い者同士なので、揉めてもさほどオオゴトにはならない。この手のおっさんによくあるチャイルディッシュな側面も、何となく読んだ物語や詩に思いを馳せてしまったり、寒いのに全裸で湖に飛び込んでしまったりと、実におかしくも可愛らしい。
かといって、思い切ってカタギになろうとしたところで、才能があるわけでもなし、実のところ最後の最後まで「ダメ」からは完全に脱却しきれていない。
ただ、頑張って微笑ましいダメになった4人は、ただのやさぐれたダメ時代よりもいっそう魅力的に見えるだろう。

なお、本筋に関わる女性キャラに、トーキッドの元カノ・テレーズとステファンの彼女・ハンナがいる。
テレーズがトーキッドたちをつき放しつつも優しく見守っているのに対し、ハンナは一見明るいがその実かなり無神経で、4人と観客をイラつかせる役回り。おっさんたちの絆や人生軌道修正が温かく見えたのは、対照的な彼女らの存在のおかげでもあった。
ちなみに、テレーズを演じてたイーベン・ヤイレって、『ハイ・フィディリティ』のジョン・キューザックの元カノでもありましたね。もしや、ダメ男のミューズ?

ちなみに、ダメ男4人衆のうち、ガンマニアのアーニーを演じているのは、のちのル・シッフルことマッツ・ミケルセン。ことごとく「顔面骨格がチャームポイント」と推しているのだが、このときはなでつけショートヘアに口髭にタンクトップと、骨格が霞むくらい謎のスタイル。
アーニーの少年時代を演じていた子役がびっくりするほど端正で一番可愛かっただけに、それが『スクリーム』のスキート・ウーリッチくずれに成長すると思うと、アーニーのやさぐれ感ひとしおである。
でも、個人的には顔はスキートよりマッツのほうが勝ちだし、タンクトップ姿もかのジョン・マクレーンに匹敵させたいぐらいの威力です! ……と、ファンとして一応フォローしておきますよ。

2013年3月3日日曜日

スクール・オブ・ロック

初心者さんいらっしゃい。

スクール・オブ・ロック('04)
監督:リチャード・リンクレイター
出演:ジャック・ブラック、ジョーン・キューザック



「コロンブスが率いた船は?」
「ニーニャ号」「ピンタ号」「サンタマリア号」
このQ&Aにニヤリとした人とは、ぜひ友達になりたいものだ。

ロックバンドをクビになり、仕事にも就いていないダメ男が、当面の家賃のために、教師であるルームメイトの名を騙って小学校の教員となり、生徒たちにロック・スピリットを教え込む。
一見、ロック版金八先生だが、人間ドラマが極力省かれているあたりが本家金八先生との大きな違い。もし、家族との諍いや、生徒同士の仲違いなどの山場があれば、ちょっとしたドラマとしては成立するが、本当にこの映画自体ちょっとしたドラマで終わってしまっただろう。

客観的にみれば、一連の出来事は、基本的に主人公の自己満足になることばかりだし、勝手に授業プログラムを変えられた生徒たちの人生を実はダメにしたかもしれないし、学校や保護者にはただただ迷惑をかけっぱなしで収束してしまった。
しかし、そういう細かいことを隅っこにぶん投げて、気が付けばよく分からない高揚感に包まれてエンディングを迎えているあたり、華やかで骨太でパワー型のハードロックみたいな映画である。

ジャック・ブラック(通称JB)先生の授業は、「ロックの本質とは体制への反抗であり、大物(The Man)を怒らせること」等々、初心者に優しいロック講座。
「ロックの本質」は、おそらくある程度のロックファンでもとっさには答えにくいし、延々議論ができそうなテーマなので、中上級者も見ておいて損はないはず。冒頭に挙げたQ&Aのような、中上級者に嬉しい小ネタもあることだし。同時に、どれほど反抗してもロックは負けるのだというシビアな世界も、サラリとではあるが見せている。

JB自身、熱心なロックファンだし、テネイシャスDというバンド(基本下ネタ曲)で活動していたりもするぐらいなので、説得力はある。とはいえ、JB先生の模範解答は「初心者のためのロック足がかり」の域。
また、教材として示すロックも、AC/DCやディープ・パープルやザ・フーなどレジェンド級のバンド中心。もちろん、そうしたバンドはロック好きなら避けて通れない(むしろ通れと言いたい)道なのだが、どうせなら生徒の年代のコンテンポラリーなロックについても説けばいいのにという気もする。JBのオールドスクール好きがにじみ出た結果なのかもしれないけど。

ここで語られる「ロックとは何か」は、あくまでJBが敷いてくれた基礎部分。一口にロックといっても、オールドスクールやらグランジやらメタルやら数多くのサブジャンルが存在するように、そこから先、ロックに何を見出していくかは生徒たち(作中の生徒さんも観客も含めて)それぞれが考えたほうがいい。
そもそもロックって、そこにJB先生がいる場合を除いては、体制の側である学校で勉強するもんじゃないんだから。

桐島、部活やめるってよ

『桐島、部活やめるってよ』は書きにくいってよ。

桐島、部活やめるってよ('12)
監督:吉田大八
出演:神木隆之介、橋本愛




何で書きにくいかというと、パッケージにある通り「他人事じゃない」から。
映画について語るつもりが、自分の高校時代と照らしあわせて「あったわこういうパターン……」「いたよこういう奴……」と思わずにはいられないのである。
しかも、懐かしさとか思い出とかキレイな表現じゃなく、今も生々しく残る当時の感覚を容赦なくグサグサ刺してくるのだ。

バレー部のキャプテンの桐島が、ある金曜日に突然部活を辞めた。スポーツができて頭もよくて可愛い彼女もいる、校内ヒエラルキーの頂点たる桐島の不在で、周辺の人間関係には緊張感が漂いはじめ、直接的には桐島と関係のない生徒にも影響がおよぶ。
やがて彼らと、桐島とは何の接点も影響もないグループとが、火曜日に思わぬ形で関わっていく。

5日間だけ、高校だけ、ほとんど生徒たちだけで展開される、たったそれだけの話が、生徒同士のやり取りと、それによってあぶり出されるそれぞれのキャラクターでもって動く。特に、桐島が部活を辞めた問題の金曜日は、同じ一日が異なる目線でくり返され、主だった生徒たちの人間関係と性格を浮き彫りにしていく。
タイトルにもなっている桐島は、存在することはするのだが、映画の中には姿を現さない。短い間だが屋上にいた男子生徒が桐島ではないかとされているが、クレジットには「屋上の男子」と表記されているだけで、確証はない。

桐島に近いところにいる生徒たちは、桐島の姿や連絡を求めて必死になる。桐島は少なからず、彼らの世界(=高校生活)の中心または拠り所だからだ。
逆に、桐島から遠い生徒たちにとっては、桐島がいようといまいと世界は変わらない。
ただどちらに属するにしても、「結果を出さなきゃいけない」「仲間に合わせないといけない」「見下されている(ように思える)」など、そこが生きにくい世界であることは、誰にとっても同じなのだ。

アメリカのスクールカースト(ジョックス、ナードといった身分づけ)ほど明確ではないにしても、日本の高校にもうっすらとヒエラルキーは存在する。
「文化部より運動部のほうがエラい」
「同じ文化系でも吹奏楽部のほうがなんかエラい」
「必死で部活やってるよりは帰宅部のほうがカッコいい気がする」など。
何度も描かれる金曜日から浮かんでくるその様相は、あまりにも生々しく、高校時代どの階層に所属していた人間にも平等に痛さがよみがえってきそうだ。

その痛さがもっともキツイのは、ヒエラルキー下層の前田と、桐島の親友で校内ヒエラルキー上層の宏樹とのラストのやり取りと、宏樹と野球部キャプテンの最後のやり取りである。2つの会話を通して、物語は観客に残酷な現実と問いをつきつけたまま、フェードアウトしてしまうのだ。

この作品を好きになった大多数の人が感情移入するのは、神木隆之介演ずる映画部の前田と、同じく映画部で親友の武文だろう。
ルックスがカッコいいわけでもなく、スポーツはダメで、部活動は文化系においても最下層レベル(部室の場所が物語っている)。
いじめられてるわけではないが、女子に軽くバカにされてたり、いわゆる「イケてる」男子陣からの対応がちょっと雑ということは肌で感じている。
正面切っては言い返せないので、文句があるときは陰で言う(武文の『オレが監督なら絶対あいつらキャスティングしない』が、ちまっこいけど精一杯でスバラシイ)。
たぶん、自分も含めて大多数の『桐島』ファンの高校時代はこんな感じだったのかなと。

何より共感するのは、2人のゾンビ映画に対する愛情とリアリティ感。映画部顧問は「ゾンビはリアルじゃないだろ」と言うが、前田が話に持ち出そうとした『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』しかり、優れたゾンビ映画は少なからず現実の恐怖や生活習慣を反映している。
だから前田と武文も、渾身のゾンビ映画『生徒会・オブ・ザ・デッド』に、2人にとって半径1mのリアルである「疎外された学校生活」を投影している。さらに、2人に感情移入した人間ならば、すべてが入り乱れた終盤の「こいつらみんな食い殺せ!!」に感動すらおぼえるだろう。

ちなみに……作品と照らしあわさずにはいられない自分の高校生活。
スポーツはダメだし、文化部だし吹奏楽じゃないし、映画部顧問の語る半径1m以内の青春とは無縁だったし、内輪ネタやゴシップで盛り上がる女子グループの目には存在してなかったりしたし(映画の中の前田くんとまさに同じ状況すぎて痛い)、映画は撮ってないけど一番のリアルは映画とロックだったし、まぁ校内上層組じゃなかったなとは思う。
ただ、後に当時の友人が語ったところによると、校内では0.1%ぐらいしかいない万年私服生で(うちの高校には制服着用義務はなかった)、たいがい1人でウロウロしてる自分は「コワい人」だと思われていたという事実が。

恐るべきは、現在に至るまでこの方向性からほとんどブレていないということ。だから余計に、何度『桐島』を観ても痛いところは徹底的に痛いし、ほかの人にとっては笑えるところも笑えないどころか泣けてきてしまうのかもしれない。

そんなわけで、自分はどうしてもすべてを前田くんと武文くん目線から見てしまうので、これをかすみ、宏樹、沙奈、沢島、あるいは竜汰や桐島目線で見た人がいたら、その人は何を思うのかを知りたいところです。

2013年2月28日木曜日

ジャッジ・ドレッド

メガシティ・ワン残酷警察(ゴアポリス)。

ジャッジ・ドレッド('13)
監督:ピート・トラヴィス
出演:カール・アーバン、オリヴィア・サールビー



悩めるヒーローがいてもいい。何かとウジウジして話が面白くないなんて悲劇がなければ。
悩まないヒーローでもいい。能天気とか脳ミソ筋肉とか言われても痛快であれば。
しかし、ジャッジは悩んでちゃいけない。悩んでるヒマはない。即座に逮捕! 即座に判決! 即座に執行! で、だいたいは死刑だ!!

核戦争で荒廃した大陸の中、アメリカ東海岸に残った非・汚染地帯に構築された巨大都市、メガシティ・ワン。一日の犯罪件数17,000件というこの都市では、警察、陪審員、裁判官、刑執行人を兼ねたエリート集団「ジャッジ」が治安取り締まりにあたっていた。その一人であるドレッドは、ジャッジの頂点に立つ男である。
ある日、ドレッドは新人ジャッジにして人の心を読めるミュータントであるカサンドラ・アンダーソンを伴い、殺人事件の現場であるピーチツリー・タワーへと向かう。このタワーは200階建てのスラム街で、最上階に潜む女ギャング、通称ママがすべてを牛耳っていた。
ドレッドとアンダーソンがママの部下を逮捕・連行しようとしたそのとき、ママはビル全体をシャットダウン、全フロアの部下たちにジャッジ2人の抹殺を命じる。75,000人もの敵が迫りくる中、2人は生き残りをかけて最上階を目指す。

メガシティ・ワンという一都市内で活躍するご当地ヒーロー……といえばソフトだが、近年映画化されてきたコミックヒーローの中では『パニッシャー』に並ぶ残虐ファイトヒーロー(1995年のスタローン版『ジャッジ・ドレッド』はアレとして)。
ジャッジのみが持てる銃「ローギバー」を撃てば、悪党どもが頭蓋や腹から血しぶきと肉片を撒き散らして倒れ、火炎弾で火だるまになり、白熱弾で中から焼かれる。
そうでなくとも、逃走中のギャングが一般市民を思いっきり轢き逃げするオープニングに始まり、皮を剥がれた落下死体、巻き添えで次々と死んでいく一般住民など、全編ゴア描写は容赦ない

しかし、ここまでバイオレンスを徹底させたからこそ、密閉空間で孤立無援のまま最上階のボスを倒すというシンプルでゴリ押しのシナリオが、良い具合の緊張感でピリッと締まっていた。
逆に、作品中もっとも美しいシーンは、作中に登場するドラッグ「スローモー」でトリップしている瞬間だったりする。
しかも、劇場ではこの人体破壊とトリップイメージが3Dで迫ってくるのだからタチが悪い。『ピラニア3D』とは近いようで少し違う、悪趣味と中学生スピリットの3Dといえる。

普通にヒーロー映画の文脈で考えると、ジャッジはむしろヒーローに倒される側である。逮捕も処刑もすべて独断で取り仕切っているのだから、限りなく独裁者に近い。
しかし、悪人に対しても新人に対しても自分に対しても厳しく、容赦のなさには容赦のなさでもって立ち向かう、あまりにもストイックなドレッドは、法の番人なのに「アウトロー」という称号が似合う。
そのストイックさの最たる象徴こそ、作中およびパンフレット内ですら決して外されることのないヘルメットと、常にへの字に結ばれた険しい口元だろう(スタローンはさっさとメットを脱いでしまった……)。

一方、新人アンダーソンは、サイキック能力の妨げになるからとヘルメットをつけない。それだけに、相手を撃つことへのとまどいやためらい、一抹の恐れが、どんなにポーカーフェイスでもあらわになる。
そうした足手まとい要素をストーリーが進むごとに自力で振り払い、めざましい成長を遂げていくという、新人系キャラクターの美味しさを目いっぱい、それでいてムダなく持っている。新人系に多いやたら感情的になるきらいがないのも、さっぱりしていて好感がもてる。
将来性のある優秀な人材なのだから、ジャッジ本部は彼女に特注ヘルメットを作ってあげればいいのに。しかしそうすると、彼女の可愛らしさが半分見えなくなってしまうのがもどかしい……と、つい勝手に悩みたくなってしまうのだった。

2013年2月12日火曜日

極私的ボンドガールベスト

華より毒気(華プラス毒気なら尚よろし)。

ヴィランついでに結局ボンドガールもベスト10をつくってしまったわけですが……総選挙で得票率の高かった正統美女(『ロシアより愛をこめて』のタチアナ、『サンダーボール作戦』のドミノ、『カジノ・ロワイヤル』のヴェスパーなど)や、せっかくのボンドガール日本代表(『007は2度死ぬ』のキッシー鈴木とアキ)が入らないという結果になってしまった。
それというのも、ボンドガールの好みの傾向に「強い」「毒(または劇薬)」があるからで……。

1位 ゼニア・オナトップ(ファムケ・ヤンセン)『007/ゴールデンアイ
"Then you are on a top"(次は君が上になって)をもじった名前といい、研究所員を撃ちまくりながらエクスタシーの溜め息を漏らす殺人愛好癖ぶりといい、必殺太ももチョークスリーパーといい、エロさもキャラクターの濃さもずば抜けている。
私が基本的に毒のあるボンドガールしか受け付けなくなってしまったのは、初見にして一番インパクトの強いボンドガールがこのお方だったせいです。

2位 メイ・デイ(グレイス・ジョーンズ)『007/美しき獲物たち』
角刈りに派手コスチュームに怪力。ボンド「ガール」とはいうものの、その魅力は性別・年齢を超越している。わずかなカットながら、「全身これ凶器」というオーラが漂うTバック姿は畏怖もの。退場際は歴代ボンドガールきっての勇姿だった。

3位 エレクトラ・キング(ソフィー・マルソー)『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』
守られる側だし、頼りにならないし、マイペースなお嬢様……と、当初こそ好みじゃないお飾り形ボンドガールだったが、それ以降どんどん自分好みの方向に。ある意味オナトップの別バージョンかもしれない。「締め付け好き」だし。

4位 ジンクス/ジアシンタ・ジョンソン(ハル・ベリー)『007/ダイ・アナザー・デイ』
断崖絶壁から華麗なる逃走とか、レーザー光線でピンチとか、中ボスとの剣術バトルとか、危機的状況でも減らず口とか、いつもならボンドが持っていく美味しいポイントの大半をこの人が持って行ったため、最後の登板だったピアボン(ピアース・ブロスナンのボンドの意)が霞んでました。

5位 パメラ・ブーヴィエ(キャリー・ローウェル)『007/消されたライセンス』
ドレスになろうと、裾を取っ払って脚が見えようと、たくましさのほうが勝る。「君はここまででいいから」と厄介払いされても、しぶとくついて行っては一度も脚を引っ張ることなく役に立つ頼れる相棒。しいていうなら、終盤ほかのボンドガールと親密になりそうなダルボン(ティモシー・ダルトンのボンドの意)を見て、突然泣き出してしまうところが弱みだったが、好感度は落ちず。

6位 トレーシー/テレサ・ディ・ヴィンチェンゾ(ダイアナ・リグ)『女王陛下の007』
やたらに助けを求めることもなく、むしろ思いがけず助けられようともレゼボン(ジョージ・レーゼンビーのボンドの意)を突き放す。脅威のドライビングテクニックとスキーテクニック、ブロフェルドを口先であしらい、手下をコテンパンにするガッツと機転もあり。それまでのボンドにとっては新しいタイプの女性で、お付き合いの本気度も高かったのだろう。それだけに……。

7位 ナオミ(キャロライン・マンロー)『007/私を愛したスパイ』
ビキニにシースルーガウンで「秘書です」って登場は完璧なのだが……惜しい。せめてピアボンのころに登場していれば、過度なエロ系殺し屋としてもう少し活躍できただろうに。

8位 オクトパシー(モード・アダムス)『007/オクトパシー』
女サーカス団とみせかけた女怪盗団のボスということよりも、お父さんからつけられた「タコちゃん」的あだ名を堂々と受け入れた挙句、怪盗としての通り名にしていっそうカッコよくしてしまうセンスと度胸がスゴい。モード・アダムスは『黄金銃を持つ男』のアンドレアよりも断然こっちが素敵。彼女が率いる美女軍団もセクシーで強く、ラストの殴り込みシーンがある意味最骨頂の見せ場。

9位 M(ジュディ・デンチ)『007 スカイフォール
ダニボン(ダニエル・クレイグのボンドの意)とスコットランドに潜伏するシーンを見たら、再会したシルヴァと同じく「そんなに小さかったか?」と言いたくなった。要らんことしたり人選ミスったりロクなことしないオカン上司と思ってましたが、思えばそんな小さくて頼りない身体で諜報活動を取り仕切ってくれてるんですよね。

10位 ウェイ・リン(ミシェル・ヨー)『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』
長い脚で敵をバタバタ蹴倒す格闘シーンが圧巻。確証はないがきっとボンドと対戦したら勝つ。いっそ勢いでピアボンも蹴飛ばしてしまうとか、逆に敵に捕まっちゃったピアボンを彼女が助けるって展開にすればよかったのに。

番外

3代目マニーペニー(サマンサ・ボンド)『007/ゴールデンアイ』~『007/ダイ・アナザーデイ』
マニーペニーといえば、ボンドと同僚以上恋人未満なやり取りを楽しむ初代のロイス・マクスウェルが一番人気だが、個人的にはサマンサ・ボンドの辛らつでちょい冷たいマニーペニー(そしてそれでも折れないピアボン)が一番好み。ちなみに4代目マニーペニーの今後も楽しみにしている。

海から上がってきた瞬間のハニー・ライダー(ウルスラ・アンドレス)『007/ドクター・ノオ』
まだボンドガールが大々的に活躍する展開にはならない作品だが、やっぱり登場時のこの瞬間だけは別格のオーラが。あと、後のチャイナドレス姿よりは白ビキニのほうが断然カッコいい。彼女の登場スタイルは『ダイ・アナザー・デイ』でハル・ベリーも真似(オマージュか)したし、『カジノ・ロワイヤル』ではダニエル・クレイグも海パンでリゾートの海から……ってこっちは嬉しくないか。

機関銃婆ちゃん(?)『007/ゴールドフィンガー』
美女軍団を率いるプッシー・ガロアよりも、金色に塗られたジル・マスターソンよりも、なぜいるのか分からないこの婆ちゃんのほうがインパクト大だった。


中にはボンド「ガール」っていうかボンド「グラニー」じゃないかってのも混ざってますが、ご了承ください……。

極私的ボンドヴィランベスト

全員悪人(アウトレイジしてないけど)。

007映画誕生50周年だった2012年には、20世紀FOXや映画秘宝でボンドガール総選挙が行われたもの。それはそれで面白かったし、投票したケースもあった。

しかし、007映画を観たいと思う動機の比重がボンド<ボンドガール<<<ヴィランという自分にとって、ボンドガールはあるのにボンドヴィランの総選挙がないのはいかがなものか(米ロサンゼルス・タイムズでは『歴代悪役ベスト10』があったらしいが)と思い、勝手に作ってみた次第。投票者が一人しかいないので、結局総選挙じゃなくなってるが。


1位 マックス・ゾリン(クリストファー・ウォーケン)『007/美しき獲物たち』
金髪版のガブリエル様(『ゴッド・アーミー』参照)。
生体実験でつくられた天才という設定も納得の端整な顔と冷徹さと浮世離れ感だが、笑顔は妙に可愛い。ぶっちゃけ引退間際のロジャボン(ロジャー・ムーアのボンドの意)よりもシャープでカッコよく、最強クラスボンドガールのメイ・デイと並んでも絵になる。頭脳派系ボスながら、椅子にふんぞり返ってばかりじゃなく、殺しの最前線にまで出てくるアウトドア系なのも観ていて楽しい。

2位 レナード(ロバート・カーライル)『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』
外では狂犬テロリスト、でも好きなあの人の前では子犬。
ロバート・カーライルの持ち味が両方楽しめる。最大の特徴「延髄に残った銃弾のせいで感覚がない」設定は、痛みを感じない怪物ではなく、愛する人を感じ取ることもできない哀しい男として活きている。ということは、最後のバトルでのピアボン(ピアース・ブロスナンのボンドの意)の一言は、痛みを感じないはずの彼に一番の激痛をもたらしたに違いない。それはヒドいよボンドさん(悪いのはレナードですが)。

3位 ジョーズ(リチャード・キール)『007/私を愛したスパイ』『007/ムーンレイカー』
自慢の鋼鉄歯でいろいろありえないものを食いちぎり、サメにも勝てる100%力技勝負。
そのくせ彼女ができたら速攻彼女第一主義になる単純さも好感高。でかい図体ながら、登場まで狭いところに隠れて待っていることが多いので、実は結構マジメで忍耐強いと思われる。

4位 ラウル・シルヴァ(ハビエル・バルデム)『007 スカイフォール
世界一濃ゆくて哀しいマザコン。
「我々は生き残った2匹のネズミ」って言ったけど、正確にはカピバラ系(おもに横顔が)。それにしても、たった1人への復讐というすんごく個人的な動機に、よく仲間がついてきてくれたもんだ。やっぱりアレですか、バルデムさんのモテパワーですか。

5位 ダリオ(ベニチオ・デル・トロ)『007/消されたライセンス』
ボスのサンチェスよりも手下のこちらで。粘着質な笑顔でボンドガールのキャリー・ローウェルをドン引きさせ、ダルボン(ティモシー・ダルトンのボンドの意)に本当にケガさせてしまった、のちのオスカー俳優デル・トロ伝説の始まり。

6位 アレック・トレヴェルヤン(ショーン・ビーン)『007/ゴールデンアイ
悪事のスケールはデカいが手始めにやることは銀行強盗と変わりないとピアボンにツッコミを入れられ、ボスなのに殺し屋クラスのゼニア・オナトップに存在感で負け、退場も卑怯でイヤな奴クラスのボリス(アラン・カミング)にインパクト負けしてたから。
つまるところ、ショーン・ビーンだから。

7位 ル・シッフル(マッツ・ミケルセン)『007/カジノ・ロワイヤル』
顔(の骨格)。
悪役スケールは小さいが、顔の骨格は良い。あの骨格に目の傷と血の涙は似合う。話題の拷問シーンも、ダニボン(ダニエル・クレイグのボンドの意)の腹筋ボコボコ体格より、切羽詰まって汗だくなル・シッフルの顔面骨格が良い。
つまるところ、マッツ・ミケルセンだから。

8位 オッドジョブ(ハロルド坂田)『007/ゴールドフィンガー』
体力勝負系殺し屋ながら、ベースはニコニコしたおっさんというギャップがチャームポイント。終盤、金庫内に閉じ込められたのに焦りも悪あがきもせず、真っ直ぐコネボン(ショーン・コネリーのボンドの意)との一騎打ちに向かう姿が、純然たる戦士。

9位 フランシスコ・スカラマンガ(クリストファー・リー)『黄金銃を持つ男』
「うわー、本物のボンドだ!!」「会っちゃったー! ボンドに会っちゃったー!!」「ボンド君見て見て! うちの設備スゴいでしょ!!」と、憧れのスターを前にした嬉しさ全開オーラが、黄金銃を持つ凄腕の殺し屋という設定を超えました。ちなみに、クリストファー・リーだけに、就寝体勢はドラキュラ。

10位 エルンスト・スタブロ・ブロフェルド(ドナルド・プレザンス)『007は二度死ぬ』
以前のシリーズから顔を見せないスペクター首領として登場。初顔見せがプレザンス。その後のシリーズではテリー・サバラスとチャールズ・グレイが演じているが、傷のある顔とスキンヘッドと割に背が低いところが妙に愛嬌のあるプレザンス推しで。膝上の白猫ちゃんも居心地よさそうだし。

番外

チャン(トシロー・スガ)『007/ムーンレイカー』
名前はチャンだが日本の着物や作務衣を着用。おかっぱ頭とヒゲが基本スタイル。竹刀と剣道防具が戦闘装備。グランドピアノに突っ込んで退場。徹頭徹尾清々しいほど意味不明だった。

エミール・L・ロック(マイケル・ゴタード)『007/ユア・アイズ・オンリー』
際立った癖や特色があるわけでもなく、ボンドや身内の暗殺を請け負い、証拠隠滅と敵の殲滅を兼ねてアジトを爆破する、普通に非道な殺し屋キャラ(『普通に非道』って基準も変だが)。しかし、とにかくマイケル・ゴタードという役者の顔がやたらめったら印象に残る。そういう意味では退場が惜しかった。

カマル・カーン(ルイ・ジュールダン)『007/オクトパシー』
「フランス訛りがいい」という表現はたいていボンドガールに使われる褒め言葉ですが、あえて私はこのおっちゃんに使いますよ。

一応このブログ、「映画選びの参考にご利用いただければ幸い」ってトップに書いてあるんですが、この記事はもっとも参考にならない映画選び基準かもしれない……。

2013年1月20日日曜日

ベルフラワー

見せてやろう、ボンクラの真の力を。

ベルフラワー('11)
監督:エヴァン・グローデル
出演:エヴァン・グローデル、ジェシー・ワイズマン



ここ数ヵ月、ブログ上でもTwitter上でも口頭でも使用頻度が格段に増えた表現「ボンクラ」。
「オタク」というほど世間に浸透した感もなく、「おバカ」というほどチャーミングでもなく、かといって「変態」というほど危険性はなくむしろ基本的に人畜無害で、そのくせムダなエネルギーは余りまくっているとでもいうような。
ただ、そのボンクラエネルギーでもって、イイ映画(良作、アホ作両方込み)を作ってしまうようなスゴいボンクラも中にはいる。

で、本作の監督/主演のエヴァン・グローデル。この人も話を聞く限りボンクラには違いないんだけど、これが「イイ映画」なのかというと非常に微妙なところで。

『マッドマックス2』の世紀末的世界観と悪役ヒューマンガスに憧れ、定職にも就かず火炎放射器と改造車「メデューサ」の製造にはげむウッドローとエイデン。
ある日ウッドローはバーでミリーという女性に会い、熱烈な恋に落ちるが、ミリーの浮気で破局。失意を引きずったままのウッドローは、ミリーへの恨みと世界の破滅への思いとが錯綜し、現実と妄想が入り乱れ始める。


注:ある程度伏せてはいますが、以下の文には若干ネタバレにあたる記述があります。


「ベルフラワー」は、エヴァンが実際にお住まいのロサンゼルスの小さな街にある通りの名前。
メデューサ作りから失恋から現実と妄想のカオスぶりまで、ぶっちゃけストーリーはエヴァン自身の実録。
さらに、ミリーを演じたジェシー・ワイズマンは、実際にエヴァンと付き合っていた挙句二股かけて関係を終わらせた張本人。

つまり、エヴァンは自分の失恋体験をほぼそのまんま映像化しちゃったのである。
世紀末だ世界の破滅だといってるが、ベルフラワーを中心にウッドローの周辺(心の中含む)だけでほとんど収まってしまう話。
メデューサと火炎放射器(ついでに、自分の思うような粗い映像の撮れるカメラ)をガチで製造してしまったボンクラパワーはある意味スゴいが、その後の虚実入り乱れた展開までガチで再現するのは、カタルシスが生まれるというわけでもないし、失恋体験を消化しきれてないのではという気もする。
ある人をどん底まで追い込んだ体験が他人に響くかというと、必ずしもそうとは限らないしな。

ところが、これが響いちゃったのである。対象はもちろん、少なからずウッドローに似たボンクラたち。そのうえ、カタルシスが生まれないはずの終盤に涙さえ生まれることもあった。
映画を作るなどのクリエイティヴィティを除けば、ボンクラの真の実力とは、「なんにもできないこと」なのである。いくらデカいことを言っても、想像力(あるいは創造力)がたくましくても、重要な局面でそれを活かすことはなかなかできない。
たとえ世紀末に憧れても、火炎放射器やメデューサを作る力があっても、ヒューマンガスになんかなれっこない。手下のザコキャラになれるかすら怪しい。それがボンクラのステータスなのである。
カオスの果てになんにも生まれない終盤の様相は、そのことを観客のボンクラ魂に痛いほどガツンと思い知らせた。

だから、ラストにエイデンがウッドローに長々と語る「お前はヒューマンガス様になるんだ」というくだりは、叶いっこない夢をツラツラ言ってるだけの、一見空っぽの話にすぎない。
しかし、すべてにドン詰まってしまったボンクラにとっては、この上なくピュアでまっすぐな救いの手であり、友情の証なのだ。

2013年1月15日火曜日

ミューズ@さいたまスーパーアリーナ

膨張に飽きたら別の次元を作ればいいじゃない。

MUSE
2013.01.11. さいたまスーパーアリーナ

セットリスト
1.The 2nd Law: Unsustainable
2.Supremacy
3.Map Of The Problematique
4.Panic Station
5.Resistance
6.Supermassive Black Hole
7.Animals
8.Knights Of Cydonia
9.Explorers
10.Exogenesis: Part 3 (Redemption)
11.Time Is Running Out
12.Liquid State
13.Madness
14.Follow Me
15.Undisclosed Desire
16.Plug In Baby
17.Stockholm Syndrome
‐ Encore1 ‐
18.The 2nd Law: Isorated System
19.Uprising
‐ Encore2 ‐
20.Starlight
21.Survival


クラシックもジャズもポップもメタルもブラックホールのように吸収し、世界から宇宙にまで広がり続ける。それがミューズの音楽だった。

そんなに巨大になってどこに行くんだろうと思っていたら、昨年発表の6th『The 2nd Law』では、4thと5thまではかろうじて保っていた「ギター・ロック」という基盤から逸脱し、サンプリングやダブステップを多用した音楽性。今まででもっとも「ミューズらしくない」音でありながら、常に進化し続けて遂に新しい次元へ飛び立ってしまった「きわめてミューズらしい」作品となっていた。

そんな最新作と、クイーンのごとき過剰の美学が詰まった今までの曲とが融合した、しかもフルスケールのライヴときたら、絶対スゴいに違いない! ……と思っていたら案の定、というか想像を軽く飛び越えて、とんでもないことになっていた。


どえらい行列のグッズ販売とクローク待ちのおかげでサポート・アクトには間に合わなかったものの、本番には何とか滑り込み。「Exogenesis: Part3(Redemption)」のパラパラアニメーションで突如ミューズと縁深くなった鉄拳さんの出現が、開幕直前のちょっとしたジャブ的サプライズだった。

幕開けは前評判通り、「Unsustainable」のセッションから「Supremacy」のドラマティックなベース&ドラムライン。ミューズらしからぬ最新作の音から入ったのに、もうミューズ以外の何物でもない劇的展開が始まっている。

真っ赤だったりラメ入りだったりと、ここ最近はきらびやかなマシュー(Vo./G)の衣装だが、今回はシンプルな黒のライダースジャケット。銀の全身タイツだったりガチャピンの着ぐるみだったりと、ここ最近はお笑いコスチュームだったドム(Ds.)も、シンプルな白のタンクトップ。クリス(B)がシンプルな服なのは……まぁいつものことなので。
そういえば、マシューの日本語MCは相変わらず早口で、ヒアリングが大変だったよ。

衣装の奇抜さに取って代わったのは、ステージエフェクトの奇抜さだった。「Panic Station」で、ステージ上空から逆さピラミッドが出現。1つ1つのブロックがディスプレイになっていて、ブロック1つ1つにエイリアンが出現。メンバーのクローズアップも映し出される。
「Animals」では、財界から世の中を牛耳るCEOを皮肉ったストーリー調の映像が流れる。しかも、ときどきピラミッド型から組み変わる。さすが、前回ツアーで会場にUFOを飛ばしたミューズ。エフェクトは可能な限り使いぬく。レーザーもたくさん飛んだしね。

今までライヴの幕開けかラストを飾っていた「Knights Of Cydonia」が、本編8曲目という中途半端なポジションに投げられていたのが、個人的には嬉しい。アンセムとされてきた曲をあっさり特別扱いしなくなる冒険精神は大好きなもので。
また、演奏されなかった公演もあったので、果たして今回来るかどうか分からなかった「Explorers」にも感激。ここから、日本で特別に演奏された「Exogenesis」(ピラミッドに鉄拳のパラパラアニメーション付き)の流れで、2013年ライヴ初泣きとなった。

最新作で初めてメインボーカルが2曲収録されたクリスだが、彼のボーカル曲は公演によって「Save Me」だったり「Liquid State」だったりと変わるらしい。今回は後者。当初は前者のほうがいいかなぁと思っていたのだが、よりロック色の濃い「Liquid State」でも大正解のようで。
しかし、せっかくメインを張ったのに、MCらしいMCもなくすぐに引っ込んでしまうんだねクリスは。インタビューではそうでもないのに、ステージ上では一番のシャイに見えてしまう。(本当のところはマシューも相当シャイなようだが)

レンズがディスプレイになった特殊サングラス着用のマシューもちょっとマッドな「Madness」を経て、「Follow Me」~「Undisclosed Desire」のパートが、ミューズのもっとも斬新な側面だったかもしれない。なにしろ、今までお気に入りのおもちゃのようにギターを手放さなかったマシューが、初めてギターなしで(もちろんピアノもなしで)マイク片手に歌ったのだから。しかも、「Undisclosed…」では、アリーナ通路に降りていって、オーディエンスと握手して回っていた。

そんなマシューを目にしたクリスが思わず笑顔になっていた。実際のところ、クリスにはアルコール中毒の克服をマシュー&ドムに支えてもらっていたというエピソードがあったのだが、それを踏まえてもアリーナをひた走るマシューを見るクリスの笑顔は、やんちゃ小僧を暖かく見守るパパに見える。

今回のツアーでは、ファンからの人気曲「Stockholm Syndrome」「New Born」のうちどちらを演奏するか、ルーレットで決めるという演出がある。上の逆ピラミッドからボールが落ち、ステージ底辺を囲むスクリーンのルーレット台に止まるのである。個人的には、どっちの曲も好きなので、どっちが当たっても嬉しいし残念でもある。この日は「Stockholm…」だった。
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの「Freedom」をジャムセッションする中(ミューズはよくセッションにレイジの曲を使う)、3人を覆い隠すようにして逆ピラミッドが正ピラミッドに組み変わりながらステージ上に降り立ち、本編が終了した。

「Isorated System」を経て、「Uprising」のベースラインで再び会場は沸く。マシューとクリスは左右の花道にすぐ現れたが、ドムのドラムセットは完全にピラミッドの後ろに隠れてしまっている。その代わりなのか、ピラミッドにはドムが空手でスーツの男たちをなぎ倒す『キル・ビル』チックな映像が流れていた。
ようやくピラミッドが持ち上がったとき、ドムの格好が映像に映っていたユマ・サーマンもどきの赤ツナギになっていたことが判明。アンコールでのお着替えは、ガチャピン着ぐるみ着てきた前回ツアーのノリと変わっていないような。

2度目のアンコールは「Starlight」でハンド・クラップが続き、最後はロンドンオリンピックのメインテーマ「Survival」。マシューの雄叫びに、熱いはずのアリーナが一瞬寒くなるほどのスモークが巻き上がり、ラストの歌詞「Yes, I'm gonna win」を体現するような幕切れとなった。ミューズのライヴ、とりわけラストに「劇的」という表現はつきものだが、見る度に劇的の度合いが跳ね上がっているようだ。

過剰なほどのスケールとドラマでもって膨張を続けた音楽世界から、新しい音でもって別の次元を作り出す。そんなあまりにもバカでかい「新たな一歩」を、壮大なステージで成し遂げる。下手するとただ大仰なだけのステージだが、終わってみればすべて必然。

荒削りもカッコよさのうちになるロック界において、ミューズは今もっとも荒削りから遠く、「洗練」「完璧」という言葉にふさわしい。
それでいて、というより、それだからこそカッコいいロック・アーティストなのだ。

クリスが来た! とカメラを向けるも、体感距離とレンズ距離にはかくも違いが……
ステージ上空に出現する噂のピラミッド。


そして怒涛のレーザー祭り。